東洋医学で春の特徴は「生を養う」ことが挙げられます。これは「古きを退けて新しきを養うこと」です。自然界でいうと、春は新芽の季節です。私たちの体も同じように、代謝が上がって、伸びやかに成長していきます。そのためには古いものを脱ぎ捨てることが必要です。しっかりと不要なものを取り去って、本格的な春を迎えましょう。
おすすめの春の食材
- せり
- 菜の花
- ふきのとう
- わらび
- こごみ
- たらの芽
- もやし
- たけのこ
上記の食材を中心に春の新芽を食べることによって、余分なものを取り去ってくれるので、ぜひ取り入れてみてください。
春のデトックスを促す臓器
デトックスというとみなさん思い浮かべるのは、便通を良くする、汗をかく、ということではないでしょうか。もちろんそれらもデトックスの一部ですが、東洋医学で考えると最も重要なのは「肝」という臓器の働きです。
「肝」という臓器は、西洋医学でいう肝臓も含みますが、臓器そのものだけでなく、関係する働きも臓器の一部と考えています。
春のデトックスに最も関係のある肝の働きが「疏泄(そせつ)」というものです。これは臓器やその機能がスムーズに働くようサポートする働きのことです。気の巡りや血液の巡りにも関係しており、デトックスもこの疏泄の働きにより行われます。
例えば、便は大腸そのものの働きによるところも大きいですが、動きをスムーズにさせているのは肝の疏泄によります。ストレスがかかると便秘になったり、人によっては下痢になったりするのは、大腸という臓器に何か問題があるわけではなく、肝の疏泄機能が乱れることにより大腸の働きが乱れるためです。
身体中の臓器がスムーズに働くことを担当しているのが肝の疏泄機能なのです。
春のデトックス作用のメリット
では、春の時期にしっかりデトックスをしておくことがどのように影響するのでしょうか。
春のデトックス作用のメリット
- 花粉症(アレルギー)対策になる
- 風邪や感染症の予防になる
- 体が春へと目覚めやすくなる
- 新陳代謝が促される
春は季節の変わり目で心身ともに不調が出やすくなる時期です。特に心配する方が多いのが花粉症ではないでしょうか。花粉症などのアレルギーは炎症反応になります。この炎症反応を解毒するのが肝の働きです。花粉が入る前に、すでにある余分な炎症をデトックスしたり、入ってきても起きる炎症を直ちにデトックスできていると症状が治りやすくなります。逆にデトックスが追いついていないと、症状が年々強くなっていく、といったことが起こります。
風邪や感染症も同じく肝の解毒により、ウイルスが解毒されて予防することができます。
体が春へと目覚めやすくなる、というとなんのことだろう?と思うかもしれませんが、これは新陳代謝が促されることと共通しています。人間の体も動植物が冬眠するように少し代謝が落ちます。しかし、春へと季節が移り、日照時間や気温が上がるにつれてだんだんと代謝が上がってきます。
冬場は寒くて布団から出たくない、というのが冬眠状態です。春になると少しずつ起きやすくなってくるはずなのですが、春の目覚めがうまくいっていないと「春眠暁を覚えず」となってしまうわけです。しっかり余分なものをデトックスすることで、春の眠さがとれてきます。
春のデトックスには緑色の食材を
東洋医学では『陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)』といい、5つに分けて物事の相関関係を考える哲学があります。内臓もそのひとつで、内臓に対し、色も分けられています。
春の色は青、つまり緑色です。緑色の食材は、解毒作用を促したり、余分な熱(炎症)をとったり、春に起こりがちな体の不調を予防するのに良い効果があります。春のデトックスにもこの緑色のものをたくさん食べると良いです。その中でも特におすすめしたい春のデトックス食材をご紹介いたします。
肝の解毒作用を高めるおすすめの春の食材
せり
春の七草粥にも入っているせり。七草粥は1年の邪気を払う風習ですが、もともと七草は旧暦の正月ですから、立春を迎えてから食べるものです。お正月で疲れた胃を休める効果だけでなく、春のデトックスの意味もあります。せりの薬膳的な効能は「清熱利湿(せいねつりしつ)」といって体にこもった余分な熱をとり、水分代謝を良くするものです。炎症と水分のデトックスをしてくれるものです。セリ鍋などが有名ですが、おひたしや煮浸し、味噌汁などにしても独特の風味を楽しめます。
菜の花
春を感じる食材のひとつ。アブラナ科の黄色い花の総称です。いろいろな種類の菜の花がありますが、共通する薬膳的な効能は、「解毒(げどく)、消腫(しょうしゅ)、通便(つうべん)」といったものがあります。腫れ物を解毒したり、お通じを良くしたりするものです。また、血流を促す作用もあります。
茹でて辛子和えやおひたしにするのも良いですが、パスタなども良いでしょう。デトックス食材の中ではクセの少ないものなので、山菜などアクの強いものが苦手な人は菜の花がおすすめです。
ふきのとう
春を告げる食材のひとつで、独特の苦味に春を感じる山菜のひとつです。薬膳的な効能としては「健胃化痰(けんいかたん)、涼血解毒(りょうけつげどく)」といい、余分な湿気をとったり、余分な熱や毒を取り除いたりする作用があります。
一気にたくさん食べるのには適しませんから、蕗味噌などで少しずつ食べるのも良いです。フキも同じく解毒作用があります。
わらび
春を告げる山菜のひとつで、わらび餅の原料でもあります。薬膳的効能としては、「清熱利湿(せいねつりしつ)」、涼血利尿(りょうけつりにょう)」で、余分な熱をとり、利尿作用のある食材です。江戸時代の『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』では、「水道(体内の行水の経絡)を利す」とあり、水分代謝を良くするものです。一方で「水道を利し、陽気を洩らし、降って昇らぬので、多食してはいけない」とあります。それほどにデトックス作用の強いもので、体を冷やす効果もあります。食べる時には、しっかりとアク抜きしたものを召し上がってください。
他に、こごみ、たらの芽、もやし、たけのこなども解毒する食材です。春の新芽を食べることによって、余分なものを取り去ってくれるのです。
なお、これらの食材、特にアクの強い山菜類は解毒作用が非常に強いため、胃腸が弱い方、下痢しやすい方、冷えやすい方、体力がない方は少量にとどめると良いです。デトックスは余分なものを出すだけでなく場合によっては必要なものまで出してしまうことがあります。多く摂り過ぎると体力・気力までデトックスしてしまうので、くれぐれも食べ過ぎには注意しましょう。
デトックスを助ける生活養生
ここまで春のデトックスについて紹介してきましたが、肝のデトックス機能=「疏泄機能」がうまくいかなくなったり、低下したりするほとんどの要因は生活養生が原因です。デトックス食材を摂りつつ、デトックスを促す生活養生を取り入れてみてください。
- 肝の疏泄機能の負担になる、アルコール、カフェイン、脂っこいものなどを避ける
- ウォーキングやストレッチ、軽い運動などで体の巡りを良くしたり、軽く汗をかけるようにしておく
- 早起きをし、太陽の日差しを浴びる
- よく眠る=東洋医学の内臓時間で肝はAM1~3時。この時間に寝ておくとデトックスがしっかりできる
- 夜のスマホ・PC・テレビの視聴は控えめにする
- ストレス発散を適度にする
生活養生は全て取り入れることは難しいと思いますので、まずはひとつ、この1週間やってみる、というところから始めると良いでしょう。春のデトックスをしっかり取り入れて、スッキリした日々をお過ごしください。