介護を考える際、欠かせないのが「ケアプラン」です。ケアプランには、最適な介護サービスを受けるための大切な役割があります。この記事では、ケアプランとは具体的にどういったものか、誰がどのように作成するのか、詳しくご紹介します。これから、介護サービスを受けようと考えている方や、そのご家族の方は、ぜひ参考にしてください。
まずはケアプランについて知ろう!
ケアプランについて、詳しく知らない方が多いかもしれません。まずは、ケアプランとは何か確認しておきましょう。
ケアプランとは
ケアプランとは、介護サービスを利用するための計画書のことです。ケアプランには、利用者が快適に生活を送れるよう、介護サービスの具体的な内容が記載されています。その方によって必要なサービスは異なるため、一人ひとりの課題を総合的に考え、複数のサービスを組み合わせてプランが作成されるのが特徴です。
ケアプラン作成の目的
ケアプランには、具体的に次のような目的があります。
介護サービスを安心して受けるための情報共有
介護サービスは複数人によって行われるため、介護サービス利用者の情報共有が必要です。ケアプランにより介護サービス利用者の情報が共有がされ、安心して介護サービスを受けられます。
介護サービス利用者の意見を反映させる
介護サービスは、利用者がいきいきと生活することを目的としています。そのため、ケアプラン作成には介護サービス利用者のニーズを知ることも必要です。ケアプラン作成段階から利用者本人や家族が積極的に協力することで、利用者の意見を反映させることができます。
ケアプランの種類
介護サービスは要介護認定や要支援認定を受けた方が利用できるものです。ケアプランには3種類あり、介護度によって利用できるプランが異なります。ケアプランの種類は以下のとおりです。
- 居宅サービス計画書(居宅ケアプラン)
- 施設サービス計画書(施設ケアプラン)
- 介護予防サービス計画書(介護予防ケアプラン)
では、具体的にどのような特徴があるのか見ていきましょう。
居宅サービス計画書(居宅ケアプラン)とは?
居宅サービス計画書は、要介護1~5に認定された方が対象です。在宅で過ごしている方が以下の介護サービスを利用する時に、このケアプランが必要になります。
- 訪問介護サービス
- 通所介護サービス(デイケア・デイサービス)
- 短期入所サービス(ショートステイ)
- 福祉用具のレンタルサービス など
居宅サービス計画書は、訪問・通所介護や短期入所サービスの他、介護保険を利用して車いすや歩行器などの福祉用具をレンタルする時にも必要です。
施設サービス計画書(施設ケアプラン)とは?
施設サービス計画書は、要介護1~5に認定された方が以下の施設に入居するために必要になります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設 など
特別養護老人ホームは、在宅で生活するのが困難になった高齢の方が利用できる施設、介護老人保健施設は、退院後の在宅復帰のためのリハビリをする施設です。また、介護療養型医療施設では、インスリン注射や経管栄養など、医療的な処置を受けられます。
介護予防サービス計画書(介護予防ケアプラン)とは?
介護予防サービス計画書は、要支援1~2の認定を受けた方を対象とします。現在の状態が悪化しないよう、また、要介護にならないよう予防するためのサービスを受ける時に、このケアプランが必要です。主な介護予防サービスは以下のとおりです。
- 介護予防訪問入浴介護
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 介護予防通所リハビリテーション
- 介護予防短期入所生活介護
- 特定介護予防福祉用具販売 など
介護予防サービス計画書は、高齢者一人ひとりの生活をサポートできるよう、それぞれのニーズに沿ったサービスを総合的に組み合わせて作成することが求められます。
ケアプランと介護計画の違い
ケアプランと似ているものとして「介護計画」があります。介護計画とは、各介護サービスのケアマネジャーが作成する個別の援助計画のことです。介護計画はケアプランをもとに作成され、介護内容がより具体的になります。介護サービスを受けるための計画には、ケアプランと介護計画があることを知っておくと良いでしょう。
ケアプランは誰が作るもの?
ケアプランを誰が作成するのか、規定があるわけではありません。ケアプランは、ケアマネジャーや地域包括支援センター、介護サービス利用者本人や支援者、家族も作成することが可能です。ここからはケアプランの作成について詳しく見ていきましょう。
ケアマネジャー
ケアマネジャーとは「介護支援専門員」とも呼ばれる介護サービスの専門家です。利用者に最適な介護サービスを選択し、ケアプランを作成します。各施設との連絡調整を行い、利用者と施設の仲介役をしてくれます。
地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、地域の高齢者の生活をサポートする施設です。保健師や主任ケアマネジャーなど、介護・医療・保健・福祉の専門的知識を持つ職員が在籍し、地域の相談窓口となってくれます。地域包括支援センターでは、介護に関することをはじめ、日常生活での困りごとの相談も可能です。また、介護保険の申請窓口としても利用できます。
ケアプランについては、要支援認定を受けた方向けの「介護予防サービス計画書(介護予防ケアプラン)」の作成支援を行っています。利用できる介護予防サービスを紹介してくれ、利用者本人と話し合いながらケアプランを作成します。
介護サービスを利用する本人や支援者、家族
ケアプランは、介護サービスを利用する本人や支援者、家族も作成することができ、これを「セルフケアプラン」「セルフプラン」といいます。セルフケアプランは、必要書類を市区町村役場へ提出することで手続きが完了し、介護サービスを受けられるようになります。
しかし、ケアプランの作成には専門的な知識が必要です。介護サービスを受けられる施設を選び、利用の手続きや毎月の利用報告など、通常はケアマネジャーが行う作業をご自身で行うことになります。専門的な知識がなければ大変な作業が予想されるため、まずは介護や福祉の専門家が在籍する地域包括支援センターへ相談すると良いでしょう。
ケアプランの作成方法は?簡単に作れる?
ケアプランは、介護サービス利用者本人や家族が作成することもできるとお伝えしました。では、どのような流れで作成すれば良いのでしょうか。ケアプランは、ケアマネジャーが作成する時とご自身が作成する時では、手順が異なります。ここでは、それぞれのケアプラン作成の流れを見ていきましょう。
ケアマネジャーによるケアプラン作成の手順
ケアマネジャーによるケアプランの作成は、以下のような手順で行われます。
- 目標を設定する
- ケアプランの原案を作成する
- サービス担当者による会議を行う
- 必要に応じてケアプランの原案修正や再提案などを行う
- ケアプランを交付する
- ケアプランの見直し
ケアマネジャーはケアプラン作成にあたり、事前に介護サービス利用者と面談をします。そこで利用者の生活や身体の状況を把握した上で、初めに行うのが目標設定です。利用者の目標を聞きながら、「介護できる家族がいない」などの状況に合わせて、ケアプランの原案作成に反映させます。
その後行われるのが、介護サービス担当者との会議です。この会議には利用者やその家族も参加し、意見を出し合います。この会議で出た意見をもとにケアプランを見直し、修正します。
ケアプランが完成し、介護サービス利用者や家族、介護サービス事業者へ交付されると、介護サービスが利用可能です。ケアプランが交付された後、ケアマネジャーは利用者の自宅を定期的に訪問し、介護サービスが適切に実施されているかを確認し、必要であればケアプランの見直しを行います。
ご自身でのケアプラン作成の手順
ご自身でケアプラン(セルフケアプラン)を作成する場合は、以下の手順になります。
- 必要書類を入手する
- 必要なサービスを選定する
- 単位や費用を計算する
- 利用したい事業者を選定する
- 事業者に連絡しサービス利用の予約を行う
- ケアプランを市区町村役場に提出する
- 事業者の利用予約を確定させる
- 月が替わったら前月分の利用実績を市区町村役場に提出する
まず、ケアプラン作成のための必要書類をお住まいの市区町村役場で入手します。書類が揃ったら、どのようなニーズがあるか、何を目標にするかを整理し、必要なサービスを選定しましょう。
次に、介護サービスの利用単位数や、自己負担になる費用を計算します。介護サービスの単位とは、地域区分や人件費の割合、介護度などにより決められている点数のことです。サービスごとに単位が決まっていて、単位数に地域で決められている単価をかけると介護サービスに支払う費用が計算できます。
その後、利用したい介護サービス事業者に連絡・調整を行い、ケアプランを確定させたらお住まいの市区町村役場に提出します。手続きが済んだら、各介護サービス事業者に連絡し利用予約を確定させましょう。介護サービスがスタートしたら、月ごとの利用実績を市区町村役場に提出することが必要です。分からないことがあれば、担当者などに相談しながらプラン作りを進めてみてください。
セルフケアプラン作成時のポイントをチェック!
ケアプランの作成手順が分かりましたが、セルフケアプランを作成するためにはいくつかポイントがあります。ここでは「居宅サービス計画書(居宅ケアプラン)」について詳しく解説します。
ケアプランの構成を知ろう
まずは、ケアプランの構成について知っておきましょう。居宅サービス計画書は厚生労働省により様式が決められていて、全7枚で構成されます。それぞれどのような内容を書くのか、見ていきましょう。
第1表:居宅サービス計画書(1)
生年月日や要介護の区分など介護サービス利用者の基本情報、利用者・家族の意向、総合的な援助方針などを記載します。
第2表:居宅サービス計画書(2)
介護サービス利用者のニーズ、ニーズに沿った長期・短期の目標、課題解決のための具体的な介護サービスの内容などを記載します。
第3表:週間サービス計画表
介護サービス利用者のスケジュール、主な活動を週ごとに記載します。
第4表:サービス担当者会議の要点
サービス担当者会議で検討した内容やその結論などを記載します。
第5表:居宅介護支援経過
介護サービス利用者とケアマネジャーとのやりとり、相談内容、事業所との連絡内容など、介護支援の経過を記載します。
第6表:サービス利用票
事業所名や介護サービスの内容、サービス提供時間など、各事業所のスケジュールを記載します。
第7表:サービス利用票別表
1ヵ月当たりの介護サービス利用単位数、利用者負担費用、サービス内容などを記載します。
ケアプランを作成する順番は?
ケアプランは全7枚あり、作成する際はどこから進めていけば良いのか不安に思う方もいるでしょう。ケアプランを作成する際の順番は特に決まっていませんが、第1表~第3表を効率良く作成するためには、次の順番で作成するのがおすすめです。
- 第2表…目標・具体的な介護サービスの内容
- 第3表…1週間のスケジュール
- 第1表…総合的な援助方針
この順番で作成すると、総合的な援助方針と介護サービスの具体的な内容が明確になり、目標のずれを防ぐことができます。
ケアプラン作成や運用時に注意しておきたいポイントとは?
ケアプランを作成する方法や効率良く作成するポイントが分かりましたが、一方で注意しておきたいこともあります。介護サービス利用者に最適なケアプランを作成できるよう、次のポイントを押さえておきましょう。
本人や家族の意見・意思をきちんと伝える
ケアプランの作成をケアマネジャーに依頼する際、利用者本人や家族は意見・意思をしっかりと伝えることが大切です。
ケアマネジャーに任せきりにしてしまうと、利用者や家族の希望が反映されないケアプランが作成されてしまうかもしれません。ご自身がどのような生活を送りたいか、どのような介護サービスを受けたいのか、ケアマネジャーに具体的に伝えることで、利用者にとって最適なケアプランの作成につながります。
原案は念入りに確認する
ケアプランの原案を確認することも大切なポイントです。不足している部分がないか、念入りにチェックしましょう。また、ケアプランは書面で作成されるため、サービスのイメージが湧かないことがあるかもしれません。もしもケアプランの内容に不明点があれば、ケアマネジャーに問い合わせたり、サービス担当者会議の際に確認をしたりすると良いでしょう。
経済状況などを事前に伝えておく
ケアプランの作成において、経済的に無理のない内容になっていることも大切なポイントになります。もしも家庭の経済状況とかけ離れたプランになっていれば、介護サービスによって家計を圧迫してしまいます。そのため、1ヵ月に介護サービスに充てられる予算はいくらか、事前に伝えておくと良いでしょう。
ケアプランの見直しを定期的に行う
ケアプラン作成後は、ケアマネジャーが利用者の自宅を訪問し、適切な介護サービスが行われているか確認します。これを「モニタリング」と呼び、最低1ヵ月に1回はモニタリングが行われます。モニタリングでは、利用者の状況確認やサービスの提供状況の他、目標に対しての達成度などを確認します。
目標が達成されていれば新たな目標を設定したり、見直しが必要であれば目標・課題を見直したりすることが必要です。なお、ケアプランの見直しは大体6ヵ月程で行われます。日数が経つにつれ、利用者や家族の状況などが変化することが想定されるため、定期的なモニタリングやケアプランの見直しが大切です。
おわりに
介護に必要なケアプランとは何か、詳しくご紹介しました。ケアプランは要介護・要支援の認定を受けた方が、介護サービスを受けるために必要なプランです。作成には専門的な知識が必要なため、ケアマネジャーに依頼するか、地域包括支援センターの利用をおすすめします。介護サービスを利用する本人や家族がケアプランを作成する際は、今回ご紹介した手順や内容を、ぜひ参考にしてみてください。