高齢の母親の介護は、高齢化社会の進む現代では、多くの人にとって避けられない課題となっています。母親の年齢が上がるにつれ、身体的な衰えや認知機能の低下が進み、介護の負担が増していくことは珍しくありません。「高齢の母が重い」と感じる場面は、日常生活のあらゆる場面で起こり得るのです。
この記事では、高齢の母親の介護に関するよくある悩みを詳しく紹介し、それぞれの問題に対する具体的な対処法や利用可能なサポートサービスについて解説します。認知症の進行による問題や、介護と仕事の両立の難しさ、経済的な負担など、さまざまな側面から介護の課題を探っていきます。
- 認知症の進行、介護と家事・育児の両立、通院介助による時間の制約、経済的負担など、さまざまな課題に直面することが多い。
- 地域包括支援センター、市区町村、医療機関、社会福祉協議会などに相談できる。
- 介護サービス、介護予防サービス、地域密着型サービス、施設サービスなどの公的支援を利用可能。
- 見守りサービス、家事代行、配食サービスなどの民間サービスも活用できる。
高齢の母が重い!よくある悩みをピックアップ
高齢の母親の介護において、多くの人が直面する悩みがあります。悩みが積み重なると、介護者の心身の健康に大きな影響を与え、時には家族関係にも亀裂を生じさせかねません。ここでは、よくある悩みを具体的に挙げ、それぞれの問題の背景や影響について詳しく見ていきます。
認知症が進行して目が離せない・話が通じない
認知症が進行すると、記憶障害や判断力の低下、日常生活の自立が難しくなるなどの症状が現れます。
例えば、夜中に突然外出しようとしたり、火の始末を忘れたりするなど、危険な行動が増えてくると24時間の見守りが必要です。また、同じ質問を何度も繰り返したり、昔の出来事と現在の状況を混同したりするなど、話が通じずにコミュニケーションが困難になることも珍しくありません。
このような状況になると、介護者は精神的にも肉体的にも負担が大きくなり、ストレスを抱えることになります。常に気を張っていなければならず、十分な睡眠や休息が取れないことで、介護者自身の健康も脅かされる可能性があります。
気持ちが通じ合えず喧嘩ばかりでうんざりする・イライラする
長年培ってきた親子関係が、介護という新たな局面を迎えることで大きく変化し、しばしば衝突を引き起こします。
例えば、母親の健康や生活習慣について助言しても聞き入れてもらえなかったり、逆に些細なことで過剰に干渉されたりすることがあります。また、介護者の努力や苦労を理解してもらえないと感じ、自分勝手な振る舞いに不満が溜まることも少なくありません。
このような状況が続くと、介護者はストレスや怒りを感じ、母親との関係がさらに悪化する悪循環に陥る可能性があります。また、常に緊張状態が続くことで、介護者自身のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼしかねません。
介護と家事・育児との両立がしんどい
高齢の母親の介護をしながら、自身の家事や育児も行わなければならない状況は、介護者にとって大きな負担です。特に、働きながら介護を行う「ダブルケア」の状況にある人々にとっては、時間的にも体力的にも極めて厳しい状況となるでしょう。
例えば、朝は子供の世話と母親の介護を同時に行い、仕事から帰ってきてからも夜遅くまで家事と介護に追われるという日々が続くことがあります。また、急な体調不良や事故などで母親の緊急対応が必要になった場合、仕事や子育ての予定を急遽変更しなければならないこともあるでしょう。
このような状況が続くと、介護者自身の健康状態が悪化したり、仕事のパフォーマンスに影響が出たりする恐れも考えられます。さらに家族との時間が取れなくなることで、家族関係にも悪影響が出てくるかもしれません。
通院の介助・同伴で時間が削られる
高齢の母親に通院介助が必要な場合、自分の時間が削られることになります。特に、複数の病院に通う必要があるケースや、頻繁な通院が必要なケースでは、介護者の時間的・体力的負担は増える一方です。
例えば、母親の体調や移動の困難さに応じて、車椅子の準備や移動の介助が必要になることがあります。また、診察の際には医師の説明を理解し、必要に応じて母親の状況を詳しく伝える役割も担わなければなりません。さらに、薬の管理や次回の予約の調整なども介護者の重要な仕事となります。
通院介助が頻繁に必要になると、介護者自身の仕事や私生活への影響も大きいです。度重なる休暇を理由に、キャリアにも影響が及ぶ恐れがあります。
経済的支援が必要で家計が苦しい
介護には、想像以上の経済的負担がかかるものです。介護用品の購入、医療費、施設利用料など、さまざまな出費が重なり、家計を圧迫する可能性があります。
例えば、介護度が高くなると、ベッドや車椅子、排泄用品などの介護用品が必要です。また、度重なる医療費や薬代の負担も大きいでしょう。さらに、デイサービスやショートステイなどの介護サービスを利用する場合、一定の自己負担が発生します。
経済的負担が増大すると、介護者自身の生活にも影響が及ぶことがあります。貯蓄を取り崩したり、借入れをしたりするようになれば、将来の生活設計に不安を感じる人も少なくありません。
ひとり暮らしならではの心配も
高齢の母親がひとり暮らしをしている場合、同居している家庭とは違った心配や負担が生じることがあります。母親の安全や健康状態を常に気にかける必要があり、精神的なストレスも大きくなりがちです。
気づかないうちに病気が進行していないか
例えば、母親が体調不良やケガの際に、すぐに駆けつけることができるかという不安があります。また、日々の食事や服薬の管理をできないことで、病気が悪化してしまう恐れもあります。そのまま孤独死してしまう、最悪なケースも否定できません。
犯罪に巻き込まれていないか
体力的に劣っていたり、認知機能が低下していたりする場合、犯罪者からターゲットにされる可能性が高いです。家に一人でいるところを空き巣や強盗に入られたり、電話や訪問を装って特殊詐欺に巻き込まれたりするかもしれません。
高齢の母が重いと感じる時に頼れる相談先
恒例の母親を介護していて心身に疲れやストレスを感じたら、専門家を頼るのもひとつの手です。アドバイスをもらうのはもちろん、話を聞いてもらうだけでも、心が軽くなるかもしれません。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者の生活を総合的に支援する相談窓口です。保健師・社会福祉士・ケアマネージャーなどの専門家が在籍しており、さまざまな悩みに対応してくれます。
例えば、介護予防のためのプラン作成や、運動や食事などに関する指導、介護サービスの利用方法や介護保険の手続きなども相談に乗ってもらえます。
市区町村
市区町村の役所の窓口でも、介護に関するさまざまな相談や手続きのサポートを行っています。
主な内容としては、要介護認定や介護保険の申請と手続き、介護サービスの情報提供、福祉サービスの相談、介護予防の支援などです。また、成年後見制度の案内や高齢者虐待の防止に関する対応も行っています。
医療機関
医療機関でも、介護に関するさまざまな相談サービスを提供しています。医療ソーシャルワーカーは、退院後の生活支援や介護保険制度の説明を行い、患者の身体状況に合わせたアドバイスをしてくれます。地域連携室では、地域の介護サービス提供者と連携し、患者のスムーズな介護サービス利用のサポートを行っています。
また、かかりつけ医に日常的な介護の悩みや不安を相談することも可能です。場合によっては、適切なサービスや支援機関を紹介してくれることがあります。
地域の社会福祉協議会
地域の社会福祉協議会の提供する主なサービスには、介護保険の申請支援や介護サービスの紹介などの介護保険サービスに関する相談、訪問介護や配食サービスなどの生活支援サービス、介護費用や生活費の貸付を行う経済的支援が含まれます。
また、地域の福祉ネットワークの拡充に取り組むなど高齢者向けの事業を行っていることもあるため、地域独自のボランティアを利用したい場合におすすめです。
高齢の母が重いと感じる時に使える公的サービス
高齢者を介護していてしんどさを感じたら、以下のような公的サービスを利用することもできます。
介護サービス
介護サービスは、要介護認定を受けた方々を対象とした支援システムです。ホームヘルパーが自宅を訪れて身体介護や生活援助を行う訪問介護、施設に通って日常生活の支援を受ける通所介護(デイサービス)、そして短期間施設に滞在して支援や機能訓練を受ける短期入所生活介護(ショートステイ)などが含まれます。
これらのサービスは、要介護者の日常生活を支え、生活の質を向上させることを目的としています。
介護予防サービス
介護予防サービスは、要支援認定を受けた方を対象とした支援制度です。介護が必要となる状態を予防することが目的で、主に介護予防訪問介護と介護予防通所リハビリテーションのサービスを提供しています。
介護予防訪問介護はホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、日常生活のサポートを行います。一方で介護予防通所リハビリテーションでは、施設に通ってリハビリテーションを受けることで、身体機能の維持や向上を図ることが可能です。
地域密着型サービス
地域密着型サービスは、地域に根ざした小規模な施設やサービスを提供する介護サービスの一形態です。認知症高齢者が共同生活を送るグループホームや、通所を中心に訪問や宿泊を組み合わせた小規模多機能型居宅介護などが含まれます。利用できるサービスは、介護度によって異なります。
老人ホームなどの施設サービス
老人ホームなどの施設サービスでは、要介護認定を受けた高齢者のための生活の場を提供しています。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、自宅での生活が困難な方々が入所します。また介護老人保健施設では、在宅復帰を目標としたリハビリテーションを中心としたケアを受けることが可能です。これらの施設は、それぞれの入所者のニーズに応じた介護サービスを提供しています。なお利用できる施設は、介護認定によって異なります。
ひとり暮らしの高齢の母が重いと感じる時に使える民間サービス
ひとり暮らし中の高齢の母を介護している人は特に、心配事が多いでしょう。以下では、介護者が利用できる民間サービスを紹介します。
見守りサービス(安否確認サービス)
見守りサービス(安否確認サービス)は、その名の通り高齢者が安全に生活できるように見守るサービスです。例えば、自宅にセンサーやカメラを設置し、異常を感知した場合に通知が届く仕組みがあります。24時間体制で見守ることができ、緊急時にも対応できます。また、スマートフォンのアプリを使って位置情報や活動状況を確認する方法や、地域の民生委員やボランティアが定期的に訪問し、安否確認を行うサービスもあります。
家事代行サービス
家事代行サービスは、高齢者やその家族が日常の家事を代行してもらうサービスです。具体的には、掃除機がけや拭き掃除、洗濯物の洗濯やアイロンがけなどがあります。また、食材の買い出しや調理、食器洗いなども含まれます。さらに、通院や買い物の付き添いといった外出支援や、衣替えやクローゼットの整理といった整理整頓も行います。
配食サービス
配食サービスは、高齢者向けに栄養バランスの取れた食事を自宅まで届けるサービスです。管理栄養士が監修した食事で、栄養バランスが考慮されています。また、食事を届ける際に安否確認も行うため、一人暮らしの高齢者に安心感を提供します。さらに、食事の形態(常温、冷蔵、冷凍)や内容(普通食、介護食、制限食)を選べるため、個々のニーズに合わせたサービスが利用できます。
おわりに
高齢の母親の介護には多くの課題があります。認知症の進行による見守りの必要性、介護と家事・育児の両立の困難さ、通院介助による時間的制約、経済的負担などが挙げられます。これらの問題に対処するため、地域包括支援センターや市区町村、医療機関、社会福祉協議会などに相談することができます。また、介護サービスや介護予防サービス、地域密着型サービス、施設サービスなどの公的支援、さらに見守りサービスや家事代行、配食サービスなどの民間サービスを利用することで、介護の負担を軽減し、より良い介護環境を整えることが可能です。
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