将来相続でもめないために子どもが住宅を購入するときにすべきこととは?

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将来相続でもめないために子どもが住宅を購入するときにすべきこととは?

1.住宅購入は人生の中の一大イベント

「貯めてきたお金に住宅ローンを加えて、念願のマイホームを購入する」これほど大きなお金が動く人生のイベントは、他にはあまりないのではないでしょうか。

こんな時にもし親が支援してくれたら、子どもは親に感謝すること間違いなし!です。しかも、それが将来の財産分けや相続税対策にもなるのであれば、一石二鳥、三鳥にもなります。

親は自宅を持っているけれども、それを将来相続するのは子どものうち1人だけです。子どもが何人かいたら、不動産が複数ある場合を除いて、他の子どもには不動産を渡すことはできません。もちろん、他の財産を相続させれば良いのでしょうが、財産のバランスがうまく取れないことも多いものです。

そうなると相続争いが起こったり、自宅不動産を売却換金して財産を分割せざるを得なくなることもあり得ます。そのようなことを避けるためにも、将来自宅を相続しない子どもには、自宅を購入する際に資金援助してあげるということが考えられます。

そんなときに利用したいのが、住宅取得等資金贈与の非課税制度と相続時精算課税制度です。いずれも子どもの住宅購入に充てるため、まとまった額の資金を贈与税なしで子どもに渡すことができます。もちろん、住宅の名義は子どもになります。

では、両制度について分かりやすく解説していきます。

2.住宅取得等資金贈与の非課税制度

2-1. 住宅取得等資金贈与の非課税制度の概要

父母や祖父母などから住宅を取得するための資金の贈与を受けた場合に、一定の要件を満たすことにより、一定の金額について贈与税が非課税となる制度です。この制度は、2021年12月31日まででしたが、2022年税制改正により2年間延長となります。

<非課税金額>

 ●2020年4月1日~2021年12月31日までの取得契約(改正前)

種 別非課税金額
省エネ等住宅1,500万円
それ以外の住宅1,000万円
※消費税率が10%である場合

 ●2022年1月1日~2023年12月31日までの間に贈与を受けて住宅を取得した場合

種 別非課税金額
省エネ等住宅1,000万円
それ以外の住宅500万円

※省エネ等住宅とは、省エネルギー性の高い住宅、耐震性の高い住宅、バリアフリー性の高い住宅のいずれかの性能を満たす住宅をいう

※既存住宅の場合、新耐震基準に適合している住宅用家屋(登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす)であること(2022年改正)

<受贈者の主な要件>

受贈者は次の要件を満たす必要があります。

①贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子や孫など)であること

②贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること

 2022年4月1日以後は、民法の成年年齢の改正により18歳以上となる

③贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること

 家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下

④贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与された資金の全額を充てて住宅を取得し、同年12月31日までに居住すること

<物件の主な要件>

新築や購入の場合、次の要件を満たす必要があります。

①床面積が40㎡以上、240㎡以下であること

②床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること

2-2.住宅取得等資金贈与の非課税制度、利用上の注意点

①床面積

対象となる住宅の床面積は、上記のとおり40㎡以上240㎡以下です。ただし、この面積は自身が住んでいる部分だけの面積ではありません。建物全体の面積となります。したがって、2世帯住宅や賃貸併用住宅などを建てた場合は、建物全体で判断することになります。そうなると240㎡を超えてしまっていることもありますので要注意です。

なお、区分所有の場合には、その専有面積によります

②贈与、支払いの順序

住宅購入資金の受け渡し方にも注意が必要です。住宅取得資金贈与が非課税になるのは、あくまで親や祖父母から贈与を受けた資金で、住宅を取得した場合です。

したがって、自分のお金で住宅を取得した後に、その資金について贈与を受けた場合は、この非課税特例の対象にはなりません。つなぎ融資の返済資金を、贈与してもらった場合なども同様です。まず、贈与を受ける、その後、住宅取得のための資金を支払う、という順序が重要になってきます。

③2分の1以上が自己の居住用

賃貸併用住宅などの場合は、自分の居住する部分が1/2以上であることも、非課税の要件となっています。1/2以上を賃貸してしまうと、非課税の特例が受けられなくなりますので、これも要注意です。

④所得要件

この非課税特例を受けられる方は、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下の方です。この合計所得金額は給与所得だけでなく、不動産所得や譲渡所得なども入ります。

贈与を受けた年に不動産の譲渡があった場合や、株式の譲渡所得で申告するものがある場合は、これらの所得金額も含まれますのでご注意ください。

⑤住宅ローン控除との併用

住宅取得等資金贈与と併せて、住宅ローンを利用する場合も多いと思います。この場合は、住宅ローン控除の計算において、住宅の取得価額から住宅取得等資金贈与の金額を差し引いて計算する必要があります。これを失念するケースも多いようですので、注意してください。

3.相続時精算課税制度

3-1.相続時精算課税制度の概要

この制度は、父母や祖父母から財産の贈与を受けた場合に、一定金額までは贈与税を課さない制度です。その代わりに、この制度により贈与を受けた財産は、贈与をした者の相続があったときに相続財産に加算され、相続税が課されることになります。その際、この制度により納付した贈与税があれば、相続税から差し引くことになります。

すなわち、この制度による贈与は、生前相続ともいえるもので、贈与と相続を一体化して課税をする制度です。ある程度まとまった財産を、生前に特定の者に渡したい場合に適した制度といえるでしょう。

<適用対象者>

 ●贈与者:贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母

 ●受贈者:上記の日において20歳以上の子または孫

 2022年4月1日以後は、民法の成年年齢の改正により18歳以上となる

※住宅取得等資金の贈与を相続時精算課税で行う場合は、贈与者の年齢は問われない特例があります。

<特別控除額および税率等>

 ●特別控除額:2,500万円

贈与財産の価額から2,500万円を控除することができます。すなわち、上記金額までは贈与税がかからないことになります。

 ●超えた場合の税率:20%

贈与財産の価額が2,500万円を超えた場合は、超えた金額に対して20%の贈与税が課されます。

<その後の贈与および相続>

相続時精算課税を選択すると、その贈与者と受贈者の間では、贈与者が死亡するまで相続時精算課税が適用されます。すなわち、暦年課税(年間110万円の基礎控除による課税)を適用することはできなくなります。

特別控除額2,500万円は、相続時精算課税を選択した年分以降、その贈与者からの贈与のすべてについて適用されます。その年分以降の累計で2,500万円を超えた場合には税率20%で贈与税がかかってくることになります。

また、贈与者が亡くなった際には、相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)を加算して相続税額を計算し、この制度により納付した贈与税がある場合には控除することになります。

3-2.相続時精算課税制度、利用上の注意点

①選択制であること

相続時精算課税は、受贈者が選択をしなければ適用を受けることができません

この選択は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告書とともに「相続時精算課税選択届出書」を提出することにより行います。多額の贈与を受けた後に出しますので、この届出書を忘れると通常の贈与税を払わなければならなくなりますので、適用する場合は絶対に忘れないようにしなければなりません。

②暦年課税に戻れない

前述したように、一旦、相続時精算課税を選択すると、その贈与者との間では年間110万円の基礎控除がある暦年課税に戻ることができなくなります。財産が多い方が相続税対策で贈与を行う場合には、長年、暦年課税を活用して贈与をした方が相続税対策になることが多いです。そのような場合には、相続時精算課税の選択は慎重に行った方が良いかと思います。

③その年以後の贈与も申告が必要

相続時精算課税は、その年以降も継続していきます。したがって、金額の少ない贈与があったとしても、贈与税の申告をする必要があります。贈与額の累計で2,500万円特別控除を適用していくからです。贈与額が110万円以下だから申告は必要ないだろう、ということにはなりませんので注意が必要です

④住宅取得等資金贈与の非課税制度との併用可

相続時精算課税は、住宅取得等資金贈与の非課税制度と併用することができます。たとえば、2022年以降であれば、住宅取得等資金贈与の非課税制度で1,000万円の贈与、相続時精算課税で2,500万円の贈与、合計3,500万円を無税で受けることができます。

相続時精算課税を選択しない場合は、住宅取得等資金贈与の非課税額に110万円の基礎控除を加算することも可能です。

⑤相続対策のために

最後に、本稿のテーマである「将来相続でもめないために」贈与税の非課税制度を使って、生前に財産を分割しておくことが可能、ということを再度述べておきます。

たとえば、長男には自宅を相続させる。次男には不動産は相続させることはできないが、次男がマイホームを購入するときに、資金贈与をすることで生前贈与(相続)とするということですね。そのために、住宅取得等資金贈与、それでも足りないときは相続時精算課税を使うということになります。

ただし、生前にやったことは親の相続があったときには忘れ去られてしまっている、ということも多いものです。以前に受けたものを忘れて、相続の時に権利を主張すると厄介なことになってしまいます。

そこで生前贈与をする時には、贈与する子どもだけでなく、その時には贈与を受けない他の子どもにもきちんと話をしておくことです。贈与する金額やその趣旨などを理解してもらうように話しておくことが大事ですね。他の兄弟が知らない間に贈与をしていると、そのことが相続の時にもめる原因になったりするからです。

さらには、遺言書を作成し、相続時の財産の分け方はもちろん、大きな生前贈与については、その金額や贈与の趣旨などを付言に改めて書いておくことです。このようにすれば親の気持ちを子どもがよく理解してくれ、もめ事が起こる確率は減ってくるのではないかと思います。

以上、もめない相続の参考になれば幸いです。