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金利が債券価格に与える影響とは?変動が生じる要因を分かりやすく解説

金利が債券価格に与える影響とは?変動が生じる要因を分かりやすく解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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セゾンのくらし大研究 編集部

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「なぜ金利が変動すると債券の価格も一緒に動くのか」「株式のように債券にもリスクはあるのか」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。金利と債券価格に関係があることはなんとなく知っていても、その理由まではご存知ない方は多いかもしれません。

債券には、金利が上昇すると債券価格が下がり、金利が低下すると債券価格が上がる性質があります。債券を途中売買して利益を得ようと考えている場合、金利の動きや発行元の信用リスクなどを把握していないと損をする可能性があります。

このコラムでは、金利が債券価格に与える影響や債券投資のリスクについてわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

債券とは

債券とは、国や民間企業が資金を調達したいときに発行する有価証券で、出資者に対して定期的な利息の支払いと額面金額での償還を約束するものです。債券は国や企業など発行元の借金として扱われます。証券口座をお持ちの方であれば、どなたでも債券を購入できます。

債券は株式ほどの大きなリターンは期待できませんが、一般的に銀行預金よりも高い利息が得られ、金利が固定されている点が特徴です。そのため、FXや株式投資と異なり、低リスクで購入しやすい点が魅力です。

例えば、みずほ銀行の普通預金金利は0.100%に設定されています。1,0000万円を預金した場合、1年間で得られる利息は10,000円(税引前)です。一方、現在国が募集している「個人向け国債」の利率は以下のようになっています。

  • 変動金利型10年満期:0.65%(初回の利子の適用利率)
  • 固定金利型5年満期:0.60%
  • 固定金利型3年満期:0.49%

※年率、税引前
※募集期間:2024年11月11日~11月29日

「固定金利型5年満期」の個人向け国債を1,000万円分購入した場合、1年間で得られる利息は60,000円(税引前)です。なお、経済環境の変化などにより実勢金利が下落した場合でも、年率0.05%の最低金利が保証されています。

債券が株式投資やFXと異なるところは、発行元が倒産や財政難に陥らない限り、額面金額と利息を低リスクで受け取れることです。投資を考えている初心者の方でも、比較的挑戦しやすい金融商品といえるでしょう。

参照:個人向け国債窓口トップページ : 財務省預金金利・利率 | みずほ銀行

債券投資と株式投資の違い

債券投資と株式投資について「安全性」「収益性」「流動性」の3つの観点で比較してみましょう。

安全性収益性流動性
株式投資

投資した会社が破綻する可能性がある。また、短期的な値上がり益を狙う売買の場合は安全性が下がる


短期的に大きな値上がり益を得られる可能性がある。配当金や株主優待狙いの長期投資であれば収益性は少し低め


株式市場で売買できるため、債券などに比べると換金しやすい
債券投資

一般的に、発行体が国であれば安全性が高くなる


低金利の状況では収益性があまり高くない


個人向け国債には「1年中途換金不可」といった条件が付いている場合がある

株式投資の最大の魅力は、高い収益性が期待できる点です。一方で、投資した会社の破綻により投資元本が毀損する「信用リスク」や、株価の変動による「価格変動リスク」が存在します。これらのリスクを抑えるには、投資タイミングの分散や購入する銘柄の分散を意識し、長期的な視点で投資することが重要です。

債券投資の魅力は、一般的に預貯金などに比べて高い収益性が期待できる点です。ただし、低金利の状況ではその差が小さくなることもあります。また償還期限までに売却すると元本割れするリスクや、発行元の財務状況によっては予定通りに払い戻しが行われないリスクもあります。満期まで保有することを前提に購入し、併せて発行元の格付け(格付け会社が評価した債券の信用度)を確認することが重要です。

金利が債券価格に与える影響

金利とは、借りたお金を返金する際に支払う利子の割合を指し、債券価格は市場で売買される際の債券の価格を意味します。債券を返還期限まで保有する場合、額面金額と決まった利息を受け取れるため、市場での債券価格は関係ありません。しかし、市場での売買で利益を狙う投資家にとっては、債券価格に影響を与える金利の変動は見過ごせないものです。

債券の多くは、発行時から返還期日まで金利が変わらない「固定金利」が適用されています。ただし、債券の金利は市場金利の影響も受けるため、発行時期によって異なる場合があります。

金利が上がって債券価格が下がる場合

債券を購入する立場としては、金利が高い債券を買って運用した方が、より多くの利息を得られます。

例えば、100万円で金利4%の債券を買った後に、金利が5%に上昇したとします。固定金利の場合、金利が4%のときに買った債券は、後から発行される5%の債券と同じように金利が上昇するわけではありません。購入時の4%の金利がそのまま適用されます。それぞれの債券が1年後に得られる利息を見てみましょう。

  • 金利が4%の債券の場合:1,000,000円×4%=40,000円
  • 金利が5%の債券の場合:1,000,000円×5%=50,000円

このように、市場で金利5%の債券が流通している場合、金利4%の債券は相対的に価値が低いとみなされます。つまり、金利が上昇すると既発債(すでに市場に流通している債券)の金利が新発債(新たに発行される債券)の金利と比較して見劣りするため、既発債の価格は下落する傾向があります。

金利が下がって債券価格が上がる場合

市場で債券の購入を検討する立場から見ると、金利が低い新発債を購入するよりも、金利が高い既発債を運用したほうが、より大きなリターンを得られると考えるでしょう。

例えば、100万円で金利4%の債券を購入し、その後金利が3%に低下したとします。固定金利の場合、金利4%で購入した債券の金利が、後発の3%の債券と同じように低下するわけではありません。それぞれ、1年後に得られる利子は以下のとおりです。

  • 金利が4%の債券の場合:1,000,000円×4%=40,000円
  • 金利が3%の債券の場合:1,000,000円×3%=30,000円

市場で金利3%の債券が流通している場合、金利4%の債券は価値が高くなる可能性があります。

金利以外で債券価格に影響を与える要因

債券価格に影響を与える要因は、金利以外にも存在します。金利だけに注目していると、思わぬ変動で損失を被る可能性があるため注意が必要です。

為替相場の変動

ドルやユーロなど、外貨で利子や額面金額が支払われる「外貨建て債券」の場合、受け取り時点の為替水準によって円の受取金額が決まります。為替相場の変動により債券価格は上下するため、価値が一定に保たれるわけではありません。一般的に、円安になると受取金額が増加し、円高になると減少する傾向にあります。

例えば、債券購入時の為替が「1米ドル=100円」だった場合、10,000米ドル分の債券を購入するための円は1,000,000円です。債券満期時の為替が「1米ドル=105円」となった場合、額面金額は1,050,000円となり、50,000円分の為替差益が生じます。逆に円高になると、受け取れる額面金額が減ることになります。

海外の債券は、日本の債券と比べて高金利で運用できるメリットがありますが、為替相場の変動により、購入時の額面金額を下回るリスクもあります。外貨建て債券を購入する場合は、為替相場にも注意を払いましょう。

格付けの変動

格付けとは、第三者の外部機関が債券の発行元の信用度や、利子と額面金額を予定どおりに支払える能力を「AAA」などの記号で示すランクのことです。一般的に、格付けが高い債券は信用度が高いため金利が低く、逆に格付けが低い債券は金利が高くなる傾向にあります。

信用度の低い債券ほど金利が高く設定されやすく、格付けは債券の安全性や金利の妥当性を判断する重要な指標のひとつとなります。格付けは定期的に見直されるため、最新の評価を確認することが大切です。

国内の代表的な格付け会社には、日本格付研究所(JCR)や格付投資情報センター(R&I)があり、海外ではS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)、Moody’s Corporation(ムーディーズ)、Fitch Ratings Ltd.(フィッチ)などが有名です。

景気や物価の変動

一般的に、金利は景気と密接な関係にあります。景気が回復すると金利は上昇し、景気が後退すると、金利が引き下げられて景気回復を支えるというサイクルが繰り返されます。景気の状況に応じた市場全体の金利調整は、各国の中央銀行でコントロールされています。

また、物価の変動も債券価格に影響を与える要因のひとつです。物価の変動によって貨幣の実質価値も変動するため、債券の利回りにも影響します。例えば、インフレ(物価上昇)時に金融引き締め政策が実施されることで、債券価格が下落(利回りが上昇)する要因になります。逆に、デフレ(物価下落)時に金融緩和政策が実施されれば、債券価格が上昇する要因になります。

需給関係

需給関係も債券価格に大きな影響を与えます。例えば、新発債の消化が不十分な場合、市場で供給過多が生じ、債券相場に下押し圧力をかける可能性があります。また、機関投資家の動向も需給に直接的な影響を与えます。

機関投資家には、生命保険会社や損害保険会社(生損保)、銀行、信託、年金基金、投資信託、さらには外国投資家が含まれます。これらの投資家は、金利動向やポートフォリオ戦略に基づき大規模な売買を行うため、その取引が需給関係を変動させる要因となります。例えば、機関投資家が大量に購入すれば需給が引き締まり相場が上昇しますが、大量売却が行われれば需給が緩み、相場の下落要因となるでしょう。

さらに、日銀の金融政策に基づく公開市場操作(オペレーション)も需給に短期的な影響を与えます。日銀が市場から債券を購入する買いオペは、債券量を減少させて需給を改善し、価格を押し上げる可能性があります。一方、売りオペは市場への債券供給を増加させ、相場にマイナスの影響を及ぼすことがあります。

このように、債券における需給関係は、新発債の消化状況、機関投資家の売買動向、日銀の金融政策といったさまざまな要因の影響を受けます。債券投資を行う際は需給動向にも目を向け、適切に対応することが重要です。

債券投資に潜む2つのリスク

債券には、FXや株式投資に比べて比較的安全に運用できるという魅力があります。定期的に利子を受け取りつつ、満期には購入金額が返還されるため、安定した収益が期待できるでしょう。しかし、債券にはリターンだけではなく、一定のリスクも存在します。

売却価格が購入価格を下回る可能性がある

債券価格は金利の影響で変動するため、途中で売却すると損失が発生する可能性があります。購入時よりも市場金利が下がっている場合、保有している債券は「現時点よりも高金利な債券」として価値が上昇し、売却益を得られる可能性があります。

一方、購入時よりも市場金利が上昇していると、保有する債券は「現時点よりも低金利の債券」として価値が下がり、売却損につながることがあります。ただし、満期まで債券を保有していれば、当初の額面金額と利子が予定どおりに返還されるため、金利変動による債券価値変動のリスクはありません。

なお、外貨建て債券の場合は、為替相場の変動によって満期時に受け取る金額が額面を下回る可能性があるため、為替の動きにも注意が必要です。

発行元が破綻して支払不能になる可能性がある

債券は、発行元が倒産や財政難に陥ると支払いが不可能になり、予定された利子や額面金額の返還を受けられなくなるリスクがあります。国債の場合は、発行元が国であるため、戦争などの有事がない限り破綻する可能性は低いと考えられます。

しかし、発行元が民間企業の場合、倒産のリスクはゼロではありません。そのため、債券を購入する際は格付けを確認し、信用度の高い企業の債券を選択することが望ましいです。

債券は発行元の経営状況によっては無価値になるリスクもあるため、購入時には慎重な判断が必要です。「信用度が高く金利の低い債券を選ぶか」「信用度が低く金利の高い債券を選ぶか」を十分に検討しましょう。

債券投資で利益を上げる3つの方法

債券投資で利益が出るのは、以下の3つのパターンです。

  • 償還まで保有し、その間の利子を受け取る
  • 債券価格が高いときに売却して売却益を得る
  • 債券価格が安いときに購入し、償還時に額面金額との差益を得る

償還まで保有し、その間の利子を受け取る

債券投資で利益を上げる方法のひとつは、償還まで保有し、その間の利子を受け取る手法です。あらかじめ予定された利率に基づいて定期的に利息を受け取り、満期時には元本が返還されるため、安定した収益が期待できます。

この方法のメリットは、満期まで保有することで債券の価格変動リスクを避けられる点です。例えば、市場金利が上昇すると債券価格は下落しますが、満期まで保有すれば元本は返還されるため、価格変動の影響を受けにくくなります。定期的な利息により安定したキャッシュフローを得られるため、安全性を重視する方に適した方法といえます。

ただし、変動金利型の場合は受け取る利息が減少する可能性があります。また、債券発行体の信用リスクやインフレによる実質価値の減少などにも注意が必要です。購入する債券の発行体の信用力を十分に確認し、金利や経済の動向も考慮することが重要です。

債券価格が高いときに売却して売却益を得る

債券投資で利益を上げる2つ目の方法は、債券価格が高いときに売却して売却益(キャピタルゲイン)を得る手法です。例えば、市場金利が下がると既発債の利回りが相対的に高くなり、価格が上昇する傾向にあります。このタイミングで売却することで、購入価格との差額を利益として確定できます。また、債券発行体の信用力が向上すると、リスク低下により市場価格が上昇する場合もあります。

この方法のメリットは、利息収入と売却益の両方を得られる可能性がある点です。一方で、売却益を得るには金利や経済の動向を予測する必要があり、期待通りに動かない場合には損失が発生するリスクがあります。市場環境の急変によって予想外の価格変動が生じるおそれもあるため、金利や経済の動向を注視し、売却タイミングを適切に判断する必要があります。

また、債券の売買は証券会社での店頭取引が中心であり、希望するタイミングで売却できない場合がある点にも注意が必要です。さらに、個人向け国債など一定期間中途換金できない条件が付いている債券もあるため、流動性リスクが比較的高いことを理解しておくことが重要です。

債券価格が安いときに購入し、償還時に額面金額との差益を得る

債券投資で利益を上げる3つ目の方法は、債券価格が安いときに購入し、償還時に額面金額との差益を得る手法です。債券の市場価格は、金利の変動や発行体の信用力、経済環境などの影響を受けて変動します。

例えば、市場金利が上昇した場合、既発債よりも新発債の利率が高くなるため、既発債の価格は下落する傾向があります。このような状況では、額面金額よりも安い価格で債券を購入できる可能性が高くなります。また、利息が支払われない分、額面価格よりも低価格で購入できる「割引債(ゼロクーポン債)」という債券もあり、償還時に額面金額との差益を狙えます。

この手法のメリットは、満期まで保有することで価格変動リスクを避けられる点です。償還差益と利息収入の両方を得られる可能性もあり、比較的安定した運用成果が期待できます。特に、信用力が高い発行体の債券を割安で購入できる場合には、リスクを抑えつつリターンを最大化できる可能性があります。

一方で、債券価格が安い理由が発行体の信用力低下にある場合、償還時に元本が返済されないリスクが存在します。そのため、購入する債券の発行体の財務状況や信用格付けを十分に確認することが重要です。

おわりに

債券には、金利が上がると価格が下がり、金利が下がると価格が上がる性質があります。株式投資やFXとは異なり、定期的に利子を受け取れ、満期には発行元から購入時の元本が返還されるため、比較的安全に運用できる点がメリットです。

ただし「発行元の経営破綻」や「為替相場の変動による元本価値の下落」などのリスクを完全に排除することはできません。債券を運用する際には、景気や為替の状況などにも注目し、慎重な判断を行いましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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