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おかゆは万能薬?今日から取り入れたい薬膳のおかゆ

おかゆは万能薬?今日から取り入れたいおかゆ(薬膳)
瀬戸 佳子 国際中医薬膳師・登録販売者

執筆者

国際中医薬膳師・登録販売者

瀬戸 佳子

早稲田大学理工学部卒、同大学院理工学研究科修了。北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)薬膳科卒業。会社員を経て、東京・表参道の「源保堂鍼灸院」併設の薬戸金堂で、漢方相談を行いながら東洋医学に基付いた食養生のアドバイスを行う。雑誌やWEBセミナーの講演などでも幅広く活躍。 『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』(共に文化出版局)が好評発売中。

おかゆというと地味なイメージがあり、「病人食」というイメージがあるかもしれませんが、実は偉大な効果を秘めた食事です。寒くなる冬場は身体を温めてくれるだけでなく、クリスマスや忘年会、お正月で疲れた胃腸を労ってくれるものでもあります。

また、薬膳でもたくさんのレシピのあるおかゆ。お粥の効能と今日から取り入れたいおすすめのおかゆをご紹介いたします。 

お米は元気をつける一番のもの

お米は元気をつける一番のもの

最近は炭水化物抜きが流行っているので、炭水化物を極力取らない、という方もいらっしゃいますが、薬膳的には炭水化物はとても大切なもので、気力の元になると考えます。

東洋医学の基礎となる『黄帝内経(こうていだいけい)』では、「穀は養いをなし、畜は益をなし、菜は充をなし、果は助をなす」(黄帝内経)とされています。

ここでいう穀とは、米や麦、とうもろこし、雑穀、大豆や小豆などの豆類も含みます。穀物は私たちの身体を日常的に養うものであると考えています。

「畜」とは肉のこと。「益」とは有益のことで、肉を食べることで、穀(穀物や大豆など)をよく増益させるという意味です。

「菜」とは野菜のこと。補充、完備させるという意味です。穀物や肉類を補完してくれるということです。

「果」とは果物のこと。野菜を助けるという意味です。一般に野菜は加熱して摂るものなので、果物は生で食べるもので、生食のものがその野菜の働きを助けるとします。 

食事はもちろんバランスが大事ですが、まずは穀類がないと身体を養うことができません。その上で、肉類、野菜、果物をバランス良く食べることが何よりも大切なのです。私たちの主食であるうるち米は「脾胃を養い元気をつける」というのが薬膳的な効能です。 

江戸時代の本草書『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』では、米の効能を「気力を益し血脉を通し、五臓を和らげ、顔色を好くする」とし、「米は五穀の筆頭であり、生命の関わるところで、気味・性色を知らずにすますわけにはいかない。…それゆえ、虚羸(よわくやせる)・労疲(つかれる)人を保養するには、米食の方が服薬に百倍する。…惟(ただ)、米は些かの毒気もなく、病気の時は薬となり、健康な時にも薬となるので、一朝一夕も人身から離すことが出来ぬもの、死生のよるところ天命の定まるところといえようか。」とその重要性を説いています。

最近、パワー不足だな、気力が足りていないな、という方の中には、炭水化物(特にお米)の量が少なすぎる方がいらっしゃいます。もちろん食べ過ぎは良くありませんが、量が少なすぎるのも体調不良の原因になることがあります。

ちなみに、うるち米は漢方薬でも使われることがあります(漢方で使う場合には『粳米(コウベイ)』といいます)。効能の強い漢方薬を飲む際に胃腸を守るために使われたりします。 

おかゆの効能

お米が良いといっても、今まで朝ごはんを食べていなかった方や、夜ご飯の遅い方、消化の悪い方、特に食後に眠くなりやすい方は、おかゆやおじやなど消化しやすい形でお米を摂ると良いです。 

古来よりかゆは薬膳でも重要なもので、生薬と一緒に煮込んだり、生薬の煎じ液でかゆを作ったりと、種類も製法もさまざまなものがあります。

消化しやすい上に、味も良く、簡単に作れるのがかゆです。かゆのレシピだけを集めた粥譜というものもありますし、現代の養生レシピ本でもかゆの項目が必ずといっていいほどあります。 

かゆの効能:身体を潤わせる、胃腸の働きを高る、体力を補う、身体を温める、お通じを良くする

道元の『赴粥飯法(ふしゅくはんほう)』では、仏教の律(規則)である「摩訶僧祇律(まかそうぎりつ)」を引用し、かゆには十の功徳がある、と述べています。 

<粥有十利(しゅうゆうじり)>『赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)』

  • 1. 血色を良くする
  • 2. 力を得る
  • 3. 寿命を延ばす
  • 4. 苦痛がない
  • 5. 言葉がはっきりする
  • 6. 胸のつかえがなおる
  • 7. 風邪がなおる
  • 8. 空腹が癒える
  • 9. 喉の渇きが消える
  • 10.  大小便の通じが良くなる

今でも病後は白がゆから始めたりしますが、消化に負担が掛かりにくく、胃腸の弱い人でも食べやすいものなのです。昔は乳が出ない場合に乳児にかゆの上澄みを飲ませたといわれています。忙しく、疲れている方が多い現代こそ、気力をつけ、体力をつけ、胃腸を元気にしてくれるおかゆこそ、日本に暮らす方にとっての万能食ではないでしょうか。

生米から炊くのが一番美味しいですが、炊いたお米で作るおかゆやおじや、レトルトのかゆなどでも良いので、まずは1週間取り入れてみてください。体調の変化を感じるのではないでしょうか。

おすすめおかゆレシピ

丁寧に作った白がゆは一番美味しいものですが、白がゆだと病人食のようでなんとなく気が進まない、と思う方もいるかもしれません。

そこで美味しく元気になれるおかゆのレシピをいくつかご紹介いたします。 

山芋がゆ

山芋

山芋は山うなぎといわれるように精をつけてくれる食材で、漢方でも体力の補強に使うとても優れたものです。

肺や消化器官を元気にしたり、体力の底上げをしたり、さらにアンチエイジング作用もあります。特に潤い不足の方におすすめですが、同時に下痢を止める作用もあります。

角切りにしておかゆに入れると、ほっこりとした食感が楽しめます。また、白がゆに後からとろろを追加しても良いでしょう。

味が足りない方は、少量の塩を追加したり、出汁を加えても美味しく食べられます。

ニラがゆ

ニラがゆ

にらは「起陽草(きようそう)」ともいい、陽気不足(身体の熱エネルギーの不足)の方に良いもので、お腹が冷えやすかったり、足腰が弱って体力が落ちてたりしている方にとても良い食材です。寒さを発散する作用、血流を促す作用もありますので、冷えて血行不良になった時も良いです。

冬場の冷えが強い方、日が短くなると気持ちが落ち込みやすくなる方は陽気不足と東洋医学では考えますので、ニラを食べて元気をつけると良いです。

干しエビを追加したり、鶏スープを追加したりすると中華風のおかゆで美味しさも増します。少量のごま油を追加するのもおすすめです。 

大根がゆ

大根がゆ

食べ過ぎた時、食欲がない時におすすめのおかゆです。大根おろしが消化を促す作用があることはみなさんご存知だと思います。おかゆとの相乗効果で胃が疲れた時に良い組み合わせです。

大根は、消化を促すことに加えて、ゲップや食べ過ぎによるお腹の張りを解消したり、痰が多い咳を解消する作用もあります(この場合は生で使うのが良いです)。

細かく刻んで入れても良いですし、すりおろしたものを後から加えても良いでしょう。お肉が多かった翌日や、お餅を食べ過ぎた時にぜひ召し上がってみてください。 

ここでは3つのおかゆを紹介しましたが、おかゆのレシピは本当に際限なくあります。ぜひご自身のおかゆレシピを探してみてください。

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