物価の値上げラッシュが続いています。本年(2022年)10月の値上げ品目数は、食品だけで約6700品目となり、今年最多を記録しました。その影響は深刻で、日本の平均世帯における家計の負担は、年間で約7〜10万円も増加するという試算が出ています。
その一方で、私たちの給与はなかなか上がりません。生活費の逼迫は、待ったなしです。不安を抱えている人もいるでしょう。ここでは、そんな現況を乗り切る家計防衛策について紹介します。
2022年に値上げした品目
2022年はサービスやモノなど、さまざまなものが値上がりしました。総務省発表の8月の消費者物価指数(=消費者が購入するモノやサービスなどの物価の動きを把握するための統計指標)は、前年同月比で2.8%の上昇となり、5ヵ月連続で2%を超えるという高水準が続いています。物価高騰に歯止めがきかない状態が続いているのです。特に、私たちの生活においては、以下の品目の値上げが注目されます。
食料品
先に、約6700品目の値上げが行われたと言及した食料品ですが、国際的な小麦高騰などを受け、日本でも小麦粉やパン、パスタなどの商品が値上がりしています。それ以外にも、食用油や冷凍・レトルト食品、缶詰、加工肉、乳製品から調味料、菓子類まで、多種多様な食品が価格を上昇させています。10月にはビールも値上げしました。これらにより、飲食店やコンビニなどで提供されている商品の価格にも影響が出ています。「家計への打撃」と聞いてまず思い浮かべるのが、この食料品の価格変化でしょう。
電気
次に生活を直撃するのが、電気料金やガス料金の上昇です。東京電力が想定する消費電力の平均モデルでいえば、本年9月分の電気料金は9,126円。前年9月(7,098円)と比べて2,000円以上も値上がりしたことになります。また、ガス料金も値上がりが続いています。東京ガスが想定する標準家庭でいえば、本年9月分のガス料金は5,886円(東京地区等)。前年9月(4,648円)と比べて、やはり1,000円以上、上昇しています。
その他、ガソリンや各種運賃など
もちろん、値上げは食料品や電気・ガス代にとどまりません。たとえばガソリン価格も上昇し、現在はレギュラーガソリンの小売価格(全国平均)は170円/L前後で高止まりしています(経産省資源エネルギー庁発表「石油製品価格調査」の結果では、11月7日時点のレギュラーガソリンの全国平均店頭現金価格は168.1円/Lとなっています)。
加えて、JR東日本が山手線などの首都圏のきっぷ、IC運賃を10円値上げするというニュースが私たちを驚かせました。さらには、タクシーの初乗り運賃も80円の値上げが予定されています(東京都23区、武蔵野市、三鷹市で11月14日から)。
この他にも、ティッシュペーパーや紙おむつ、ノート、液状のりといった日用品、また、家電、玩具も価格を上昇させています。
値上げラッシュから家計を守る方法
このような物価上昇の嵐の中で、やはり注目を集めているのが「節約」です。ソニー生命保険株式会社が本年6月に実施した「家計防衛に関する調査2022」によると、家計防衛においてもっとも注力したい項目が「節約」でした。その具体策としては、「できるだけ安いお店で買う」と答えた人が最も多く、次いで「マイバッグを利用する」「値下げシールが貼られた品を買う」があがっています。
ここでは、家計防衛策について詳細に見ていきましょう。
家計を「見える化」する
まず最初に行うべきは、家計の「見える化」です。現在でこそ家計簿をつける世帯が増えていますが、特に最近は、スマートフォンアプリを用いた家計管理が流行しています。なぜなら、家計簿アプリの中には、レシートを写真に撮って読み込むだけで項目ごとに自動振り分けをし、支出を記録してくれたり、銀行口座やクレジットカードなどと自動連携するものもあるからです。「Zaim」や「マネーフォワードME」などが有名ですが、これらアプリは、忙しい利用者の家計管理にとって強い味方になってくれます。また、家計が可視化されると、「どのあたりにムダ遣いをしているか」「どこで節約ができるか」が分かるようになるため、節約意識も高まり、節約そのものも進むようになります。
固定費を洗い出し、減らす工夫を講じる
次に行うべきは、固定費の洗い出しと削減です。たとえば、クレジットカードの明細をチェックしてみましょう。サービスをあまり利用していないにもかかわらず、会費やサブスクリプションの費用を支払い続けているということはありませんか?「もったいない」と感じたら、すぐに解約することをおすすめします。また、保険料などもこれを機会に見直し、自身の生活形態により合ったものを選択するとよいでしょう。補償内容や付加されている特約を細かくチェックしてみてください。
利用中のサービスをより安いサービスに乗り換える
また、上記の固定費や生活費の中には、「より割安なものに乗り換えることができる」ものもあります。たとえば、意外に見落とされがちなのが、スマートフォンや携帯電話の料金です。料金プランの見直しを行うことによる節約が期待できます。この他にも、電気料金やガス料金などもより安いサービスに移行できる可能性があります。特に、電気代とガス代は同じ会社にまとめるとセット割が適用されることがあります。ポイント還元などのサービスもあります。それらも積極的に併用してください。
消費自体を抑える
続いて大事にしたいのが、「あえて買わない」という取り組みです。ただし、生活必需品については、「買う品目数」を減らす必要はありません。むしろ減らすべきは「買うボリューム」です。たとえば、買い込みすぎて食材が痛んでしまうことがあるなら、食材購入量を減らしてみてはいかがでしょうか。工夫のしどころとしては、「予算を決めて食材をまとめ買いする」という方法が考えられます。特に「予算」という制限をあえて設けて買い物をすると、消費を抑えることができます。
これに加えて実施したいのが、「これは本当に私にとって必要?」と、丁寧に自身に問いかけながら、不必要だと感じるものを「あえて買わない」ようにすることです。スーパーなどでついつい買ってしまうお菓子などが典型ですが、それ以外にも、定期購読している読み物や、買って積んだままになっている書籍、帰りがけにしてしまう「コンビニ通い」での購入品なども「本当に必要?」と問いかけてみましょう。普段何気なく行っている買い物ですが、精査してみると、意外にも「ムダ遣い」が多いことに気づきます。そこから節約に切り込んでみてください。
安く買う――ネット時代だからこそできる「底値で買う」
インターネット上には「より安く」を追求できる環境があります。ネットでの「商品の底値」を調べるアプリも数多く登場しているため、それを活用しない手はありません。ネットでの買い物が苦手という人もいるかもしれませんが、使い方さえ分かれば簡単で便利に利用することができるでしょう。有名なアプリとしては、「価格.com」や「トクバイ」などがあります。
上記に加えて、最近は、地域最安値のガソリンスタンドを調べたり、食品や日用品などの地域の底値を調べることのできるアプリがあるなど、ネットと実店舗をつないで安値を教えてくれるサービスも登場しています。それらを利用することで、最安値に最短でたどり着くことも可能です。
参考URL: ガソリン価格比較サイト gogo.gs(ゴーゴージーエス)
参考URL: 全国スーパー底値管理サイト そこねシェア
もちろん、時代は変われど、近場のスーパーやドラッグストアを歩き回り、安値で買う営みも大変に有効です。特に、お買い得情報や割引情報、ポイント還元情報などが掲載されたチラシを写真に撮ったり、スマートフォンのメモ帳などに内容を記録しておくと、比較がスムーズになります。お店に実際に足を運びつつ、デジタルも併用してより効率的に底値で買い物をする、そんな工夫が効果を発揮します。
「節約」とうまくつき合っていくために
節約は、とても大切な営みです。生活が苦しくなる状況にあっては、必要に迫られて節約を行う方も多いでしょう。ですが、全品目・全項目について血まなこになって節約をすれば、疲弊してしまうのも事実。「家計防衛に関する意識調査」(くふうカンパニー調べ)によると、節約したくない項目の上位に「教育」「食品」が挙がっていました。
確かに、多くの人には「これだけは譲れない」という価値を見出しているものがあります。それが「教育」や「食」だった場合、いくら節約が必要とはいえ、そこにかける費用は減らしたくありません。無理に減らせば、生活が楽しいもの、充実したものではなくなります。では、そういった場合には、どうすれば良いのでしょうか。
結論からいえば、大胆に「聖域」を作ることです。ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんは、「節約を続けるコツは、『聖域』を設けること」と語っています。趣味のお金だけは守りたい。美容費だけは守りたい。子どもの教育費だけは守りたい―そう思った時に、無理にそこまで節約せずに、「切り詰めなくて良い『聖域』」を設けるのです。すると、心に余裕ができて、メリハリのある家計運営もできるようになります。決して無理をせず、楽しく節約を。現代は、それを可能にする知恵にあふれた時代です。ぜひ、実践してみてください。
引用元:日経マネー 2022年3月号 持ちっぱなしで資産が増える 高配当株&優待株(2022/1/20,日経BP社)