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香りを食べる!野菜ソムリエがすすめる夏の薬味野菜3種「みょうが・しょうが・しそ」

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MICHIKO 調味料ソムリエプロ

執筆者

調味料ソムリエプロ

MICHIKO

野菜ソムリエプロ・カレーマイスター・食養生士・料理研究家・調味料研究家・調理師 食と健康と美をテーマに、講師・講演・セミナー・料理レシピ・調味料紹介や批評、開発・コラムの執筆などを手がけ、テレビ・雑誌の出演多数、著書も多い。生活習慣病などの生活や食事アドバイスもしている。

夏の代表的な薬味といえば、「みょうが・しょうが・しそ」。この3種類は、いつでも店先に並んでいるので季節感も忘れてしまいがちですけど、夏が旬なんですよ。

気温と湿度が高くなると、薬味野菜が活躍する季節です。一度にたくさん食べることはありませんが、薬味にはどんな役割があるのでしょうか。さわやかに美味しくて、身体にも良くて、食中毒予防にも効果があるとか…。効果のほどを紐解いて、新しい食べ方やひと工夫した使い方を知ってください。さぁ、夏の薬味野菜の世界へ!

薬味とは 

日本の料理は、健康に良いと誰もが認めるところです。薬味は料理を美味しく食べるための脇役ではあるけれど、健康に良い成分がたくさん含まれています。漢方では「加薬」と書かれています。料理に風味や彩りを添え、食欲を刺激するために、薬味は欠かせないものです。特に関西の料理では“香り”を、関東の料理では“味”を大事にしています。

刺身の薬味には、みょうがや青じそなど香りの強いものが添えられていますが、季節感や新鮮さをプラスし、香りや辛みで素材を生かしてくれます。「薬」よりも「味」として、風味や味を引き立てるために添えられるのが、香味野菜「薬味」なんです。

みょうが

日本原産の香味野菜で古くから各地の山野に自生していました。ご自宅の庭にも生えているという方も多いのではないでしょうか。いつも食べているのは、つぼみの部分で「花みょうが」と呼ばれています。野菜として栽培しているのは日本だけなんですよ。

シャキシャキとした歯ごたえとさわやかな香り、きれいな赤紫色をしているので、いろいろと活用できますね。みょうがはつぼみだけでなく、若い茎を軟白栽培したものは「みょうがだけ」と呼ばれていて、みょうがと同じように食べます。

栄養成分

ほとんどが水分で、カリウムが比較的多く含まれています。栄養の摂取というよりは、さわやかな香りと色合いを楽しみたいものです。香りはアルファピネンという成分で、胃液の分泌を促して食欲アップや消化を良くしたり、血の流れをスムーズにしたり、眠気を覚ましてくれたりすることも。淡い赤い色は抗酸化作用があるポリフェノールのアントシアニンで、酢と合わせると赤くきれいに発色して、料理が彩り良く映えますよ。

みょうがと豚肉やウナギと一緒に食べると、夏バテ防止、疲労回復に良いです。「みょうがを食べると忘れっぽくなる!?」っていう逸話がありますけど、それどころか、みょうがの香り成分には、頭をスッキリさせて記憶力や集中力を増す効果があるとか。加熱するより生で食べましょう。

選ぶポイント

  • 丸くふっくらしていて、硬くて重いもの。鮮やかに赤みがあってツヤがあり、先端の口が閉じているもの。傷がないもの。
  • 花が咲いていたり、茶色く変色したりしているもの、柔らかいものは風味が落ちていることもあるのでNG。

保存法

  • 乾燥すると香りが飛んでしまうので、濡らしたキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて、冷蔵庫の野菜室で保存します。
  • 傷みが早いので、早めに食べきりましょう。
  • 丸のまま、あるいは、使いやすいサイズにカットしてから、小分けにして保存袋に入れ、冷凍保存もOK。

調理アドバイス

  • 香りを生かしたいときは、食べる直前に切り、水に浸けずに。
  • あく抜きのために、長く水に浸けるとシャキッとはしますが、香りや旨み、薬効成分も水に溶け出してしまうので、浸けすぎないように。特にアントシアニンは水溶性なので、流れ出てしまいますよ。
  • 香り成分は油に溶けやすいので、油を使った調理がおすすめ。
  • 薬味だけでなく、煮物や焼き物、汁物、揚げ物など、さまざまな調理によく合います。

みょうがの卵とじ汁

みょうがは卵との相性が良いです。溶いた卵に薄切りにしたみょうを加えて混ぜ、味つけした澄まし汁に流し入れて、ひと煮立ちさせればできあがり。

みょうがで作る「甘酢漬け」

  • 箸休めに、肉や魚のグリルのつけ合わせに、寿司ご飯に混ぜても!
  • みょうがのアルファピネンと酢のクエン酸は、血行を良くして、代謝アップ!

【材料】
みょうが 3個
A:酢 大さじ2、砂糖 大さじ1、塩 少々

【作り方】
①みょうがは、それぞれ縦に4等分に切る。
②ポリ袋に(A)を加えてよく混ぜ、①を加える。空気を抜いて全体に液が回るようにして、そのまま1時間ほど置く。(冷蔵庫で保存します。)

しょうが

しょうがには、主に「新しょうが」と「葉しょうが」、「根しょうが(=ひねしょうが)」があります。

新しょうがは、夏の間(6月~8月頃)に収穫された若い生姜です。根しょうがと違い、収穫した後、貯蔵されずに出荷されたもので、茎のつけ根が鮮やかな紅色をしています。皮が薄くて白っぽく、みずみずしくてさわやかな辛みが特徴です。辛みは弱いので、そのまま薬味としても使えます。根しょうがと同じように、下ろしたり、刻んで下ごしらえに使ったり、夏のそうめんや冷や奴には欠かせませんね。甘酢漬けや佃煮、味噌漬け、乾燥させて生姜チップもおすすめです。

葉しょうがは、「谷中しょうが」とも呼ばれます。新しい根を葉つきのまま収穫します。茎をつけたまま、甘味噌をつけて食べたり、甘酢に浸けたりしても。生の葉は捨てずに、そのまま冷蔵庫に入れると、消臭効果があるので一週間くらい効果を発揮してくれます。また、ザッと刻んだりして布袋に入れて、入浴剤にすれば、暑い日の入浴もさわやかに入れますよ。

根しょうがは一般的に「しょうが」と呼ばれるものです。秋頃に収穫されて貯蔵されたものが通年出回ります。根しょうがは水分も抜け、筋っぽく、色も濃い。辛みも強く、薬効も高いので、薬味や味つけに向いています。

栄養成分

しょうがの栄養成分はそれほど多くはありませんが、昔から生薬としても愛用されてきました。さわやかな辛みはジンゲロールとショウガオールによるものです。胃腸の調子を整えて食欲をアップするとともに、血行を良くして身体を温める働きがあるので、風邪のひき始めや冷え性の改善にはとても良い食べ物です。漢方薬として咳止めや解熱にも用いられていますよ。抗酸化作用も高いので、生活習慣病や老化防止効果、ダイエット効果も注目されています。殺菌作用があるので、食べ物が傷むのを防ぐ作用も。よく生ものに添えられているので、いっしょに食べましょう。香りはジンギベレンという精油成分で、食欲アップ、解毒、疲労回復も。

生姜チューブはしょうが加工品であり、生の食材を使ったしょうがと同じ効果は得られにくいので、ちょっと面倒でも、生のしょうがを使いたいですね。風邪っぽいな!と感じたら、おろししょうがにはちみつを入れて熱湯で溶かしたり、おろししょうがと刻んだねぎに熱湯を加えて飲んだり、調理に加えたりすると、身体が温まりますよ。

選ぶポイント

  • 新しょうがは、全体の色が白っぽくツヤとハリがあり、茎の切り口の近くがきれいな紅色のもの。傷みやすいので、表面が乾いていたり、茶色くなっていたりするものはNG。
  • 葉しょうがは、茎が太すぎず、葉先の色が青々とした新鮮なもの。
  • 新しょうがや葉しょうがは日持ちがしないので、早めに使い切りましょう。
  • 根しょうがは、表面がなめらかでハリとツヤがあり、みずみずしいもの。皮に傷がなく、ふっくらしていて硬く重いもの。切り口が新鮮でカビていたり、干からびていたりしないもの。

保存法

  • 新聞紙で包んで常温保存。夏は冷蔵保存で。乾燥しているようなら、湿らせた新聞紙に包んで常温で保存します。
  • 洗ったしょうがを瓶や保存袋等に入れ、しょうがが隠れるくらいの水を加えて、冷蔵庫で保存。2~3日おきに水を交換します。
  • すり下ろしたり、使いやすいサイズにカットしたりして、小分けしラップに包んで保存袋に入れ、冷凍保存も。
  • 使いかけのものは、水気を拭き取ってラップに包み、冷蔵庫の野菜室で保存します。

調理アドバイス

  • しょうがの香りや辛みは、細かくきざむほど薬効が生かされます。生なら下ろしたり、炒め物や煮物などには千切りにしたりして使います。
  • 皮の近くに薬効成分が多いので、皮を残したまま下ろしたり、刻んだりすると良いです。気になるときは、スプーンや包丁などでこそぎ取ります。
  • 薄切りや千切りにするときは、しょうがの繊維に沿って切ると、きれいに切れます。
  • 下ろすときは、繊維と垂直に下ろし金を当て、円を描くように下ろすと、繊維が切れて、なめらかに下ろせます。酸素に触れると酸化してしまうので、食べる直前にすり下ろします。
  • じっくりと加熱すると香りが飛んでしまうので、香りを生かしたいときには、火を止める直前に加えましょう。また、身体を芯から温めたいときには最初から加えます。

*新しょうがのご飯

味つけ(塩味など)して炊きあがったご飯に、千切りにした新しょうがを加えて混ぜると、香りもさわやかな混ぜご飯に。

〇生で食べるしょうがと加熱したしょうがの使い分け

  • 生のしょうがは殺菌力が強いので、風邪のひき始めに。
  • 加熱したり乾燥させたりすると、辛み成分はショウガオールに変化し、内臓の働きが活発になるので冷え性の改善に。

〇肉や魚の臭み消し、肉を柔らかくする効果

しょうがの辛み成分には、殺菌作用や肉や魚の臭みを消す作用も。また、肉を柔らかくするタンパク質分解酵素が含まれているので、下ごしらえに。

*生姜焼き

生のしょうがを使い、肉を漬け込むことが必須!肉の臭みを和らげ、肉を柔らかくし、おまけにうま味も強くなりますよ。

新しょうがで作る「ガリ」

  • この時期だけの夏のお楽しみ!
  • 箸休めにも、酒のアテにも、魚や肉に添えても、混ぜご飯にも!

【材料】
新しょうが 120g
A:米酢 大さじ3、砂糖 大さじ1、塩 小さじ1╱3

【作り方】
①洗って、水気を拭き取り、スライサーなどで薄く切る。
*繊維に沿って縦に切った方が、食感良く、切り口もきれいに仕上がります。
*先端の紅色の部分を一緒に入れて漬け込むと4きれいに発色します。(できあがり後、取り出します。)
②たっぷりの湯でサッと茹でて、ザルに上げ、冷めたら水気を絞る。
③保存容器に(A)を加えて混ぜ合わせ、②を加えて漬ける。冷蔵庫で一晩置くと、味がしみる。
*残った甘酢は、酢の物、オイルを少量加えてドレッシングなどに使いましょう。

しそ

古くから薬草として使われ、平安時代から栽培されていました。「しそ=紫蘇」とは、本来は赤じそのことを指します。緑色のしその葉は、赤じその変種で、青じそ(=大葉)といいます。青じそはハウス栽培で年間を通して手に入りますが、旬は夏なんです。赤じそは、梅干しの色づけ用やしそジュースに使われ、初夏~夏だけに出回ります。他に、花や実をつけた穂や若い芽などがあり、刺身のつまとして食べられていますよ。

栄養価

栄養価の高い野菜です。βカロテンの含有量はにんじん以上、ビタミンCやEも豊富なので抗酸化作用が高く、生活習慣病やがん予防が期待されます。カルシウムや鉄などのミネラルもたっぷり。

さわやかなすがすがしい香りは、ペリルアルデヒドなどの成分によるもので、抗菌作用、防腐効果、食中毒防止することも。魚の鮮度を保ってくれたり、生臭さを抑えてくれたりします。よく刺身に添えられているので、刺身と一緒に食べましょう。また、胃液の分泌を促してくれるので、暑さで食欲が落ちた時、肉や魚などをさっぱり食べたいときにおすすめです。殺菌効果があるので、お弁当のおかずに加えるといいですね。

選ぶポイント

  • 葉の緑色が鮮やかで厚みがあり、葉先までピンとしていてハリがあり、切り口がきれいなもの。
  • 葉に黒い斑点が出ているものや、しおれているものは避けて。

保存法

〇冷蔵保存

しその葉は乾燥に弱いです。買ってきたら、軸の先の部分を2mmくらい切り落として、冷蔵庫で保存しましょう。

  • びんや保存袋等に水を少量入れて、しその葉を縦に入れる。*水にしその葉の軸の先が浸っていれば、OK。
  • 湿らせたキッチンペーパーにしその葉を包んで、ポリ袋に入れる。

〇冷凍保存

  • 水気を切って、1枚ずつラップに包み、保存袋に入れる。
  • 水気を切って、使いやすいサイズにカットして、保存容器に入れる。*凍ったまま、使いましょう。

調理アドバイス

  • 生でそのまま食べる時は、使う前に水に浸けると、パリッとみずみずしくておいしい。
  • 細かく刻むと、大葉の香りが際立ち、防腐効果もアップ。梅干しと合わせると、効果はさらに大。葉に接している面だけに殺菌効果があるといわれています。
  • 豊富なβカロテンは脂溶性なので、油を使った調理がおすすめ。
  • 生で食べるだけでなく、加熱する料理にも使ってみましょう。
  • 鶏肉や豚肉、ベーコンで巻いて焼いたり、餃子などに入れても。

夏、赤じそで作るジュース!

  • 酢やレモン汁を入れると、きれいなピンク色に変わるから不思議!
  • 甘酸っぱく爽やかな味は、夏にピッタリの一杯!夏バテ予防に!

【材料】
赤じその葉(正味) 100g、水 400ml、砂糖 100g、酢(レモン汁) 50ml

【作り方】
①水洗いし、赤じその葉だけ(茎から葉だけを摘む)を取り、水気をよく切る。
 *水切りには、サラダスピナーを使うと楽です。
②水を沸騰させ、①を入れ、1分ほど煮込み、色を出して、火を止める。
 *葉が赤から緑に色が変わります。
③赤じその葉をザルに取り出し、水気を絞る。(上から、カップなどで押す。)
④③の汁に砂糖を入れ溶かし、酢を入れる。
 *水や炭酸水で好みの濃さ(4倍くらい)に割って飲みましょう。
 *冷蔵庫で保存しましょう。

美味レシピ2選

薬味とトウモロコシのマリネサラダ

  • さっぱりとした薬味ときゅうりのマリネに、甘いとうもろこしがアクセント!
  • 箸休めにも、肉や魚のグリルの付け合わせとしても、食欲アップ!

【材料】(2人分)
みょうが 2本、大葉 3枚、新しょうが 3cm(20g)、きゅうり 1/2本、とうもろこしの実 40g(1╱4本分)、白ごま 適量
(A)酢 大さじ2、砂糖 小さじ2、塩、こしょう 各少々、オリーブ油 大さじ1

【作り方】
①みょうがは縦に半分に切って斜め薄切り、大葉は縦に半分に切って横に千切り、新しょうがは皮をスプーンなどでこそぎとり、繊維に沿って千切りにする。きゅうりは細切りにし、とうもろこしは軸から実をはがす。
②ボウルに、(A)を加えて混ぜ、①をそのまま加えて、混ぜ合わせる。
③器に盛り、白ごまを振る。
 *冷蔵庫で冷やすと美味しいですよ。

鶏肉とナスの和風薬味ソース炒め

  • 和風に味付けした鶏肉とナスを、薬味と一緒に!
  • さっぱりとした薬味がこってりとした味によく合い、ご飯のおかずにも、お酒のお供にも!

【材料】(2人分)
鶏もも肉 1枚(250g)、なす 1本、片栗粉 小さじ2、オリーブ油 大さじ2
(A)みょうが 1本、大葉 2枚、しょうが 10g
(B)酒、みりん、しょうゆ 各大さじ1

【作り方】
①鶏肉は一口大に切って、片栗粉をまぶす。なすは乱切りにする。(A)はそれぞれ千切りにする。
②フライパンにオリーブ油を熱し、なすを焼いて取り出す。残りのオイルで鶏肉を両面焼き、火を通す。
③②に、(B)の調味料を加えて煮、なすを戻し入れて絡める。
④器に③を盛り付け、合わせた(A)を飾る。
 *お好きな夏野菜で作ってみてくださいね。

おわりに

いつも当たり前のように食べている薬味ですが、蒸し暑くなると菌が繁殖しやすくなるので、殺菌効果も見込んで食べたいのが薬味野菜です。薬味野菜は、生で大量に食べるものではありませんが、少量でも料理に独特の香りや旨み、辛みが加わり、さっぱりといただけます。食欲がなくなりやすい夏場にぴったりです。美容やダイエットをサポートしてくれるので、栄養バランスを考えて美味しくいただきましょう。

食べるだけでなく、冷房などで身体が冷えた時には、しょうがをすってお茶パックなどに入れて、お風呂に入れたり、足湯をすると、ポカポカに身体の芯まで温まりますよ。是非、お試しを!

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