11月7日に立冬を迎えると、暦の上では秋に入ります。徐々に日も短くなり、寒さを意識する日も多くなってくると辛くなるのが「冷え」です。女性は若い頃から冷えに悩まされている方が多いですが、男性も年齢と共に冷えを感じやすくなることが多いです。
冷え対策といえば、”防寒グッズ”や”香辛料”を思い浮かべる方が多いと思いますが、それだけでは解決しにくいのが冷え性です。薬膳の知恵を使って、身近なものでできる冷え対策をご紹介いたします。
“冷えとり”は温めるだけではない?
冷え性であれば温めれば解決するはず!と思いますが、温めても全く身体が温まらない方がいます。また、手足の冷えを感じて温めようとすると、顔がのぼせてしまう方もいます。
同じように見える冷え性ですが、人によって身体が冷える原因が違います。冷える原因が違えば対策も異なります。
大まかに分けると、冷え性タイプには3つあります。
①エネルギー不足の冷え性
一般的にイメージしやすい冷え性の典型的なタイプです。とにかく冷えて冷えて仕方がない方が多く、部屋を暖めても、衣服を重ねても、温まった感じがしない、ということが多いです。これは身体を温める熱源そのものが不足しているタイプです。
私たちの身体を小さな部屋とイメージしてみてください。その中心に小さな暖炉があるとします。その暖炉の熱が身体を温めてくれています。このエネルギー不足の冷え性は、そもそも暖炉の火が弱く、部屋を暖めるのにパワーが足りていない状態なのです。
痩せていたり、体力がなかったりする方に多くみられる冷え性です。高齢者の冷え性もこのタイプが多いです。
②「血」不足の冷え性
女性に多い冷え性がこのタイプです。東洋医学では「血」といいますが、この場合はいわゆる血液と同じと考えて良いでしょう。血液は色々な役割がありますが、そのひとつに身体全体に熱を送る作用があります。
全身を温めるのに充分な血液の量がない方は、内臓や脳など重要な部分を温めるのに精一杯で、末端まで血流がいかずに冷えてしまうことがあります。特に足先や指先が冷えてしまう、という方は血液不足のタイプです。
血液不足の冷えタイプの方は、皮膚表面への血流が不足していることも多く、肌の乾燥もよくみられます。また、暑さにも弱い方が多く、夏は暑がりなのに冬は冷え症、ということもあります。生姜湯や香辛料での温活が逆効果になりやすいので、気をつけてください。
③めぐり不足の冷え性
手足は冷えているけど顔はのぼせている、冷えを感じるけれども暖房などで暖めると気持ち悪い、という方は、めぐり不足の冷え性です。身体の中の熱の分布が偏っており、冷えているところとそうでないところの温度の差があります。
お風呂を沸かしたときに湯船の表面だけが熱くなって、下の方は冷たい、というのを経験したことがある方も多いと思います。お湯の対流がないと温度が一定にならずいつまでも冷たいところは冷たいままで、逆に上の方はびっくりするくらい熱くなってしまうことがあります。身体の中も、温かいものは上の方へ、冷たいものは下の方へ、と留まりやすい性質があります。
めぐる力が弱いために身体の中でも熱の分布が不均一で冷えを感じてしまいます。デスクワークなど同じ姿勢でいる時間が長い方、運動不足の方、筋肉量が少ない方、ストレスが多い方に多くみられます。また更年期症状でも同じような症状がみられます。めぐり不足の冷え性では、温めることよりもめぐらせることが大切です。
あなたはどの冷えタイプ?
どの冷え性かによって、対策も異なってきます。まずはご自身の冷え性タイプをチェックしてみてください。
※1種類ではなく、複数のタイプに該当することが多いです。一番多い項目となったタイプを中心に、他の項目も参考にしてみてください。
タイプ別の冷え性対策
冷え性のタイプによって冷え性対策が異なります。先ほどチェックした冷え性のタイプを参考に冷え性対策を取り入れてみてください。
①エネルギー不足の冷え性
とにかく身体が冷えやすいので、防寒対策はしっかりしましょう。特に胃腸の冷えは大敵です。寒い時期は腹巻きやカイロなどでおへそを中心にしっかり温めると良いでしょう。
また、胃腸の調子が落ちたり、身体が疲れたりすると、身体を温めるだけのエネルギーが不足してしまいます。体力を温存しつつ、身体を温める食材をしっかり摂ると良いです。
食事の量が少ない方が多いので、食事を抜くと暖炉の薪がなくなってしまうように、急激に冷えてしまいます。食事を抜かないことはもちろんですが、寒い時期は食事は3回と決めずに温かいスープなどを冷える前に摂ると良いです。
おすすめの食材
鶏肉、羊肉、鮭、かぶ、にら、よもぎ、シナモン、酒粕、甘酒、長ねぎなど
②血不足の冷え性
血液が不足していることが原因で冷え性が起きていますので、まずは肉・魚をしっかり食べて血液を増やしましょう。
血液が少ないことで皮膚の乾燥が見られる方が多いので、香辛料の取り過ぎはNGなことが多いです。皮膚が乾燥すると体温も下がりやすいので、お肌の保湿も心掛けてください。
寝不足や目の使い過ぎ、頭の使いすぎは血液をたくさん消耗して冷えも強くなります。しっかり寝たり、目や頭を休ませたりすると良いです。
血不足の冷え性の方は甘いものを欲することが多いのですが、これは血液が少ないために起きています。甘いもの、特にアイスクリームなど冷たいものは冷え性の原因にもなりますので、食べたくなった時は動物性のタンパク質を多く摂るようにすると良いです。
また、汗をかくと血液がさらに減ってしまったり、体温を下げる原因になるので、長風呂でたくさん発汗したりしないように気をつけましょう。
おすすめの食材
レバー、カツオ、マグロ、羊肉、鮭、など
③めぐり不足の冷え性
めぐり不足の冷え性の方は温めることよりもめぐらせることが大切です。一般的な温活をするとのぼせやすくなることもあります。
上半身よりも下半身の冷えに気をつけた方が良いので、おへそより下は冷やさないように気をつけてください。また、冷えを感じたときは、散歩をしたり、足湯をしたりして血流を促すと良いです。デスクワークが多い方は、長時間座りっぱなしにならないように、定期的にトイレに立ったり、他の階のトイレにいくなど工夫をすると良いです。
ストレスや怒り、疲れがあると血流が滞ります。溜め込まないように、身体と頭のリフレッシュを心掛けてください。
また、香りが良いものはめぐりを促す作用があるので、ハーブティやアロマなどを活用すると良いです。冷えが気になるときはコーヒーや緑茶は身体を冷やしたり、めぐりを妨げたりしますから、代わりにハーブティを飲むようにすると効果的です。足湯や入浴の際もいい香りの入浴剤やエッセンシャルオイルを活用してみてください。
おすすめの食材
ゆず(特に皮)、玉ねぎ、シソ、カジキマグロ、ジャスミン、ローズなど
冷え対策で気をつけたいこと
冷え対策をしても冷えが解消しない、という方の中にはご自身で冷えの原因を作っている方も結構いらっしゃいます。特に身体を冷やすものを摂り過ぎていることが多いです。
どんなに冷え対策をしても、寒い時期に冷やすものを摂り過ぎていれば、冬場に窓を全開にして暖房をつけているのと同じです。身体の負担も大きくなってしまいますから、気をつけましょう。
特に身体を冷やすもの
- 冷たいもの=アイスクリーム、冷たい飲み物は控えましょう!!
- 生もの(果物やお刺身、サラダなど)
- 夏が旬の食材、南国が産地の食材(トマト、きゅうり、ニガウリ、バナナ、パイナップル、マンゴーなど)
- ※冷え性の方は、寒い時期に摂るのは控えましょう
寒い時期はもちろん防寒対策も大切です。冷えているな、と感じるときはすでに芯まで冷え切ってしまっていることが多いので、冷えやすい方は冷えないように気をつけることが大切です。冷え対策の薬膳で、寒い季節を元気に乗り切っていきましょう!
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