秋は燥の季節です。“天高く馬肥ゆる秋”という言葉がイメージするように、秋はとても気持ちの良い天気に恵まれることが多くなり、一年の中でも過ごしやすい時期になります。東洋医学においても、秋は陰陽や寒熱のバランスが整う日が多くなるので、体調も整えやすい季節と考えています。
しかし、そうはいっても各季節には各季節なりの不調が出てくることがあります。東洋医学では春夏秋冬ごとに季節の特徴を当てはめていますが、その特徴の過剰によって私たちの身体にも影響が出てきます。過剰になって身体に悪い影響が出てしまうと、五邪(五悪)になってしまいます。
上記の表を見てみると、秋は燥ということになります。秋はカラッとした日も多く気持ちがいいのですが、しかし、過ぎたるは及ばざるが如しで、この燥もまたいき過ぎて激しくなると「燥邪」というものに変化して、私たちの身体に影響を与えることになります。
秋の抜け毛について
秋に増えてくる抜け毛は、普段の血行不良に加えて、この燥邪によるものと考えられます。頭皮が乾燥することで、頭皮の毛穴の潤いが減り、髪へのダメージが多くなるためです。そこで、乾燥と関係する肺のツボと、肺と裏表の関係にある大腸のツボもご紹介していきます。さらに、頭皮の血行を改善するツボもご紹介します。
乾燥対策のツボ
乾燥対策に効果的なツボをご紹介いたします。
尺沢(しゃくたく)
尺沢は肺につながるツボです。肺につながる経絡(気が流れるルート)上にあり、合水穴という分類に入るので、身体の潤いに通じるものになります。頭皮の潤いにも効果がありますので、じんわりと押してみましょう。
場所:肘を曲げたときにできる横しわ上で、少し浮き出る腱の外側
押し方:やや強めに押しても大丈夫です。1回3〜5秒×3〜5回
合谷(ごうこく)
合谷は、大腸につながるツボで、親指と人差し指の付け根にあります。合谷はさまざまな症状に効果があり、鍼灸施術でもよく使われるツボのひとつです。
場所:親指と人差し指のつけ根
押し方:やや強めに押しても大丈夫です。1回3〜5秒×3〜5回
頭皮の血行を改善するツボ
乾燥だけではなく、頭皮の血流を改善するツボも同時に使うとより効果的です。ここでは、代表的なものを二つご紹介いたします。
澤田流天柱(さわだりゅうてんちゅう)
天柱という名前のツボがありますが、今回ご紹介する天柱は、大正時代に活躍したお灸の名人である澤田健先生が使用していた天柱で、通常の天柱とは位置が異なります。“ツボは古来より言い伝えられてきたものなので、同じ名前のツボでも、書物によって位置が違ったり、また、各先生の手先の感覚でツボを取っていくため、ややズレたりということはよくあります。澤田先生は、類稀なる研鑽によって独特なツボの取り方をしていたといわれており、実践的で、効果的なのでで、“澤田流天柱”としてご紹介いたします。
場所:頭と首の筋肉の付け根にあります。
押し方:気持ちが良いくらいにグーッと1回3〜5秒×3〜5回
風池(ふうち)
風池もまた、澤田流天柱と同じような位置にあり、頭皮への血流を改善してくれます。頭皮への血流は、過度なストレスによっても影響を受けますが、この風池は、首筋の血流を増してくれるだけではなく、ストレス対策にもよく使われるツボになります。
場所:首の後ろ、髪の毛の生え際で、外側のくぼみにあります。
押し方:日頃のストレスが取れるように気持ち良く押します。1回3〜5秒×3〜5回
澤田流天柱、風池ともに、頭を抱えるようにして押すとやりやすいです。
側頭部のマッサージもおすすめです
頭の表面には、いくつもの経絡が通っています。ツボをピンポイントに押そうと意識せず、大まかでいいので、側頭部の経絡に沿ってマッサージをするのもさらに効果的です。
おわりに
気象条件は毎年異なり、一喜一憂することが多いかもしれません。特に秋は身体は乾燥の影響を受けやすくなります。今回ご紹介したツボは、肺や大腸といった秋に関連するツボでもありますので、抜け毛対策だけではなく、養生として使ってもらっても大丈夫です。
抜け毛の原因は以上のような原因ばかりだけではなく、ホルモンバランス、疲労、栄養不良なども関わってきます。その原因によっては、ツボだけで改善できないこともあります。抜け毛の裏には他の要素も関係しているということを意識していただき、ひとつの健康のバロメーターとして見ておくことも大切になりますね。
また、寝る前には充分頭皮を乾燥させておくことも抜け毛予防には大切です。衣服の生乾きのように、微妙に残る湿気は雑菌の温床にもなりますし、かえって頭皮の乾燥を助長してしまうこともありますのでご注意くださいね。