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認知症「ひとり歩き」の原因やおすすめの対応策3選をご紹介!

セゾンのくらし大研究 編集部

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認知症の家族を介護している方には、さまざまな悩みがあると思います。その中でも、特に困っているという方が多いのが「ひとり歩き(徘徊)」に関することではないでしょうか?このコラムの前半では、ひとり歩きの原因や認知症との関係について詳しく解説します。後半では、実際のひとり歩き対策について3つのポイントを紹介しますのでぜひ参考になさってください。 

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ひとり歩きと認知症 

認知症の現状 

厚生労働省の資料によると、認知症の患者数は2012年には約460万人でした。これは、65歳以上の7人に1人くらいの割合です。この患者数は高齢化に伴って徐々に増え、2025年には700万人前後になると予測されています。つまり、高齢者のおよそ5人に1人が認知症を抱えるということです。 

また、「介護が必要になった主な原因」に対する回答として最も多いのも「認知症」でした。もちろん、認知症を患ってもすぐに寝たきりになってしまうわけではありません。しかし多くの行動に見守りや声掛けが必要であり、介護する家族の負担は大きいと考えられます。 

(参考) 令和3年版「高齢社会白書」  | 厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」 

ひとり歩きは「周辺症状」 

今回のテーマ「ひとり歩き」を知るにあたって、まずは認知症の症状全般を見ていきましょう。認知症にはさまざまな症状がありますが、その症状は大きく2つに分類できます。 

1つめは脳の機能が低下したことで直接的に起きる「中核症状」です。ここには、記憶力や判断力の低下などが分類されます。一方、この中核症状により生活や環境にうまく適応できなくなったことによる精神的な症状や問題行動は「周辺症状」と呼びます。徘徊は、この2つのうち周辺症状に分類されています。 

ひとり歩きの危険性 

警視庁の統計によると、令和元年度に届け出があった行方不明者は約79,000人でした。そのうち、2割ほどにあたる17,500人が認知症による行方不明者だったといわれています。 

認知症の方は疲労感や体調の変化を感じる力が弱いとされ、通常では考えられないほどの距離を歩いて移動してしまうこともあります。無事に発見される割合のほうが圧倒的に高いとはいえ、途中で事故に遭ったり体調を崩して亡くなる方もいるため、認知症の症状の中でも危険度は高いといえるでしょう。 

(参考) 警視庁「令和2年中における行方不明者の状況」

ひとり歩きの原因 

では、認知症になると徘徊を繰り返してしまう方がいるのはなぜなのでしょうか?考えられる理由や原因を見てみましょう。理由がわかれば、対策や声かけがしやすくなるかもしれません。 

帰り道がわからない 

ひとり歩きと聞くと「家で安全に過ごして欲しいのにふらりと出て行ってしまう」という状況を想像しがちです。しかし、出かけた先で目を離した少しの間にいなくなってしまったというケースも少なくありません。 

ひとり歩きは「いなくなってしまう」というより「帰れなくなってしまう」状態ともいえるでしょう。認知症により記憶力や判断力が低下することで、帰りの道順や、そもそもどこへ帰れば良いかわからなくなってしまうということも起こり得ます。 

居場所を探している 

認知症になると、今いる場所や状況の認識が難しくなることがあります。もし、皆さんも突然ご自身の今いる場所や周りにいる方のことがわからなくなったら「どこか知らないところに来てしまった」「知らない人の家にお世話になっている」と考えて焦ったり不安に感じるはずです。 

認知症の方も同じく、ご自身の家にいながら「ここはどこだろう」「いつまでもお邪魔しているわけにはいかない」という考えで外に出ている場合があります。また、家でなく入所している施設や昼間通っているデイサービスでは、部屋や人の様子が家庭とは違います。そのため、その不安はさらに強まる可能性が高いでしょう。 

目的があることも 

認知症になると、最近インプットされた情報に関しては記憶する能力が低下します。しかし、実は昔から繰り返し行ってきたことや、若い頃の記憶は鮮明に残っていることも多いようです。そのため、その記憶をもとに本人の中では明確な理由があって出かけていることもあります。 

代表的なものが「子どもを学校に迎えに行かなくては」「仕事に行ってくる」などです。このとき本人の記憶は若い頃に“タイムスリップ”していると考えると理解しやすいかもしれません。このような状況では、本人はご自身の子どもがまだ幼かったり、ご自身が現役で働いていたりというつもりで外出しようとしています。 

こうした場合は、間違っているといい聞かせて引き留めようとしても「用事があって急いでいるのに」と本人は苛立ってしまいがちです。介護者に時間的余裕があれば「途中まで一緒に行っても良い?」と声をかけて見守る方が良いかもしれません。 

ひとり歩きの対応策 

では、実際に徘徊に悩んだとき、どんな対策をすれば良いのでしょうか?徘徊の基本的な対応策について詳しく紹介していきます。 

安心できる環境づくり 

さきほどひとり歩きの原因をいくつか挙げましたが、その中の2つ目は「今いる場所が自分の居場所ではない」と感じてしまうことでした。こうした場合に、家族が一緒に家にいられるのであれば「ここに居てほしい」「ゆっくりしていて良い」と伝えるという方法があります。 

認知症の方は、いわれた内容は忘れてしまっても人と話したときのイメージはぼんやり覚えていると考えられます。そのため「忘れてしまうから」と厳しくいって聞かせたり理由を伝えず外出を禁止するのではなく、今いる場所が安心できる場所、良くしてくれる方がいる場所と感じてもらうことも大切です。 

また、やむを得ず出掛ける場合や別室に行く前に「〇分くらいで戻るので、待っていてね」などの書き置きをすることも有効とされています。本人が今の状況を忘れてしまうことで徘徊が起きている場合は、見える場所に書き置きを貼ることで思い出すための手助けとなるかもしれません。 

グッズを活用する 

環境や声掛けに配慮しても、すぐにひとり歩きがまったく無くなるとは限りません。そんなときは、ひとり歩き対策グッズも併せて活用することをおすすめします。最近では介護者の負担軽減にも注目が集まり、さまざまなグッズが増えてきました。 

人感センサー 

まず、家から出てしまうのを防ぐグッズとして代表的なものが人感センサーです。人感センサーを玄関に設置して、人が近付くと通知音が鳴るようにしておけば高齢者の外出にすぐに気が付くことができます。たとえ家から出てしまったとしても、すぐに気がつけば見失う確率は大幅に下がるでしょう。 

スマートキー/ナンバーキー 

他にも、玄関から出ること自体を防ぐためには後付けのカギが有効です。一般的にはカギといえば内側からは手動でかけられますが外からはカギが無いと開きません。しかし、認知症の方を家において家族が出かける場合の対策として、外からかけて中からは開けられないカギがあります。 

また、家族が家の中にいたとしても家事で手が離せないときや眠っているときにまで「いつ出て行ってしまうか」と気にかけていれば介護している家族のほうが疲弊してしまいます。そんなときは、特定のスマートフォンでのみ解錠できる「スマートキー」や、上の画像のように番号で解錠する「ナンバーキー」の設置もおすすめです。 

GPS端末 

さらに、行方不明になったときにはGPS端末を持ち歩いていればスマートフォンなどから場所を検索することができます。持ち忘れがないように、いつも持ち歩いているバッグに入れておいたり、ストラップで常に本人の首にかけておけば安心です。いざというときすぐに使えるように、たまにGPSの検索画面を見て使い方に慣れておきましょう。 

協力者を増やす 

最近では核家族化が進み共働き世帯も増えているため、家族だけでの介護や見守りにも限界があります。そのような中で、同じく「頼る」方法として地域の目も重要です。見守りの目はなるべく多い方が良いので、近隣には認知症であることを知らせておくことが望ましいといえるでしょう。 

ですが、家族が認知症だということを周囲に明かしたくない方もいるはずです。もちろん認知症は本人や家族のせいで発症する病気ではありませんが、やはり家族が認知症だと打ち明けるのには抵抗を感じるかもしれません。 

もし「付き合いのあった人に知らせるのは抵抗がある」という場合は、警察や地域包括支援センターなど公的機関にだけでも本人の情報を提供しておくと安心です。あらかじめ情報を共有しておくことで、実際に行方不明になった際に早期発見の確率が高まるでしょう。 

おわりに 

日本では高齢化が進むとともに認知症を抱える方の数も増えているという現状があります。認知症になると症状のひとつとして「ひとり歩き(徘徊)」が見られることがあり、その結果としての行方不明や事故などが問題となっています。 

認知症になると周囲から見ればつじつまが合わない言動が増えますが、徘徊には本人なりの理由があることが分かってきています。その理由に応じた声掛けや対応により、ひとり歩きの症状は軽くなる可能性があるといえるでしょう。 

今回は家族ができる対応以外にひとり歩き対策グッズも紹介しました。監視するようで抵抗があるという方もいるかもしれませんが、介護する側が余裕をもってそばに居られるための“サポート”として、少し頼ってみるのも選択肢のひとつかもしれません。 

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