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介護リフォームは住宅改修の補助制度を利用できる!条件や申請の流れをご紹介

介護リフォームは住宅改修の補助制度を利用できる!条件や申請の流れをご紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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豊かなくらしに必要な「お金」「健康」「家族」に関する困りごとや悩みごとを解決するために役立つ情報を、編集部メンバーが選りすぐってお届けします。

ご自身やご家族が自宅で介護が必要になると、「車椅子では玄関のドアが開けにくい」「廊下と部屋の段差で転びやすい」などさまざまな悩みが出てきます。そのような場合に利用できるのが、住宅改修の補助制度です。今回は、給付の対象となる条件や工事内容、費用相場などについてまとめました。利用するための申請方法も解説していますので、介護リフォームを検討中の方はぜひお読みください。

介護の現状

介護の現状

介護リフォームについてご説明する前に、まずは日本の介護の現状について見ていきましょう。在宅介護や転倒事故の割合について以下にまとめました。

在宅介護の割合

日本の総人口が減少する一方で、65歳以上の高齢者の人口は増加し続けています。総務省発表の2022年9月データでは、総人口12,471万人に対して高齢者が3,627万人。高齢者が全体の29.1%を占めます。

参照元:総務省統計局|1.高齢者の人口

また、2008年の厚生労働省の在宅での療養についての調査では、10.9%の方が「最後まで自宅で療養したい」と答えています。自宅で療養して、必要になればそれまでの医療機関に入院したい 」「自宅で療養して、必要になれば緩和ケア病棟に入院したい」と答えた方の割合は、それぞれ23.0%、29.4%。全体で6割以上の方が在宅での療養を望んでいることがわかります。

さらに、公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」では、56.8%の方が自宅や親・親族の家で介護を行った経験があることも分かっています(2021年時点)。想像よりも多くの方が、在宅介護を経験しているといえるでしょう。

参照元:厚生労働省|「終末期医療に関する調査結果」P57

参照元:公益財団法人生命保険文化センター|生命保険に関する 全国実態調査

自宅における転倒事故の割合

身体機能が低下している高齢者は、わずかな段差でも転倒しやすくなります。転倒場所として最も多いのが住宅です。高齢者の転倒のうち、77.1%が住宅で発生しています。高齢化が進み、在宅療養を希望する方も増加していることから、事故を防ぐために自宅をバリアフリー化することが必要となってきます。

参照元:健康長寿ネット 高齢者の住宅内の事故

介護のためのリフォームの目的

介護のためのリフォームの目的

介護のためのリフォームは、介護を受ける方だけでなく介護をする方にとってもプラスになります。3つの目的を見ていきましょう。

介護される方が生活しやすい家づくり

目的のひとつは、介護される方ができる限り自力で生活できるようにすることです。日常生活動作ができなくなると、活動性の低下に伴って身体的・精神的機能も低下します。これは生きがいの喪失にもつながりかねない状態で、日常生活動作がさらにできなくなってしまうこともあります。

そのため、自力で生活しやすい環境をつくることが大切なのです。前述のように、高齢者の転倒場所の多くは住宅で起こっています。つまり介護のためのリフォームは、介護される方の事故を防ぎ、快適な暮らしを守るためのものであるといえるでしょう。

介護者の負担を軽減できる家づくり

介護される方の要介護認定の区分が上がるにつれて、介護者の身体的・精神的負担は増加します。例えば車いすで歩行を介助している場合、トイレの出入口付近が狭い場合、トイレのドアを開ける、車いすからトイレに移乗させる等の動作が介護者の負担になります。

トイレへの誘導は1日1回だけではありません。1日に何度も必要になることから、精神面の負担も少なくないでしょう。介護リフォームには、このような状況を改善して介護者の負担を軽減するという目的もあります。

しかし、車いすでトイレに誘導しやすいように、トイレをただ広くしただけでは掃除の負担が増えてしまいます。リフォームをする際は、広すぎないなど介護者の負担を増やさない工夫も必要です。

将来に備えるための家づくり

将来に備えるための家づくり

それほど身体機能が低下している場合でなくても、改修工事を行うことがあります。理由は、在宅介護が始まると、日々の介助に追われてリフォームの検討をする余裕がなくなってしまうためです。将来在宅介護をするときに障害となりそうな場所を早い段階から見つけて、計画を立てておくことが大切です。

介護保険で住宅改修費が支給される!

介護のために行う住宅改修の費用が、介護保険で支給されるのをご存じですか。しかし、介護保険の住宅改修は、誰でも、またどのような工事にも適用されるわけではありません。ここからは、介護保険による住宅改修費支給の対象者や支給金額、改修内容について見ていきましょう。

対象となる条件

住宅改修の対象となる条件は、着工日の時点で要介護認定により要支援1・2、あるいは要介護1~5と認定されていること。また、要介護認定の有効期間内であることも条件のひとつです。介護を必要とする度合いは、心身の状態で変化するため一定であるとは限りません。そのため、期間の満了時に再度審査判定を行い、要介護認定を見直すのです。有効期間は原則、新規認定で6ヵ月、更新認定で12ヵ月ですが、最長で48ヵ月となる場合もあります。

対象となる住宅は、介護保険の利用者が住民登録している住宅(介護保険被保険者証に記載の住所)で、現在居住しているところです。そして、今後も住み続ける予定があることも条件となります。

参照元:厚生労働省|介護保険における住宅改修

参照元:厚生労働省|要介護認定に係る法令

支給金額

支給金額

介護保険制度では、対象となる工事費用のうち200,000円分が支給されます。介護保険で利用できるサービス内容が要支援・要介護で異なる場合もありますが、住宅改修においては認定区分に関わらず定額で支給を受けられます。

ただし、利用者負担分があるため、200,000円分がそのまま支給されるわけではありません。所得により200,000円のうち1~3割分が利用者負担となるため、実際に支給されるのは7~9割分です。つまり1割負担の場合、支給額の上限は200,000円の9割で180,000円ということになります。なお、3割負担の場合は、最大140,000円が支給される計算です。

住宅改修費が支給されるのは原則1回のみ。しかし、認定区分が3段階以上上がった場合や転居した場合には、再度同じ金額が支給されます。なお、住宅改修にかかる費用が支給金額の上限に達しない場合は、残り分を別のタイミングで利用することも可能です。

参照元:介護保険住宅改修 | 中野区公式ホームページ

住宅改修の内容

介護保険で利用できる住宅改修工事の内容は、以下のとおりです。

手すりの取り付け

玄関・トイレ・廊下・浴室などの移動と立ち座りの補助、転倒防止を目的に、壁や床の手すりを取り付ける工事です。手すりの形状や高さ、向きなどは、介護を受ける方の状況に合わせて決めます。

なお、以前は屋外(玄関ポーチ以外)の手すりの取り付け工事は支給対象外でしたが、2000年12月以降は玄関から道路までの工事も対象となっています。

段差の解消

段差の解消

玄関・トイレ・廊下・浴室などの出入りの際に各部屋の間の段差をなくし、スムーズに移動できるようにするための工事です。具体例としては、床のかさ上げやスロープの取り付けなどがあります。段差の解消についても、2000年12月以降玄関から道路までの屋外の工事が対象となりました。

床・通路面の材料の変更

主に転倒防止を目的として、既存の床材を滑りにくいものに取り替える工事。畳からクッションフロアやフローリングに変更する、階段にノンスリップ(階段の踏み板の端に取り付ける滑り止め)を付けるなどが含まれます。2000年12月以降は、玄関から道路までの屋外工事も支給の対象です。

扉の取り替え

居室・トイレ・浴室などの開き戸を、折れ戸・引き戸・アコーディオンカーテンなどに取り換える工事です。他には、開き戸が開く方向を右から左に変更したり、重い引き戸を軽い引き戸に交換したりといったものなども対象となります。

便器の取り替え

便器の取り替え

厚生労働省のWEBサイトには「洋式便器等への便器の取替え」と記載されており、主に和式便器から洋式便器への交換が対象となります。洋式便器は、洗浄機能や暖房便座などが付いていても問題ありません。他には、もともと使っている洋式便器を立ち上がりやすい高さに変更したり、向きを変えたりする工事なども含まれます。

上記に付帯して必要になる住宅改修

ここまでにご説明した手すりの取り付け・段差の解消・床や通路面の材料の変更・扉の取り替え・便器の取り替えに伴って必要となる改修も、対象となります。

例としては、手すりを取り付けるための下地工事、浴室の床のかさ上げ時に必要となる配給水設備工事などです。また、床材を変更するための下地の補強なども含まれます。

介護リフォームにおける住宅改修費申請の流れ

ここからは、住宅改修費を申請する際の流れや必要書類についてご説明します。介護保険で住宅改修費が支給されるのは、要支援・要介護の認定を受けた方のみとなります。つまり、現在生活上の困難を抱えており、補助を利用して介護リフォームをしたい場合は、まず要介護認定を受けることが必要です。要介護認定の申請はお住まいの自治体の窓口でできますので、各市町村にお問い合わせください。

住宅改修に関してケアマネジャーに相談する

住宅改修に関してケアマネジャーに相談する

まずは、現在生活する上で支障をきたしているところを担当のケアマネジャーに伝え、住宅改修のプランを検討しましょう。リフォーム会社の選択もケアマネジャーと相談しながら行っていきます。

ケアマネジャーは介護支援専門員とも呼ばれており、介護を必要とする方が介護サービスを受けられるようにケアプランの作成などを行っています。また、介護サービス事業者との調整役を担っており、介護保険の利用者と事業者との橋渡しをしていることも特徴です。

住宅改修にはある程度の期間がかかります。改修を急ぐ場合は、できるだけ早い段階で動き出すことが大切です。

リフォーム会社と契約する

ケアマネジャー同席のもと、リフォーム会社と改修する場所や工事内容について打ち合わせを行います。ケアマネジャーやリフォーム会社に任せっきりにするのではなく、ご自身で工事内容をしっかりと確認し、見積書をつくってもらい納得して契約することが大切です。

事前申請を行う

改修工事を契約したら、次は事前申請です。住宅改修費申請に必要な書類の一部を、お住まいの自治体に提出します。提出書類は、「支給申請書」「住宅改修が必要な理由書」「工事費の見積書」「完成予定の状態が分かるもの(工事の図面や写真など)」です。

自治体では、これらの書類の提出を受けて保険給付の対象となるかどうかを検討します。

改修工事の施工

改修工事の施工

自治体の審査が通ったら改修工事に入ります。このときに注意したいのが、住宅改修費の給付方法が原則として償還(しょうかん)払い方式であること。利用者が一旦リフォーム会社に全額を支払っておき、あとから給付を受けられる仕組みになっています。なお、条件を満たす場合は自己負担分のみをリフォーム会社に支払い、残りを自治体がリフォーム会社に直接支払う受領委任支払い方式になることもあります。

住宅改修費の支給申請を行う

改修工事終了後は、再び書類の提出が必要になります。「改修前後の状態が分かる写真」「工事の領収書」「工事費の内訳書」を自治体に提出しましょう。写真については、リフォームした場所ごとに撮影日がわかるものが必要です。また、住宅の所有者が介護保険の利用者と異なる場合は、「住宅所有者の承諾書」も準備しましょう。

住宅改修費決定・支給される

住宅改修後の支給申請書類により住宅改修費が支給されます。前述のように、支給限度額200,000円の枠内で7~9割の支給となります。

介護リフォーム事例とかかる費用相場

介護リフォーム事例とかかる費用相場

最後に、介護リフォームの事例と工事にかかる費用の相場についてご紹介します。

階段

階段の介護リフォームのなかで最も施工例が多いのが、手すりの取り付けです。上り下りをサポートするために階段全体に手すりを取り付ける場合は、100,000円程度の費用がかかります。また、階段全体ではなく上り口と下り口に縦型の手すりを付ける場合の費用は、10,000~50,000円程度です。

参照元:HITOWAケアサービス株式会社|介護リフォーム成功のコツ!改修ポイントから費用、補助金の条件まで

浴室

お風呂は事故が起きやすい場所です。浴室と脱衣所の間に段差がある、床が滑りやすい、浴槽への出入りがしにくいなどの場合は、リフォームを検討しましょう。

浴室の入り口に支えとなる縦型の手すりを取り付け、床材を滑りにくいタイルに取り替える場合の費用は、100,000~200,000円程度です。また、手すりの設置・出入り口の段差解消・床材の変更、滑りにくくまたぎやすい浴槽への取り替えなど、浴室全体のリフォームは200,000~600,000円程度の費用がかかります。

トイレ

トイレ

扉の開閉がしやすく廊下との間に段差がない、そして室内で動きやすいトイレは、介護される側も介護する側も使いやすいといえます。トイレの扉の取り替えにかかる費用は、扉のグレードや枠の取り替えの有無にもよりますが40,000~180,000円程度。また、既存の配管を使って和式便器から洋式便器に変更する場合の費用は、250,000~400,000円程度です。

参照元:あなぶきデジタルサービス株式会社|トイレのドアの交換費用と交換方法を解説!

廊下

廊下も、床の素材や状態によっては滑って転倒するリスクがあります。床材を貼り替える場合の費用は、床材の種類にもよりますが1平方メートルあたり9,000~19,000円程度です。

参照元:株式会社リクルート|廊下のリフォーム費用・価格相場情報

玄関

玄関にスロープを付ける場合は、60,000~300,000円程度の費用が必要です。また、玄関の扉を引き戸に変更するときは、200,000~400,000円程度の費用がかかります。

参照元:タウンライフ株式会社|玄関にスロープの工事をする費用と価格の相場は?-リフォらん

参照元:株式会社メドレー|介護リフォームとは|費用相場、利用できる補助金、風呂場・トイレ・玄関などの事例を紹介

おわりに

介護のためのリフォームをする際に利用できる、介護保険のサービス内容についてご説明しました。住宅改修は、要介護の方だけでなく要支援の方も同額の支給額を受け取れます。また、介護を受ける方はもちろん、介護をする方の負担軽減にもつながります。ただし、リフォームはすぐにできるものではありません。計画や住宅改修費申請などにも時間がかかりますので、早めに動き出しましょう。

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