ご自身の老後やご家族の介護のことを考えて、老人ホームを検討している方は多いのではないでしょうか。老人ホームを選ぶ際はしっかりと見学をして、利用される方に合った施設を見つけることが大切です。そこで今回は、老人ホームの種類の違いから、見学に行く際のポイントをまとめました。老人ホームについてしっかりと理解した上で、見学を行いましょう。
見学前にしておくべきこと
老人ホームといってもさまざまな種類があることをご存知ですか?受けることができるサービスや、受け入れ条件が違うので、見学に行く前に種類を絞っておくと決めやすいでしょう。
老人ホームの種類をおさらい
ここからは老人ホームの種類について確認をしていきましょう。
特別養護老人ホーム
「特別養護老人ホーム」とは、在宅での生活が難しくなった要介護の高齢者の方が入居できる公的な介護保険施設のひとつです。以前は入居待機者がとても多く、特別養護老人ホームに入ることは難しいといわれていました。現在は入居要件が厳しくなったため、待機期間は長いところで数年、短いところでは申し込みから1~2ヵ月と地域によっては入りやすくなりました。
基本的には要介護3以上か特例で要介護1・2の方が対象なため入居要件は厳しいのが特徴です。公的な施設のため、民間運営の有料老人ホームよりも低額で利用できる点が魅力です。
特別養護老人ホームは「地域密着型」「広域型」「地域サポート型」の3種類があります。地域密着型は定員29名以下とされており、基本的には特別養護老人ホームがある市町村の住民票を有する方のみが入居できる仕組みになっています。広域型は入居定員30名以上となり、どこの居住者でも入居は可能です。
地域サポート型はその地域で在宅介護生活を送っている方を対象に、24時間体制で見守りサービスを行うものです。介護認定を受けていないものの生活に不安がある方も対象としています。
ケアハウス
ケアハウスは軽費老人ホームの一種で「軽費老人ホームC型」という呼び名でも呼ばれています。軽費老人ホームはA型・B型・都市型・C型の4つに分けられていますが、現在ではA型とB型は経過的措置のため新設は認められておらず、都市型は大都市圏のみの設立となっており、軽費老人ホームのほとんどがケアハウスです。
ケアハウスは、自宅での生活が難しい高齢者が洗濯や食事などの介護サービスを低料金で受けられる施設です。助成金の制度があるため、低所得の高齢者でも入居が可能。年齢は60歳以上の方が入居対象となり、一人暮らしや身寄りがない方、身体機能が低下している方に適しています。
また、ケアハウスには「一般型」と「介護型」があります。
一般型のケアハウスは家族の援助を受けることが困難で、自立した生活に不安がある60歳以上の方が利用できます。主に、食事や洗濯・掃除などの生活支援や緊急時の対応などのサービスが受けられます。介護サービスを利用する場合は外部との契約が必要です。
介護型のケアハウスは、65歳以上で要介護1以上の方が対象です。食事や生活援助のサービスだけでなく「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているため、入浴や排泄・機能訓練・療養上のお世話などのサービスを受けることも可能です。また、施設によっては認知症や看取りの対応を行っているところもあり、介護度があがってしまっても退去せず、長く住み続けることができます。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、介護・食事・家事・健康管理などのいずれかのサービスを提供し、高齢者が心身の健康を保ちながら生活できる住まいのことです。単なる住まいではなく、高齢者に合わせたサービスやバリアフリー度の高い施設でもあります。
有料老人ホームには3つのタイプがあり「介護付」に「住宅型」「健康型」に分けられています。介護サービスの提供があるかどうかが大きな違いとなっています。
「介護付」は介護サービスがついた高齢者向けの住まいです。介護付と付けることができるのは、「特定施設入居者生活介護の指定」を都道府県から受けた施設のみです。これは、国の定めた「介護スタッフの人数」や「設備」などをクリアしていることを示しています。
「住宅型」は主に生活支援のサービスが付いた住まいになります。施設には、介護サービスはついておらず、介護が必要になった際は外部のサービスを利用しなければなりません。
「健康型」は食事などのサービスが付いた住まいです。自立して生活ができる高齢者のみが対象で、介護が必要になった際は退去しなければなりません。
有料老人ホームでは他の入居者とも交流できるため、孤独を感じず暮らせるのが魅力です。
グループホーム
グループホームは認知症の症状がある高齢者を対象としています。5~9人を1ユニットとし、1施設2ユニットを上限としてケアサービスを行うため、なじみのあるメンバーで生活することができます。
生活上のつまずきの解消がしやすく、心身ともに穏やかな状態を保てるため、認知症があっても生活しやすく、症状の進行を和らげる可能性もあるようです。運営する会社は営利企業が多いですが、中には医療法人やNPO法人、社会福祉法人などが運営するところもあります。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅とは、バリアフリーの完備や安否確認などさまざまな生活支援のサービスがある高齢者の住まいです。有料老人ホームとは異なり、あくまでも住まいの場である「賃貸住宅」という点がポイントです。
現在の介護度は低いけれど、今後自宅で暮らすことが難しくなった場合のことを考えて利用したいという方におすすめの施設といえます。生活上の自由度が高く、各居室にトイレや台所、浴室が付いている場合が多いのも魅力のひとつです。
サービス付き高齢者向け住宅は「一般型」と「介護型」の2つのタイプに分かれています。「一般型」は介護度が悪化した際は退去になる可能性があります。また介護サービスが必要になった場合は外部サービスを利用しなければなりません。「介護型」は介護度が高くても入居ができ、介護サービスも施設に常駐しているスタッフから受けることが可能です。
パンフレットで注目するべきポイント
ここからは、施設の概要以外にも注意しておきたいポイントを確認していきましょう。
特定施設入居者生活介護の指定
特定施設とは、介護法で定めているスタッフ配置や設備、運営などの基準をクリアし、都道府県知事(または市区町村)から「事業指定を受けた施設」のことをいいます。
さまざまな高齢者をサポートする施設がある中で、「特定施設入居者生活介護」の指定がある施設は介護付有料老人ホームと呼ばれ、施設で提供される介護サービスを定額制で提供します。特定施設入居者生活保護の指定は、有料老人ホームのみではなくケアハウスやサービス付き高齢者向け住宅でも受けることができます。
終身利用
終身利用ができる介護施設は一部しかなく、公的施設であれば「特別養護老人ホーム」「介護医療院」「ケアハウス」、民間施設では「介護付有料老人ホーム」となります。終身利用が可能な介護施設は、申し込みから入所まで順番待ちになることも多いようです。
24時間対応
「介護付老人ホーム」では日中の看護師配置は義務付けされていますが、24時間対応は義務ではありません。深夜や早朝でも入居者の体調が悪くなってしまうことはあるため、24時間通して専門知識や技術がある看護師が近くにいると安心です。もしもに備えておきたい方は24時間対応が可能かどうかも確認しておくと良いでしょう。
見学までの流れを確認
パンフレットのみでは情報が充分とはいえないため、入所後に後悔しないように見学は必ず行いましょう。見学の際には予約が必要です。予約の際には担当者がいる日にちを確認し、余裕をもって行うと安心です。
見学の持ち物とマナー
見学の際は予約の時間はしっかりと守り、万が一遅刻する場合などは必ず連絡をするのがマナーです。また老人ホームでは個室で休んでいる方もいるため、大声で話したり個室に勝手に入ったりすることはやめましょう。
見学の際は見聞きした内容を忘れないよう、メモや筆記用具、見学チェックリストを用意しておくと便利です。
見学におすすめの時間帯と見学回数
見学は昼食やレクリエーションの時間帯がおすすめです。入居者やスタッフの様子を見て入居後のイメージをすることができます。また見学は可能であれば2・3人で行くと、1人では気付けないポイントを確認することができるでしょう。
見学時に確認するべきポイントは大きく4つ
見学時に確認すべきポイントをまとめましたので確認していきましょう。
項目 | 詳細 |
施設や設備 | 居室共有スペース・機能訓練室入浴設備トイレ施設の使い勝手・メンテナンス施設の周辺環境・メンテナンス |
介護や医療サービスの内容 | 健康管理体制リハビリ内容医療機関との連携終末期医療・見取り介護の有無ケア体制認知症ケア介護予防・自立支援人員体制 |
生活面のサポート内容 | イベントやレクリエーション食事面会体制嗜好品の扱い |
その他 | 施設長の運営方針施設の雰囲気 |
施設や設備
施設内には個人のスペースと共有スペースとがあります。どちらも実際の生活を想像して確認するのがポイントです。
居室
居室の見学時には、必要な設備が揃っているか、快適に過ごせるか、生活動線上に不自由はないか、という点に注意して見学すると良いでしょう。介護が必要な方や持病をもっている方は、万が一のことを考えてナースコールが手元に届きやすい位置にあるのかも確認が必要です。
共有スペース・機能訓練室
共有スペースや機能訓練室などの広さや形状を確認し、入居後に充分に活用できそうかどうかもチェックしましょう。共有スペースは清潔に保たれているか、安全に配慮されているか、屋上庭園などリラックスできるスペースがあるかなど、利用することを前提にチェックすると良いでしょう。
入浴設備
入居時は自立している場合でも、介護度が悪化することを想定し、入浴設備を確認しておくことも大切です。安全対策としてスロープの設置などはあるか、温度管理はきちんとされているか、などの確認をしましょう。
トイレ
排泄介助がいらない場合でも、排泄する際に便器周辺を汚してしまうことはあります。対応力のある施設であればすぐにキレイにしているので臭いや汚れは気にならないことが多いですが、中には人員不足などで難しい施設も。可能であればトイレも確認しておきましょう。
施設の使い勝手・メンテナンス
共有スペースはたくさんの方が利用します。その中で、整理整頓されているか、食べかすなどが落ちていないか、なども確認しましょう。
施設の周辺環境・アクセス
入居後は家族が面会に行くこともあるため、家族の通いやすさについても確認しましょう。その他にも自由に外出ができる施設であれば、見学の際に施設周辺を散策し、買い物スポットや散策コースなどを見ておくのも大切です。
介護や医療のサービス内容
施設によって提供される介護・医療サービスの内容は異なります。まずは利用したいサービスを押さえておくことが大切です。
健康管理体制
健康管理体制とは、訪問診療や健康診断を入居者に行うサービスのことです。これらのサービスをどのくらいの頻度で受けられるかを確認しましょう。また、万が一のことを考えて看護師や介護士の常駐している時間帯や不在時の緊急対応の確認も必要です。
リハビリ内容
入居後も筋力の維持や介護度の進行防止のため、リハビリが大切です。リハビリの設備や頻度、リハビリ専門のスタッフの有無を確認しましょう。また、具体的なリハビリの内容も分かると安心です。
医療機関との連携
今は健康でも入居後に悪化してしまうこともあるでしょう。医療機関との連携は老人ホームによってさまざまです。「訪問診療が可能か」「服薬サポートはあるか」「糖尿病などの持病持ちでも入居可能か」などを確認しておきましょう。
終末期医療・看取り介護の有無
老人ホームや自宅で最期を迎えることを「看取り」といいますが、全ての施設で対応しているわけではありません。医療的ケアの内容も施設により異なるため、対応できないと判断された場合は退去を求められることもあるのです。そのため、終末期医療や看取り介護を行っているかはしっかりと確認しておきたいポイントです。
ケア体制
有料老人ホームでは「ユニットケア」「フロア分けケア」「混在型ケア」のいずれかを採用しています。ユニットケアでは入居者10名前後のグループなため、アットホームな環境で生活ができるでしょう。フロア分けケアはフロアごとにグループで分けてケア体制を整えています。担当の介護職員がフロアごとにつくため、慣れ親しんだ職員から介護を受けることができます。混在型ケアは入居者を区分けしないため、低価格なのが魅力です。
認知症ケア
認知症ケアが目的であれば「家庭的な雰囲気か」や「拘束や虐待、事故防止の対策はあるか」「入居者に問題行動があった場合は退去が必要か」などを必ず確認しましょう。
介護予防・自立支援
元気なときに入居した場合は、入居後に自立支援や介護予防につながるサービスを受けることができます。「介護予防運動指導員」などの資格を持っているリハビリスタッフを配置している施設もあります。
人員体制
利用者の人数に合わせて、介護職員や看護職員などの人員配置基準があります。基準をクリアしているのはもちろんのこと、基準よりも充実した人員体制の方が安全なのは基準よりも充実した人員体制の施設であれば安心でしょう。
生活面のサポート内容
ここからは生活面のサポートについて確認しましょう。
イベントやレクリエーション
施設では季節によってさまざまなイベントを行っています。イベントやレクリエーションは、単調になりがちな利用者の生活にとって生きがいや楽しみを生み出す時間です。どのような内容が提供されているか、施設探しの際はチェックしておきましょう。
食事
入居中は食事も楽しみのひとつです。そのため、食材にこだわっているか、行事食があるかなど、どのような食事が提供されているのかを確認すると良いでしょう。また、介護食に対応しているか、個人食や治療食に対応しているか、といった点もチェックしておくと安心です。
面会体制
家族との面会は入居者にとって大切なひとときです。入居者と面会がどこでできるのか、家族の宿泊はできるのか、面会時間はいつなのか、ということも確認しておくと良いでしょう。
嗜好品の扱い
施設によっては飲酒や喫煙ができるところもあります。入居してもお酒やタバコを楽しみたいと思っている場合は見学の際に確認しましょう。
その他
施設の設備面やルールなどだけでなく、運営方針や雰囲気を押さえることも大事なポイントです。
施設長の運営方針
もし見学の際に可能であれば「運営方針」や「施設の理念」なども施設長に直接聞く機会が持てると良いでしょう。施設が持つ特徴やメリットなども施設選びでは重要な判断材料になるはずです。
施設の雰囲気
毎日過ごす場所になるため、施設の雰囲気が利用する方に合っているかは非常に大切です。レクリエーションや介護中の様子、スタッフの挨拶や対応を観察すると雰囲気がつかめるでしょう。
気になることは必ず質問しよう
見学の際は質問内容をあらかじめ準備しておくことが大切です。ここでは聞いておきたい内容を説明します。
入居や退去の要件
施設では入居の条件が定められており、介護度が高い方や認知症の方は受け入れを行っていない場合もあります。無事に入居できても、持病が悪化したり認知症の症状が出たりした場合などに退去を促されてしまう可能性もあります。
保証人の責任範囲
施設の入居条件に身元引受人や連帯保証人の有無も含まれます。一般的には家族が身元保証人や連帯保証人になりますが、施設によっては家族以外でも認められる場合もあります。入居時に確認しましょう。
入居時費用や月額利用料以外にかかる費用
費用や料金プランはパンフレットなどで確認できますが、家具や家電などのレンタル料金などは記載がないことも多いので内訳を詳しく確認しましょう。
個別対応の有無
利用者一人ひとりに合わせた入浴や食事などのケアをしているか確認しましょう。個別ケアを行うことで利用者の状態に合わせて対応ができ、プライバシーや衛生面の確保もできます。
おわりに
老人ホームとひと口にいっても、施設によって提供するサービスはさまざまです。あらかじめ見学をし、ニーズにあったサービスが受けられるかを確認することが重要です。入居後に失敗したと思わないためにも、老人ホーム選びは慎重に行いましょう。老人ホームをお探しの方は、今回お伝えをしたチェックポイントをぜひ活用してください。