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【最新版】老後の貯蓄はいくら必要?年代別平均・中央値と資産寿命シミュレーション

【plw0041下書き済み】【最新版】老後の貯蓄はいくら必要?年代別平均・中央値と資産寿命シミュレーション
野尻 哲史

監修者

野尻 哲史

1982年大学卒業。
国内外の証券会社調査部での勤務、資産運用会社での投資教育に従事。20年以上にわたる資産形成・活用の啓発活動を続ける。
19年5月、定年を機に合同会社フィンウェル研究所を設立し、資産形成を終えた世代向けに資産の取り崩し、地方都市移住、勤労の継続などに特化した啓発活動をスタート。
行動経済学会などの会員の他、金融庁、東京都、国民年金基金連合会、日本証券業協会などの各種委員を務める。
著書には「100歳まで残す 資産「取り崩し」実践法」、「60歳からの資産「取り崩し」法」(ともに日本経済新聞出版)等多数。

定年後の収入減少を見据えて、貯蓄が足りるのか不安を感じている方もいるでしょう。そこで一つの参考になるのが、公的機関が発表している貯蓄額の統計です。ほかの方がどれくらい貯蓄しているのか、この記事では60歳代を中心に平均値や中央値をチェックしていきます。

さらに、定年後の家計収支をもとに資産寿命がどれくらい持続するのかの試算も紹介します。あくまで目安となりますが、老後の資金計画の参考にしてみましょう。

60歳代の貯蓄額の平均値と中央値は?

60歳代の貯蓄額の平均値と中央値は?

データはJ-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査2024年」(二人以上世帯、単身世帯調査)をもとに紹介します。

なお前提として、平均値は「全体の合計÷人数」、中央値は数字の大きさでデータ全体を並べたときの「真ん中の値」です。平均値は一部の高額貯蓄者によって引き上げられる可能性があり、中央値のほうが多くの方にとって目安になるケースが多い点を踏まえておきましょう。

中央値もあくまで全体の真ん中の値なので、「中央値=ボリュームゾーン」であるとは限りません。その点を踏まえて、あくまで参考として読み取りましょう。

60歳代の貯蓄額の平均値と中央値

単身世帯二人以上世帯
平均値中央値平均値中央値
1,679万円350万円2,033万円650万円

二人以上世帯は平均値2,033万円、中央値650万円。単身世帯は平均値1,679万円、中央値350万円と、それぞれ平均値と中央値は大きな乖離が見受けられます。一部の高貯蓄額者・世帯が平均値を押し上げていることがうかがえます。

60歳代の貯蓄額の金額別の割合

次に、貯蓄額の割合はどのようになっているかもみてみましょう。

[図表]60歳代二人以上世帯の貯蓄額(金融資産保有額)の金額別の割合
[図表]60歳代二人以上世帯の貯蓄額(金融資産保有額)の金額別の割合

二人以上世帯で最も割合が多いのは、「貯蓄なし(金融資産非保有)」が20.5%、次いで「3,000万円以上」が20%。全体でみると貯蓄額は二極化しているとも解釈できます。

「1,000〜1,500万円」が8.9%、「2,000〜3,000万円」が8%、「1,500〜2,000万円」が5.8%と続きますが、レンジを500万円に揃えてみると、「1円〜500万円」が21.7%となり、ここのボリュームが最も多いことも読み取れます

[図表]60歳代単身世帯の貯蓄額(金融資産保有額)の金額別の割合。
[図表]60歳代単身世帯の貯蓄額(金融資産保有額)の金額別の割合。

単身世帯で最も割合が多いのも「貯蓄なし(金融資産非保有)」が27.7%、次いで「3,000万円以上」が16.8%です。貯蓄なしも含めて、500万円までで51.3%と半数以上の割合を占めます。単身世帯のほうが、二人以上世帯よりも貯蓄額の水準は低くなっているようです。

ほかの年代の貯蓄額は?

ほかの年代の貯蓄額は?

60歳代以外の年代の貯蓄額についても見てみましょう。二人以上世帯と単身世帯で分けて、60歳代も含めてまとめると下記のとおりとなります。

●二人以上世帯の貯蓄額

世帯主の年齢平均値中央値
30歳代677万円180万円
40歳代944万円250万円
50歳代1,168万円250万円
60歳代2,033万円650万円
70歳代1,923万円800万円

●単身世帯の貯蓄額

世帯主の年齢平均値中央値
30歳代459万円90万円
40歳代883万円85万円
50歳代1,087万円30万円
60歳代1,679万円350万円
70歳代1,634万円475万円

貯蓄額はいずれも平均値が中央値を大きく上回っており、単身世帯は中央値でみるとどの年代でも500万円以下となっています。また60歳代で水準が一段高くなっているのは、退職金による押し上げがあることが考えられます。

少し前の話となりますが、「老後2000万円」が必要な貯蓄額として話題となりました。しかしこれらのデータを踏まえると、実態としては統計上、十分な貯蓄額に達していない世帯も多いことが見受けられます。

退職金の有無や金額、受け取り方も企業によって異なり、終身雇用での就労が当たり前ではなくなった現在は、今後一時金として受け取る金額は大きく上昇することは考えにくいといえます。60歳代で一段貯蓄水準が自動的に上がるわけではないと意識しておきましょう。

老後の資産、何歳まで持続する?

老後の資産、何歳まで持続する?

総務省の家計調査報告(2024年)によると、1カ月当たりの二人以上世帯の65歳以上の支出は286,877円。一方で収入は年金等を合わせて252,818円です。差額は34,059円となり、年間換算では408,708円。

仮に60歳代の平均貯蓄額の中央値650万円を基準に単純計算した一例では、資産寿命は約15年となります。貯蓄額が1000万円なら約24年、1500万円なら約36年と試算されます。

収入と支出の差額によるところも大きいですが、老後の資産寿命を延ばすためにも、貯蓄額はなるべく多く準備しておきたいものです。

総務省の家計調査報告は住居費がほとんど含まれていないこともあり、あくまで目安でしかありません。

持ち家の有無や退職金、子どもや親の同居の有無や居住地などで老後の資金計画は現実として大きく変わります

貯蓄額や家計調査などの統計データは鵜呑みにせず、足元のご自身の家計や貯蓄をベースに老後の資金計画を立てることが大切です。

老後の収入は、「勤労収入+年金収入+資産収入(資産の取り崩し)」の3つを足した金額が前提となります。

年金収入も資産収入も多くを望めないなら、老後もできるだけ長く働いて勤労収入でカバーすることを検討し、それでも不足するなら支出そのものを見直す意識を持っておきましょう。

おわりに

公的な統計データによると、多くの世帯で老後の貯蓄額は十分ではないことが見受けられます。

しかし足元の貯蓄額が老後の豊かさを決定するものではありません。60歳代以降の勤労によって年金受給までの収入を増やす、厚生年金に加入して将来の年金額を増やす、年金の繰り下げ受給で老後収入の増加を計画するなど、収入増加の選択肢はゼロではありません。

また野尻氏が指摘するように、支出そのものを見直すことも資産寿命に影響する条件となりそうです。

統計データはあくまで目安として、老後のライフプランを一度立ててみましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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