「要介護1の認定を受けたけど、どのような介護サービスが利用できるのかよくわからない」という方もいるのではないでしょうか?
そこで、本記事では、要介護1の状態について解説し、利用できる介護サービスの種類・内容を紹介します。
また、要介護1と認定される基準や、介護保険で給付される限度額についても解説していますので、要介護1の認定を受けた方やご家族の方は、ぜひ参考にしてください。
- 要介護1は、要介護状態の中でもっとも介護の必要性が低いレベル。日常生活において一定の介助は必要だが、家事援助など身の回りのサポートを受けることができれば、比較的自立した生活を送ることができる。
- 要介護1で利用できる介護サービスには、自宅で受けられる訪問系のサービスの他に、施設へ通う通所系のサービスや、施設に宿泊できるサービスも利用可能。
- 介護サービスの利用は、利用者本人の生活の充実度を上げるだけでなく、家族の負担も軽減できる
要介護認定における要介護1とは?
要介護認定における要介護1とはどのような状態なのでしょうか?
ここでは、 要介護認定について解説するとともに、要支援2・要介護2との違いを紹介します。
要介護認定とは?
要介護認定とは、介護の必要度を判断するものです。
介護保険のサービスを利用するには、要介護認定を受けて「要介護度」と「認定期間」を決めてもらう必要があり、要介護度は「要支援1〜2」から「要介護1〜5」までの7段階に区分されています。
また、要介護認定には有効期間が設けられており、期限の切れる前に更新の手続きをする必要があります
要介護1とはどういったレベル?
要介護1は、要介護状態の中でもっとも介護の必要性が低いレベルです。立ち上がりや歩行などの動作を行うときに部分的な介助が必要な状態です。また、身体機能だけでなく、理解力や判断力の低下も見られます。
厚生労働省の調査によると、要介護(要支援)認定者の数は、令和2年度末現在で682万人といわれ、そのうち要介護1の認定を受けている方は140万人となっています。これは、要介護認定を受けた方全体の約2割を占めています。
要介護1の場合ひとり暮らしできる?
要介護1の認定を受けても、基本的にひとり暮らしは可能です。
上述したように、要介護1は、立ち上がりや歩行などの動作を行うときに、部分的な介助が必要な状態です。
そのため、見守りや家事援助など身の回りのサポートを受けることができれば、ひとり暮らしが可能になります。
要介護2との違い
要介護1は、立ち上がりや歩行が不安定で、日常生活や身の回りのことに部分的な介助がいる状態です。
一方で要介護2は、立ち上がりや歩行がひとりではできない場合があり、食事や排せつ、入浴などに部分的あるいは全面的な介助が必要な状態です。要介護1以上に多くの介助を必要とします。
要支援2との違い
要介護1と要支援2の違いは、認知症有無と状態の安定性です。
理解力や判断力の低下が見られる方は、要介護1と判定されます。また、要介護1と要支援2
の身体的な状態はよく似ていますが、リハビリなどによって状態が改善するなど、要介護度が進まないように予防できる可能性がある場合は要支援2と判定されます。
制度から考える要介護1
ここでは、要介護1と認定される基準と区分限度支給額について解説します。
要介護1の要介護認定基準時間
要介護認定における要介護度の判定は、厚生労働省の定めた「要介護認定等基準時間」により判断しています。
要介護認定等基準時間とは、その方の「能力」、「介助の方法」、「障害や現象の有無」から統計データに基づき推計された介護に要する時間(介護の手間)を「分」という単位で表示したものです。それによると、 要介護1の要介護認定等基準時間は、「32分以上50分未満」とされています。
なお、最重度の要介護5の基準時間は「110分以上又はこれに相当すると認められる状態」とされていることから、要介護1が軽度の状態であることが理解できます。
介護保険の給付額とは?区分支給限度額について
では、要介護1では、1ヵ月でどのくらいの保険給付を受けられるのでしょうか?
介護保険では、在宅サービスを利用する場合、要介護度別に1ヵ月当たりの支給限度額が決められています。
要介護1の支給限度基準額は、ひと月に16,765円まで介護保険を適用して在宅サービスが利用できます。
要介護1の方が利用できる在宅サービスの目安は以下のとおりです。
- 週2~3回の訪問介護(1ヵ月13回)
- 週2回の通所リハビリテーション(1ヵ月9回)
- 福祉用具貸与(歩行器、歩行補助杖、手すり、スロープ)
- 3泊4日の短期入所生活介護
なお、区分限度支給額は、地域によって金額が異なるため、詳しくはお住まいの自治体へ確認が必要です。
<自宅>要介護1で受けられるサービス
次に、要介護1の方が自宅で受けられるサービスを紹介します。
福祉用具のレンタルが可能
介護保険では13種類の福祉用具をレンタルできます。
ただし、要介護度によって条件が異なっており、要介護1の方がレンタルできる福祉用具は以下の4品目です。
- 歩行器
- 歩行補助つえ
- 手すり
- スロープ
福祉用具のレンタルを希望する場合は、ケアマネジャーに相談し、指定を受けた福祉用具事業者に申し込みを行います。
訪問介護
訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅に訪問し、入浴・排せつ、食事などの介護や、調理・洗濯・掃除といった家事援助を提供するサービスです。
訪問介護の主なサービスは、身体介護、生活援助、通院等乗降介助の3つです。
自宅で生活する要介護者の生活をサポートするサービスであるため、ペットの世話や庭の草むしり、正月の準備、家族のための食事作りなど、利用者の援助に該当しないサービスや利用者の家族のためのサービスは受けられません。
訪問入浴
訪問入浴介護は、自宅に簡易浴槽を持ち込み、居間や寝室などで入浴できるサービスです。
専門の事業者が入浴車で利用者の自宅に訪問して、手際よく入浴の準備から、入浴介助、着替え、片付けまでをしてくれます。
介護スタッフ2人と看護師1人の3人1組で訪問してくれ、入浴前後には看護師による血圧、脈拍、体温など体調チェックもサービスに含まれているので安心です。
自宅での入浴が難しい方や、介護施設での入浴に抵抗のある方に向いているサービスです。
訪問看護
訪問看護は、ケガや病気で自宅療養している方に対して、病院・診療所などの医療機関や訪問看護ステーションに在籍する看護師などが訪問して、病状の確認や医療処置を行うサービスです。
具体的なサービス内容は、入浴介助や床ずれの処置、点滴・在宅酸素・人工呼吸器の管理、内服薬のセットや服薬確認など多岐にわたります。
なお、訪問看護を受けるには、主治医の「訪問看護指示書」が必要です。
訪問リハビリ
訪問リハビリテーションとは、利用者の自宅に理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門スタッフが訪問してリハビリを行うサービスです。
機能回復のためのリハビリを受けられる他、介護する家族に対するアドバイスもしてもらえます。
訪問リハビリを利用するには、主治医の指示書が必要です。入院や施設入所していた方が、自宅に戻ったあとの日常生活に不安がある場合や、医療機関やリハビリ施設に通うのが困難な場合などに利用できます。
夜間対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護とは、利用者が自宅で24時間安心して生活を送れるように、他のサービスが利用できない夜間の時間帯に訪問介護が受けられるサービスです。
夜間対応型訪問介護では、以下の3つのサービスを提供しています。
- 「定期巡回サービス」:定期的に利用者宅を巡回する
- 「随時訪問サービス」:利用者からの通報によって訪問する
- 「オペレーションサービス」:オペレーションセンターなどを介して調整・対応する
夜間対応型訪問介護の対応時間帯は、原則として夜10時〜翌朝6時までです。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、自宅での生活を続けられるように介護と看護の両方が受けられるサービスです。24時間体制で、定期巡回と随時対応をしてもらえるのが特徴です。
定期巡回では、ホームヘルパーや看護師などが1日に数回、定期的に利用者の自宅を巡回し、食事や排せつなどの介護や、療養上の世話などをしてくれます。
随時対応は、急な体調不良や転倒などのトラブルがあった場合に対応してもらえるサービスです。オペレーションセンターにつながる端末から連絡すると、ホームヘルパーや看護師などが自宅に駆けつけくれます。
<施設>要介護1で受けられるサービス
続いて、自宅で生活する要介護1の方が、施設に通ったり、泊まったりできるサービスを紹介します。
通所介護
通所介護(デイサービス)は、日帰りで介護施設に通って、食事や入浴、排せつなどの介助や機能訓練などが受けられるサービスです。
デイサービスの利用は、外出や人と交流する機会を持てるため、閉じこもりや孤立の解消や、認知症の予防につながります。
また、仕事をしている家族にとっては、デイサービスを利用することで親が昼間にひとりきりにならないので、安心して仕事へ行くことができます。
通所リハビリ
通所リハビリテーション(デイケア)は、介護老人保健施設や病院などのリハビリ施設に日帰りで通い、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門スタッフから専門的なリハビリテーションが受けられるサービスです。
また、リハビリだけでなく、食事や入浴、排せつなどの介護サービスも受けられます。
通所リハビリの施設には、常勤の医師が配置されているため、医療的ケアや体調管理が必要な方も安心して利用できます。
地域密着型通所介護
地域密着型通所介護は、小規模デイサービスともいい、利用定員が18名以下の小規模なデイサービスのことです。
デイサービスと同様に、日帰りで施設に通って食事の提供や入浴、排せつなどの介護や機能訓練などのサービスが受けられます。
地域密着型通所介護を利用できるのは、事業所と同じ地域に住んでいる方に限られます。
療養通所介護
療養通所介護は、通常のデイサービスと比べると、看護師が手厚く配置されているのが特徴です。利用定員は18名以下で、日帰りで食事や入浴、排せつなどの介助、リハビリテーション、送迎サービスなどが受けられます。
療養通所介護を利用できるのは、事業所のある地域に住んでいる難病、認知症、脳血管疾患後遺症等の重度要介護者または、がん末期で常に看護師による観察や医療ケアが必要な方です。
認知症対応型通所介護
認知症対応型通所介護は、認知症の方を対象としたデイサービスです。利用定員12名以下で、認知症の方一人ひとりの症状に合わせた専門的なケアが受けられます。
認知症対応通所介護を利用できるのは、事業所と同じ地域に住む認知症の方です。地域によっては、認知症の診断書の提出が必要な場合もあります。
短期入所生活介護
短期入所生活介護とは、自宅で暮らす高齢者が、1泊2日から連続30日を上限に介護施設などに短期間入所できるサービスです。
施設では、介護スタッフが24時間体制で常駐し、食事の提供や入浴、排せつなど日常生活に必要な介助を中心に、体調管理や 機能訓練などのサービスが受けられます。
短期入所生活介護には、短期入所を専門に行う「単独型」の施設と、特別養護老人ホームなどに設置された「併設型」の2種類があります。
なお、要介護度によって利用できる日数が決まっている点に注意が必要です。
短期入所療養介護
短期入所療養介護は、介護老人保健施設や介護医療院、療養病床を持つ病院などに短期間入所できるサービスです。
短期入所生活介護と異なる点は、医師や看護師による医療的なケアや、リハビリ専門スタッフによるリハビリテーションが受けられることです。
利用できる期間は、短期入所生活介護と同様に、1泊2日から連続30日が上限です。ただし、利用できる日数は要介護度によって異なります。
小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護は、ひとつの事業所と契約するだけで、「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や自宅への「訪問」を組み合わせて利用できるサービスです。
登録定員が29名以下と小規模なのが特徴で、利用できるのは施設と同じ地域に住む方に限られます。
ひとつの事業所でさまざまなサービスを利用できるため「いつも会う顔なじみのスタッフからケアしてもらえる」という安心感が得られます。特に、環境の変化が苦手な認知症の方におすすめのサービスです。
看護小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能居宅介護は、小規模多機能型居宅介護に訪問看護を加えた複合型のサービスです。「通い」「訪問」「宿泊」「訪問看護」を組み合わせて利用することができます。
介護と医療のサービスを一体的に受けられるため、医療ニーズの高い方に向いています。
相続の認知症対策は「セゾンの相続 家族信託サポート」がおすすめ
相続について考えた際、被相続人となる方が認知症となってしまった場合は預金口座が凍結されたり、不動産の売買ができなくなったりすることが問題となります。今話題の「家族信託」では、事前に子ども世代に財産の管理を委託しておくことで、本人が認知症となってしまった場合にも財産の活用が可能となります。家族信託を検討する場合には、専門家へのご相談をおすすめします。
「セゾンの相続 家族信託サポート」では、家族信託の経験が豊富な提携専門家のご紹介が可能です。初回のご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
おわりに
要介護1は、要介護状態の中でもっとも介護の必要性が低いレベルです。部分的な介助が必要な状態ですが、家事援助など身の回りのサポートを受けることができれば、ひとり暮らしも可能です。
要介護1の方が利用できる介護サービスには、福祉用具のレンタルの他、自宅に来てもらう訪問系サービスや、施設に通う通所系サービス、短期間施設に宿泊できるサービスなどがあります。
介護サービスの利用は、利用者本人の生活の充実度を上げるだけでなく、家族の負担も軽減できます。要介護1の方も積極的に介護サービスの利用を検討しましょう。