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日本が抱える大問題「人口オーナス」とは?2040年問題についても考える

日本が抱える大問題「人口オーナス」とは?2040年問題についても考える
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The Gavel

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「人口オーナス」という言葉をご存知ですか?

「人口オーナス」とは、従属人口(14歳以下もしくは65歳以上の子ども・高齢者)が生産年齢人口(15〜64歳の経済を支える人々)を上回る状態のことです。反対に「人口ボーナス」とは、生産年齢人口(15〜64歳の経済を支える人々15〜64歳)が従属人口(14歳以下もしくは65歳以上の子ども・高齢者14歳以下と65歳以上の人口)よりも大きく上回る、もしくは増加し続けている状態のことです。

出生率の減少と長寿化によって引き起こされる少子高齢化問題。現在まで、日本が抱える課題のひとつとして、耳にしたことがあると思います。

しかし、「人口オーナス」や「人口ボーナス」という言葉については聞いたことがないという方も多いのではないでしょうか?

今回のコラムでは、人口の増減が経済に及ぼす影響を端的に表すキーワードとなる「人口オーナス」「人口ボーナス」について詳しく解説していきます。

1. 「人口オーナス」とは?

「人口オーナス」とは?

オーナス(onus)という単語は『負担・重荷』を意味します。「人口オーナス」とは、従属人口(14歳以下もしくは65歳以上の子ども・高齢者)が生産年齢人口(15〜64歳の経済を支える人々)を上回る状態のことです。

人口オーナスの状態では、「支えられる人」が「支える人」を上回り、社会保障費などの負担が大きくなります。そうして1人あたりの負担が増えることにより消費が低迷、貯蓄率も減り、投資が停滞します。その結果、国の経済成長が停滞してしまうのです。

1990年代後半から少子高齢化が進む日本は1990年代から人口オーナスに陥っており、今では世界でも特に人口オーナスの進む国となってしまっています。アメリカ、イギリス、ドイツといった国々もすでに人口オーナスに突入しています。また、高度成長が続いていた中国や韓国なども人口オーナス期に入っており、世界経済への影響も懸念されています。

2. 「人口ボーナス」とは?

「人口ボーナス」とは?

「人口ボーナス」とは、「人口オーナス」とは反対に生産年齢人口(15〜64歳の経済を支える人々が従属人口(14歳以下もしくは65歳以上の子ども・高齢者)よりも大きく上回る、もしくは増加し続けている状態のことです。

人口ボーナスには以下3つの定義があります。

・生産年齢人口が継続して増え、従属人口比率の低下が続く期間

・従属人口比率の低下、又は、生産年齢人口比率の増加、かつ生産年齢人口が従属人口の2倍以上いる期間

・生産年齢人口が従属人口の2倍以上いる期間
(※参照元:人口ボーナス期で見る有望市場は_日本貿易振興機構(ジェトロセンサー 2015年3月号)

人口ボーナス期の国は教育や医療、年金などの社会保障に対する負担が少ない一方で労働力が豊富にあります。さらに、消費も活性化することで国全体の経済が回りやすくなるという大きなメリットがあります。日本は1950年代から1990年代半ばまで人口ボーナスに該当し、大きな経済成長を遂げました。現在人口ボーナスに該当する国としては、インド、フィリピン、イラン、ナイジェリアなどが挙げられます。

しかし、人口ボーナス期は経済にとって有効な状態ですが、医療や年金制度が充実し、高齢化社会になるため一度終わると二度と来ないと言われています。人口ボーナス期が終わると人口オーナス期に入ることは、避けられない経済の流れになっているのが実情です。

「人口オーナス」「人口ボーナス」とは、どちらも米ハーバード大学教授のデビッド・ブルームが21世紀初めに提唱した概念です。

3. 人口オーナスの4つのデメリット

人口オーナスに陥ると出てくる主な問題点は以下の3つが挙げられます。

3-1. 経済が成長しない

経済成長を決める要因は、「労働投入」「資本投入」「全要素生産性」であるとされています。しかし、人口オーナス期には、労働投入が減少します。働く人が減少するということは、中長期的には経済成長・GDP(国内総生産)の停滞につながります。

貯蓄を取り崩して生活する高齢者が増えることで、国全体としての貯蓄率が低下すれば、資本投入は減少します。

また高齢者は、現役世代よりも医療費や介護の必要性も高まり、社会保障が増えるため経済成長を妨げる原因になります。そして現役世代の社会保障の負担が増え、さらに労働者1人当たりの給与が増えていかないことで消費が低迷し、経済全体に悪影響を及ぼす可能性が高まるでしょう。

3-2. 社会保障制度の維持が難しくなる

日本の年金制度は賦課方式(ふかほうしき)になっています。賦課方式は公的年金の実質的な価値を維持するために、現役世代が納めた保険料を現在の年金受給者への支払いに充てています。そのため、人口オーナスが進めば進むほど、現役世代の負担が増加します。多額の税金を納め高齢者を支えた先に、自身が年金を受け取れる補償はありません。

国の財源が破綻して社会保障が受け取れない可能性もあり、納める税金の額によって社会保障に格差が生まれることも考えられます。

3-3. 医師・介護従事者の不足

現役世代が減る一方、高齢者は増え医療・介護の需要が高まることが考えられますが、高齢者が増えることで医療・介護従事者の不足は避けられないでしょう。今後の医療の進歩や介護ロボットの導入は期待できるものの、医師・介護従事者の不足は大きな問題のひとつといえます。

3-4. 労働環境が悪化する

また、医師・介護従事者に限らず、労働者不足も深刻となるため、労働環境の悪化も予想できます。

生産年齢人口が減ると社会は人手不足が加速することになり、穴を埋めるための長時間労働が増加する可能性があるのです。長時間労働の企業が増えれば子育てがしにくくなるため、より少子高齢化が進む負のスパイラルに落ち込む恐れもあります。

4. 人口オーナス下で経済成長するためには?

人口オーナス下で経済成長するためには?

人口オーナスの状態で、経済成長するには、経済成長を決める要因である「労働投入」「資本投入」「全要素生産性」の考え方が重要になります。

4-1. さまざまな人員の雇用を増やす

女性や高齢者、障害のある方などの雇用を促進することで、なるべく多くの人々が働ける環境を用意することが重要です。

高齢者や出産後の女性、介護に追われる労働者などこれまで仕事から離れることの多かった人員が働ける世の中にしていくことは、生産年齢人口が減少する中で生産力を高めるひとつの手段となります。

そのためには多様な人材の雇用促進や働きやすい職場環境を整えることが求められます。外国人労働者の参入もひとつの解決策となるでしょう。

現在の商品やサービスなどは、ニーズの多様化や短いサイクルで変化するなど、従来型ビジネスが通用しなくなっています。そのため、新たなイノベーションを起こすためにも、さまざまな価値観を持った人たちが議論し合うことでアイディアや想像力を発揮してもらうことができるかもしれません。

4-2. 労働生産性を高める

職場などでここ数年耳にする機会が増えた「生産性」という言葉。労働に関する生産性は「労働生産性」といい、労働者もしくは労働時間あたりの成果を意味します。

人口オーナス期には、労働投入が減少してしまいますが、短時間で成果を上げ、労働生産性を高めることで経済成長率を維持することは可能です。労働生産性が高まることで、人口が減ってもこれまでと同じかそれ以上に成果が出せると考えられています。そのためには最新テクノロジーの活用や業務の効率化が欠かせません。

オーナス期の働き方の特徴として、業務が非常に複雑化していることが挙げられます。

最新テクノロジーや社会のニーズの変化により働く人は、集中力を要する業務が増加しているのです。人口ボーナス期の肉体労働と比べると、短時間でミスなく、質の高い仕事をしていくことが求められ、非常に集中力を要する仕事に変化をしています。

そのため、従業員のパフォーマンスを向上させるためにも、土台となる健康管理がとても大事になってきます。

4-3. 子どもをつくりやすい世の中にする

少子高齢化が進んでいる人口オーナス期を止めるには、とにかく少子化を改善していくしかありません。そのために子どもをつくりやすい世の中にしていく必要があります。具体的には2030年ごろまでに合計特殊出生率(15〜49歳までの女性が生涯に出産する子どもの平均人数)が2.07にならなければならないといわれています。

(※参照元:人口・経済・地域社会の将来像:内閣府のホームページ

ワーク・ライフバランスや子育て世帯への支援を充実させていくことは、人口オーナス対策として期待ができます。職場環境を整えると同時に、多様な人材の雇用促進による労働力の底上げが必要となりますが、仕事と育児・介護の両立支援も人事労務の課題となります。

5. 2040年問題について 

日本では、少子高齢化や気候変動など、数多くの社会問題がありますが、その深刻化は年々増加しており、特に2040年にはあらゆる問題が顕著に現れるといわれています。

2040年問題とは、日本が2040年に直面すると考えられる問題です。

2040年になると、1971年〜1974年の第二次ベビーブームに生まれた世代が65歳以上となり、総人口に対する高齢者の割合は、36.2%となることが予測されます。この割合は、約2.8人に1人が高齢者という計算です。総人口に占める高齢者の割合が増えることで、あらゆる業種での人手不足や医療、福祉、社会保障の懸念が考えられます。

2040年問題に関する課題の対策として、多様な働き方と社会参加の環境整備・健康寿命の延伸・医療・福祉サービスの改革と生産性の向上が挙げられています。

(参照元:2040年を展望した社会保障・働き方改革について_厚生労働省

5-1. 多種多様な就労・社会参加

現役世代人口の減少が進む一方で、平均寿命の増加など医療の向上に伴う高齢者の若返りも見られます。そこで、より多くの人が意欲や能力に応じ社会の担い手としてより多く活躍できるように、個々の事情に応じた柔軟な働き方を選択できる社会にする取り組みが進められています。

例えば、さまざまな人の活躍の場を広げるために、2021年4月に改正された高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となりました。また、バブル崩壊後の1990〜2000年代に雇用環境が厳しい時期に就職活動を行い、現在もさまざまな課題に直面している「就職氷河期世代」といわれる方々のための支援も厚生労働省が行っています。

さらに副業や兼業の促進や、中途採用の強化・拡大、多様な就労を年金制度に取り込む被用者保険の適用拡大による年金制度の見直しなどが2040年問題の対策のひとつとして行われています。

5-2. 健康寿命の延伸

2016年から2040年にかけて「健康寿命」を男女ともに3年以上延伸することを目指しています。健康寿命とは、心も身体も日常生活をする上で支障なく、健康的に生活できる期間のことです。

政府は目標達成のために、健康無関心層も含めた予防、健康づくりの推進や疾病の予防・重症化予防、保険者間の格差の解消に向けた取り組みを行っています。

また、介護予防やフレイル対策、認知症対策も取り組みのひとつです。「フレイル」とは、医学用語である『frailty(フレイルティー)』の日本語訳で、病気ではないけれど、年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい状態のことを指します。フレイルにならないためには、【栄養(食・口腔)】、【運動】、【社会参加】の3つの柱に取り組めば対策ができると、日本老年医学会が2014年5月に提唱しました。

(参照元:超高齢社会におけるフレイルの意義

5-3. 医療・福祉サービスの改革

政府は、2040年までに医療・福祉の「単位時間サービス提供量」について5%(医師については7%)以上の改善を目指しています。単位時間サービス提供量とは、サービス提供量÷労働時間で算出される指標です。

医療・福祉の現場全体で必要なサービスがより効率的に提供されることが求められるため、労働時間短縮に対する意識改革や、ロボットやICTの実用化、シニア人材の活用が推進されています。

5-4. DXの取り組み

また、2040年問題に対して多くの組織が推進している事例がDX(デジタルトランスフォーメーション)です。経済産業省は、DXについて「データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

DXはITを手段として利用し、組織やビジネスモデルの変革を進めることを意味し、企業のみならず、都市部の公共団体でも取り組みが進んでいます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回のコラムでは、日本が直面している問題の「人口オーナス」についてお届けしました。

あまり馴染みのない言葉に感じるかもしれませんが、人口オーナスについて理解を深めると、改めて少子高齢化がいかに危険な状態かを見つめ直すきっかけになるかもしれません。

このまま人口オーナスが続いてしまうと、自身の年金が受け取れなくなる可能性もある、とても深刻な問題ですが、今からでもできる資産の守り方・資産形成の方法はいくらでもあります。

投資総合スクールThe Gavelの公式YouTubeチャンネルでは、自分自身の資産を守るための正しい投資の知識を発信していますので、ぜひ気になる方はこちらも合わせてご覧になってみてください。

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