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年金は物価スライドでどう変わる?2024年度の物価変動率と2025年の年金額改定

年金は物価スライドでどう変わる?2024年度の物価変動率と2025年の年金額改定
辻本 剛士

執筆者

独立系ファイナンシャルプランナー・金融特化ライター

辻本 剛士

大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職。在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務、セミナーを中心に活動中。

老齢基礎年金などの年金額は、物価や賃金の変動に応じて毎年見直しが行われています。2024年度も物価スライドに基づき年金額が改定され、2025年度の年金額もすでに決定されています。

しかし、「なぜ年金が増えたり減ったりするのか」「物価とどう関係しているのか」といった仕組みは、あまり知られていないのが実情です。

この記事では、2024年度の状況を振り返りつつ、最新の2025年度の年金額改定の内容を詳しく解説します。併せて、老後生活に備えるための具体的な対策や老後資金確保の一助となるリースバックについても紹介します。

これから老後生活の準備や見直しを検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

セゾンのリースバック
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2025年度の年金額は前年度1.9%増額

2025年度の年金額は前年度1.9%増額

厚生労働省が公表した2025年度の年金額は、以下のとおりです。

月額年額
老齢基礎年金(満額)69,308円831,696円
厚生年金(夫婦2人のモデル世帯)232,784円2,793,408円
※いずれも1956年4月2日以後生まれの方が対象
(出典:令和7年4月分からの年金額等について|日本年金機構

老齢基礎年金は、国民年金の保険料を納付した月数に応じて受給額が決まります。

原則として、20歳から60歳までの40年間(480ヵ月)すべて保険料を納めた場合に「満額」が支給されます。

2024年度の老齢基礎年金は、満額で年額816,000円だったため、2025年度は1.9%の増額です。厚生年金についても同様に引き上げました。

ただし、金額上は増額されているものの、2024年度の物価変動率には及ばず、「生活が楽になった実感はない」と感じる方も少なくありません。

このように毎年の年金額は物価や賃金の動向を反映して改定されます。

そもそも物価スライドとは?

そもそも物価スライドとは?

年金は一度決まった金額がずっと続くわけではなく、物価や賃金の変動に応じて毎年見直される仕組みになっています。この調整の基本となるのが「物価スライド」と呼ばれる制度です。

物価スライドとは、物価上昇または賃金上昇に応じて年金額を引き上げる仕組みです。例えば物価が2%上昇した場合、同じだけ年金額を上げることで、年金受給者の生活水準が維持されるように工夫されています。

ただし、実際にはこの調整がそのまま反映されるとは限りません。年金制度の持続性を保つために「マクロ経済スライド」という仕組みが働くからです。

マクロ経済スライドとは、現役世代の減少や平均寿命の延びなどの社会情勢の変化を考慮し、年金財政の安定化のために年金の伸びを自動的に調整する仕組みです。

内容概要
物価スライド物価または賃金の変動に応じて年金額を調整
マクロ経済スライド年金の増額率を現役世代の人口減などを考慮して抑制

実際の年金改定の流れは以下のとおりです。

  1. 物価変動率または名目手取り賃金変動率の確認
  2. 上記のうち低いほうの変動率を基準に、マクロ経済スライドによる調整を実施
  3. 最終的な年金改定率を算出

物価スライドは年金生活を守るための仕組みですが、実際の調整には「マクロ経済スライド」も関わっており、年金額の変化には複雑な背景があります。

2024年度の物価変動率は2.7%

2024年度の物価変動率は2.7%

2025年度の年金額改定の基準のひとつとなったのが、2025年4月に総務省が発表した「2020年基準消費者物価指数(CPI)」です。このデータによると、2024年度の物価変動率は前年比+2.7%となりました。

これは前年に続くインフレ傾向を示すものであり、特に以下のような生活に直結する品目で値上がりが目立っています。

品目上昇率
水道光熱7.8%
生鮮食品10.5%

また、より細かい品目を見てみると、日々の買い物で値上がりを実感しやすい項目が多数あります。

品目上昇率
電気代13.1%
チョコレート17.7%
うるち米47.8%

こうした上昇率からもわかるように、食品やエネルギーといった日常の出費に欠かせない項目で物価が大きく上がっており、特に年金生活者にとっては深刻な負担増となっています。

年金額は3年連続上昇

近年の物価上昇に伴い、年金額も増加傾向にあります。直近では3年連続で年金額が引き上げられており、制度上の調整が行われていることがわかります。

以下は、満額時における老齢基礎年金の推移です。

年度年金額(満額)
2020年781,700円
2021年780,900円
2022年777,800円
2023年795,000円
2024年816,000円
参考元:小田原市 よくある質問と回答

数字上は年金額が増えているように見えますが、物価の上昇率が年金の伸びを上回る場合、実質的な購買力の低下につながります。

年金額は実質0.4%目減り

ここ数年の年金額は少しずつ増えているものの、実際の生活では「生活自体は苦しくなっている」と感じる方も多いのではないでしょうか。2025年度の年金額は1.9%増加しましたが、実質的には0.4%の目減りが起きています。

これは、年金の改定が物価や賃金の動きだけでなく「マクロ経済スライド」という制度上の調整も受けるためです。

2025年度に使われた改定指標は、以下のとおりです。

指標上昇率
物価変動率(消費者物価指数)+2.7%
名目手取り賃金変動率+2.3%
マクロ経済スライド調整率▲0.4%
実際の年金改定率+1.9%

年金の改定率は「物価変動率」と「名目手取り賃金変動率」のうち、低いほうの率を基準に決められます。今回は物価変動率が2.7%だった一方で、賃金変動率は2.3%に留まったため、後者の2.3%がベースとされました。

さらに、制度の持続性を確保するために「マクロ経済スライド」による調整が加えられ、0.4%分の抑制が適用されました。その結果、実際の年金改定率は1.9%となり、物価上昇との差である0.4%分だけ、実質的に年金の価値が目減りした形となります。

なお、年金の増額や物価スライドは、将来の経済情勢や財政状況により抑制される場合もあります。

国民年金保険料も上昇

年金制度における負担は、受給者だけでなく現役世代にも及んでいます。実際、国民年金保険料も上昇傾向が続いており、今後も引き上げが続く可能性があります。

以下は、直近の国民年金保険料の推移です。

年度月額保険料
2024年度16,980円
2025年度17,510円
2026年度17,920円
参考元:国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?|日本年金機構
参考元:【令和7年4月1日発送】令和7年度の国民年金保険料納付書をお送りします リーフレット(PDF)|日本年金機構

2025年度は月額17,510円となり、前年度から月530円の増額です。

なお、国民年金保険料には2年前納制度があるため、翌年度にあたる2026年度分の金額もすでに公表されています。2026年度は月額17,920円と、2025年度よりも410円も引き上げられています。

国民年金保険料は、2004年の制度改正により2017年度まで毎年280円ずつ引き上げられましたが、2018年度以降は物価や賃金の変動に応じて調整される仕組みへ移行しています。

こうした保険料の上昇は、将来の年金給付を支える現役世代の負担増につながります。少子高齢化が進み、物価上昇も続くなか、年金制度の持続性に対する関心も高まっています。

今後もインフレは続く?

今後もインフレは続く?

現在の物価上昇は、原材料費や人件費の上昇によるコストプッシュ型インフレが主な要因です。加えて、円安の影響で輸入品の価格が上がり、生活必需品の値上がりが続いています。

短期的に物価が落ち着く場面があってもエネルギーや労働コストの上昇は継続しており、中長期的にはインフレが続く可能性があるでしょう。たとえ賃金が上がっても、物価上昇のペースが上回れば、実質的な生活水準は低下することになります。

日本銀行のレポート「経済・物価情勢の展望(2025年4月)」によると、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は以下のように推移する見通しです。

年度前年比
2025年度+2%程度
2026年+1%台後半
2027年+2%程度

政府も一定の物価上昇が続く前提で政策を進めており、今後も家計への影響は続くと予想されます。

インフレ時代の老後資金対策

インフレ時代の老後資金対策

物価の上昇が続くなか、老後に向けた資金対策はこれまで以上に重要になっています。かつてのように「年金だけで安心」とはいえない時代に入り、将来の生活費に備えるための工夫が必要です。

インフレ時代の主な老後資金対策としては、以下の方法が挙げられます。

  • 老後も可能な限り働く
  • 年金の受給開始時期を遅らせる
  • 家計の見直しを図る
  • 資産運用を活用する

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

老後も可能な限り働く

インフレ下の老後生活では、少しでも収入源を確保することが家計の安定につながります。特に有効な対策は、定年後も健康状態や体力に合わせて働き続けることです。

近年は、企業による再雇用制度や、シニア世代を対象とした短時間勤務の就労支援制度など、60歳以降の働き方を支援する仕組みが整ってきています。

週に2〜3日程度の就労であっても、月数万円の収入が得られれば、年金だけでは不足しがちな生活費の補填に貢献します。また、働き続けることで社会とのつながりや生活のリズムを保てることも大きなメリットです。

一方で、収入が一定額を超えると年金が一部または全部が支給停止となる「在職老齢年金」や、体力・健康面への配慮も必要です。

年金の受給開始時期を遅らせる

老後資金を確保する手段のひとつとして、年金の繰り下げ受給が注目されています。繰り下げ受給とは、年金の受給開始を遅らせることで将来受け取る年金額を増やせる制度です。

年金の受給開始を1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ受給額が増え、最大で75歳まで繰り下げると増額率は最大84.0%になります(参考元:年金の繰下げ受給|日本年金機構)。

繰り下げ期間増額率
1年(12ヵ月)8.4%(=0.7%×12)
5年(60ヵ月)42.0%(=0.7%×60)
10年(120ヵ月)84.0%(=0.7%×120)

物価上昇率が2.7%だった2024年度の事例と比較すると、1年間繰り下げた場合の増額率はインフレ率を上回っており、年金の購買力を維持・向上させる効果が期待できます。

一方で、受給を遅らせる期間中の生活費は自分の貯蓄や収入などで賄う必要があるため、繰り下げ期間中の資金計画が重要です。

家計の見直しを図る

日々の支出を見直して、無駄な出費を削減することも重要な対策です。とくに効果的なのは、通信費や保険料、サブスクリプションサービスといった固定費の整理です。

実際に固定費を見直すだけで、毎月1万円以上の支出削減につながるケースもあります。

ただし、家計を見直す際は無理なく生活できる範囲に留めることが大切です。過度な節約は、生活の質を下げたりストレスにつながったりすることもあります。

また、保険を見直す際は保障内容を十分に理解し、将来必要な保障を把握したうえで行いましょう。

資産運用を活用する

インフレが続く環境では、預金だけに頼ると資産の実質的な価値が目減りしてしまうリスクがあります。そのため、老後の資産を守るためには、インフレに強い金融資産を活用した資産運用も検討すべき対策のひとつです。

特に、NISAやiDeCoなど、税制優遇のある制度を活用した長期・積立・分散投資は、比較的リスクを抑えながら始めやすい方法です。

インフレに強いとされる代表的な金融資産には、以下のようなものがあります。

  • 株式
  • 投資信託
  • 不動産
  • 金(ゴールド) など

上記の資産は、一般的にインフレ局面で価値が上昇しやすい傾向があるため、長期的な対策として一定の効果が期待できます。

ただし、資産運用には価格変動による元本割れのリスクが伴います。特に高齢者の方は生活資金に余裕をもたせる必要があるため、無理のない範囲で、ご自身が許容できるリスクを理解したうえで行いましょう。

年金だけでは不安な方はリースバックが有効

年金だけでは不安な方はリースバックが有効

さまざまな対策を講じても「年金だけでは老後の生活が不安」という方には、リースバックの活用も選択肢となります。

リースバックとは

リースバックとは、自宅をリースバック会社に売却し、同時に賃貸借契約を結ぶことで売却後もそのまま住み続けられる仕組みです。一時的にまとまった資金を得ながら、住み慣れた家を離れずに生活できるメリットがあります。

リースバックにより得た資金は生活費や医療費に充てつつ、住宅の所有権を手放す代わりに家賃を支払う形でその家に住み続けることになります。

実際にセゾンのリースバックでは、住宅ローン残高が2,300万円残っている世帯でも、2,500万円で売却した事例があります。持ち家を売ることで老後資金に余裕が生まれ、万が一の出費にも対応しやすくなるでしょう。

セゾンのリースバックでは、ご希望やご事情に合わせて柔軟に対応しております。まずはご相談ください。

リースバックに関するよくある質問(Q&A)

リースバックに関して多く寄せられる疑問について、Q&A形式でご紹介します。

リースバックには手数料はかかりますか?

セゾンのリースバックでは仲介手数料はかかりませんが、契約に伴う諸費用(敷金・保証料など)が発生する場合があります。詳細は事前の見積もり段階でご確認ください。

家賃はどのように決まりますか?

売却価格や周辺の家賃相場、物件の状態などを元に、セゾンファンデックスと協議のうえで家賃が決定されます。一般的には、売却価格に対する一定の利回りから算出されることが多いですが、具体的な条件は個別のケースによります。

売却後、固定資産税の支払いはどうなりますか?

売却により自宅の所有権がセゾンファンデックスに移るため、固定資産税の支払い義務はなくなります。ただし、家賃の支払いが新たに発生するため、トータルでの支出バランスは事前に確認しておくことが大切です。

安心した老後生活は早めの対策が大事

2025年度の年金額は、老齢基礎年金(満額)が月額69,308円(年額831,696円)と発表され、3年連続での引き上げとなりました。

一見すると年金額は増えたように見えますが、実際にはマクロ経済スライドの調整が入るため、2025年度も実質的には0.4%の目減りが起きています。今後も政府は一定の物価上昇が続く前提で政策を進めており、家計への影響は長期にわたって続く可能性があります。

そのため、これからの老後生活を安定させるには老後も可能な限り働いたり、資産運用を活用したりするなどの対策が求められます。

「年金だけでは老後生活が不安」という方は、自宅に住みながら資金確保ができる「リースバック」の活用も視野に入れるとよいでしょう。

セゾンのリースバックであれば、専門スタッフによる無料相談と丁寧な対応で、初めての方でも安心して手続きが進められます。

インフレや制度の変化に備えるためにも、老後資金対策は早めに始めることが重要です。今のうちから自分に合った備えを検討しておきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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