リースバック契約では、所有者がリースバック会社に不動産を売却し売却金を受け取った後、家賃(リース料)を払うことで、その物件に住み続けられます。リースバックの利用に関心のある方であれば、契約の流れについて知りたいのではないでしょうか。
このコラムではリースバック契約の仕組みや手続きの流れ、メリット、注意点について解説します。相談からリースバック終了まで一連の流れが把握でき、納得したうえで始められるでしょう。
この記事を読んでわかること
- リースバック契約の基本的な流れは「リースバック会社への相談」「簡易査定」「現地調査」「契約条件の決定」「契約の締結」「契約の成立」
- リースバックのメリットは「コストの負担減」「現金化が早い」「売却後も住める」「将来買い戻せるケースもある」
- 注意点は「信頼できる会社を選ぶ」「相続人と相談する」「重要事項を確認する」「オーバーローンでは利用できない」「譲渡課税が発生するケースもある」「将来の買い戻しを検討する」
リースバックの基本的な仕組みについて
リースバックを検討中の方であれば、「通常の売却とどう違うのか」「何年住めるのか」と気になることがたくさんあると思います。はじめにリースバックの仕組みやリバースモーゲージとの違いについて解説しましょう。
リースバックとは?
リースバックとは老後資金や住宅ローンの返済資金などが必要な時に、最短1週間程度で現金化できる制度です。不動産を用いてお金を準備する方法で、主に高齢者向けのサービスとなります。
少子高齢化を背景に年金だけでは生活ができる保障はなくなり、どのように生活費を確保すべきか悩まれている方もいるのではないでしょうか。リースバックを活用すれば、必要なタイミングでお金を準備できるため、より有意義な生活を送れるでしょう。
また新型コロナウイルスによる収入減少で住宅ローンの返済が厳しくなった場合などにも、リースバックの売却代金で返済が可能です。
対象の物件は戸建てやマンション、事務所、オフィスビルなどで、リースバック会社によって異なり、対象のエリアもさまざまです。全国対応のところもあれば、大都市圏限定の会社もあります。
リースバックの仕組み
リースバックは不動産の所有者とリースバック会社間でやり取りをします。所有者がリースバック会社と売買契約を結んだうえで不動産を売却。元の所有者は原則一括で売却代金を受け取ります。そしてリースバック会社と賃貸借契約を結び、家賃(リース料)を払うことで、その物件に賃借人としてそのまま住み続けることが可能になります。
まとまった資金を受け取りながらも転居することなく愛着のある自宅に住み続けられるため、利用者にとっては使い勝手の良い制度となります。
リースバックとリバースモーゲージの違い
リースバックとリバースモーゲージはどちらも不動産を活用した資金調達方法ですが、仕組みは異なります。
リバースモーゲージは不動産を担保に金融機関からお金を借りることです。金融機関のほかに、都道府県の社会福祉協議会も福祉サービスの一環として扱っています。
融資は年金のように定期的に受けられる方法や一括で受け取る方法など、さまざまです。生存中の返済は利息のみ、もしくは生存中の返済は不要としているところもあり、毎月の負担を軽減できるでしょう。死亡後に不動産を売却することで元金、もしくは元金と利息を返済します。
利用できる年齢や物件の条件などは運営先によって異なるため、残されるご家族の負担も考えて慎重に決めましょう。
リースバックを利用するメリットとデメリット
リースバックは「すぐにお金を準備できる」「引っ越しが不要」など魅力的な制度です。一方で家賃の支払い義務が生じるため、「リースバックしなければ良かった」と後悔するかもしれません。ここではリースバックのメリットとデメリットを学んでいきましょう。
リースバックのメリット
リースバックには以下のようなメリットがあります。
- コストの負担が少なくなる
- すぐに現金化できる
- 売却後もそのまま住み続けられる
- 将来買い戻せるケースもある
自宅をリースバックすることで所有権はリースバック会社に移転します。そのため不動産所有者に支払い義務がある固定資産税や都市計画税は支払う必要がありません。基本的に管理費や修繕費なども不要です。
さらに不動産を所有すると、価値の下落や売買のタイミング、住宅ローンの金利上昇など、さまざまな心配事が増えてしまいます。リースバックによりそのような不安が軽減されるのもメリットです。
リースバックの査定から契約・決済までは最短1週間程でできます。老後資金や借金返済など、急を要する時にでもすぐにお金を用意できるのは安心でしょう。
加えて売却後は同じ不動産にそのまま住み続けられるため、引っ越し手続きや子どもの学区変更、通勤手段の変更など、生活環境を変える必要はありません。
契約内容によっては将来自宅を買い戻せる「買い戻し特約」を付加できます。条件があるため、確認したうえで利用しましょう。
リースバックのデメリット
リースバックには以下のようなデメリットもあります。
- 家賃が発生する
- ずっと住み続けられるわけではない
- 自宅が資産ではなくなる
- 売却価格が相場よりも低くなる
リースバックではリースバック会社と賃貸借契約を結ぶことになるため、契約期間中、家賃を毎月支払うことになります。家賃は相場よりも高くなるケースがほとんどで、損だと感じる方もいるでしょう。
また、賃貸借契約には「定期賃貸借契約」と「普通賃貸借契約」があります。定期賃貸借契約では更新ができないため、契約期間終了後は転居が必要です。リースバック会社が再契約を認めれば住み続けられますが、その保障はありません。
加えて自宅の所有者はご自身でなくなるため、「子どもに相続したい」「自宅の一部を活用したい」といったこともできなくなります。
またリースバック会社は最終的に不動産から利益を得ることを目的としているため、売却価格は相場よりも低くなりやすいのが現状です。
リースバック契約の流れ
リースバック契約の基本的な流れは以下のとおりです。
- リースバック会社へ相談する
- 簡易査定をする
- 現地調査をする
- 契約条件を決定する
- 契約を結ぶ
- リースバック契約が成立する
決済までの日数は会社によってさまざまです。お金が必要な日を明確にし、その日までに用意できるか問い合わせてみることをおすすめします。
リースバック会社へ相談
始めにリースバック会社を選び、WEBサイトもしくは電話から相談の予約を取りましょう。なかにはオンライン相談対応可の会社もあります。相談では物件のエリアや築年数、希望する売却価格、家賃などが聞かれます。
リースバック会社は複数あり、強みや契約者特典などはさまざまです。不明な点があればその場で質問しましょう。ご自身のニーズに合わないと感じたら、ほかの会社に問い合わせてみましょう。
簡易査定
次に簡易査定(仮査定)を行い、大まかな売却価格や家賃などが提示されます。簡易査定はあくまで机上査定で正確な金額ではありません。簡易査定時には固定資産税や管理費などの金額がチェックされます。
簡易査定は無料でできる会社がほとんどで、会社によっては最短即日で結果が分かるでしょう。
簡易査定で提示された金額と希望する条件をすり合わせ、問題がなければ現地調査(本査定)に入ります。
現地調査
現地調査(本査定)ではリースバックの担当者や建築士などが物件を訪れ、室内の状況や外壁、周辺環境、登記図面との照合、境界線、建物の構造などをチェックします。これらの情報はリースバック会社が最終的に物件を購入できるかの判断材料となります。
現地調査では簡易査定よりも、より厳密な売却価格や家賃などが分かるため、その金額の根拠なども聞いてみましょう。
契約条件の決定
現地調査終了後、正式な売却価格や家賃などが提示されます。ここではいくつかの契約条件が提示されるため、質問をしながら、最終的な内容を決めましょう。
あわせて物件の維持管理費の負担や買い戻し特約の有無、契約期間なども確認します。
契約
双方が納得し合意したら、「売買契約」と「賃貸借契約」を締結します。将来物件を買い戻せる「売買予約契約」を結ぶこともあります。売却価格や代金の支払い方法、支払日、更新料の有無、退去の申出期限、賃貸借契約の種類(普通もしくは定期)などを再度確認しましょう。
契約に必要な書類はさまざまあり、契約プランによっても異なります。契約を取り交わす日までに忘れずに用意しましょう。
成立
売却代金を受け取り、家賃の支払いが開始されれば、リースバック契約がスタート。自宅の所有権はリースバック会社に移転されます。
成立後は毎月家賃の支払い義務が生じるため、銀行口座が残高不足にならないよう、注意しましょう。
リースバック契約時に注意したいこと
リースバックを契約する際には、信頼できる会社を選んだり、相続人にあらかじめ相談したりと気をつけるべきポイントがあります。トラブルを防ぐために、契約時の注意点を知っておきましょう。
信頼できる会社を選ぶ
リースバックでは複数の会社を比較し、信頼できる会社を選ぶことが大切です。リースバック会社とは長期にわたって取引を続けていかなければなりません。実績が豊富な会社であれば、さまざまな物件やお客さまとの経験から、安心して良好な関係を築けられるでしょう。
セゾンファンデックスの「セゾンのリースバック」は2016年にリースバック事業を開始。年間10,000件近い相談件数があり、多くの方に支持されているサービスです。リースバック事業以外にも不動産を活用したお客さまの「お金の悩み」を解消するサービスを提供しているため、豊富なノウハウを持ち合わせています。
最短即日、無料で査定できますので、リースバックをご検討中の方はお気軽にお問い合わせください。
相続人と相談
リースバックをすると自宅の所有権はリースバック会社に移り、元の所有者であるご自身は自由に売却したり更地にしたりできません。ご自身が将来亡くなった時の相続人の立場からすると、不動産は高額な遺産として、その後の生活に欠かせないものとして期待されていることもあります。
そのためリースバックを利用したい時には、ご自身だけで判断せず、配偶者や子どもなどと話し合い、考えられるリスクについて共有しましょう。
重要事項の確認
売買契約書や賃貸借契約書に記載されている事項については充分に確認しましょう。確認しないまま契約してしまうと、想定外の修繕費を請求されたり、希望しないタイミングで退去を求められたりするかもしれません。
税金や教育費を支払うタイミングで修繕費がかかり、家計がマイナスになることも考えられます。また子どもが学校に入学したタイミングで物件を新たに探さなければならないといったこともあるでしょう。
売却代金が住宅ローンの残債を下回ると抵当権を外す許可がもらえない
売却代金が1,500万円、住宅ローンの残債が2,000万円など、住宅ローンの残債が売却代金を上回っている状態(オーバーローン)だと、リースバックを利用できません。オーバーローンだと売却代金で住宅ローンを完済できず、金融機関は抵当権を外すことはないためです。
譲渡益が発生した際に課税となる可能性もある
リースバックで不動産を売却した際に利益が発生すると、譲渡所得が課せられる可能性があります。譲渡所得とは土地や建物といった不動産を譲渡したことで発生する所得のこと。計算式は「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」となります。
特別控除額はマイホームの譲渡であれば3,000万円となるため、リースバックにより譲渡所得が発生することはあまりないと考えても良いでしょう。
将来の買い戻しについて検討する
将来自宅を買い戻す可能性があれば、特約を付加することをおすすめします。リースバック会社が提示する買取価格は当初の売却価格よりも高くなるのが一般的です。買取価格を確認し、そのときまでに資金を準備できるかも検討しましょう。
おわりに
リースバックは物件の売買と賃貸借がセットになった契約のこと。管理費などは基本的に不要で、最短1週間程度で現金化できます。家賃を支払うことで同じ物件に住み続けられるのも大きなメリットです。
契約では「リースバック会社への相談」「簡易査定」「現地調査」「契約条件の決定」「契約の締結」「契約の成立」が基本的な流れです。
複数社を比較し信頼できるリースバック会社を選んだり、相続人とも話し合ったりと注意すべき点もたくさんあります。資金調達を必要とされている方は、それらの注意点をきちんと踏まえた上でリースバックを検討してみてはいかがでしょうか。