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相続前にリフォームすると相続税対策になる?

北岡 修一(東京メトロポリタン税理法人グループ代表/税理士)

監修者
北岡 修一(東京メトロポリタン税理法人グループ代表/税理士)

西新宿にオフィスを構え、法人顧問の他、相続・相続税対策、事業承継、不動産に関する税務等に力を入れている。グループの不動産コンサル会社と連携し、具体的な対策から税務まで一貫したサービスを行っている。

相続前にリフォームをした場合

リフォームは相続前にやっておいた方が相続税対策になる、とよくいわれています。それは、リフォームをすることにより、現預金が減ることになりますが、建物の評価額が増えるということは、通常はないからです。

例えば、キッチンやトイレ、お風呂などの水回りのリフォームや、バリアフリーのためのリフォーム、外壁その他傷んだ場所の修繕などをやっても、これらは建物の評価額に含まれるものとされます。国税庁の取り扱いにおいても、「その家屋に取り付けられ、その家屋と構造上一体となっているものについては、その家屋の価格に含めて評価する」ことになっています。

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額によります。上記のリフォームや修繕を行っても、固定資産税評価額は上がらず、リフォーム費用に使った現預金が減るだけですので、結果として相続財産は減り、相続税の節税になるというわけです。

ただし、増築のように床面積が増えるような場合は、固定資産税評価額も改定されることになりますので、注意していただければと思います。

相続直前のリフォームの場合

ただし、相続直前に大きなリフォームをしているときは、建物の価値が上がっているわけですから、本来であればそれを相続財産に反映させなければいけません。この点、相続前にリフォーム費用などで預金から大きな支出があると、それには税務署は目を付けています。税務署からの問い合わせ、あるいは税務調査で何の支出なのかを、指摘される可能性があります。

では、相続直前に大きなリフォームをした場合は、どのように相続財産に反映させれば良いのでしょうか。これに関しては、国税庁の質疑応答事例があります。それによれば、次の算式によることが認められています。

 リフォーム費用の相続税評価額=(リフォーム費用-相続までの償却費)×70

たとえ固定資産税評価額が改定されていなくても、かかった費用の70%は、相続財産にあげておく必要があるということです。相続直前にリフォームをする場合には、注意しておかなければいけませんね。ただ、上記算式によれば、最高でもかかった費用の70%を相続財産にすれば良いのですから、直前リフォームであっても節税効果はあるといえます。

そのリフォームは相続財産か、単なる修繕か? 

前項において、相続直前にリフォームした場合は、相続財産に含める必要があると書きました。ただし、すべてのリフォームを相続財産に反映させなければいけない、というわけではありません。そのリフォームがどのような内容なのかにより、判断していきます。

まず、相続財産に反映させる必要があるのは、建物の価値が上がるような場合です。バリアフリーや、増改築などのリフォームですね。

一方、リフォームといっても、壊れた部分を修理するような、その建物の原状回復を目的とする場合は、相続財産に含める必要はありません。例えば、雨漏りのための屋根修理、経年劣化による外壁塗装や壁紙の張替えなどは、単なる修繕になります。したがって、これらの修繕のために要した費用は、たとえ相続直前に行ったとしても、相続財産の対象とはなりません

建物の価値が上がるリフォームと、単なる修繕などを一緒に行うこともあります。そのような場合は、契約書や見積書などで、価値の上がるリフォームか、単なる修繕かを区別していきますので、関係書類もきちんととっておくことが大事です。

リフォーム費用の住宅取得等資金贈与

子や孫がリフォームを行う場合に、その資金を親や祖父母が贈与すると、相続税対策にもなります。これは、住宅取得等資金贈与の非課税特例を使うことにより行います。この非課税特例は、住宅の取得だけでなく増改築やリフォームなどにも使うことができます。ただし、ちょっとしたリフォームでは、非課税特例は使えません。非課税特例の対象になるリフォームは、100万円以上の工事で次のようなものです。

  • 増築、改築、建築基準法上の大規模の修繕または大規模な模様替え
  • 区分所有のマンションの場合は、床または階段、間仕切り壁、主要構造部である壁のいずれかのものの過半について行う修繕または模様替え
  • 家屋のうち居室、調理室、浴室、便所等の一室の床、または壁の全部について行う修繕または模様替え
  • 現行の耐震基準に合わせる耐震改修工事
  • 一定のバリアフリー改修工事や、省エネ改修工事 等

2022年から非課税枠は減額されましたが、省エネ等住宅の場合は1,000万円、それ以外の住宅の場合は500万円まで非課税となります。プラス毎年の基礎控除110万円も非課税枠として使うことができます。

区分マンション一室のリフォームでも対象になりますが、上記のように、部屋の間の間仕切りを半分以上壊して、部屋を作り直すくらいのリフォームでないと、対象にならない、ということです。

親名義の建物のリフォーム費用を子が負担した場合

二世帯住宅は、物理的に完全分離型(玄関が別で中で行き来ができない)であっても、相続税の小規模宅地特例の扱いでは、同居と同様にみなされることになっています。同居とみなされると、その敷地の相続税評価額が330㎡まで80%も評価減することができますので、大きな相続税対策となります。

リフォームにより二世帯住宅にする場合に、注意すべきことがあります。それは、親の家のリフォーム費用を、子が負担した場合です。親の家は当然、親の名義で登記されていますので、増改築やリフォームにより増加した価値は、親が所有することになります。そうなると、その増加した価値分は、親が子から贈与を受けたものとみなされてしまう可能性があります。贈与税の課税対象になってしまう、ということですね。

これを避けるためには、親から子へ建物の持分を一部移転する必要があります。子が負担した分を、持分に換算してその分を移転するということです。この持分の計算の方法は、いろいろ考えられます。ひとつの方法として、既存建物の未償却残高とリフォーム費用から、持分を計算する方法があります。事例で計算してみましょう。

①既存建物の建築価額   3,000万円

②経過年数による償却費  1,000万円

③未償却残高 ①-②=  2,000万円

④今回のリフォーム費用   500万円

⑤移転する持分 ④/(③+④)= 20%

以上により、親から子へ建物の持分を20%分移せば良いということになり、これを登記します。所有者が違う建物について、増改築やリフォーム費用を負担した時は、贈与にならないよう注意する必要がありますね。

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