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遠距離介護を成功させるには?メリットデメリットから活用したいサービスまで徹底解説

遠距離介護
セゾンのくらし大研究 編集部

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両親が高齢になると心配になるのが介護の問題です。施設介護や在宅介護、さまざまな選択肢がありますが、介護者が働き盛りの世代だったり、すでに家庭を持って遠方に住んでいたりした場合、これまでどおりの生活ができなくなるのではないかと不安になることもあるでしょう。

そこで検討したいのが「遠距離介護」という選択肢です。このコラムでは、遠距離介護の概要や成功させるためのポイントなどを紹介します。

この記事のまとめ

離れた場所で暮らしながら、子どもが高齢の親を介護面でサポートすることを遠距離介護といいます。遠距離介護を成功させるには、親と子が互いに密にコミュニケーションを取り合うことが、最も重要です。介護者はひとりで抱え込まず、ケアマネジャーなどの支援を受けるとともに、いざという時に対応してもらえるよう日頃から関係各所と連携しておきましょう。
また、被介護者に異変があった時にいち早く対応するための見守りサービスなども自治体や民間から提供されています。各種サービスをチェックしてうまく活用していきましょう。

遠距離介護とは?メリットとデメリットも知ろう

遠距離介護

ここでは、遠距離介護について詳しく説明するとともに、メリットとデメリットをそれぞれご紹介します。

遠距離介護とは

遠距離介護とは、離れた場所で暮らしながら、子どもが高齢の親をサポートする介護のしかたです。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2019年時点で遠距離介護をしている方は、介護をする方全体の13.6%を占めています。

過去の調査では2016年が12.2%、2013年が9.6%、遠距離介護の割合は年々増加していることがわかります。

遠距離介護を選ぶ理由は、介護者と被介護者にそれぞれあるようです。ここではその理由について探っていきましょう。

 介護者(介護する側)の理由

介護を必要とする高齢者の多くは70~80代で、その子どもはほとんどが50代前後となります。日本の社会では50代前後は働き盛りの世代です。管理職などを任され、企業で大切な役割を担っている方も多い年代です。

このような方が遠方に住む親の近くで介護をしたいと思っても、住む場所を変えることは難しいかもしれません。

また、介護者に配偶者や子どもがいる場合には、現在の生活基盤を維持することや、家族との時間の確保が必要です。そのため、遠方に生活の拠点を移して親の介護に専念するのが難しいといえるでしょう。

 被介護者(介護される側)の理由

高齢者にとって、長く住んだ土地を離れることは精神的にも肉体的にも負担が大きくなります。その土地は、長年にわたって人間関係を築き上げた友人・知人や、かかりつけ医などがいる住み慣れた場所です。

遠方に住む子どもの近くで暮らしたいと思っても、住み慣れた環境を手放すことに対して前向きになれない方は少なくありません。また、新しい環境にうまく対応できずに、被介護者が認知症を発症したり持病が悪化したりするケースもあります。

遠距離介護のメリット

遠距離介護にはさまざまなメリットがあります。ここでは、そのいくつかを解説しましょう。

 引っ越しが不要

遠距離介護では、転居の必要がありません。生活拠点を変えなくて良いので、介護者は現在の勤め先で働き続けることが可能です。親の介護に直面する50代前後で一旦企業を辞めてしまった場合、再就職はそう簡単ではありません。

また、転職できた場合でもこれまでと同水準の収入が見込めない場合もあります。つまり、遠距離介護を選択すれば、今や社会問題ともいわれている介護離職は避けられるでしょう。

 介護者のストレス軽減

親の近くに住む近居介護や、自宅で介護をする在宅介護では、介護中心の生活になりがちです。そのため、介護者である子どもはご自身の時間が取れずに、精神的な負担が大きくなります。

その点、遠距離介護では近居介護や在宅介護に比べて介護者のストレスは軽減しやすいでしょう。遠距離介護を選ぶことで、介護者はご自身の生活に目を向けることができ、介護うつなどのリスクを減らすことができます。

 介護保険サービス利用時に有利になりやすい

遠距離介護をしていると、介護保険サービスを利用する際に有利になることがあります。例えば、被介護者が認知症や脳疾患の後遺症を患った場合、介護施設などの利用も選択肢のひとつです。

しかし、特別養護老人ホームは入所希望者が多く、地域によっては待機となるのが現状です。遠距離介護をしていると、その状況が考慮され入所の優先順位が高くなるといったメリットがあります。

遠距離介護のデメリット

遠距離介護にはメリットがある反面、デメリットもあります。遠距離介護を選択することで生じるいくつかのデメリットもご紹介しましょう。

 緊急時の対応が遅れがち

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離れた場所に住んでいると、緊急時の対応が物理的に難しいことがデメリットといえるでしょう。常に様子が見られる状態にないため、容体の急変や日常生活での事故への対応が遅れがちになります。

そこで大切になるのは、介護者と被介護者が日頃から小まめに連絡を取り合うことです。そうすることで、いつもとは様子が違っていたり連絡がつかなかったりなどの異変にいち早く気がつくことができるかもしれません。

また、万が一何か起こった際に対応してもらえるよう、近隣の方やケアマネジャーなどとの連携も大切です。

 費用の負担額が膨らみがち

遠距離介護では、介護者と被介護者が離れて暮らしているため、帰省の度に交通費などの経済的負担が大きくなります。

帰省の頻度は、被介護者のサポートの必要性や介護サービスの利用状況などによって人それぞれです。民間企業が2021年に行った調査によると、介護のための帰省の頻度は月に1~2回が最も多く33.7%でした。月3回以上の方も含めると、80%以上の方が月に1回以上帰省しています。

さらに帰省時の往復交通費は、1回につき10,000万円未満が57.7%、10,000~30,000円未満が26%、それ以上が16.3%でした。1回当たりは小さい金額でも、回数が多くなればそれなりの負担になるでしょう。

また、日頃から近隣の方に様子を見てもらうなどお世話になっている場合は、帰省の際にお土産を持参したいところです。各所へお礼の品を購入する費用も小さな負担ではありません。

その他、介護サービスを提供する事業所やケアマネジャーなどとの連絡にかかる通信費や住宅リフォーム費用なども、在宅介護に比べて負担額が膨らみがちです。

参照元:「遠距離介護になったら、どうする?」|三井住友銀行MoneyVIVA

遠距離介護を始める前に準備しておきたいこと

ここでは、遠距離介護を始めるに当たって、あらかじめ準備しておきたいことを挙げていきます。

被介護者の介護希望を聞いておく 

被介護者である親の希望を聞き、できる限りその意思に寄り添えるように準備しましょう。遠距離介護を選択した場合、親も子も今後の生活について心配なことがあるかもしれません。

親は、さらに自らの健康状態にも不安があるはずです。そこで、介護者である子から本人の希望を聞いてあげることで、親も答えやすくお互いの気持ちを確認しやすいでしょう。

被介護者の生活パターンの把握

被介護者の生活パターンや交友関係をしっかりと把握しておくことが大切です。日常生活で食事の摂り方や外出の時間帯、行き先などがあれば聞き、その中で不安なことや不自由なことがないかをチェックしておきましょう。

普段、どの時間帯に連絡を取り合うかについても話し合っておいてください。本人の趣味や娯楽についても詳しく知っておくと良いです。また、近くに住む方には、緊急の際に対応をお願いすることもあります。被介護者の交友関係を知り、知人や友人と信頼関係を築くことも重要です。

経済状況や生命保険の詳細を把握

被介護者の経済状況を把握することは、介護の方向性を決めるうえでとても大切です。預貯金や年金収入、加入している生命保険の詳細について確認しましょう。

例えば、介護していくうちにかかる費用負担が大きくなると、家族または親族の間で金銭トラブルに発展することがあります。また、被介護者である親の預貯金額を知らないままで、介護者が自身の預貯金を切り崩して介護費用に充てざるを得ないこともあります。

さらに、被介護者が認知症になった場合、詐欺や悪徳商法の被害に遭うことも想定されます。そのため、印鑑や権利証などの重要書類や貴重品の保管方法についてもきちんと確認しておきましょう。

遠距離介護を成功に導くコツ

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遠距離介護を成功に導くには、いくつかのポイントがあります。ここでは、遠距離介護がうまくいくコツについてご紹介しましょう。

密なコミュニケーション

遠距離介護を成功に導く最大のポイントが、密なコミュニケーションです。被介護者である親だけでなく、親の周りにいる近隣住民の方やケアマネジャーとは日頃から連携し、関係性を密にしておくことで、困った時に助けを求めやすくなります。

親とのコミュニケーションでは、帰省の回数を増やしたり小まめに電話したりと、会話の頻度を高めるのがコツです。ここで、親の気持ちや健康状態を聞き取ることは大切ですが、むやみに不安を煽ったり、プライドを傷つけたりしないよう配慮しましょう。一度にいろいろなことを聞き出そうとすると、頑なに答えてもらえないことがあります。

また、親は子どもに心配をかけたくないと思うあまり、体調が悪化してもご自身からは言い出せずに、後になってトラブルになることもあります。そのため、話しやすい雰囲気を作るには、コミュニケーションの頻度を増やすことが大切です。

プロのサポートを受ける

遠距離介護において重要なのが、介護支援のプロであるケアマネジャーやかかりつけ医の存在です。ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護を必要とする家族の相談に乗り、被介護者が最適な介護保険サービスを受けられるようサポートする介護の専門家です。介護サービスの提供が始まると、月1回被介護者を訪問し、継続的に心身の状態などを確認します。

遠距離介護をする家庭にとって、ケアマネジャーは欠かすことのできない身近な存在です。ケアマネジャーとはできる限り密に連絡を取り合い連携し、帰省の際には直接会って情報交換をしましょう。

また、かかりつけ医とは、少なくとも年に一度は顔を合わせることをおすすめします。帰省の際にはできる限り定期健診などに付き添いましょう。

介護向けのサービスや制度を利用する

介護を必要とする方向けのさまざまなサービスが自治体や民間企業から提供されています。遠距離介護の場合は、介護者が常にそばにいて被介護者をサポートできる状況ではないため、サービスを積極的に活用し、より良い環境を整えていきましょう。

将来を見越して老人ホームの検討も進めておく

年月の経過とともに生活状況が変わったり、要介護度のレベルが上がったりするなど、遠距離介護の継続が困難になるケースがあります。その場合は、老人ホームなどの高齢者施設へ入居することも念頭に置いておかなくてはなりません。

かかる費用は利用する施設によって異なります。例えば、公的施設である特別養護老人ホームは比較的費用を安く抑えられますが、要介護度によって受け入れの条件があり、条件を満たしていても入居待ちとなるケースもあります。

反対に、民間施設である介護付き有料老人ホームは、施設によって高額な費用がかかることもありますので、将来を見越して、高齢者施設についても調べておくと良いでしょう。

見守りサービスを利用する

特に被介護者がひとり暮らしの場合、定期的な見守りサービスがあると安心です。見守りサービスには、自治体による安否確認や、民間企業によるIoTを活用したセンサー型などさまざまです。

くらしのセゾンが提供する「高齢者見守りサービス」は、離れて暮らす親の様子をスマホで確認できるプランなどを展開しています。ニーズに合わせて最適なプランを提案しており、サポート体制も万全です。詳しくはこちらよりお問い合わせください。

高齢者見守りサービスの詳細はこちら

遠距離介護で活用したい主なサービス

遠距離介護

ここでは、遠距離介護で活用できる主なサービスをご紹介します。これらのサービスをうまく活用すれば、経済的な負担を軽減することもできるので、ぜひ参考にしてみてください。

介護保険サービス

介護保険サービスとは国や自治体が提供するもので、要介護1~5または要支援1、2の認定を受けた方が利用可能です。条件に応じて、かかる費用の1割または2~3割が自己負担です。訪問サービスや施設サービス、福祉器具のレンタルなど全26種類54のサービスがあります。

例えば、利用者の自宅で行う訪問サービスは、食事・洗濯・掃除・買い物・排せつなどをサポートする訪問介護や、医師の指示に従って医療処置や機器の管理などを行う訪問看護など。

また、施設サービスでは、特別養護老人ホームなどの高齢者施設に入居したうえで、食事や排せつなどの介護やリハビリ、レクリエーション活動などが提供されます。これらを上手に組み合わせて、必要なサービスを利用しましょう。

自治体や民間による介護向けサービス

介護向けサービスは、自治体や民間企業により多岐にわたって展開されています。例えば、すぐに食べられる食事を自宅に届けてもらえる配食サービスや、前項で紹介した見守りサービス、食事や掃除、買い物などの家事をサポートする家事代行サービスなど。

なかにはボランティア団体などが無料で提供する介護向けサービスもあるので、それらのサービスを利用すれば費用を抑えることも可能です。

実際にどのようなサービスを利用できるかは、ケアマネジャーなどに相談してみましょう。介護のプロなら、ピンポイントでわかりやすいアドバイスをくれるはずです。

航空会社の介護帰省割引サービス

遠距離介護が始まると、これまでより帰省する頻度が高くなる方もいます。往復の交通費だけでも経済的負担となることは否めません。特に長距離移動の場合は、航空機を利用する方も多いでしょう。

その場合は、各航空会社が提供する介護帰省割引を活用してみてはいかがでしょうか。

被介護者が二親等以内の親族、または配偶者の兄弟や姉妹の配偶者、子どもの配偶者の父母であれば利用可能です。申し込みには戸籍謄本または戸籍抄本の他、いくつかの書類が必要ですので、航空会社にお問い合わせください。

また、介護割引の有無についても航空会社ごとに規定が異なります。場合によっては格安航空券を購入する方が割安になることもあるので、チケットの比較サイトなどで調べてから利用しましょう。

無料の介護相談

初めての介護の場合、わからないことばかりで不安に思うことがあるかもしれません。そこで利用したいのが介護相談窓口です。地域には無料で相談できる窓口があるのでご紹介します。

 地域包括支援センター

自治体が医療法人や社会福祉法人などに委託して設置した機関です。ケアマネジャー、社会福祉士や保健師などが連携して、地域の高齢者や介護をする家族のサポートを行います。

 市町村の相談窓口

市区町村の役所にある高齢者を対象とした窓口は、「高齢福祉課」や「健康相談窓口」など、役所によって名称が異なります。

電話や窓口での相談も可能ですが、現在は、自宅に居ながらオンラインでの相談に対応している窓口もあるようです。高齢者はパソコンやスマホを使ってのコミュニケーションに慣れていないこともあるでしょう。

しかし、遠距離介護では、そのようなオンラインツールの使い方を知っていれば便利なことも増えてきます。最初のうちは使い方を説明して慣れてもらうと良いでしょう。

おわりに 

遠距離介護について、その概要や成功させるコツ、始める時の心構えなどについて説明しました。核家族化が進む現代、遠距離介護を選択する世帯が増えています。また、介護を始めるとさまざまな悩みに直面することがあるかもしれません。

何事も介護者と被介護者やその家族だけで抱え込まないことが大切です。介護向けサービスや公共の窓口を利用したり、ケアマネジャーに相談したりするなど、積極的に外部と関わりながら介護の悩みを解消しましょう。

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