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高齢者の転倒を予防するには?転倒の原因や予防するポイントを紹介

セゾンのくらし大研究 編集部

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高齢化が加速する日本では、高齢者の転倒事故が相次いでいることをご存知でしょうか。高齢者はちょっとバランスを崩してしまっても、大きなケガに繋がってしまう可能性があります。今回は高齢者が転倒してしまう4つの主な原因と対策について解説します。身近な所から対策してみましょう。また、転倒を予防するための生活環境づくりにも注目してみましょう。

この記事のまとめ

高齢になると住み慣れた場所であっても、加齢による影響で転倒してしまうことがあります。高齢者が転倒する原因は、筋力や注意力などの低下や運動不足、服薬している薬の副作用など。
生活環境も加齢に応じた対策が必要で、手すりやすべり止めマットを設置すると良いでしょう。また、高齢者自身も身体を動かしたりバランスの良い食事を心がけたりすることで、転倒の予防が期待できます。必要に応じて福祉用具やバリアフリーリフォームなどを取り入れ、高齢者の転倒予防に努めましょう。

高齢者における転倒事故の現状

世界保健機関(WHO)では65歳以上の方を高齢者としており、日本の高齢者の割合は世界で最も高い水準です。消費者庁に寄せられた、2015年4月から2020年3月末の5年間における高齢者の転倒事故のうち自宅で発生したものは275件にものぼります。

また、転倒によるケガは頭や顔、首などの頭部のすり傷や挫傷、打撲傷が多く、さらには大腿骨など歩行能力に大きくかかわる部位の骨折なども多く見られ、消費者庁では高齢者の転倒に注意するよう呼びかけています。

参考元:高齢者 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

高齢者の転倒事故の多くは自宅で発生

5年間に発生した高齢者の転倒事故は約600件。そのうち、住み慣れた自宅での事故発生が48%と最も多くなっています。具体的な場所は浴室や脱衣所、庭、ベッドや玄関、そして階段です。

【高齢者の転倒事故の発生場所】

自宅275件(48%)
一般道路135件(23%)
介護施設64件(11%)
民間施設54件(9%)
その他50件(9%)

参考元:消費者庁|10月10日は「転倒予防の日」

起こりやすい転倒事故例

高齢者の転倒事故は特別なことをした時に起こるというわけではありません。日常的な動作の中で、身体機能の低下やちょっとしたきっかけが原因となって起こってしまうことが多いのです。

例えば、入浴中に足をすべらせて身体をぶつけてしまったり、階段を下りている際にバランスを崩して転落してしまったりするなど、日常生活を送っているなかで起こります。

高齢者における転倒予防の必要性

高齢者の転倒を予防する必要性が高い理由には、高齢者ならではの理由があります。ここではその理由にもとづいて、高齢者の転倒予防の必要性を解説します。

高齢者が転倒する危険性

若い頃であれば軽症で済むような転倒事故でも、高齢者の場合は大きなケガにつながる恐れがあります。軽くつまずいてしまったり、バランスを崩してしまったりしただけでも、とっさに身体を支えられずに、尻もちをついてしまう場合もあります。

このときに、骨を支える筋力が低下していることや骨がもろくなっていることから、大腿骨頚部などの歩行に重要な役目を果たす部位を骨折してしまうケースも多いのです。このような大きなケガをした場合は手術をする必要があり、入院生活を余儀なくされる場合もあるでしょう。

治療中の安静や入院が心身に影響を及ぼす

転倒によって長期的な入院や安静が必要になった場合、筋肉が衰えたり骨がもろくなったりするなど、身体にとっての悪影響が予想されます。安静にすることで活動量が減り、食欲も自然と落ちて体力も低下してしまうでしょう。

また、家族や友人と触れ合う時間が減少し、買い物や趣味などの時間もなくなることから、心身に大きなストレスがかかります。このような状態が長く続くことで、認知症を発症してしまうケースも少なくありません。

高齢者が転倒する4つの原因

では、高齢者はどのような理由から転倒してしまうのか、考えられる4つの原因について解説します。

加齢に伴う身体機能・注意力の低下

高齢になるとともに筋力や身体機能は低下します。人間の身体は下半身の筋肉の衰退が著しいため、上半身を支えきれずにバランスを崩しやすくなってしまうこともあるでしょう。

今までできていた動作ができなかったり、イメージどおりに動けなかったりすることも転倒の原因になっています。また、つまずいたと頭では分かっていても、とっさに身体が動かなかったり、受け身が取れなかったりして重症化してしまうケースもあるでしょう。

同様に注意力も低下するため、危険予測が十分にできていないことも転倒する理由として考えられます。

運動不足

転倒の要因のひとつである運動不足。身体を動かす機会がなくなってしまうと、運動機能や感覚機能も低下してしまい、転倒リスクが高くなるのです。

また、加齢とともに症状が悪化する関節痛や後遺症の麻痺などが原因で、そのまま身体を動かさないで過ごしていると関節の動きが鈍くなります。同時に筋力も衰えてしまい、ますます運動機能が低下してしまうでしょう。

生活環境

身体は加齢とともに衰えていくため、住み慣れた自宅であっても転倒する要因はどこにでも存在しています。身体状況や運動能力に合わせて、生活環境を変更していく必要があるでしょう。

服用している薬の影響

疾患を持っている方は、服薬している薬が影響するケースもあります。薬には副作用があるものが多く、ふらつきや立ち眩みなどが日常的に起こる方も多いでしょう。しかし、身体の不調だと思って薬による副作用と気づかない高齢者もいます。

特に注意!高齢者が転倒しやすい自宅の箇所

自宅でも転倒事故が起こりやすい場所と、その対策について解説します。

玄関

靴を着脱する際にバランスを崩してふらついたり、玄関マットにつまずいてしまったりすることが考えられます。また、玄関マット自体がすべってしまうこともあります。他にも、あがりかまちなどの段差を踏み外すことが、玄関で転倒する原因です。

対策

玄関に手すりを設置することで段差の上り下りをサポートし、靴を履いてから立ちあがる動作をスムーズにすることができます。靴の着脱時は、可能であれば座って行えるようにしましょう。玄関マットを使用している場合は、マットの下にすべり止めを敷くのがおすすめです。

廊下・階段

廊下や階段の素材がすべりやすかったり、暗くて足元が見づらかったりして転倒することもあります。スリッパや靴下がすべってしまうケースもあるでしょう。

対策

階段での転倒は、骨折など重度のケガにつながる可能性が高くなります。転倒対策として手すりやすべり止めの設置が有効です。また、スリッパや靴下、床材などもすべりにくい素材のものにしましょう。センサー機能付き照明などで足元を明るくすれば、暗い廊下の移動も安心です。

リビング

リビングにはカーペットや電気コードなど、高齢者には危険なものがたくさんあります。また、床に置きっぱなしになっている雑誌や新聞紙などですべってしまうかもしれません。

対策

リビングの電気コードはなるべく壁に沿わせ、足が引っかからないよう工夫しましょう。また、床に物を置かないように、常に部屋を整理整頓しておくことが大切です。

寝室

寝室では、慣れているはずのベッドから転落してしまうことも考えられます。また、夜間にトイレに行こうとして転倒してしまう事故も発生しています。

対策

ベッドの片側を壁につけるように配置し、反対側にはベッドガードなどの転落防止グッズを設置しましょう。ベッドの高さ調節ができる場合は、ベッド位置を下げたり低床ベッドを使ったりするなどの対策も効果的です。

浴室

高齢者に限らず、転倒事故の多い浴室は特に注意が必要です。床が濡れているうえ石鹸などの泡で床がすべりやすくなっています。また、浴槽をまたいで出入りする際にバランスを崩してしまうケースもあるでしょう。

対策

床材をすべりにくいものに変更したり、すべり止めマットを導入したりしましょう。浴槽の出入りの際には、身体を支えられる手すりを設置するとまたぐ動作が安定します。浴室に段差がある場合は踏み台やスロープを設置して移動すると良いでしょう。

駐車場・庭

駐車場の段差や車止めにつまずいてしまうケースがあります。また、庭を手入れしている際に立ち眩みやふらつきなどが起き、そのままバランスを崩して転倒してしまうケースも。石やコンクリートで頭を打ってしまうと危険なので、しっかりと対策する必要があります。

対策

加齢とともに筋力や身体機能が低下している場合は、庭の手入れや少しの作業でもバランスを崩してしまうことが考えられます。日頃から体力づくりをすることが大切です。また、体力に自信がない場合は、家族やプロなどに庭の手入れを依頼することも検討しましょう。

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高齢者の転倒を予防するポイント

最後に、高齢者の転倒を予防するためにはどのようなことに気をつければ良いのか解説します。

運動する習慣をつける

散歩や体操など、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけて、筋力やバランス感覚を養うのは大切です。いきなり運動を始めたり、毎日続けたりするのは難しいため、誰かと一緒に散歩を楽しむ習慣をつけることから始めてみると良いかもしれません。散歩のコースを変えたり、少しずつ歩ける距離を伸ばしたりすることで、モチベーションの維持にもなるでしょう。

バランスの良い食事を心がける

身体づくりには食事も欠かせません。筋力アップに役立つたんぱく質やアミノ酸を摂取して、丈夫な身体づくりを心がけましょう

また、高齢者に多いふらつきを予防するためにビタミンDの摂取もおすすめです。ビタミンDは鮭やさばなどの魚類、しめじや干ししいたけなどのきのこ類に多く含まれています。

他にも、骨を丈夫にするカルシウムを骨に沈着させる作用のあるビタミンKなどが効果的です。ビタミンKは納豆、チーズ、牛乳、ブロッコリー、ほうれん草などに多く含まれています。

ひとつの栄養素ばかりに傾注して取り入れるのではなく、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

心構えも大切

高齢者に限らず、余裕がないときは事故のリスクが高まります。焦ったり慌てたりしないように、時間に余裕をもって行動しましょう。

また、雨の日はすべりやすいうえに、傘で片手が塞がってしまうので、できるだけ外出を避けるということも考えみましょう。疲れてきたらふらつきやすくなったり、膝が折れやすくなったりと転倒のリスクが増えるでしょう。疲れたら早めに休んで、自分のペースを保つ必要があります。

服装や持ち物を選ぶ

サンダルやスリッパは脱げやすく歩きにくいことが予想されます。外出時は歩きやすい靴を履くようにしましょう。また、手提げバッグなどで片手を塞いでしまうと、転んだときに手がつけなくて危険です。リュックやショルダーバッグなどを使用し、両手は開けておきましょう

施設内などでは、手すりがあれば積極的に使用すると安心です。道路には段差やマンホールなど、つまずきやすい箇所がたくさんあります。常に足元や前方に注意しながら歩きましょう。

福祉用具を取り入れる

日常生活で、膝や関節の傷みがあったり、曲げ伸ばしがしづらく歩きにくさを感じたりする場合は、福祉用具を取り入れることも検討しましょう。必要に応じて杖やシルバーカーを利用すれば、より安全でスムーズに移動することができます。家族やケアマネージャーと相談して、適切な福祉用具を使用しましょう。

転倒しやすい箇所をバリアフリー化する

自宅には高齢者が足をすべらせてしまったり、つまずいたりしやすい箇所が多いです。前述のとおり、玄関やお風呂場などに手すりを設置することが転倒予防に繋がるでしょう。

くらしのセゾンでは、高齢者が安心して暮らせる安全な住まいづくりを目的とした、介護・バリアフリーのリフォームを取り扱っています。手すりやすべり止めの設置に加え、福祉用具についても専門スタッフが相談にのってくれるので安心です。暮らしやすい住宅へのリフォームをお考えの方は、ぜひ一度チェックしてみてください。

介護・バリアフリーリフォームの詳細はこちら

転倒防止啓発ポスターを活用する

厚生労働省は、転倒予防・腰痛予防の取り組みを行っています。転倒防止啓発ポスターをダウンロードできるページが厚生労働省のWEBサイトにあるので、自宅や介護施設などで活用してみてはいかがでしょうか。転倒予防・腰痛予防の取組 |厚生労働省からダウンロードできます。

セミナー・講座に参加する

高齢者の転倒予防を普及するために設立されたのが、「日本転倒予防学会」です。日本転倒予防学会では、定期的に転倒予防に関するセミナーや講座を開催しています。この転倒防止セミナーや講座などに参加して知識を深めれば、家族や身近な高齢者の転倒予防に役立つでしょう。

おわりに 

加齢とともに筋力や身体機能が低下すると、転倒リスクが高まることに。また、高齢者が転倒してしまって後遺症が残ったり、ケガをしている間安静にしたりすることで、さらに身体機能が低下するケースも考えられます。高齢者自身の注意や意識はもちろん、家族も協力して自宅内の転倒対策を施し、高齢者の転倒を防止しましょう。

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