誰でも日常生活の中で、多かれ少なかれイライラしてしまうことはあるでしょう。イライラという感情には、必ず何かしらの原因があるわけですが、何気なく人からいわれたひと言や、行動が結果につながらない時や、急いでいるのにレジで待たされただけでイライラするなど、その原因はさまざまです。
イライラについて知識を深め、対処法を知っておけば、イライラしてしまった時も、うまくかわせるようになるかもしれません。イライラは、小さな工夫で抑えることができます。このコラムでは、イライラ対処法やストレスを溜めない方法や対策をご紹介いたします。
イライラが溜まっているサイン
誰でも、少なからずイライラする時はあります。しかしイライラし過ぎてしまうと、身体はもちろんのこと、心にも影響が起こるので注意する必要があります。現代人の生活では「ストレスのない人はいない」といわれていますが、ストレス状態が長く続き、それが日常的になるのはとても危険です。イライラするのが普通と思って放置していると、自律神経失調症やうつ病を発症する場合もあるからです。
イライラを感じた時、身体は無意識のうちにストレスを発散しようとします。それが表面化しやすいのが食生活です。食欲にムラが出たり、暴飲暴食になったり、甘いものをドカ食いをするようになったりしたら、それはイライラが溜まっているサインかもしれません。
イライラして身体がストレス状態になっている時には、自律神経は交感神経が優位な状態になり、副腎ではストレスホルモンであるコルチゾール(副腎皮質から分泌されるホルモンのひとつ)が分泌されます。身体は脈拍を上げ、緊張が続き、食欲が刺激されます。さらに、活動モードになった身体を支えるため、エネルギー源である「糖」を欲するので、暴飲暴食や甘いもののドカ食いにつながるのです。
参照元:生物学の新知識「ストレスと脳」より(東邦大学生物学科)
とにかくみんなイライラしている
コロナ禍による環境の変化や景気低迷など、思い通りにならないことが増えたためか、店員さんに怒っている方、舌打ちをしている方、芸能人への誹謗中傷など、最近はイライラしている方をよく見かけませんか?
イライラというのは、「やらなくてはいけない」でも「できない」という認知的不協和の中で募っていきます。認知的不協和とは、自分の認知とは別の、矛盾する認知を抱えている状態で感じる不快感のことです。人はこの矛盾を解消するために、イライラするだけでなく、対象物の評価を変えたり、定義を変更したりしてしまいます。
イライラはどうして起こるの?
自分がイライラした時、どのような状態になるか思い出してみましょう。人は、自分が「良い」「OK」と考える物差しの枠を超えた人に出会ったり、自分で許容できる範囲以上の仕事や家事を抱えたときにストレスを感じてイライラするといいます。
例えば、友人と待ち合わせをした時、「10分までなら待てるけどそれ以上はイライラする」という場合は、あなたが「遅刻は10分までなら許容範囲」という自分の物差しで考えているからです。人の性格や考え方は十人十色。「たった10分ぐらい」と思う方に対して、それが常識と思えないあなたはイライラするのです。
また、仕事や家事など目の前のことでタスクがいっぱいになると、自分の物差しはより狭くなる傾向にあります。心に余裕が持てないので、友人が5分遅刻しただけでもイライラしてしまうのです。
また、イライラの原因のひとつとして、セロトニン(脳内の神経伝達物質のひとつで精神を安定させる働きをする)不足によって感情のコントロールがしにくいことも挙げられます。ストレスにより自律神経(交感神経と副交感神経から成り立つ、全身の器官をコントロールする神経系)のバランスが崩れてしまうと、共感力・想像力が低下します。また、いつでも検索して、すぐに疑問を解消できるスマホ生活に慣れてしまうと、我慢を強いられた際に強いストレスがかかります。
参照元:健康用語辞典「セロトニン」(e-ヘルスネット,厚生労働省)
参考文献:『脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣』(有田秀穂,青春新書インテリジェンス,2021)
参照元:高次脳機能研究|共感の理論と脳内メカニズム(梅田聡,慶應義塾大学文学部心理学研究室,2018)
参照元:神経伝達物質について③ノルアドレナリン(丹羽亮平院長,名駅さこうメンタルクリニック,2018)
でもやっぱり…イライラしてしまったら……
イライラしてしまうときは、衝動、思考、行動をコントロールしてイライラを助長させないことが大事です。イライラを我慢して心の奥に押し込むのではなく、「なぜ」自分が怒っているのかを知るだけでも落ち着きます。また、イライラしているときには、下記のような症状も伴うことが多いでしょう。
- 過呼吸(息遣いが荒くなる)
- 手のふるえ
- めまい
- 汗、または冷や汗
- 動悸
- 筋肉の緊張(肩こりなど)
これらはすべて、自律神経に関係しているために起こる症状です。自律神経は、人の身体が生きるための機能、心臓の動きや呼吸などをコントロールしているものですが、自律神経には、交感神経と副交感神経があります。交感神経は昼間など活動モードのときに優位になり、副交感神経は夜間などリラックスモードのときに優位になります。この2つはバランス良く働き、私たちの身体を守っています。イライラすると交感神経が優位になるので、身体は活動モードになります。そのため、息遣いが荒くなったり、心臓がドキドキしたりするのです。
参照元:自律神経の乱れによる症状は?|自律神経とは?乱れる原因や整える方法を徹底解説!
(健達ねっと,メディカル・ケア・サービス(MCS,学研),2021)
【ポイント】イライラの抑え方
イライラしやすい方は、「これはこうあるべき」「こうでなければならない」と考えてしまうことがあります。それは、その人の経験や価値観から構築された、自分なりの考え方です。そのため、生まれ育った環境が違えば、価値観も変わります。人はそれぞれ違った価値観を持っているということを理解するように努めると良いでしょう。
自分の物差しと違ったことが起こっても、「こういう考えの人もいるのだな」と冷静に見ることができるようになります。
また、イライラしてしまったときにできる対処法と、イライラしにくい心を作る方法を下記にまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
呼吸を整える
イライラすると自律神経のうちの交感神経が優位になります。これをリラックスモードの副交感神経優位にコントロールできるのが「深呼吸」です。イライラすると呼吸が浅くなっているので、お腹を膨らませる腹式呼吸を心掛け、鼻からゆっくり息を吸って、ゆっくり口から吐き出します。息を吸うときより、吐く秒数を長くすると、身体にたっぷり酸素が取り込まれ、落ち着きますよ。
睡眠の質と量
身体が疲れていると、心も疲れてイライラしやすくなります。疲労を取るのに効果的なのが「睡眠」です。「最近イライラしやすい」と感じたら、睡眠を見直してみましょう。普段の生活で、睡眠時間が充分に取れない方は、30分でも早く寝る努力すると良いでしょう
睡眠時間は充分なのに疲労が取れない方は、睡眠の質を見直すことです。夜遅い食事や明るすぎる寝室はNGです。また、寝る直前までPCやスマホを見ていると、交感神経から副交感神経への切り替えがうまくいかず、睡眠の質が低下します。枕の高さを変えてみたり、寝間着をからだに緩やかなパジャマにするだけでも、快適に眠ることができ、睡眠の質が向上することもありますよ。
よく読まれている記事
栄養
ついつい忙しくなると、食事への意識が低下してしまい、簡単に外食で済ませたりしてしまいがちですが、偏った栄養ばかり摂っていると、気分の浮き沈みが激しくなります。
特に、ラーメンにチャーハン、おやつに菓子パン、夜はパスタなど、糖質が中心の食生活をしていると、血糖値が乱降下するので気分も乱れ、イライラしやすく、倦怠感も感じやすくなります。また、ストレスに強い身体を作るためにも、ビタミン・ミネラルを含む野菜やフルーツは積極的に摂りましょう。特に、月経がある女性は約6割が鉄不足といわれています。鉄は、精神を安定させるセロトニンや睡眠を促すホルモン・メラトニンの分泌に欠かせません。鉄不足によってイライラや抑うつが起こりやすくなるため、鉄分をしっかり補給しましょう。
参照: 20-40代女性の65%が「貧血」もしくは「かくれ貧血」(働く女性の健康応援サイト)
メンタル
「こうあるべき」と物事を考えるクセのある方は、自分にも、他人にもこの物差しを当てはめて、自分に厳しくなりがちですし、他人にも要求が強くなり、応えてくれないことに対して、さらにストレスを感じてしまうことにつながります。時には完璧を求めず、自分を緩めて、人に任せてみましょう。他人の軸を理解する心の練習にもなります。
また、自分の許容範囲以上のものを抱え込んでいる方は、自分をおろそかにしがちではありませんか?そんな生活では心が荒み、イライラしやすくなってしまいます。休日は、自分の時間を作ったり、自分にご褒美を買ってみたり、自分で自分を癒す時間を持ってみましょう。