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夜間せん妄とは?認知症による原因と症状、その家族の対応とは

セゾンのくらし大研究 編集部

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家族を介護しているとき「なんだか日によってひどくぼんやりしている」「夜になると落ち着きが無くなってしまう」と感じたことは無いでしょうか?それは、もしかすると夜間に起こる「せん妄(せんもう)」かもしれません。

このコラムの前半では、せん妄(せんもう)の症状や原因を解説します。また、後半では実際にせん妄(せんもう)の症状を軽減するための対応策も紹介しますので、ぜひ参考になさってください。

「夜間せん妄 (せんもう)」とは?

せん妄(せんもう)の症状

せん妄(せんもう) は、病名ではなく状態を表す言葉です。具体的には、意識が少し朦朧としていることに加えて、見当識(時間や場所、状況を把握する力)の低下、不安感の高まりなどが見られます。

若い方であれば、手術や事故など身体の状態に大きな変化が起きない限り、 せん妄(せんもう) が起こることは非常に稀です。しかし高齢になると日常生活のなかで、 せん妄(せんもう) を起こしてしまうことがあります。生活リズムの乱れなどにより、夜間に発症するのが「夜間せん妄(せんもう) 」です。

特に認知症を抱える方は時間の感覚が薄れやすく、昼夜が逆転してしまうことがあります。その結果、昼間はウトウトして、眠れない夜間に せん妄(せんもう) が現れやすくなります。

せん妄(せんもう) を起こしている間も、多くの方は話しかけられると返事ができる状態です。ただし、返答の内容はつじつまが合わず曖昧なことも多く、意思の疎通は難しいでしょう。そのため、落ち着かせようと一生懸命に声をかけても効果が薄く、介護者の疲労感を高めてしまう要因のひとつでもあります。

せん妄(せんもう) の原因

せん妄(せんもう) の原因は体調や環境など多岐にわたります。癌や脳血管疾患、心不全、肺炎などの大きな病気を抱えていると、 せん妄(せんもう) のリスクは高まります。

また、血糖値がうまくコントロールできていなかったり、肝機能が低下することなども せん妄(せんもう) の誘因です。特定の病気が せん妄(せんもう) の原因になるというよりは、病気によって体内の水分や物質のバランスが崩れることが せん妄(せんもう) の原因といえるでしょう。

そのため、特に持病が無くても脱水症に伴って、 せん妄(せんもう) を発症することもあります。また、アルコールの飲み過ぎや一部の薬によって せん妄(せんもう) の症状が強まるケースも珍しくありません。

このように、 せん妄(せんもう) の直接的な原因は体内で起きる変化が要因となっていることがあります。しかし、直接的な原因だけでなく環境の変化も間接的な原因となり得ます。入院や施設入所を期に夜間 せん妄(せんもう) が出やすくなるのも、環境が急激に変化するためと考えられます。

間違えられやすい病気

せん妄(せんもう) を起こすと、家族の方は「認知症やうつ病ではないか?」と感じるかもしれません。実際、 せん妄(せんもう) の症状は認知症や精神疾患と似ています。認知症でも時間や場所の感覚が薄くなることは多く、また、うつ状態のように意欲や活動性が下がるタイプのせん妄もあります。

こうした病気と せん妄(せんもう) とを見分けるためには、「症状の継続時間や波」がポイントです。認知症やうつ病では、数ヵ月にわたり症状が続くとされています。一方、 せん妄(せんもう) の場合は1日もしくは数日の中で症状が軽く意識がはっきりしている時間と、 せん妄(せんもう) が強く表れている時間があります。

夜間せん妄(せんもう) の種類

過活動型

一般的に「家で介護しているけれど、夜間 せん妄(せんもう) で困っている」と話題に上がることが多いのは、この過活動型です。その名前のとおり、落ち着き無く動いたり、不安や興奮のため声を上げるなどの行動が見られます。

また、ご自身のおかれている状況がうまく把握できずに、「なぜ自分はこの部屋にいるのだろう」「ここから出なければ」という焦燥感を抱えている場合も多いようです。そのため、過活動型せん妄(せんもう) の高齢者には徘徊が見られることも多く、その最中に転んでしまうリスクも高いので注意が必要です。

低活動型

低活動型は、周囲への関心や集中力が低下してしまうタイプの せん妄(せんもう) です。周りから見ると「最近少しぼんやりする時間が増えたな」という印象ですが、問題行動が少ないので家族は せん妄(せんもう) を起こしていると気付きにくいかもしれません。意欲の低下や表情の乏しさなどから、うつ病や認知症と誤診されることもあります。

混合型

過活動型と低活動型が混在しているタイプの せん妄(せんもう) です。声を上げたり落ち着き無く歩き回ったりという日もあれば、無言でぼんやりしている日もあるため家族の方も対応に迷うことが多いでしょう。

夜間せん妄(せんもう) に対する家族の対応

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直接的な原因への対処

かかりつけ医へ一度相談してみることをおすすめします。原因となっている病気自体はすぐに治らないとしても、薬の種類や量を調整して、生活のアドバイスを受けられるでしょう。

また、脱水症の予防は家族だけでもできる対応策です。とはいえ「ちゃんと水分をとってね」と声だけ掛けても、なかなか習慣づけるのは難しいでしょう。また、頻繁に声を掛けられていると「口うるさく注意されている」「見張られている」と感じてしまう高齢者もいるようです。

そのため、一緒にお茶を飲む時間をこまめに作るというのがおすすめです。少し話をしながら目の前にお茶があると、自然と水分摂取も進むのではないでしょうか。

落ち着ける環境づくりへの配慮

せん妄(せんもう) の発症には、身体的な状態だけでなく環境も大きく影響します。つまり、本人にとって安心できる環境を整えることができれば、 せん妄(せんもう) の症状が落ち着く可能性は高いといえます。まず、 せん妄(せんもう) を誘発しやすいと考えられる環境はどのようなものか見てみましょう。

【過剰な刺激】

  1. 休むべき時間帯に照明や物音などの刺激がある
  2. 寝室の近くで大きな音のテレビや話し声がする
  3. 本人の生活リズムを無視したオムツ交換
  4. 痛みやかゆみなど身体的な不快感
  5. 室内の温度や湿度などが適切ではない

【環境からの遮断】

  1. 周囲の環境を感じられない
  2. 眼鏡や補聴器が合っていない (視覚・聴覚刺激が適切に受け取れない)
  3. カレンダーや時計などが部屋に置いていない

【不安につながる環境】

  1. 行動が制限されて不自由を感じる
  2. 不安を伝えても適切に対処してもらえない
  3. トイレや食事の場所などがわからない
  4. 知らない人が出入りすることが多い

このポイントを今の環境に照らし合わせて、もし当てはまるものがあれば可能な範囲で変えてみることをおすすめします。全てクリアすることは難しくても、要因を少しずつ減らすことで 、せん妄(せんもう) の症状が軽減される可能性は充分にあります。

特に、本人が認知症の場合は「どうせわからないから」とカレンダーや時計を置かなかったり、説明をせずに家族が主体になって話や物事を進めてしまったりしがちではないでしょうか。本人が、大まかに今どんな状況なのか理解できる環境作りや声かけを心掛けましょう。

おそらく、家族のなかで主に介護を担っている方は、認知症やせん妄(せんもう) の症状が強い方に対して「自分自身の話が理解されない、話が通じにくい」ということに疲れていると思います。そうなると介護される側の視点に目が向かなくなりがちですが、介護されている本人も“わからない”ことに不安や焦りを感じているはずです。

声かけで“見当識”を高める

見当識とは、自分が今どんな状況に置かれているのか(場所、時間、周囲と自分の関係など)を認識する能力のことです。 せん妄(せんもう) の症状が出ているときは、この見当識が低下していることが多いといわれています。

この見当識を補うような関わり方をすることで、 せん妄(せんもう) の症状が徐々に軽減される可能性があります。さきほどのカレンダーや時計にも関わることですが、見当識を高めるためには日頃の声かけも重要です。

特に効果的とされているのが、会話の中に時間や季節の情報を入れた声かけです。医療の現場ではRO(リアリティ・オリエンテーション)と呼ばれ、認知症や せん妄(せんもう) の方などに対して実践されることがあります。最初は少し難しく感じるかもしれませんが「朝だからカーテンを開けるね」「3時になったからおやつを食べよう」など、簡潔で日常的な情報だけでも十分です。

おわりに

「 せん妄(せんもう) 」は、不安や興奮を伴った軽い意識障害です。どんな方にでも起きる可能性はありますが、特に持病が多い高齢者によく見られます。生活リズムが乱れると、本来は眠るべき時間帯にせん妄が起きることもあります。この「夜間せん妄(せんもう) 」は介護する家族の負担になりやすいでしょう。

せん妄(せんもう) は複数の要因が重なって起きることが多く、薬などですぐに治すのは困難かもしれません。しかし、考えられる原因をひとつでも解消したり生活環境を調整することで、症状が和らぐ可能性があります。かかりつけ医とも相談しながら、自宅でできる対応策を試してみてはいかがでしょうか?

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