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老後の生活費はいくら必要?リアルな金額や必要額・貯める方法を解説

老後の生活費はいくら必要?リアルな金額や必要額・貯める方法を解説
堀乃 けいか

執筆者

堀乃 けいか

商業高校を卒業後、大学・大学院に進学。商業科教員として就職した後、高校から教員時代の知識や経験をもとに、2020年よりWebライターとして活動開始。2023年、2級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。元々持っていた簿記や法律の知識と掛け合わせ、正確な情報をもとにした記事を書ける金融ライターとして活動中。暗号資産や投資信託への投資も行っている。

定年退職を迎えるにあたり「老後の生活費は実際どのくらいかかるのだろう」と不安に感じる方は少なくありません。

実際、総務省の調査によると、高齢者(65歳以上)の夫婦世帯では1ヵ月の支出が30万円台に達し、どの年代でも赤字になりやすい状況が見込まれています。

本記事では、総務省のデータをもとにした老後の平均生活費や、年齢別・家の所有形態別の違いを詳しくご紹介します。さらに老後資金の準備時期や、生活費不足にどう対処すれば良いかも取り上げますので、ぜひ参考にしてください。

実際に必要となる金額や、いまからできるアクションを知ることで、将来の不安を軽減し、より安心して老後を迎えられるはずです。

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1ヵ月あたりのリアルな老後生活費は?総務省の統計より紹介

1ヵ月あたりのリアルな老後生活費は?総務省の統計より紹介

総務省が2024年にオンラインで約9,000世帯を対象に実施した「家計調査」によると、世帯主が65歳以上で無職の2名以上世帯における1ヵ月あたりの総収入は約26.6万円、平均生活費は約29.3万円という結果が出ています。

そのため、およそ2.7万円の赤字が毎月発生する計算になります。まずはこのデータをもとに、老後生活の支出や収入のリアルを見ていきましょう。

なお日本における「高齢者」の定義は「65歳以上」です。本記事でも、65歳以上を高齢者と定義し、可能な限り65歳以上のデータを取り上げます。

参照元:

家計調査結果 / 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表|政府統計の総合窓口

老後生活費は約2.6万円の赤字

「家計調査」では、世帯主が65歳以上で無職の2名以上世帯における、1世帯当たりの総収入と総支出を年齢階層ごとに集計しています。その結果は下記のとおりです。

世帯主の年齢総収入総支出収支差※
65歳以上の総平均266,329292,527▲26,198
65~69歳307,741352,686▲44,945
70~74歳275,420303,839▲28,419
75~79歳260,866290,216▲29,350
80~84歳244,783261,156▲16,373
85歳以上246,949256,883▲9,934
※▲は赤字を指す、単位:円

65歳以上の世帯では、総平均が約2.6万円の赤字となっており、他の年齢層でもすべて赤字という結果が出ています。

一般的に「老後の生活費は現役時代の7割程度が目安」といわれていますが、実際には年齢を重ねても支出が思うように減らず、赤字に陥るケースが多いことがわかります。

本調査における現役勤労世帯の平均支出(438,723円)に0.7を掛けた額は307,106円となり、65歳以上の総支出平均に近い金額です。

ただし、これらの数値はあくまで平均値であり、各家庭の実情とは異なる場合もあります。ご自身の老後生活費の目安を知るためには、現在の支出に0.7を掛けて概算を出すと、より現実的な金額を把握しやすくなるでしょう。

老後の総収入は1ヵ月あたり約26万円

次に、「家計調査」をベースにした1ヵ月あたりの総収入を見てみましょう。配偶者の収入を家計に含めない家庭もあるため、本記事では世帯主の収入のみで計算しています。

総収入は、大きく「労働収入」と「年金収入」に分けられます。家計調査の結果を世帯主の年齢ごとにまとめると、下表のとおりです。

世帯主の年齢総収入勤め先収入事業・内職収入他の経常収入(年金等)収入計
65歳以上の総平均266,32931,6807,646210,416266,329
65~69歳307,74156,16816,221223,976307,741
70~74歳275,42033,7047,360224,664275,420
75~79歳260,86625,8367,682218,361260,866
80~84歳244,78321,0233,774214,011244,783
85歳以上246,94929,3433,982206,976246,949
(単位:円)

65~69歳はまだ働いている割合が比較的高いため、勤め先収入や内職収入がやや増加傾向にありますが、年齢を重ねるにつれて徐々に働く機会は減り、年金収入がメインになっていきます。

老後の支出は1ヵ月あたり約30万円

家計調査では、世帯主が65歳以上で無職の2名以上世帯について、「消費支出」と「非消費支出」の合計を「総支出」としてまとめています。「消費支出」はいわゆる日常生活費、「非消費支出」は税金や保険料などを指し、以下のとおりです。

世帯主の年齢消費支出 非消費支出支出計 
65歳以上の総平均259,29533,232292,527
65~69歳311,28141,405352,686
70~74歳269,01534,824303,839
75~79歳258,24131,975290,216
80~84歳231,13930,017261,156
85歳以上228,45528,428256,883
(単位:円)

65~69歳では支出が月35万円以上となっており、退職後すぐの時期は趣味や旅行などにお金を使いやすい一方、まだ年金や住宅ローンの支払いが発生している場合も少なくありません。どの年代でも収入より支出が上回る結果となっています。

消費支出は大半が食費

消費支出(生活費)の大まかな内訳例は以下のとおりです。65歳以上の2名以上世帯では食費が月8万円ほどで、全体の3割程度を占めることがわかります。

65歳以上平均65~69歳70~74歳75~79歳80~84歳85歳以上
食費79,20789,22081,07279,68473,12072,855
住居費17,37423,44514,15117,01615,12621,181
水道光熱費23,30224,28423,52223,30422,85722,442
家具・家事用品11,84613,87011,97212,85110,6059,148
服飾費5,7767,8716,3395,3514,9884,490
医療費17,51618,42917,54017,25316,24219,107
交通・通信費30,06844,64035,16927,37123,89519,220
教育費35346621940158537
教養娯楽費24,75133,84927,13324,84419,97916,892
その他の消費支出(美容、たばこ、小遣いなど)49,10055,20751,89850,16443,74043,082
合計259,295311,281269,015258,241231,139228,455
(単位:円)

参考までに、60~64歳における食費は約8.6万円ですが、65~69歳では約8.9万円とむしろ増加しています。これは、年齢を重ねるにつれて健康への意識が高まり、質の良い食材や宅配サービスなどにお金をかける傾向があるためと考えられます。

また、退職後は時間に余裕が生まれることから、旅行や趣味への支出も増加しやすくなります。実際に、交通・通信費や教養娯楽費が高めに推移している点からも、自由に使える時間を活用して積極的に外出や趣味を楽しむ高齢者の姿勢がうかがえます。

こうした背景から、老後の支出は一概に現役時代より大きく減少するとは限らないのが実情です。

非消費支出の大半は保険料

次に、税金や保険料といった「非消費支出」について見ていきましょう。65歳以上の無職世帯(2人以上)における非消費支出の大半は、健康保険料・介護保険料が占めています

65歳以上平均65~69歳70~74歳75~79歳80~84歳85歳以上
所得税491600461528434403
住民税3,3445,0363,4922,9282,7113,040
その他の税8,3659,7429,0348,0798,2176,176
公的年金保険料2,5284,8592,5511,7771,8832,464
健康保険料10,96013,46811,24410,9659,5779,775
介護保険料7,4027,4557,8937,5947,0806,441
他の社会保険料123232127881,8832,464
その他非消費支出19132216299
合計33,23241,40534,82431,97530,01728,428
消費支出合計259,295311,281311,281269,015231,139228,455
支出総計292,527352,686303,839290,216261,156256,883
(単位:円)

介護保険料は、2000年度の制度導入以降、少子高齢化の影響もあり増加し続けています。さらに、75歳からが対象となる後期高齢者医療制度における医療保険料も、近年上昇しています。

こうした背景から、将来的には保険料の負担が一層重くなる可能性があるため、老後の生活費を見積もる際には、保険料の増加も視野に入れておく必要があります

老後の生活費に不安を感じる場合、住まいを活用して資金を確保する「リースバック」という選択肢もあります。「セゾンのリースバック」は、老後資金を準備したい方に好評いただいているサービスです。

保険料の負担が増す前に資金を確保しておきたい方は、活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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【世帯種類/家の所有形態別】老後のリアルな生活費

【世帯種類/家の所有形態別】老後のリアルな生活費

老後の生活費は「単身か夫婦か」「持ち家か賃貸か」によって違いが出ます。ここでは家計調査のデータを参考に、主な違いを見てみましょう。

基本の生活費:単身世帯は「夫婦のみ世帯÷2」とはならない

最初に、単身世帯・夫婦のみ世帯それぞれの平均生活費について見ていきましょう。夫婦のみ世帯の生活費は、単身世帯の約1.7倍にのぼります。一人暮らしであっても生活費が単純に半分になるわけではない点に注意が必要です。

単身無職世帯夫婦のみ世帯
食費42,08576,352
住居費12,69316,432
水道光熱費14,49021,919
家具・家事用品6,59612,265
服飾費3,3855,590
医療費8,64018,383
交通・通信費14,93527,768
教育費150
教養娯楽費15,49225,377
その他の消費支出
(美容、たばこ、小遣いなど)
30,95652,433
消費支出小計149,286256,521
支出総計161,933286,877
(単位:円)

夫婦のみ世帯は、住居費や水道光熱費といった固定費を2人で分担できるため、1人あたりの負担は軽減されます。生活費の見積もりをする際は、こうした世帯構成ごとの違いを踏まえて検討しましょう。

持ち家:単身16万円・夫婦のみ28万円

家計調査の定義上、「住居費」には家賃地代と設備修繕・維持費は含まれますが、住宅ローンの返済分や敷金、更新料は含まれません。それぞれの内訳は、下表のとおりです。

単身無職世帯夫婦のみ世帯
家賃地代5,0171,889
設備修繕・維持7,67614,543
(単位:円)

総務省の「住宅・土地統計調査」によると、高齢者のいる「夫婦のみ世帯」における持ち家率は87.6%です。単身無職世帯でも、67%が持ち家という調査結果でした。

どちらの世帯も住宅・土地統計調査の結果と家賃地代の少なさから、大半が持ち家であることがうかがえます。したがって、家計調査における生活費の目安は、持ち家に住む単身世帯で月16万円前後、夫婦のみ世帯で月28万円前後と推測されます。

なお、これらの金額には住宅ローンの返済額は含まれていません。そのため、住宅ローンが残っている場合は、返済額を上乗せして生活費を見積もる必要があります。持ち家であっても、住宅ローンの有無により実際の生活費の総額が大きく変わる点に注意しましょう。

住宅ローンがある場合の生活費については、後段の「老後の生活費はいつから貯めておくべき?」で詳しく解説しています。

賃貸:基本の生活費に加えて家賃分が2.5~7万円ほど増える

持ち家か賃貸かで生活費が大きく変わる理由の一つは、家賃です。総務省「住宅・土地統計調査」によると、全国の平均家賃は約5.9万円、公営住宅の公的賃貸は約2.5万円、民間の賃貸は6~7万円ほどと、住まいの形態によって家賃の振れ幅が大きいです。

住居の形態家賃平均額(単位/円)
公営24,961
都市再生機構(UR)・公社71,831
民営借家(木造)54,409
民営借家(非木造)68,548
給与住宅(借り上げの社宅)37,993

賃貸に入居する場合は、敷金や更新手数料も考慮が必要。老後生活を見据えてコンパクトな住宅に引っ越す方法もありますが、そのための初期費用や生活圏の変更が必要になることから、早めの検討をおすすめします。

参照元:

家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表| 政府統計の総合窓口家計調査 / 家計収支編 単身世帯 詳細結果表 | 政府統計の総合窓口令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果|総務省

生活費以外で老後に必要なお金

生活費以外で老後に必要なお金

老後には、日々の生活費以外にも以下のような支出も発生する場合があります。

必要なお金具体例総額の費用相場
家族への援助子どもや孫の学費、生活費50万円(中央値)
冠婚葬祭費家族や親戚の結婚式、葬式結婚式のご祝儀:1回3万円程度葬儀費用:118.5万円
自宅のリフォーム費用バリアフリー化281.9万円(世帯主が50代以上)
医療・介護費用介護、入院、老人ホーム入居約462万円
死後の準備(終活)費用お墓、身辺整理、遺言書の作成、司法書士や弁護士への依頼費用600万円~800万円程度

老後の備えでは、万が一の「死後の準備」だけでなく、「長生きリスク」にも備える必要があります。例えば、80歳までの生活費を想定して資金を準備していた場合、90歳まで生きれば10年間分の資金が不足する可能性があります。

また、「平均寿命までは資金がもつ」と考えていても、実際にはそれ以上長生きするケースも珍しくありません。老後の生活費は、誰にとっても予測が難しく、どこまで備えれば十分かは一概に言えないのが実情です。

だからこそ、予想外の出費や寿命の延びといった不確定要素にも対応できるよう、老後資金はできる限り余裕を持って準備しておくことが理想です。

老後の生活費は年金だけで足りないケースがほとんど

老後の生活費は年金だけで足りないケースがほとんど

老後の生活費は年金だけでまかなえるのか、不安に感じる方は多いのではないでしょうか。結論から言えば、「世帯構成や年齢にもよるが、年金だけでは不足するケースがほとんど」です。

ここからは、公的年金の平均支給額である15万円(単身無職世帯)、30万円(夫婦のみ世帯)を前提に、単身世帯と夫婦のみ世帯のそれぞれが年金だけで生活できるのかを検証していきます。

公的年金の平均支給額

公的年金は、国民年金と厚生年金に分けられます。それぞれの平均支給額を見ていきましょう。

国民年金:月5.7万円

厚生労働省年金局の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金(老齢基礎年金)受給者の平均年金月額は、2017年までの受給資格期間であった25年に達しているかどうかで大きく変わります。

受給資格期間平均年金月額
25年以上57,700円
25年未満20,087円

受給資格期間には、年金保険料の支払い期間だけでなく、猶予や減額により正規の保険料を納付していない期間も含まれます。なお、2017年に受給資格期間が10年以上になったことで年金の受給対象になった方も「25年以上」の扱いです。

仮に、国民年金を最長の40年間支払っていた場合、2025年度の月額支給額は69,308円です。国民全員が40年間保険料を納付しているわけではないため、実際の支給額は満額を下回る結果となっています。

厚生年金:月14.7万円

同資料「厚による厚生年金(老齢厚生年金)の平均支給額を見ていきましょう。厚生年金も受給資格期間の25年を境に金額が大きく変わります。

受給資格期間平均年金月額(老齢基礎年金を含む)
25年以上147,360円
25年未満65,102円

厚生年金は、給与額に比例して保険料が変わる仕組みです。したがって、仮に40年加入していた場合でも、上記の額を必ず受け取れるわけではありません。

平均標準報酬月額45.5万円で40年間就業した場合、厚生年金だけの平均支給月額は94,168円です。国民年金と合算した平均支給額は、163,476円となります。

将来の年金は、夫婦で受け取る年金の種類によって変わります。以下は、夫婦の加入している年金による、年金月額のパターン一覧です。いずれも、40年間年金を支払っていた場合ではありますが、老後のライフプランを検討する際の参考にしてください。

パターン年金月額
夫婦どちらも国民年金138,616円
(=69,308+69,308)
夫婦どちらも厚生年金326,952円
(=163,476+163,476)
夫婦どちらかが国民年金232,784円
(=69,308+163,476)
※国民年金:40年間支払っていた場合、厚生年金:平均標準報酬月額45.5万円で40年間就業した場合

参照元:

令和7年4月分からの年金額等について|日本年金機構令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 令和6年 12 月|厚生労働省年金局令和5年度の国民年金の加入・保険料納付状況を公表します|厚生労働省

【単身世帯】月15万円の年金生活はギリギリ

単身世帯の場合、年金だけでの生活はギリギリの状態です。

25年以上厚生年金を支払っていた場合の月額支給額は、平均で約15万円です。単身無職世帯の平均生活費は149,286円なので、ここに保険料や税金といった非消費支出を支払うと家計は赤字になってしまいます

赤字の状態が続くと、不測の事態が起きたときの支払が難しくなったり、保有資産を取り崩すことで精神的な不安を抱えることにもつながりかねません。そうした事態を避けるために、普段から少しずつでも支出を見直しておく必要があります。

特に削減を検討しやすい費目としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 交通・通信費
  • 教育費
  • 教養娯楽費
  • その他の消費支出(美容、たばこ、小遣いなど)

また、賃貸住宅に住んでいる場合は、住居費を抑えるための引っ越しも選択肢のひとつです。2019年に行われた「全国家計構造調査」によると、単身無職世帯の支払家賃は、民営と公営で2.6倍の差があることがわかっています。

ただし、家賃は地域や広さ、周囲の環境などさまざまな要素に左右されるため、一概に「引っ越しが良い」とは言い切れません。

とはいえ、家計に占める住居費の負担が重いと感じている場合には、公営住宅の利用や家賃の安い地域への移住を含め、生活の見直しを前向きに検討することが重要です。

【夫婦のみ世帯】月30万円の年金生活は年齢次第

夫婦とも25年以上厚生年金を支払っていた場合、世帯あたり30万円ほどの年金が見込まれます。これを前提に、世帯主の年齢階層別で赤字・黒字を見てみましょう。

なお、本記事で想定しているのは「夫婦とも40年間働いていて、厚生年金を支払っていた場合」です。夫婦どちらかが働いている、もしくはどちらかが国民年金のみの受給者である場合は、金額が変わります。

世帯主が65~74歳の場合は赤字

世帯主が65〜69歳、70〜74歳の夫婦における生活費の総支出額は、以下のとおりです。

世帯主の年齢総支出額
65~69歳352,686円
70~74歳303,839円

年金支給額は約30万円なので赤字です。したがって、生活費のどこかを削減する必要があります。

生活費の中で、特に多い出費を以下に挙げてみました。

  • 食費
  • 服飾費
  • 医療費
  • 交通・通信費
  • 教養娯楽費

年金だけで生活するとして、退職して時間ができたことで増えた教養娯楽費は、真っ先に削減対象にできる部分です。

しかし「自分たちが豊かに暮らすために使いたい」「相続で揉めるならば、生きているうちに使い切ってしまおう」という考えから、少しずつ貯金を取り崩して、自分たちの生活を豊かにしていく考え方もあります。

「家計の金融行動に関する世論調査」でも「自分たちの人生を楽しみたいので、財産を使い切りたい」と答えた方は、全体の3割います。そのため、豊かな生活を優先したい場合は、無理に削る必要はありません

世帯主が75歳以上の場合は1万円ほど黒字

世帯主が75歳以上の場合、年金収入などにより収支はおおむね安定しており、75~79歳の総支出は約29万円、80~84歳では約26万円とやや減少傾向にあります。特に85歳以上になると、年金だけでもわずかながら黒字になるケースも見られます。

このように、現状では大きな生活費の削減を意識しなくても収支が保たれる場合が多いものの、注意が必要です。突発的な医療費や住宅のリフォーム費用など、まとまった支出が発生した場合には、一気に資金が不足するおそれがあります。

より余裕のある老後生活を実現したい場合は、比較的割合の大きい食費やその他の消費支出を見直すことで、さらなるゆとりを生み出すことができるでしょう。

老後の生活費はいつから貯めておくべき?

老後の生活費はいつから貯めておくべき?

老後には時間の余裕が生まれるため、現役時代にできなかったことに挑戦したいと考える方も少なくありません。

そうした「やりたかったこと」を実現するには、30代頃から老後資金を準備しておくことが大切です。早いうちから備え始めることで、毎月の積立負担も抑えやすくなります。

ここからは、厚生労働省「簡易生命表」(2023年)の平均寿命を前提に、老後に必要となる資金額と、その不足分を補うための準備期間について解説します。

平均寿命まで生きた場合に想定される生活費の不足額ををもとに、何歳から資金準備を始めるべきかを考えていきましょう。

平均寿命まで生きた場合は約752万円不足

厚生労働省が2023年に出した「簡易生命表」によれば、平均寿命は男性81.09年、女性87.14年です。仮に夫婦とも87.14歳まで生きた場合、65歳からの約25年間で総額752万円不足する計算になります。

これはあくまで「生活費」の不足額であり、医療費や住宅のリフォーム、葬儀費用といった突発的な支出を含めれば、さらに多くの資金が必要になる可能性があります。

加えて、住宅ローンの有無も老後資金に大きく影響します。国土交通省住宅局「住宅市場動向調査報告書」によると、新築注文住宅における住宅ローンの返済額平均は年間155.2万円、期間の平均は32.7年、購入時の世帯主の年齢 平均は44.8歳です。

仮に44歳で住宅ローンを組んだ場合、65歳を過ぎても約12年間返済が続くことになり、老後に必要な住宅ローン返済額は総額で約1,862万円にのぼります。

このように、752万円という不足額はあくまで「最低限の生活費」にすぎず、住宅ローンの残債や想定外の支出まで含めて考えると、より多くの資金を準備しておくことが望ましいでしょう。

項目データ
年間の平均返済額155.2万円
平均返済期間32.7年
購入時の平均年齢44.8歳
65歳から支払う年数12年
65歳からの返済額18,624,000円

老後は貯蓄や手持ちのお金を使い切るスタンスであったとしても、住宅ローンの支払い分に関しては、何らかの形で補てんが必要といえるでしょう。

参照元:

令和5年簡易生命表の概況|厚生労働省令和5年度 住宅市場動向調査報告書|国土交通省 住宅局

750万円を貯めるには30代からがおすすめ

65歳からの老後生活費の不足分の、約752万円が目安となります。不足分を貯めるときの必要年数から逆算して、毎月貯蓄すべき金額と年数を考えましょう。

年数1年あたりの貯蓄額1ヵ月あたりの貯蓄額
10年75万円62,500円
20年37.6万円31,333円
30年25.1万円20,917円

貯蓄はできるだけ早く始めることが重要です。早いうちからコツコツ積み立てれば、1ヵ月あたりの捻出額が抑えられ、家計の負担が軽くなります。

たとえば、65歳からが老後とし、30歳代から準備を始める場合、毎月2万円程度の積立で老後資金を用意することが可能です。無理のない金額からスタートできるため、長期的な計画としても現実的です。

理想的な貯蓄額は「給料の2~3割程度」といわれていますが、金融広報中央委員会の調査によると、実際には手取り収入からの貯蓄割合の平均は11%程度にとどまっています。

そのため、まずは給与額の1割程度から始め、ライフステージや収入の増加に応じて、貯蓄や投資への比率を徐々に高めていくのが現実的なアプローチです。

なお、上記のシミュレーションは、利息を考慮しておりません。

普通預金や定期預金でもわずかながら利息がつきますし、投資による運用を行えば、より短期間で資産を増やせる可能性が高まるので、資金の用途やリスク許容度に応じて、預貯金と投資を組み合わせた運用を検討してみましょう。

参照元:

各種分類別データ(令和5年) ― 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)|金融広報中央委員会「知るぽると」

【今すぐできる】効率良く老後の生活費を作る5つの方法

【今すぐできる】効率良く老後の生活費を作る5つの方法

老後資金は早めに準備しておいたほうが良いものの、「もう手遅れなのかも…」と不安を感じている方もいるかもしれません。しかし、50代からでも老後資金の準備は十分間に合います。

とはいえ、若い世代に比べて準備に使える時間は限られているため、効率的な方法を選ぶことが重要です。そこで今回は、老後が間近に迫っていても実践できる、効果的な資金準備の方法を5つ紹介します。

  • 固定費を削減する
  • 独立した子どもの生活費を負担しない
  • iDeCoやNISAを活用する
  • 個人年金保険に加入する
  • 年金の繰り下げ受給をする

すぐできることも紹介するので、今から少しずつ取り組んでいきましょう。

固定費を削減する

老後の生活費を確保するためには、まずは毎月の固定費を見直すことが基本です。中でも節約効果が大きいのが、次のような支出です。

不要なサブスクリプションサービスの解約

意外と見落としがちなのが、使っていないサブスクリプションサービスの存在です。以下のような項目は、利用頻度を見直し、不要であれば解約を検討しましょう。

  • 動画配信サービス(例:Netflix、Amazonプライムなど)
  • 電子書籍・漫画の読み放題サービス
  • 有料放送・有料会員制サイト
  • インターネットサービスの有料会員登録

月額・年額で見れば大きな差になります。使っていないサービスにお金を払い続けていないか、一度棚卸しを行いましょう。

通信費の見直し

スマホの料金プランやインターネットプロバイダも、定期的に見直すことで支出を抑えることができます。乗り換えやプラン変更によって、同じサービスでも月々の負担が軽くなることがあります。

各種保険の見直し

保険料も固定費の中で大きな割合を占めています。特に、以下のような点に注意して見直すと節約につながります。

  • 火災保険:必要な補償内容や特約に絞る
  • 死亡保険:子どもが独立しているなら保険金額を減額
  • 古い契約:契約当時と家族構成・ライフプランが変わっていれば見直しを

加入中の保険をリストアップし、現在の生活スタイルに合っているか確認しましょう。不要な特約や過剰な補償がある場合は、解約や見直しをすることで、保険料の削減が可能です。

専門家のアドバイスを活用する

保険や家計の見直しに不安がある方は、ファイナンシャルプランナーへの相談もおすすめです。

たとえば「セゾンのマネナビ」なら、特定の金融機関に属さないファイナンシャルプランナーに、無料でライフプランや保険の相談が可能です。効率よく見直しを進めるために、ぜひ活用してみてください。

独立した子どもの生活費を負担しない

老後の生活費を捻出するために、すでに独立した子どもの生活費を親が負担し続けるのを止めましょう。

社会人になった子どものスマホ代や税金などを、大学時代の延長でなんとなく支払い続けているケースもあるでしょう。しかし、これらの支出を子ども自身に任せるだけで、毎月数万円も支出を抑えられます。

生活費の負担が軽減されるだけでなく、子どもにとっても経済的な自立を促す良い機会になります。浮いた分の資金は、老後の生活費や予備資金として活用しましょう。

iDeCoやNISAを活用する

保険料や通信費で削減できたお金は、iDeCoやNISAを使って資産運用すると効率的です。金融庁の調査でも、2024年の6月から1年間で、NISAを始めた50代の割合は22%増加しています

下表は、iDeCoとNISAの特徴です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)NISA(少額投資非課税制度)
・私的年金制度
・積み立てたお金を運用し、年金を増やせる
・60歳にならないとおろせないので、将来の年金の足しにできる
・運用益は非課税で、掛け金が全額所得控除の対象になる
・積み立てたお金を運用する
・好きなタイミングでおろせるので、老後資金だけではなく、急にお金が入り用になったときも使える

参考として、運用利回り5%の投資で月2万円ずつ積み立てて運用した場合のシミュレーションを紹介します。

5年運用10年運用
元金120万円240万円
運用益16万円71万円
総額136万円311万円

参照元:

つみたてシミュレーター|金融庁

iDeCo・NISAともに、上記の運用益非課税です。本来であれば、復興特別所得税を含む20.315%の所得税が課税されるため、運用益を全額受け取れるiDeCoやNISAは効率の良い資産形成方法です。

加えて、iDeCoは掛金が全額所得控除の対象とります。将来の年金対策をしつつ節税もできる点が、iDeCoの魅力です。

しかし、iDeCo・NISAはどちらも資産を運用する商品です。経済状況や世界情勢によって、元本割れの可能性があります。また、利回りもずっと同じとは限りません。想定よりも運用益が低くなる可能性があることは、頭に置いておきましょう。

個人年金保険に加入する

iDeCoやNISAに加えて、老後資金の準備手段として「個人年金保険」に加入する方法もあります。個人年金保険とは、貯蓄性を備えた保険商品で、あらかじめ決めた年齢や期間に年金として受け取れるのが特徴です。

「年金を上乗せしたい」「一定期間にわたって計画的に年金を受け取りたい」と考える方にとって、有力な選択肢の一つとなるでしょう。保険料を支払いながら、老後資金を着実に積み立てることができます。

個人年金保険は、年金の受取期間に応じて以下の3つのタイプに分かれます。

  • 確定年金
    契約時に定めた一定期間だけ年金を受け取れる
  • 有期年金
    支払開始時から、存命中の一定期間だけ年金を受け取れる
  • 終身年金
    支払開始時から亡くなるまで年金を受け取れる

個人年金保険の中には、保険料を資産運用に充てることで将来の年金額を増やせる「変額個人年金保険」もあります。運用成績によって年金額が増える一方で、インフレなどによりお金の価値が変動したり、中途解約時に元本割れのリスクがある点には注意が必要です。

また、受給期間を自由に設定できるタイプであれば、老後の資金が不足しやすい時期に合わせて年金を受け取るといった柔軟な設計が可能です。

ただし、受取額が契約時に固定されているタイプの場合、将来インフレが進行すると実質的な価値が目減りするリスクがあります。

いずれのタイプにもメリットとデメリットがあるため、複数の保険商品を比較検討したうえで、自身のライフプランやリスク許容度に合ったものを選ぶことが大切です。

年金の繰り下げ受給をする

老後の生活費を作る方法として、年金の繰り下げ受給もあります。繰り下げ受給とは、本来は65歳から受給となる年金の受給開始期間を遅らせることです。繰り下げ受給を行うと、1ヵ月あたりの年金額が0.7%増加します。

例えば65歳になっても働き続ける場合、働いている間は年金を受け取らず繰り下げ受給することで、0.7% × 繰り下げ月数分、年金額が増加します

下表は、繰り下げ受給を選択した場合に受け取れる、年金額の比較表です。本記事では、2025年現在の満額である「69,308円」が支給されるとして計算しています。

繰り下げ期間増加率1ヵ月あたりの支給額1ヵ月あたりの差額
なし0%69,308円0円
1年(12ヵ月)8.4%75,129円5,821円
5年(60ヵ月)42.0%98,417円29,109円
10年(120ヵ月)84.0%127,526円58,218円
※1円未満切り捨て

65歳を過ぎても働いている場合は、繰り下げ受給の活用も有力な選択肢です。老後の初期に年金や貯蓄で生活費をまかなえる見込みがあるなら、年金の受給を遅らせることで、中期~後期の年金額を増やせるメリットがあります。

ただし、将来の健康状態や寿命は予測が難しいため、労働収入の見通しや自分の体調も踏まえて慎重に判断することが大切です。

老後の生活費が足りないときにできること3選

老後の生活費が足りないときにできること3選

老後の生活費は、しっかり準備していても足りなくなることがあります。想定外の出来事や長寿化の影響で、予想以上に支出が増えるケースも少なくありません。そんなときに備えて、万一生活費が不足した際に取れる対処法を3つ紹介します。

  • 支出を見直す
  • 再雇用や副業を行う
  • 持ち家を活用して老後資金を確保する方法

順番に見ていきましょう。

支出を見直す

老後の生活費が足りないと感じたときは、真っ先に支出を見直してください。とくに固定費の削減は効果が大きく、生活のゆとりを保つためにも重要です。次の3点を意識して見直してみてください。

  • 水道光熱費、通信費、保険料などの固定費を見直す
  • 固定資産税や家賃が重荷になっている場合は、住み替えや子どもとの同居を検討する
  • 食費や保険内容が現在の生活に対して過剰でないか確認する

支出の見直しは、老後の暮らしの質を保ちながら行うことがポイントです。

再雇用や副業を行う

老後の生活費を補う手段として、定年後の再雇用や副業を検討するのも一案です。たとえば、再雇用により収入が増えれば、年金だけでは足りない生活費の補てんが可能です。

働き方によっては、年金を受け取りながら収入を得ることも可能です。たとえば、勤務時間を社会保険の加入対象外に抑えることで、保険料の負担を避けつつ働けます。

また、「退職後は時間に縛られたくない」と考える方には、在宅でできる副業選択肢となります。

業務内容によっては、現役時代に培ったスキルを活かせる場合もあるため、自分に合った働き方を探してみるのがおすすめです。制度面(社会保険や年金の支給要件など)も確認したうえで、無理のない範囲で収入を得る工夫をしましょう。

持ち家を活用して老後資金を確保する方法

老後の生活資金に不安がある場合は、持ち家を活用して資金を確保する方法もあります。自宅に住み続けながら資金を得られるしくみもあり、選択肢のひとつとして検討してみる価値があります。

融資型(不動産担保ローン・リバースモーゲージ)

いずれも、持ち家を担保に金融機関から資金を借りる方法です。

  • 不動産担保ローン
    持ち家を担保に一括で資金を借り入れ、元本と利息を毎月返済します。自由度が高く、さまざまな用途に対応できますが、返済負担への配慮が必要です。
  • リバースモーゲージ
    自宅に住み続けながら資金を借りられる仕組みです。生存中は利息のみを返済し、元本は亡くなった後に不動産を売却して返済します。将来の不動産評価額の変動により、返済額に影響が出る可能性もあります。

売却型(リースバック)

リースバックは、自宅をいったん売却してまとまった資金を得たうえで、売却先と賃貸契約を結び、同じ家に住み続けられる仕組みです。

ローン返済の負担はなくなりますが、賃料(家賃)の支払いが発生します。資金調達と住み慣れた家での生活を両立できる点が大きなメリットです。将来的に買い戻せる契約もあります。

「セゾンのリースバック」も選択肢に

「セゾンのリースバック」は、老後資金の確保や住宅ローン返済の負担軽減など、さまざまな目的で活用されています。

「生活にゆとりができた」「安心して住み続けられるようになった」といったご利用者の声もあり、老後の生活資金に不安がある方にとって有力な選択肢のひとつです。

セゾンのリースバックの詳細はこちら

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リアルな老後生活費を把握して老後の不安を解消しよう

リアルな老後生活費を把握して老後の不安を解消しよう

老後の生活費は、65〜74歳までの世帯で3万円以上の赤字という試算があります。年金だけでは生活費をまかなうのが難しく、特に食費や保険料、家賃といった固定費が重くのしかかるためです。

さらに住宅ローンが残っている場合は、支出が一層増加する可能性があります。

こうした事態に備えるには、現役時代から老後資金を計画的に準備しておくことが重要です。

たとえば以下のような制度や方法を活用しましょう。

  • iDeCoやNISAを活用した資産運用
  • 個人年金保険による積立
  • 年金の繰り下げ受給による受取額の増加

万一、準備していた資金が不足した場合でも、対応策はいくつかあります。

  • 支出の見直し
  • 短時間勤務などで収入を得る
  • 自宅を活用して資金化する(例:リースバック)

なかでも「セゾンのリースバック」は、持ち家に住み続けながら資金を確保でき、将来的な買い戻しも可能なため、「住まいを手放したくない」という方にとっても選択肢となります。

老後の不安を減らすには、まず「自分にとってどれくらいの生活費が必要か」を把握し、早めに備えることが大切です。迷ったときは、ファイナンシャルプランナーへの相談や、老後相談窓口の活用も検討しましょう。

今から少しずつ行動を始めることで、安心できる老後を迎える準備が整います。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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