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余命宣告後にできる相続税対策は?家族のためにできることを紹介

余命宣告後にできる相続税対策は?家族のためにできることを紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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もしも余命宣告を受けてしまったら、自分の体調だけでなく残される家族のことが心配になる方も多いでしょう。「家族のために少しでも多く財産を残してあげたい」と考えたとき、まず検討したいのが相続税対策です。あらかじめ対策しているかどうかで、家族の手元に残る金額が変わってきます。

この記事では、通常の相続税対策だけでなく、余命宣告を受けたあとでもできる対策について解説します。

この記事を読んでわかること

  • 亡くなった方から財産を受け取ると、相続税の課税対象になる可能性がある
  • 相続対策を行っておくことで、納めるべき税額が減り、家族の手元に残る金額を増やせる
  • 余命宣告を受けたあとでも、非課税制度の活用や遺言書の作成などできることはある
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相続税とは?誰にいくらかかる?

相続税とは?誰にいくらかかる?

そもそも相続税とは何なのか、どんなときにいくらかかるのか、基本的なルールを押さえておきましょう。

相続税とは

相続税は、亡くなった方の遺産を相続や遺贈(遺言書による贈与)によって受け継いだときに発生する税金です。

ただし、亡くなった方から財産を受け継いだからといって、必ず相続税がかかるというわけではありません。相続税には法律で定められた「基礎控除」があります。実際に税金がかかるのは、遺産のうち基礎控除の金額を上回った部分のみです。

相続によって誰にいくら財産が渡るかは、法律上の規定があります(規定どおりでない分け方を遺言書で指定することもできます)。法律上、相続を受ける権利があると定められている方のことを「法定相続人」と言い、配偶者や子ども、場合によっては親や兄弟姉妹が該当します。

相続税はいくらかかる?

前述のとおり、相続税がかかるのは遺産総額が基礎控除の金額を超えた場合だけです。基礎控除の金額は以下の式で算出します。

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば法定相続人がひとりの場合は、遺産額が3,600万円以下なら相続税がかかりません。遺産額が5,000万円の方なら、5,000万円-3,600万円=1,400万円分が課税対象になります。

相続税の計算は少々複雑なのですが、簡単に言うと、課税対象になる遺産に以下のような税率をかけたり税額控除分を差し引いたりして、最終的な税額を計算します。

相続税の速算表】

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超~3,000万円以下15%50万円
3,000万円超~5,000万円以下20%200万円
5,000万円超~1億円以下30%700万円
1億円超~2億円以下40%1,700万円
2億円超~3億円以下45%2,700万円
3億円超~6億円以下50%4,200万円
6億円超~55%7,200万円

(出典:国税庁「財産を相続したとき」)

前述の例で言うと、課税対象遺産1,400万円×税率15%-控除額50万円=相続税額160万円が目安です。

ただ、亡くなったあとに財産を譲る「相続」にも、生きているうちに譲る「贈与」にも、さまざまな特例措置や非課税制度が用意されています。うまく活用して対策しておけば、税額を抑えることも可能です。続いて、具体的な対策方法について見ていきましょう。

基本的な相続税対策

基本的な相続税対策

相続税対策として一般的に利用されている方法を、次の3つに分けて紹介します。

  • 生前贈与を活用する方法
  • 不動産を活用する方法
  • 生命保険を活用する方法

それぞれの方法で認められている特例措置や非課税限度額(非課税枠)に注目して見ていきましょう。

生前贈与を活用する方法

生前贈与は、相続税対策として最もよく利用されている方法と言えます。

生きているうちに財産を譲る場合、「一定の金額までなら非課税で済む」といった特例が多数あります。生前贈与で財産を移しておけば、贈与税の課税を避けつつ、相続税の課税対象額を抑えることも可能です。税金対策に使える特例には、例えば以下のような種類があります。

暦年贈与

贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があり、どちらか一方を選択できます。暦年課税の場合、年間110万円までの贈与なら贈与税がかかりません。これを利用して、何年もかけて少しずつコツコツと財産を移していくことを「暦年贈与」と呼んでいます。

一般的には有効な対策とされていますが、暦年贈与には他にも細かいルールが多数あり、亡くなる前、相続前贈与の加算期間に行われた暦年贈与は相続財産として加算されるので注意が必要です。

2024年以降に受けた贈与については加算期間が最大7年になります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税は、贈与税のもうひとつの課税方法です。こちらを選択した場合は、2,500万円までの贈与なら贈与税がかかりません。

相続が発生したときには、贈与された分が相続財産に加算され相続税の課税対象になります。ただ、そのときは相続時ではなく贈与時の評価額で税計算されるので、相続発生時までに価額が上昇するような財産の贈与をしておくと節税できるメリットがあります。また基礎控除として年間110万円までは贈与税はかかりません。

贈与税の配偶者控除

結婚20年以上の夫婦間だけに認められた特例もあります。夫婦間で居住用の不動産もしくはそれを購入するためのお金を贈与した場合、最大2,000万円まで贈与税がかからずに済みます。この特例は通称「おしどり贈与」と呼ばれています。

教育資金一括贈与

子や孫に教育資金としてお金を贈与する場合、最大1,500万円まで非課税になる特例です。教育資金とは、例えば学校の授業料や入学金、塾や習い事の費用などが含まれます。対象期間は2026年3月31日までです。

贈与者が亡くなった時点で使い切れていないお金(管理残額)や子や孫が30歳になったときに残額がある際は、相続税の課税対象になるので要注意です。

住宅取得資金贈与

18歳以上の子や孫に住宅取得資金としてお金を贈与する場合は、最大1,000万円まで(省エネ住宅でない場合は500万円まで)非課税になります。住宅取得資金には、住宅の新築や購入の費用だけでなく、増改築の費用も含まれます。対象期間は2026年12月31日までです。

不動産を活用する方法

不動産を活用した税金対策は、以下のとおりです。

土地を売却する

土地を売却することで相続対策になる場合もあります。空き家や、更地のままで放置している土地を売却すれば、固定資産税などのコストや管理の手間が減るため家族が困らずに済みます。

自宅を売却する場合に適用できる特例もいくつかあるため税負担を抑えられるうえ、売却で得たお金で、より節税効果が高い別の不動産を購入することもできます。

所有地にアパートやマンションを建てる

アパートやマンションなどの賃貸不動産は相続時の評価額が低くなりやすく、節税のために建てる方も少なくありません。ローンを利用した場合は、相続時にその債務の分を遺産総額から差し引ける点もメリットです。ただし、空室リスクなども伴うので注意が必要です。

小規模宅地等の特例を活用

配偶者など残された家族が自宅に住み続けられる小規模宅地等の特例は、面積など一定の条件を満たせば、相続時に土地の評価額を最大80%減らせる制度です。自宅の土地を財産として残す場合などに有効です。生きているうちに特例措置などを理解しておくことも大切です。

生命保険を活用する方法

生命保険を使って財産を残すのも、定番の方法です。

被保険者(保険をかけられている方)と契約者(保険料を負担する方)が同じであり、受取人(保険金を受け取る方)が相続人であった場合は、相続税の課税対象になります。ただし、特別に「500万円×法定相続人の数」までは非課税とすることが認められています。

余命宣告を受けた後にできる相続税対策

余命宣告を受けた後にできる相続税対策

上述の一般的な相続税対策は、余命を宣告されたあとだと効果が薄いものもあります。ここからは、残された時間が少ない状態でも実行できる対策について見ていきましょう。

一時払個人年金保険に加入する

生命保険を使った節税対策については前述のとおりですが、その応用版として「一時払個人年金保険」などを活用する方法もあります。

通常、生命保険に加入する際は健康状態を申告する必要があります。余命宣告を受けたあとだと、残念ながら健康上の理由で加入を断られる可能性が高いです。

しかし、全期間の保険料を一括で支払うタイプの「一時払個人年金保険」などであれば、余命宣告後でも加入できるかもしれません。健康状態にかかわらず誰でも入れる保険も存在します。ただし、非課税の対象にならない保険もあるので気をつけましょう。

お墓や仏壇、不動産を購入する

相続税の課税対象になる遺産額を計算するときは、遺産全体の金額から葬式費用、墓地や墓石、仏壇や仏具の購入費用などを差し引くという規定があります。

また、財産の内訳で現金が多いなら、不動産を購入することも検討してみましょう。現金に比べて相続時の評価額を抑えられるため、現金のまま持っておくよりも税額を抑えやすくなります。

非課税制度を活用する

先述のとおり、生前贈与の非課税制度は多数あります。特に、贈与税の配偶者控除の特例(おしどり贈与)や、住宅取得等資金の贈与の非課税制度を活用することを検討してみましょう。

教育資金や結婚・子育て資金の贈与にも非課税制度がありますが、こちらは贈与者が死亡した時点で使い残しがあると相続税がかかるので要注意です。

余命宣告後に相続税対策する際の注意点

余命宣告後に相続税対策する際の注意点

相続対策は、やり方を誤ると税額が増えたり親族がもめたりして逆効果になってしまう可能性もあります。最後に、余命宣告を受けたあとに相続対策を行う場合の注意点について解説します。

安易に資金移動しない

「相続対策をしなければ」と必死になるあまり、一気に多額の資金を動かしてしまう方もいます。しかし、安易に資金移動すると、税務署から目を付けられやすくなります。

税務署は、厳密には贈与や相続に当たらない資金移動でも「みなし贈与」「みなし相続」として課税することがあります。その基準はすべて法律で明確に決まっているわけではなく、個別の事例を見ながらケースバイケースで判断する部分もあります。

そのため「これくらいなら問題ないだろう」と思って家族に財産を渡しても、あとから税務署の調査などで課税対象になることが判明し、追徴課税されてしまうことがあります。

二次相続対策も考える

二次相続についても考えておきたいところです。本人が亡くなって配偶者が財産を受け継ぐのが一次相続、その配偶者が亡くなって子どもが財産を受け継ぐのが二次相続です。

配偶者が遺産を受け取る場合は、さまざまな特例や控除が利用できるため税負担が軽くて済みます。しかし、だからといって配偶者ばかりに遺産を集中させると、配偶者が亡くなったあとに子どもたちが多額の相続税の納税義務を負うケースが出てきます。

相続人の今後のことも考える

相続対策では、遺産を受け継ぐ相続人の今後を考えて実行するのも大切なことです。単に現金を均等に分けるだけなら問題ないかもしれませんが、不動産のように分けにくい財産の扱いを巡って相続人同士で争いが起きることがあります。

相続争いは「財産を奪い合う」だけでなく、誰も住んでいない地方の空き家などを所有している場合は「誰もいらない」ということで押し付け合いになってしまうケースもあるようです。

相続対策としてアパートやマンションを購入する方もいますが、継続して賃貸経営を行っていくことが負担に感じる相続人もいます。あらかじめ相続人に賃貸経営する意思があるかどうか確かめておくようにしましょう。

遺言書を作成する

遺言書を作成する

遺言書を作成しておくのも有効です。遺言書で誰にどれくらい財産を分けるのか明確にしておけば、相続争いを未然に防ぐことができますし、自分の意思を尊重してもらうことができます。

遺言書は自分で紙に書いて作成することもできますが、細かい規定があります。いざ遺言書が必要になって家族が開封したときに、不備が見つかって「無効」と判断されてしまうこともあります。

そうした事態を防ぐため、相続に特化した弁護士や司法書士の助言を受けながら遺言書を作成する方法もあります。余命宣告を受け残された時間が少ない場合や自筆で書けない場合は、法律の専門家である公証人が作成して保管してくれる「公正証書遺言」を利用するとトラブルを防げます。

相続税の相談は「セゾンの相続 相続税申告サポート」がおすすめ

適切に相続税対策を行うためには、法律や税金に関する正しい知識が欠かせません。難しいと感じたら、専門家を頼りましょう。

セゾンの相続 相続税申告サポート」は、相続税に特化した税理士と提携していて、安心して相談ができるサービスです。無料相談も可能で、生前の相続対策はもちろん、本人が亡くなったあとの家族へのサポートも充実しています。

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おわりに

余命宣告を受けたあとでも、相続対策は可能です。国の非課税制度や特例を活用した生前贈与や、不動産や生命保険を使った方法などがあります。遺言書を作成しておくのも有効な手段です。

ただ、相続や贈与のルールはとても複雑です。自分だけの判断で進めるのではなく、法律や税金の専門知識や豊富な経験を持つ専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。

しっかりと相続対策を行っておくことで、納めるべき税額が減り、家族の手元に残る金額を増やせるでしょう。

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