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「いつか来る親の介護」が気になり出したら……

セゾンのくらし大研究 編集部

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セゾンのくらし大研究 編集部

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いつまでも親には元気でいきいきと暮らしてほしいものですが、長生きするにつれ、介護が必要となる可能性も高まります。高齢者を支えるためには、実際に介護が必要となる前から必要な情報を仕入れ、「いつか」に備える必要があるでしょう。このコラムでは、介護保険制度の基礎知識を中心に、知っておいてほしいことをお伝えします。

日本の人口高齢化と介護事情

平均寿命だけでなく健康寿命も大切

世界に名だたる長寿国・日本。2020年の日本人の平均寿命は、女性87.74歳、男性81.64歳で、いずれも過去最高となりました。寿命が延びるのは喜ばしいことですが、自分らしくいきいきとした高齢期を送ってこそ、長寿の幸せを実感できるもの。そこで気になるのが、介護を受けることなく自立した日常生活を送ることができる期間を示す「健康寿命」です。

2019年時点の健康寿命は、女性75.38歳、男性72.68歳で、平均寿命と10歳前後の開きがありました。平均寿命と健康寿命の差を縮め、自立して健康的に暮らす高齢者をいかに増やせるかが超高齢化社会の大きな課題となっています。

歳を重ねるほど介護のリスクが上昇

65歳以上で介護を要すると認定された方は、2019年度末で656万人(男性204万人、女性452万人)。この人数は年齢層が上がるほど増え、特に75歳以上の後期高齢者では介護リスクがかなり高くなります。

実際に介護が必要になると、それにかかる時間や費用は結構な負担となります。生命保険文化センターが介護経験者に対して行った調査において、介護をどのくらいの期間行ったのかという問いでは、平均4年7ヵ月という結果が出ました。また、介護に要する費用は、月々の支払いで平均78,000円となっており、有料老人ホームなどへの入居も考えると、年金や貯蓄ですべて賄えるのかという心配もあります。高齢期を迎えた親が、少しでも長く健康で自立して暮らせるよう、健康づくりや介護予防に取り組むとともに、早いうちから介護についての心構えを持ち、準備しておくことが大切です。

介護保険制度はどんな仕組み?

介護を必要とする人を社会全体で支える制度

介護保険制度は、介護を必要とする方を社会全体で支えることを目的に、2000年4月1日にスタートしました。医療保険や年金保険と並ぶ、公的な社会保険制度です。

介護保険料を支払い、必要な介護サービスを受けることができる被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳以上64歳までの医療保険に加入する「第2号被保険者」に分けられます。

第1号被保険者は、65歳になると「介護保険被保険者証」が交付され、原因を問わず要介護認定(後述)を申請することができます。一方、第2号被保険者は、厚生労働省が定める16種類の特定疾患(がん、関節リウマチ、脳血管疾患など)が原因で介護が必要と認められた場合に限り、要介護認定を申請することができます。

介護保険の財源は、被保険者が納める保険料と、国・都道府県・市区町村からの公費(税金)とで賄います。介護サービスを利用する場合、原則、サービス費の1~3割を介護サービス事業者に支払い、残りは介護保険から給付されます。また、介護保険施設へ入所・入院する場合は、サービス費のほかに食費と居住費を負担する必要があります。

介護サービスを受けるには要介護認定が必要

介護保険は、医療保険と違い、保険証を使っていつでも利用できるわけではありません。介護保険を利用したいときは、介護保険を運営する市区町村(保険者)に申請し、介護認定審査会による要介護認定を受けてはじめて利用できる仕組みになっています。

審査の結果、病気や加齢のために日常生活を送るうえで介護が必須(=要介護1~5)と認定されれば、介護サービスを利用できます。基本的にひとりで生活が行えるものの部分的な介護が必要(=要支援1~2)と認定されれば、要介護状態に進展することを防ぐ目的で介護予防サービスを利用できます。要支援1→要介護5と進むにしたがってサポートの必要度が上がり、介護保険からの給付額も高くなっていきます。

もっとも、手助けが必要だからといって、周囲の方が何でも世話をしてしまうと、本人の自立を妨げかねません。できることは本人にしてもらい、必要な場面で周りが手助けをしてあげるようにしましょう。本人の意思や尊厳を守りながら生活を支援していく姿勢が大切であり、それがさらなる状態悪化を防ぐことにもつながります。

要介護者を支える家族の心構えとは?

介護は「チーム力」で取り組もう

介護保険制度により、介護は家族だけで担うものではなくなりました。しかし、実際には、介護サービスの利用手続きや病院への送迎、日常のケアやさまざまなサポートなど、家族の力を必要とする部分は多いものです。

家族で担う介護は、特定の方に負担が集中しないよう、全員の「チーム力」で取り組むことが大切です。例えば、介護を必要とする親の近くに住む長男は緊急時の対応と日常的なサポートを行い、隣の市に住む長女は週末に親の家を訪問して介護をサポートする。他県に住む二男は長期休暇のときに帰省し、その間は介護に専念する、といったおおまかな役割を決めておくとスムーズです。まずはお盆休みや年末年始など、家族が集まる機会を利用し、親の意向をくみ取りながら、今後について話し合うことから始めましょう。

地域とのつながりも大切に

遠く離れて暮らす子どもにとって、親の日常生活をどうサポートするかは悩みどころです。電話や長期休暇を利用した帰省などで、親の健康状態を確認する方も多いことでしょう。そこにプラスアルファしたいのが、帰省時に近隣の方や親類縁者と積極的にコミュニケーションを図ること。周囲の方とのつながりがあると心強く、何かあったときにも素早い対応ができます。

また、各市町村に設置されている「地域包括支援センター」には医療や介護福祉の専門知識を持つ職員が在籍し、その地域の高齢者が住み慣れた環境で暮らし続けられるようさまざまな相談に乗り、課題解決に力を貸してくれます。困ったときの相談窓口として、ぜひ頼りにしてください。

要介護になる前から「かかりつけ医」を持っておこう

かかりつけ医とは、本人の既往歴や現在の疾患、生活習慣なども把握したうえで、健康管理のアドバイスまでしてくれる身近な主治医のことをいいます。多くは、入院設備を持たないクリニック(医院)の医師で、詳しい検査などが必要な場合は、入院設備を持つ一般病院や高度医療を行う大病院を紹介してくれます。

前述した要介護認定を受ける際は、「主治医意見書」が必要です。これは日ごろ受診している医療機関の医師に作成してもらうことになっており、その内容は審査結果にも大きく影響します。納得できる認定を受けるためにも、本人のことをよく知っている「かかりつけ医」の存在は軽視できないため、意識的に見つけておく必要があるでしょう。

なお、高齢になると複数の持病を抱え、複数の診療科にかかることも珍しくありません。どの診療科の医師でも、普段から診てもらっている医師が基本的には「かかりつけ医」ですが、要介護認定を受ける場合は、認定理由となる主疾患を診療している医師が主治医意見書を書くことになります。

逆に、これまで病気らしい病気をしてこなかった方や、病院嫌いでほとんど医者にかかったことがない方もいると思います。その場合は、まずは自宅近くで評判の良い内科クリニックを探し、健康診断を受けるよう促してみてはいかがでしょうか。一度診てもらっておけば、何かあったときに足を運びやすくなります。

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