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【社労士監修】シニア向け給付金6選&申請手続きの注意点

【社労士監修】シニア向け給付金6選&申請手続きの注意点
住田 俊治 (汐留社会保険労務士法人所属/社会保険労務士/産業カウンセラー)

監修者

汐留社会保険労務士法人所属/社会保険労務士/産業カウンセラー

住田 俊治

新卒で大手金融機関に入社、長年金融市場ビジネス、資産運用ビジネスに携わった後、グローバル人事部門にHRBPとして約13年所属。
在職中に産業カウンセラーを取得。
退職後、60歳を超えてから社会保険労務士の資格を取得。
金融に関する豊富な実務経験、および人事業務を通して得た幅広い経験、知見を活かし、社会保険労務士として広く社会に貢献することを目指す。
現在、担当顧客に労働保険、社会保険に関する委託業務を提供するとともに、人事コンサルとして制度設計、組織改革などの支援、アドバイスを多数行っている。

老後の生活を支える公的な給付金や補助金は多くありますが、自動的に支給されるものばかりではありません。なかには会社を通じて申請手続きを行わないと受け取れない制度もあります。

ここでは必ず押さえておきたい代表的な給付金について、社会保険労務士の視点を交え、申請のポイントと注意点を併せて紹介します。活用できそうな給付金について、一度金額や手続きをチェックしてみましょう。

雇用に関する給付金や制度

雇用に関する給付金や制度

雇用保険に加入している、または加入していた方が対象の給付金です。キャリアアップや再就職、働き続けるための支えとなります。

高年齢雇用継続基本給付金

定年後も同じ会社で継続雇用された場合、定年前より賃金が下がることがあります。この給付金は、60歳以後の賃金が、低下前の賃金と比較して75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。

支給条件・60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
被保険者であった期間が5年以上あること
・原則として雇用が継続している者について、60歳以後に賃金が低下した場合、低下前の賃金(みなし賃金)と比較して75%未満となっていること
金額賃金が60歳以後に低下前の賃金より75%未満に低下した際、低下した賃金の上限10%が支給されます。ただし、支給率は賃金低下率などの条件により変動します。  

(例) 60歳以降、低下前は40万円だった賃金が24万円まで下がったとき、低下率は「24万円÷40万円=60%」。現在の賃金の最大10%の支給率が適用され、「24万円×10%=24,000円」が原則65歳到達まで支給されます(ただし、条件により支給が終了する場合があります)  
申請場所原則として事業主(会社)が窓口。事業主経由で、その事業所の所在地を管轄するハローワークに申請
相談できる専門家勤務先の総務・人事担当者、ハローワーク職員、社会保険労務士

社労士が答えるQ&A

申請でありがちな失敗や注意点は?

自動で支給されるわけではないので、申請忘れに注意しましょう。制度の対象であるにもかかわらず、会社が手続きを失念しているケースもまれにあります。60歳を過ぎて給与が下がった場合は、まず勤務先にこの制度の対象か確認しましょう。

契約社員でも支給されますか?

支給されます。ただし雇用保険に加入していることが条件なので、個人事業主や業務委託契約は対象外です。

申請期限はありますか?

あります。申請は原則2カ月に1度、会社が行いますが、申請期限(支給対象月の初日から4カ月以内)を過ぎると給付が受けられないため、注意が必要です。

年金を受給していても申請できますか?

できます。ただし対象者は減っていますが、特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)の支給を受けながら、同時に高年齢雇用継続給付の支給を受けている期間については、高年齢雇用継続給付の給付額に応じ、年金の一部が支給停止される場合があります

高年齢求職者給付金

通常の雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)は65歳未満が対象であり、65歳以上の方は受給できません。そこで65歳以上で失業状態にある方が、雇用保険の基本手当の代わりに受け取れる一時金です。

支給条件・離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あること(ただし過去すでに取得した受給資格に係る離職前の被保険者期間は通算することができない)
・失業の状態であること
金額基本手当の日額の30日分または50日分が一時金として支給されます(被保険者期間により変動します)
申請場所ご自身の住所地を管轄するハローワーク
相談できる専門家ハローワークの職員、社会保険労務士

社労士が答えるQ&A

申請でありがちな失敗や注意点は?

65歳未満の基本手当との違いを理解しましょう。65歳になる直前で退職する方は、65歳未満で退職して最大150日分の基本手当を受給するか、65歳以上になってからこの一時金を受給するか両方を受給することはできないのでどちらが有利かを検討する必要があります。

ご自身の就職活動のプランに合わせてハローワークで相談することをおすすめします。

再就職手当と併給はできますか?

再就職手当は、基本手当の支給残日数が3分の1以上あるときに受け取れますが、高年齢求職者給付金は高年齢被保険者が対象の給付金のため、そもそも基本手当の対象となっておらず、また再就職手当との併給もできません

高年齢再就職給付金

高年齢再就職給付金は、離職して基本手当の支給を受けた方が、60歳以上で再就職して被保険者になり、離職時と比べて給与が低下した場合に支給されます。

支給条件・基本手当の支給残日数が100日以上
・1年を超えて雇用される見込みがある安定した職業に就いたこと
・雇用保険の被保険者期間が5年以上あること
・同一の就職について再就職手当の支給を受けていないこと
金額再就職直前の賃金より75%未満に低下した際、低下した賃金の上限10%が最長2年を上限として支給されます(条件により変動)
申請場所ご自身の住所地を管轄するハローワーク
相談できる専門家ハローワークの職員、社会保険労務士

社労士が答えるQ&A

再就職手当と何が違う?

求職者を対象としたよく似た制度に再就職手当があります。高年齢再就職給付金は、60歳以降に離職し、失業保険中に再就職した場合に最長2年間給付されるのに対し、再就職手当は一時金として支給は1回のみです。

高年齢再就職給付金の受給資格がある場合、再就職手当も選択できる可能性がありますが、併給はできません。両者の条件次第で複雑に計算が変わるため、ハローワーク担当者に基本手当の支給残日数や賃金低下率を伝えて両者比較してもらいましょう。

教育訓練給付金

働く人のスキルアップやキャリアチェンジを支援するため、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講・修了した場合に、費用の一部が支給されます。

支給条件・雇用保険に加入中、または離職してから1年以内
・雇用保険の加入期間が3年以上あること(初めての場合、当分の間、1年以上)
・過去に受給しているなら前回から受講開始まで3年以上経過していること
金額講座のレベルに応じて3種類あります(制度改正により支給率・上限額が変動する可能性があります)。
①専門実践教育訓練:費用の最大70%(年間上限56万円
②特定一般教育訓練:費用の40%(上限20万円)
③一般教育訓練:費用の20%(上限10万円)
※①②は資格取得等のうえ、雇用保険の被保険者として雇用されるなどの条件を満たした場合には上限額の追加があります
申請場所ご自身の住所地を管轄するハローワーク
相談できる専門家ハローワークの職員、教育訓練実施機関、キャリアコンサルタント

社労士が答えるQ&A

申請でありがちな失敗や注意点は?

この給付金は受講前の申請が必須です。とくに専門実践教育訓練では、受講開始日の14日前までにハローワークでキャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成、提出するなどの手続きが必要です。

「講座が終わってから申請すればいい」と思っていると、給付を受けられない可能性があります。まずは希望する講座が制度の対象かを確認し、ハローワークで事前相談を必ず行いましょう。

年金に関する給付金や制度

年金に関する給付金や制度

公的年金を受給している方の生活を支えるための制度です。

年金生活者支援給付金

老齢・障害・遺族の各基礎年金の受給者で、所得や世帯の状況が一定の基準を満たす場合に支給されます。支給額は所得や加入履歴に応じて月額数千円程度です。

支給条件・65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること
・同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
・公的年金等や他の所得との前年の合計額が、昭和31年4月2日以後に生まれた方は90万9,000以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は90万6,700円以下であること
金額月額数千円程度
申請場所新たに支給対象となる方には日本年金機構から年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が送付されます。届いた書類を返送後、審査のうえ支給が決定されます
相談できる専門家年金事務所、「ねんきんダイヤル」、社会保険労務士

社労士が答えるQ&A

申請でありがちな失敗や注意点は?

意外と多いのが、日本年金機構から封筒が届いているのに見落としてしまうケースです。

年金受給者なら自動的に支給されますか?

年金生活者支援給付金を受け取るには、年金生活者支援給付金請求書の提出が必要です。原則、手続きした翌月分から支給の対象となりますので、速やかに請求手続きを済ませましょう。

医療や介護に関する給付金制度

医療や介護に関する給付金制度

病気やケガ、介護が必要になった際の経済的負担を軽減するための制度です。

介護休業給付金

家族を介護するために会社を休業した場合に、雇用保険から支給されます。

支給条件・休業開始日の前2年間に雇用保険に加入している期間が12カ月以上あること
・家族が2週間以上にわたり常時介護が必要であること
金額「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で算定されます(賃金日額には上限・下限があります)。同一の対象家族について、通算93日までを限度に3回まで分割して取得できます
申請場所原則、事業主(会社)を経由して、その事業所の所在地を管轄するハローワーク
相談できる専門家勤務先の総務・人事担当者、ハローワーク職員、社会保険労務士

社労士が答えるQ&A

休業前に申請しようとしたら会社が受け付けてくれなかったんですが……?

申請は「休業後」が原則です。育児休業給付金と異なり、介護休業給付金は、原則として介護休業が終了したあとに申請します。

申請期間は「介護休業終了日の翌日から2カ月後の月の末日まで」です。ドタバタする休業後より、休業前に会社の人事担当者と今後の手続きの流れをよく確認しておくことが、スムーズな申請のポイントです。

おわりに

公的な給付金は基本的にはご自身で申請する制度がほとんどです。会社経由で申請する給付金制度も、人事や総務担当者から教えてもらえないケースもあります。それぞれ上記Q&Aで紹介した注意点を踏まえて、手続きのタイミングを忘れずに申請しましょう。

本記事は概要紹介であり、受給可否や金額を保証するものではありません。詳細は厚労省・ハローワーク・年金機構など公的機関で必ずご確認ください

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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