最近「介護食」という言葉をよく目にしたり耳にしたりする機会が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。特にドラッグストアなどでは、レトルトパックに入ったさまざまなタイプの介護食を見かけるようになりました。ただし、あまりに商品が多過ぎて、実際に買うとなると、どれを選べば良いのか、迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。そこで、介護食を有効に使いこなすために、押さえておきたい基礎知識を解説します。
そもそも、介護食とは?
介護食とは、摂食や嚥下(えんげ)に障がいがある方を主な対象とした商品です。つまり、食べたり、飲み込んだりするのが難しくなった方でも、食事を楽しんでもらえるように工夫をした食品のことです。
もっとも、「食べたり飲み込んだりするのが難しくなった」といっても、人によってさまざまな状態があります。「歯の状態が悪くて、ちょっと堅いお菓子をかみ砕けなくなった」という程度の方もいれば、「ご飯は食べられないけどおかゆなら充分食べられる」という方もいます。中には、「とろりとした液体状のものでなければ、何ものどを通らない」という方もいるでしょう。
このように、介護食を利用する方の状態はさまざまありますから、介護食も、それに合わせてさまざまなタイプが用意されています。それだけに、その方の状態に合った商品はどれなのかを示す基準がないと不便ですよね。
実は、その基準となり得る指標が、すでに各省庁や学会などから発表されています。今回は、そうした指標の中でも、主な5つの内容と特長を説明します。
介護食の4つの指標
ユニバーサルデザインフード(日本介護食品協議会)
独自の基準を制定し、その基準に見合うものに「ユニバーサルデザインフード(UDF)」として特別なマークを付けています。「容易に噛める」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「噛まなくて良い」の4段階があります。
一般の店頭の介護食売り場では、ユニバーサルデザインフードで表示されていることが多いように思います。最初に介護食を選ぶ方は、この指標を参考にすれば混乱が少ないでしょう。
参照元:日本介護食品協議会
嚥下食(えんげしょく)ピラミッド
1980年代から聖隷三方原病院で使われていた介護食の分類方法で、2004年、金谷節子先生によって学会発表されました。介護食をレベル0~3、介護食・移行食(介護食・移行食で1種類です)、普通食の6段階に分類しています。病院で実際に使われてきた分類であり、実践しやすくわかりやすく説明されていたことから、瞬く間に広く病院や介護施設で用いられるようになりました。ご家族が施設や病院に入ることになったという方は、知っておいた方が便利な指標といえます。
参照元:嚥下食ドットコム
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021
本家である日本摂食嚥下リハビリテーション学会からの正式な分類が発表されたのが2013年。それから8年が経過し、現在はその改訂版である「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021」が公表されています。
この分類はリハビリをすることを目的に考えられていたため、「嚥下ができるかどうか?」や「嚥下ができるとすれば、どのようなものならOKか?」など、嚥下リハビリの初期の段階のステップが他の分類よりも細かいことが特徴です。
具体的には7つに分類されており、嚥下機能が低下しているほうから、コード0j、0t、1j、2-1、2-2、3、4となっています。昨今では、この分類を「学会分類」と呼んで利用している施設や病院が多いように感じます。専門家でない一般の方にとっては、少し難しい表現も含まれていますが、特にご家族が嚥下のためのリハビリを受けることになった場合などには、知っておいたほうが良いかもしれません。
スマイルケア食
農林水産省による「スマイルケア食」が2014年11月に発表されました。農水省は嚥下困難だけでなく、咀嚼・嚥下に問題ない方も対象にしたかったようです。
分類は以下のとおりです。
分類 | 状態 |
スマイルケア食0 | そのまま飲み込める性状のもの |
スマイルケア食1 | 口の中で少しつぶして飲み込める性状のもの |
スマイルケア食2 | 少しそしゃくして飲み込める性状のもの |
スマイルケア食2 | 噛まなくて良い食品(例つぶのあるペースト食) |
スマイルケア食3 | 舌でつぶせる食品(例きぬごし豆腐) |
スマイルケア食4 | 歯ぐきでつぶせる食品 |
スマイルケア食5 | 容易に噛める食品(焼き豆腐) |
注意が必要なのはスマイルケア食2の段階が2つあることです。スマイルケア食のマークが付いている商品も一般の店舗で見かけるようになってきていますので、特に注意しましょう。
ユニバーサルデザインフードとともに、一般の店頭の介護食売り場で活用されることが多い指標です。
介護食の選び方
介護食の分類がわかったところで、実際に、介護される方に合った形態を選ぶためのいくつかの方法をご紹介します。
「EAT-10」などがあります。
スマイルケア食の選び方というチャートに取り組むと、途中で「専門家に相談」に行き当たることもあると思います。ただ、そこに行き当たらなければ相談してはいけないという訳ではないので、困ったことがあれば、気軽に相談してみましょう。
もうひとつご紹介いたします。日々の食事の記録をとりたい場合には、浜松市リハビリテーション病院による「嚥下(えんげ)パスポート」という冊子が便利です。この冊子は食事の介護される方の基本情報と食事の記録を書くページがあります。この冊子に記入しておくと、デイサービスやショートステイの利用の際に役に立ちます。
これらのチャートやツールを使えば、介護される方に適した食事のレベルを知ることができます。市販のレトルト商品を利用するには困らないと思います。
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