あなたは「お墓参りへひとりで行ってはいけない」と言われた経験や、聞いた記憶はありますか?とはいえ「子どもは遠方に住んでいて滅多に帰ってこられないし、月命日のお墓参りにはひとりで行くしかない」などの理由で、ひとりで行くことを余儀なくされる方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、本当にお墓参りにひとりで行くのは良くないことなのか、またどのような理由でそのような噂が流れているのかを説明します。ひとりでお墓参りに行くときに気をつけるべき点も紹介しますので、最後までご確認ください。
- お墓参りにひとりで行っても宗教やマナー上の問題はない
- ひとりで行く場合は熱中症対策や連絡手段の確保を忘れずに
- 健康や年齢的に不安がある場合は、代行サービスの利用がおすすめ


お墓参りにひとりで行くのはNGではない

まず結論をお伝えすると、「お墓参りへひとりで行ってはいけない」という明確なルールはありません。宗教的な理由や、マナーとしてもとくに問題はありませんので、「今までいつもひとりでお墓参りに行っていた」「これからお墓参りにひとりで行くんだけど大丈夫?」と心配していた方もご安心ください。
しかし、念のため次に紹介する「お墓参りにひとりで行ってはいけない」といわれるようになった理由を確認しておくと安心でしょう。
「お墓参りにひとりで行ってはいけない」と言われる理由

「お墓参りにひとりで行ってはいけない」という言葉を、一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。親や祖父母の世代から受け継がれてきたこの言い伝えには、いくつかの背景があります。
この言い伝えの理由は、大きく分けると「迷信や言い伝えにまつわるもの」と「現実的な危険性にまつわるもの」の2つに分類できます。前者は科学的根拠のないスピリチュアルな考え方ですが、後者は現代でも十分に注意すべき実際のリスクを含んでいます。
具体的には、以下の3つの理由が挙げられます。
- 理由1:迷信やスピリチュアルな言い伝え
- 理由2:転倒や体調不良など現実的な危険性
- 理由3:野生動物との遭遇や犯罪被害のリスク
結論として、ひとりでのお墓参り自体に宗教上やマナー上の問題はありません。しかし、「ひとりで行ってはいけない」という言葉の裏には、身の安全を守るための生活の知恵が隠されていることも事実なのです。
それでは、それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
理由1:迷信やスピリチュアルな言い伝え
昔から、「ひとりでお墓参りに行くと悪い霊に取り憑かれる」「お墓には霊がたくさんいて、ひとりだと連れて帰ってしまう」といった迷信が語り継がれてきました。夜のお墓は邪気が強いため、特にひとりで行くのは危険だという考え方もあります。
確かに、お墓は怖い話や肝試しの舞台として、テレビや本でもたびたび取り上げられます。そうしたイメージが、「お墓=怖い場所」という印象を強めてきた側面もあるでしょう。
しかし、これらはあくまでスピリチュアルな考え方であり、科学的な根拠はありません。お墓は本来、ご先祖様や故人が安らかに眠り、家族との絆を感じられる神聖な場所です。恐怖の対象ではなく、心を静めて故人と向き合える大切な空間と捉えるべきでしょう。
もちろん、霊感が強い方や、どうしても不安を感じる方は、無理にひとりで行く必要はありません。家族や友人と一緒に訪れることで、心の負担を軽くすることもできます。大切なのは、自分が安心して手を合わせられる環境を選ぶことなのです。
理由2:転倒や体調不良など現実的な危険性
「ひとりで行ってはいけない」と言われる最も現実的な理由は、お墓参り中に起こりうる事故やトラブルのリスクです。これは迷信ではなく、実際に注意すべき危険性といえます。
具体的な危険性として、以下の3点が挙げられます。
- 熱中症のリスク:墓地は日陰が少なく、夏場は墓石からの照り返しが強いため、気温以上に暑さを感じます。特に高齢の方は体温調節機能が低下しているため、気づかないうちに熱中症になってしまうことがあります。ひとりでいると、体調の変化に気づいてくれる人がいないため、対処が遅れる危険性があります。
- 転倒のリスク:墓地には段差や石畳、滑りやすい場所が多く存在します。特に雨上がりや落ち葉の多い時期は、足元が非常に危険です。転倒して動けなくなった場合、ひとりでは助けを呼ぶことさえ難しくなるかもしれません。
- 人目につきにくい環境:多くの墓地は、お彼岸やお盆以外の時期には人がまばらです。万が一、体調を崩したり怪我をしたりしても、発見が遅れてしまう可能性があります。高い墓石に囲まれた場所では、屈んでいる状態では周囲から見えにくく、救助が遅れる恐れもあります。
これらのリスクは、体力に不安のある高齢者にとっては特に深刻です。しかし、若い方であっても、油断は禁物といえるでしょう。
理由3:野生動物との遭遇や犯罪被害のリスク
山間部や人里離れた場所にある墓地では、野生動物との遭遇というリスクも存在します。特に近年は、クマやイノシシが人間の生活圏内に出没するケースが増えており、墓地も例外ではありません。
野生動物の危険性として、以下が挙げられます。
- クマやイノシシなどの大型動物に遭遇した場合、ひとりでは適切な対処が難しく、襲われる危険性があります
- 春から夏にかけては、スズメバチの巣に気づかず近づいてしまい、攻撃を受けるリスクもあります
- カラスが縄張り意識を持つ時期には、威嚇や攻撃を受けることもあります
また、人気の少ない墓地では、犯罪に巻き込まれる可能性もゼロではありません。具体的には、参拝中の車上荒らし、掃除中のバッグからの貴重品の盗難、人目のない場所での声かけや付きまといなどが考えられます。ひとりでいると、複数人でいるときに比べて、悪意を持った人にとっての「狙いやすい対象」になってしまう可能性があるのです。
こうしたリスクは、時代背景によって変化してきたものの、現代でも完全になくなったわけではありません。江戸時代や明治時代には山賊や野盗の危険があったため、「ひとりで行くな」という教えが広まりました。現在は治安が改善され、携帯電話やGPS機能も普及していますが、山間部の墓地などでは依然として注意が必要なのです。
ひとりでも安心!お墓参りのための安全対策リスト

ここまで、「ひとりで行ってはいけない」と言われる理由を見てきましたが、適切な準備と対策を行えば、ひとりでも安心してお墓参りができます。前述したリスクを回避するために、以下の3つの対策を実践しましょう。
- 【対策1】時間帯と天候を考慮する
- 【対策2】行き先と帰宅時間を家族に共有する
- 【対策3】服装と持ち物を準備する
これらの準備をしっかり行うことで、ひとりでも安全にお墓参りができ、故人と心静かに向き合う時間を過ごせます。それでは、それぞれの対策について詳しく見ていきましょう。
【対策1】時間帯と天候を考慮する
安全なお墓参りのためには、訪れる時間帯と天候を事前にしっかり考慮することが重要です。
時間帯については、足元が明るく、万が一の際に人目につきやすい「午前中」が最も適しています。具体的には、8時から11時頃までの時間帯がよいでしょう。午前中であれば、夏場でも比較的涼しく、熱中症のリスクを軽減できます。また、日が高いうちに帰宅できるため、夕暮れ時の転倒リスクも避けられます。
逆に避けるべき時間帯は、日没後の夜間です。足元が見えにくくなり、転倒の危険性が格段に高まります。また、人目も少なくなるため、防犯面でも不安が増します。夏場の11時から14時頃も、気温が最も高くなる時間帯のため、できるだけ避けた方が無難でしょう。
天候については、足元が滑りやすくなる雨の日や、体調を崩しやすい天候不順の日を避けることをおすすめします。特に以下のような日は、お墓参りを延期することを検討しましょう。
- 雨が降っている日や雨上がり直後(石畳や階段が滑りやすい)
- 強風が吹いている日(供花が倒れたり、飛ばされたりする危険がある)
- 雷雨の予報が出ている日(墓地には金属製品が多く、落雷の危険性がある)
- 猛暑日や熱中症警戒アラートが発表されている日
天候に少しでも不安があれば、無理をせず別の日にお参りすることが、ご先祖様への最善の配慮といえるでしょう。
【対策2】行き先と帰宅時間を家族に共有する
万が一の事態に備え、お墓参りに行く前には必ず家族や知人に行き先を伝えておくことが大切です。これは、ひとりでお墓参りをする際の最も基本的な安全対策といえます。
「どこへ」「いつからいつまで」行くのかを具体的に共有しておくことで、緊急時の早期発見につながります。たとえば、「○○霊園の△△区画に、12時から14時頃までお墓参りに行きます」というように、できるだけ詳細に伝えましょう。
連絡方法としては、LINEやメールで行き先と帰宅予定時刻を送っておくと、記録として残るため安心です。また、以下のような情報も合わせて伝えておくとよいでしょう。
- 墓地内での具体的な作業予定(掃除をする、供花を交換するなど)
- 立ち寄り予定の場所(花屋、コンビニなど)
- 天候が悪化した場合の判断基準(「雨が降ったら中止して帰る」など)
そして、スマートフォンなどの連絡手段を必ず携帯し、いつでも連絡が取れる状態にしておくことが重要です。墓地に到着したとき、作業を終えて帰路につくとき、予定時刻を30分以上過ぎそうなときには、必ず連絡を入れましょう。
携帯電話のバッテリー残量にも注意が必要です。フル充電の状態で出かけ、心配であればモバイルバッテリーも持参すると安心でしょう。また、緊急連絡先をスマートフォンに登録しておけば、万が一の際に救急隊員が家族に連絡できます。
【対策3】服装と持ち物を準備する
ひとりでお墓参りに行く際は、動きやすく安全面に配慮した服装と、必要な持ち物をしっかり準備することが大切です。
服装については、虫刺されや日焼けを防ぐ長袖・長ズボンと、滑りにくい履き慣れた靴が基本です。お墓参りは落ち着いた色合いの服装がマナーとされていますが、ひとりで行く場合は安全性も考慮しましょう。新しい靴は避け、足に馴染んだ歩きやすいものを選んでください。また、万が一迷子になったときや緊急時に発見されやすいよう、帽子やバッグなど小物の一部に目立つ色を取り入れるのもよいでしょう。
持ち物については、以下のチェックリストを参考にしてください。特に夏場は熱中症対策が不可欠です。
【必須アイテム】
- スマートフォン(フル充電+モバイルバッテリー)
- 飲み物(500ml以上、夏場は1L以上)
- タオル(汗拭き用・手拭き用)
- 現金(小銭を含めて3,000円程度)
- 常備薬(特に持病のある方は必携)
【お参り用品】
- 線香、ろうそく
- ライターまたはマッチ(風に強いタイプがおすすめ)
- 供花
- 数珠
【掃除用品】
- 軍手
- 柔らかいスポンジ
- 乾いたタオル
- ゴミ袋
【季節別の追加アイテム】
- 夏季:日傘、冷感タオル、虫よけスプレー、塩分補給タブレット
- 冬季:防寒具、カイロ、温かい飲み物、滑り止め付き手袋
これらの準備を整えることで、ひとりでのお墓参りでも十分に安全を確保できます。
確認しておきたいお墓参りの作法

ここで、お墓参りに行くときの作法について一般的なマナーを確認しておきましょう。地域やご親族の考え方などによって多少の違いはあると思いますので、一例としてご確認ください。
お供え物は持ち帰る
お供え物は、基本的に持ち帰るのがマナーです。食べ物や飲み物などのお供え物を放置すると、野生動物による被害や腐敗による異臭など、トラブルに発展しやすくなります。
また、暮石にお酒やジュースをかける行為も基本的にはNGです。なぜなら、暮石が劣化しやすくなってしまううえに、かけっ放しで放置しておくと悪臭を放つ可能性もあるからです。
故人が好きだった飲み物をかけてあげたいという気持ちもわかりますが、なるべく暮石にかけるのではなくお供え物として供えてあげるのが良いでしょう。
ろうそくや線香の火の消し方に注意
お墓参りを終えてその場を離れるときは、ろうそくや線香の火の始末を忘れずに。線香に火を灯すためのろうそくを消すときは、必ず手であおぐようにしましょう。宗教的な考えに、人の息は不浄であるという考えがあるため、ろうそくの火を消すときにフッと息を吹きかけるのはNGです。
ちなみに、線香の火はなるべく最後まで消さない方が良いといわれている場合があります。線香に火が灯っているうちはできる限り故人に手を合わせながら、会話を楽しむのが理想。
しかし、長い線香の火が消えるのを待つのは時間がかかるため、短い線香を用意したり、火をつける前に半分に折ったりなど工夫するのがおすすめです。
避けた方が無難な花がある
お墓参りの必需品ともいえる供花は、ユリや菊などが一般的ですが、次のように避けた方が良いとされている花もいくつかあります。
- バラ(トゲがある花)
- ツバキ(首が折れて枯れる花)
- 彼岸花(死を連想させるような花)
- ゼラニウム・ラベンダー(香りが強い花)
お供え用の花を用意するときは、生花店でお墓参りに行くことを伝えるのが無難です。故人のイメージなどを伝えると、それに合った花を見繕ってくれるでしょう。
複数のお墓を回る場合は計画的に
ご親族が多い方は、1ヵ所だけではなく複数の墓地にお墓参りに行く必要があるかもしれません。この場合「1日に複数のお墓を続けて渡り歩き、お参りしても良いの?」と思う方もいるでしょう。これに関しては、1日に複数の墓地に行き、同日にまとめてお墓参りをしても特に問題はありません。
ただし、複数の墓地を回ると歩数の多さや足場の悪さで疲れてしまい、体調不良や転倒リスクも高まります。とくに高齢者の方は注意が必要なため、年齢や体調に合わせてお墓参りの計画を立てるようにしましょう。
ついで参りは避ける
複数の墓地を巡ってお墓参りをすることについては問題ないのですが、「ついで参り」は避けるようにしてください。ついで参りとは、その名のとおり、何かの用事のついでにお墓参りに行くことです。
- 旅行のついで
- 墓地の近くの公園に遊びに行くついで
- 近くに買い物に来たついで
など、実際に誰にでも起こりうる状況がついで参りになってしまいがちです。「ついで」にならないように、まずはお墓参りに行くことを目的として、「そのついでにお買い物をして帰る」という気持ちを持つようにしましょう。
手を合わせる前に掃除を済ませる
お墓参りの際には、まず墓石やその周りを掃除し、きれいな状態にしてから手を合わせるのが基本的な流れです。
具体的な手順としては、まず古い供花や枯れた花を処分し、墓石を水で濡らしてから柔らかいスポンジで優しく拭き、雑草を抜いて落ち葉を掃き、最後に乾いたタオルで水分を拭き取ります。この一連の清掃作業を終えてから、新しい供花を供え、線香をあげて手を合わせるのが正しい順序です。
ご先祖様が気持ちよく過ごせる環境を整えることの重要性は、どの宗派でも共通しています。掃除を通じて故人への敬意を示し、心を込めてお墓をきれいにすることが、真の供養につながるのです。
ひとりでお墓参りをする場合、掃除の時間も含めて余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。慌ただしく済ませるのではなく、ゆっくりと故人と向き合う時間を大切にしましょう。
ひとりで行くのが不安・時間がない方は代行サービスも検討

これまで紹介した安全対策を講じても、体力的な不安や多忙さから、どうしてもお墓参りが難しい場合もあるでしょう。そんなときは、自宅の仏壇に手を合わせることや、代行サービスの利用を検討するのも一つの選択肢です。
自宅で仏壇に線香をたいて手を合わせることも、立派な供養です。お墓のある方向を向いて合掌するだけでも、故人には十分に気持ちが伝わります。ただし、何年もお墓に行けない状態が続くと、お墓の劣化や周囲への影響が心配になります。
そこでおすすめしたいのが、くらしのセゾンが提供する「お墓参り・お墓掃除代行サービス」です。このサービスには、以下のような魅力があります。
全国どこでも対応可能で、専門のスタッフが心を込めてお墓参りとお墓掃除を代行してくれます。遠方にお墓がある方や、移動が困難な方でも安心です。
作業前後の写真を報告書として提出してくれるため、現地に行けなくてもお墓の様子をしっかり確認できる安心感があります。墓石の状態やひび割れなど、気になる箇所があれば報告してもらえるのも大きなメリットです。
さらに、「故人が好きだった花をお供えしてほしい」「除草剤を散布してほしい」といった個別の要望にも柔軟に対応してくれる、お客様に寄り添ったサービスです。
忙しくてなかなか時間が取れない方、高齢で遠出が難しい方、ひとりで行くことに不安を感じる方は、こうした代行サービスを活用することで、ご先祖様を大切に思う気持ちを形にすることができます。
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おわりに
「お墓参りにひとりで行ってはいけない」という言葉の真意は、宗教的な禁忌ではなく、身の安全を守るための生活の知恵でした。迷信やスピリチュアルな言い伝えもありますが、最も重要なのは、熱中症や転倒、野生動物との遭遇といった現実的なリスクへの備えです。
適切な時間帯と天候を選び、家族に行き先を伝え、安全に配慮した服装と持ち物を準備すれば、ひとりでのお墓参りは何ら問題ありません。むしろ、誰にも気兼ねせず、故人と心静かに対話できる貴重な時間になるでしょう。
どうしても自分では行けない事情がある場合は、代行サービスを活用するという選択肢もあります。大切なのは、ご先祖様を想う気持ちを持ち続けることです。
この記事を参考に、安心してお墓参りに向かっていただければ幸いです。
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