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VIX指数(恐怖指数)とは何?投資に活用する方法とメリット・デメリット

恐怖指数とは何?投資に活用する方法とメリット・デメリット
セゾンのくらし大研究 編集部

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投資をする上で、市場の値動きを予測する際に参考になる指数がいくつかあります。そのうちの一つが「VIX指数(恐怖指数)」です。危機感をあおるような単語ですが、実際にどのような指数なのでしょうか。これから投資にチャレンジしたい方や投資を始めたばかりの方に向けて、VIX指数(恐怖指数)の基礎知識と活用方法をご紹介します。恐怖指数を参考にすることで、株式運用などがしやすくなるでしょう。ぜひ参考にしてください。

VIX指数(恐怖指数)とは?

VIX指数(恐怖指数)とは?

VIX指数、別名「恐怖指数」は、株式市場における投資家の心理状態を数値化したものです。VIXは「Volatility Index(ボラティリティ・インデックス)」の略で、ボラティリティとは株価や通貨の値動きの変動、つまり価格変動率を意味します。

恐怖指数の意味するもの

恐怖指数が高くなると、投資家の間で不安や警戒感が強まっていると考えられ、株式市場で大きな変動が起こる可能性が高いと予測されます。このように投資家の不安感の度合いを示すため「恐怖指数」と呼ばれているのです。

VIX指数の算出方法

VIX指数は、S&P500の株価指数を対象としたオプション取引の変動率をもとに、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出・公表しています。S&P500は、アメリカの代表的な企業500社の株価平均を示す指数で、アップルやマイクロソフトなど知名度の高い企業が含まれています。

S&P500の重要性

S&P500が重要視される理由は、アメリカ株式市場全体の時価総額の約80%をカバーしており、市場全体の傾向を把握できるからです。また、60年以上の歴史があり、企業や投資家から大きな信頼を得ています。

VIX指数のグローバルな影響

VIX指数はアメリカの株価動向を示していますが、世界の株式時価総額のうちアメリカが約40%を占めているため、世界の株式市場に大きな影響を与えます。そのため、日本の投資家にとっても無視できない指標となっています。

日本版VIX:日経平均VI

日本にも独自のVIX指数があります。それが日経平均VI(日経平均ボラティリティ・インデックス)です。日経平均オプションおよび日経平均先物の価格をもとに日本経済新聞社が算出・公表しており、日本の株式市場における投資家の見方を反映しています。

VIX指数の役割

これらの指数は、投資家が市場の将来動向をどのように予測しているかを示す重要な指標です。株式投資の判断材料として広く活用されており、市場の「体温計」のような役割を果たしているのです。

過去にVIX指数(恐怖指数)が大幅に上昇したのはいつ?

過去にVIX指数(恐怖指数)が大幅に上昇したのはいつ?

過去に恐怖指数が上昇した事例はいくつかあります。2008年のリーマンショックでは恐怖指数89.53%と歴代最大値を記録しました。サブプライムローンの問題によりリーマンブラザーズが経営破綻した金融危機で、アメリカの株式市場をはじめ日本の株式市場も大きく下落しました。

続いて、近年のコロナショックを受けて2020年に恐怖指数が85.47%を記録しています。新型コロナウイルスの感染拡大と行動規制を受けて、世界の株式市場は不安定となり相場が大きく下落したのです。

その他、2015年の中国の経済成長が減速したことをきっかけとしたチャイナショックで53.29%、2001年に起こったアメリカ同時多発テロ事件の影響で49.35%の恐怖指数を記録しています。

このように主要国のニュースや世界情勢の変化が恐怖指数に大きく影響していることが分かります。

【追記】2024年8月5日(月)に日経平均の恐怖指数は70.69を記録しました。
参照:日本経済新聞社「日経平均ボラティリティー・インデックス(日経平均VI)

VIX指数(恐怖指数)の目安と特徴

VIX指数(恐怖指数)の目安と特徴

では恐怖指数をどのように活用すると良いでしょうか。基準となる数値、注意したい数値などを紹介しましょう。

普段は10~20!20より上がると警戒

恐怖指数は0%~100%で表され、通常は10%~20%の範囲で動きます。この数値の範囲内であれば、市場が安定していると捉えられます。

注意したいのは20%より上昇している時です。世界情勢や経済危機、主要国の政治家による発言などが投資家に影響を与えると、指標は30%を超えることもあります。さらに40%以上の数値になると市場の値動きはさらに不安定となり、市場はパニック状態に陥ることもあります。

VIX指数(恐怖指数)と株価の相関関係とは

恐怖指数の変化に関連があるのは、株価の動きです。一般的に、恐怖指数が20%~30%と高くなれば株価は下がり、恐怖指数が10%~20%と低くなり安定すると、株価が上がります。そのため、株価と恐怖指数は逆相関の関係にあるといえます。

VIX指数(恐怖指数)の上昇は株価急落の予兆?

恐怖指数が上昇すると株価はどのような動きをするでしょうか。恐怖指数は株価変動率を示すため、大幅な株価の下落だけでなく上昇が期待される場合でも数値が変動します。

ただし多くの場合、株価は上がる時はゆるやかに、下がる時は急激に変化する傾向があります。つまり、急騰より急落の方が起きやすいのです。そのため、恐怖指数が上昇すると株価急落が予測・警戒されます。

恐怖指数が高くなるのは、S&P500の「オプション取引」と連動していることが要因です。オプション取引とは、「特定の商品を決められた期日に決められた価格で売買する権利の取引」を指します。

具体的には、オプション取引には主に2種類あります。

  1. コールオプション:将来、特定の価格で株式を買う権利
  2. プットオプション:将来、特定の価格で株式を売る権利

例えば、投資家が市場の下落を予想する場合、プットオプションの需要が高まります。これは、将来の株価下落に備えて、現在の価格で売る権利を確保したいためです。

恐怖指数は、このようなオプション取引の動向をもとに「これから30日間でどの程度相場変動があるか」を示した数値です。投資家が将来に向けて変動幅が大きくなると予想して取引を行うと、オプション価格も上昇し、それに伴って価格変動幅も大きくなります。

例えば、多くの投資家が近い将来の株価下落を予想してプットオプションを買い求めると、そのオプション価格が上昇します。この上昇は、市場が予想する株価の変動幅が大きくなっていることを示唆します。

その結果、恐怖指数も高くなるのです。つまり、オプション市場における投資家の行動が、直接的に恐怖指数の上昇につながる仕組みとなっています。

このように、恐怖指数はオプション市場を通じて、投資家の将来の市場動向に対する見方を数値化したものと言えます。

VIX指数(恐怖指数)を活用するメリットとデメリット

恐怖指数を活用する場合のメリットとデメリットはなんでしょうか?

メリット

恐怖指数を活用することで、株価が下落する予測を立てることができます。そのため、大きな損失を回避することに役立つでしょう。

恐怖指数は30日先の予測を反映しているため、先物取引にも活かすことができます。恐怖指数が急上昇したタイミングで、先物売りを行うことで、恐怖指数が下落した時の株式の価格幅で利益を得られるのです。

ただし、そのような相場になることはそれほど頻繁ではありません。そのタイミングをしっかりと判断しなければ、恐怖指数が上昇した時に損失となることもあります。慎重な判断が求められるでしょう。

また、恐怖指数に連動したETF等の金融商品に投資することで、恐怖指数が上昇すると利益を上げることができます。つまりS&P500のリスクヘッジを目的に活用すれば、どちらの下落にも備えられるのです。

デメリット

一方で恐怖指数を活用した運用にはデメリットもあります。恐怖指数が大きく上昇するような世界情勢の変化は、誰にとっても予測し難いものです。それゆえ、大きな利益を出すための買い時の判断が難しいでしょう。

また、世界情勢を脅かすようなニュースがなければ、恐怖指数は下がり続けます。そのため、恐怖指数と連動した金融商品は、将来的な値上がりを期待して保有するような長期的な投資には不向きです。買ってすぐに売るという方法でなければ、利益獲得は難しいといえます。

注意したいのは、同じような恐怖指数連動型の先物取引であっても、保有できる期間の長い期先物より、期間の近い期近物の方が安くなる場合です。これをコンタンゴといいます。コンタンゴの状態では、同じ商品を安く売り高く買い直すロールオーバーを繰り返すことが続きます。すると、恐怖指数連動型の金融商品の価値が下がっていくのです。

さらに、S&P500の値動き幅が小さい場合には恐怖指数も上がらないため、損失となる可能性があります。小額での取引に徹するか、S&P500のリスクヘッジとして利用するのが良いでしょう。

VIX指数(恐怖指数)に投資できるの?

恐怖指数が変動した時に取引を行うことができれば、大きな損失を免れる可能性が高くなります。そのため、恐怖指数に投資したいと考える方もいるでしょう。しかし、実は恐怖指数自体に直接投資はできません。ですが、恐怖指数と連動した金融商品に投資することは可能です。

ETFを使って投資できる

恐怖指数と連動した金融商品として、ETFがあります。ETFとはExchange Treaded Fundの略で、上場投資信託のことです。ETFは、NYダウや東証株価指数などの指数に連動する形で運用されます。また、ETFはさまざまな銘柄で構成されているため、手軽に分散投資ができるのが特徴です。

どんな銘柄があるの?

恐怖指数と連動するETFには次のような銘柄があります。カッコ内は銘柄コードです。

  1. iPath Series B S&P 500 VIX S(VXX)
  2. ProShares VIX Short-Term Futures(VIXY)
  3. VIX短期先物指数(東証:1552)
  4. VIX中期先物指数(東証:1561)

1と2の銘柄はアメリカのETFのため米ドルが必要となりますが、世界的にも有名な銘柄です。3と4は東京証券取引所に上場している銘柄で、日本円で取引ができます。

恐怖指数と連動していることで、数値が上がると利益が出ます。そのため、不安定な市場におけるリスクヘッジとなりますが、ロールオーバーを繰り返すことで減価する場合があり、長期的な投資には向いていません。

ETFを購入するためにはどうすれば良いの? 

ETFを購入するためにはどうすれば良いの?

それではETFを購入するには何が必要でしょうか。ETF購入のための手順を、現物取引とCFD取引それぞれ解説します。

まずは証券会社に口座開設

ETFは証券会社で購入ができます。まずは証券会社に口座開設をしてください。

証券会社は、大きく総合証券とネット証券に分けられます。総合証券は、店舗があるため対面や電話での取引も可能です。中には投資や貯蓄のアドバイスを受けることができるサービスもあります。一方、ネット証券は店舗がないためサイト上のみで手続きや取引を行います。また、両方のサービスを実施しているところもあります。

証券口座を開設するには、本人確認書類、証券口座からの送金や配当金受け取りに使用する本人名義の銀行口座情報、個人番号カード(又は通知カード)が必要です。会社によっては印鑑が必要なところもありますが、ネット証券の多くはネット上で開設申し込みが完了するため不要です。

例えば、口座開設方法をネットか郵送で選ぶことができる証券会社もあります。ネットで開設する場合は、最短で翌営業日には取引が始められます。早く開設したい方やパソコンの操作に慣れている方におすすめです。

取引を始める際は、EFTなど株式購入に必要な金額を入金しましょう。入金方法は、窓口やATMで行う銀行振り込み、ネットバンキング契約のある自身の口座からWebで行う即時振り込み、提携金融機関口座からWebで行うリアルタイム振り込みなどがあります。

現物取引

ETFの現物取引は、基本的に株の取引と同じです。資金を借りたりするわけではなく、手持ちの現金(口座にあるお金)で購入するため、購入から売却までの期間に制限がありません。

口座開設をするとほとんどの場合、ネット上で取引が可能になるため、証券取引所が開いている間はリアルタイムで売買ができます。

また注文は、成行注文と指値注文のどちらも可能です

CFD取引

CFD取引とは差金決済取引のこと。ちなみにCFDは、Contract for Differenceの頭文字を取ったものです。差金決済取引とは、現物の受け渡しではなく反対売買によって出た金額の差額でやり取りする取引です。そのため資金を保有する必要がなく、手持ち資産より多くのポジション(※)を保有することができます。

ただし、担保として一定割合以上の証拠金が必要です。この仕組みから現物よりも少額の証拠金で大きな取引をすることができます。高額な取引ができる分、利益と損失、どちらも大きくなる可能性がある点に注意してください。

特に、CFD取引には以下のようなリスクがあります・

  1. レバレッジリスク:少額の証拠金で大きな取引ができるため、市場が予想と反対方向に動いた場合、投資額以上の損失が出る可能性があります。
  2. 金利コスト:ポジションを翌日以降に持ち越す場合、金利コストが発生します。長期保有の場合、これが大きな負担になることがあります。
  3. 流動性リスク:市場の状況によっては、希望する価格で取引できない、あるいは取引自体ができない場合があります。
  4. カウンターパーティリスク:CFD取引は相対取引のため、取引相手(通常はCFDプロバイダー)が破綻した場合、損失を被る可能性があります。

また、CFD取引の場合買い注文か売り注文かを選んで始めることができます。株価が上昇相場であれば買い注文を、下落を予想して売り注文をすることで仕掛けることができるため、株価の状況がどのような場合でも、取引を始めることができるのです。

初心者の方は、これらのリスクを十分に理解し、自己の資金力や投資経験に応じて慎重に取り組むことが重要です。必要に応じて、専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。

※ポジションとは未決済のまま保有している株式などのこと。証券会社から資金や株式を借りている状態で、建玉(たてぎょく)ともいいます。

おわりに

投資における「VIX指数(恐怖指数)」について解説しました。恐怖指数は投資家の心理状態を反映しており、活用することで市場の変動幅が予測できます。さらに恐怖指数と連動したETF銘柄を購入することで、リスクへッジになることをお伝えしました。

一方で、恐怖指数連動型のETFなどは長期保有には向いていないなどのデメリットもあります。特に初心者の方は売り買いのタイミングを恐怖指数だけで判断するのは難しいでしょう。他の金融商品と合わせて恐怖指数を上手に活用してください。

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