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相続人調査の重要性を解説!必要な作業と自分で行う場合のデメリット

セゾンのくらし大研究 編集部

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「相続人の調査」は、相続人を確定するための作業です。相続発生時点で誰が相続人となるのか判断できる場合でも、相続人であることを証明するためには戸籍謄本等を取り寄せ、調査したうえで確定させる必要があります。

このコラムでは、「相続人の調査」を行う理由とともに、戸籍についての基礎知識、戸籍謄本等の取得方法など必要な作業、そしてご自身で行う場合と専門家に任せる場合のメリット・デメリットについてお伝えしましょう。

この記事のまとめ

「相続人の調査」は、相続人を確定するために最初に行うべき作業です。一般的な家庭であれば、相続発生時点で誰が相続人となるのか判断できるものですが、相続人であることを証明するためには、戸籍謄本等を取り寄せて調査したうえで確定させる必要があります。無駄な作業のような印象もあるかもしれません。想定していない相続人の存在が発覚することもまれにあります。また収集した戸籍謄本等は、預金や不動産の名義変更の際に添付する必要もあるのです。戸籍にもさまざまな種類があり、被相続人分、相続人分を合わせ、すべて揃えるには手間や労力がかかるものです。戸籍についての知識や相続人調査の意義を理解したうえで専門家に任せることもひとつの方法です。

相続人調査とは

相続人調査は、相続が発生したら必ず行わなければならない作業です。「誰が相続人なのか」という相続関係を客観的に証明し、確定させるために戸籍謄本を収集して行います。

相続人調査はなぜ重要?

相続が発生した場合、誰が相続人であるかについては、把握していることが一般的です。なぜ必要なのかと疑問に思うかもしれません。相続人調査の重要性について解説しましょう。

遺産分割協議を行うため

相続が発生すると、死亡届の他、関係機関への届出が必要です。また亡くなられた方の財産を遺された家族や親族に引き継ぐ手続きをしなければなりません。

遺言書があれば、被相続人が指定したとおりに分割しますが、遺言書がない場合には、相続人全員が集まり、誰がどのように引き継ぐのか話し合いで決める必要があります。この話し合いを「遺産分割協議」といい、遺産分割協議は、相続人がひとりでも欠けていると成立しません。

また、話し合いがまとまれば、その内容について相続人全員分が署名と押印のうえ、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、相続人「全員」が合意したこと、そして、相続人であることの証でもあるのです。

想定していない相続人を見つけ出すため

基本的に、家族や親族であれば、誰が相続人となるのか把握していることでしょう。調査したうえで、思ったとおりだったというケースが大半ですが、調査することに意味があります。

一方で、事情によっては、被相続人に周囲が知らなかった離婚歴があったり、認知していた子がいたり、養子縁組していた、ということもあり得るのです。まれに被相続人自身が知らない兄弟姉妹の存在が見つかることもあります。

民法で定められている相続人の権利があるべき方を守るため、そういった想定していない相続人がいないか確認するために必要な作業なのです。なお、存在を知らなかった親族がいた場合には、連絡をとって相続手続きを進めていかなければなりません。

戸籍謄本一式の提出を求められるため

遺産分割協議で相続人の合意が得られれば、相続した預貯金の引出し、保険や有価証券の名義変更、不動産の所有権移転登記などの手続きを進めることが可能です。また相続税の申告も申告期限までに行う必要があります。

そういった手続きの際、遺産分割協議書とともに提出を求められるのが、被相続人および相続人の戸籍謄本一式です。

相続人調査に必要な戸籍の種類

まずは、相続人調査の基礎知識として「戸籍」について知ることから始めましょう。

戸籍とは、日本国民についての身分関係を記録し、公証するものです。戸籍法に基づき、本籍地市町村で作成されており、「本籍」と「筆頭者」で表示されます。「本籍」とは土地の地番を利用して戸籍につけられた番号で見出しのようなものです。

「筆頭者」とは戸籍の最初に登録されている方のことです。戸籍には、「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」といったいくつかの種類があります。

戸籍謄本

「戸籍謄本」は、戸籍原本に記載されている内容すべての写しです。被相続人の他、戸籍に入っている全員の名前、生年月日、身分関係(父、母、子等)が記載されています。

なお、戸籍謄本のうち、特定の人物だけの情報の写しが戸籍抄本です。相続人調査では、相続人の確定が目的であるため、戸籍謄本を請求するのが一般的です。

また、その戸籍が作られた時点からの各相続人の住所を記載したものに「戸籍の附票」があります。住所変更するたびに新しい住所が追加されていくため、住所の履歴を確認することが可能です。

コンピュータ化後の戸籍では、謄本を全部事項証明、抄本を個人事項証明といいます。

除籍謄本

戸籍から抜けるという表現を聞いたことがあるかもしれませんが、戸籍は、死亡や婚姻によって除籍されます。そして誰もいなくなった戸籍の写しが「除籍謄本」です。ひとりでも存続していれば除籍謄本にはなりません。

相続手続きにおいて、その戸籍に誰もいない(相続人がいない)ことの証明として除籍謄本を求められる場合と、被相続人が除籍されていること(死亡していること)の証明として除籍謄本を求められる場合があります。

戸籍作成地が遠方である場合など二度手間にならぬよう、証明の目的を理解したうえで戸籍の収集を進めることが大切です。

改製原戸籍

戸籍法が改正されると、戸籍は新様式で作り直されますが、改正前に除籍されている場合、新様式の戸籍に反映されません。法改正前の戸籍を「改正原戸籍」といいます。

新しい戸籍だけでは、被相続人の離婚歴や相続人となるべき「子」が見落とされる可能性もあるため、改製原戸籍の内容をしっかり確認する必要があるでしょう。

なお、原戸籍は、現戸籍と区別するため、「はらこせき」と呼ばれます

相続人調査に必要な戸籍はひとつではない

相続人調査では、被相続人の最新の戸籍だけで、出生から死亡までが網羅されていることは少ないでしょう。被相続人の人生において、どの時点で相続人が発生しているかはそのすべてを辿ってみないとわかりません。

流れとしては、被相続人の最新の戸籍を取得したうえで、死亡から誕生に向かって遡り、相続人となるべき方を探していきます。被相続人に子がいた場合、子が法定相続人となりますので、相続人である子の現在の戸籍謄本を確認しましょう。

被相続人に子がいなかった場合には、第2順位の親や祖父母、さらに第3順位の兄弟姉妹へと順位が移ります。被相続人の人生を遡りつつ、除籍があればその先の戸籍を取得する必要が生じ、人数が増え、複雑化することもあるのです。必要な戸籍はひとつではないことを知っておきましょう。

相続人調査にかかる費用

相続人調査の重要性を理解しつつも、大変な作業という印象があり、時間や手間を考えると専門家に依頼するという選択肢も有効です。気になるのは費用ではないでしょうか。

相続人調査にかかる費用は、基本的に、戸籍謄本の取得費用と専門家への報酬に分かれます。

戸籍謄本の取得費用

戸籍謄本の取得費用としては、以下のとおりです。平日日中に窓口へ出向くことが難しい場合や被相続人の出生地、相続人となるべき方の居住地などが遠方の場合には、郵送での取得も可能です。

戸籍謄本を取得する際の手数料

市町村役場の戸籍課等の窓口で取得する場合の手数料は以下のとおりです。

  • 戸籍謄本 450円
  • 除籍謄本 750円
  • 改製原戸籍謄本 750円
  • 住民票・戸籍附票 200~400円(自治体による)

戸籍謄本を郵送する際の手数料

  • 上記の謄本請求手数料(定額小為替にて)
  • 定額小為替の発行手数料(1枚につき200円)
  • 郵送料(返信用封筒の郵送料も必要) ※郵送で請求する場合

郵送で請求する際は、郵便局で謄本の請求手数料分の「定額小為替」を発行してもらい、返信用の封筒とともに同封して送付。

「定額小為替」の発行手数料は、1枚につき200円ですが、送金額に応じて、50〜1,000円といった12種類の証書を組み合わせた枚数により手数料も異なります。

例)戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本を各1枚ずつ請求で1,950円となる場合、1,000円+500円+450円の3枚の定額小為替で発行手数料は600円。

郵送料

郵送で請求する場合には、切手を貼付した返信用の封筒を同封するため、往復の郵送料がかかります。なお、窓口で取得する場合には交通費もかかります。

専門家への報酬

相続人調査を専門家に依頼した場合には、上記の謄本請求手数料等の実費の他に報酬が発生します。専門家への報酬は、依頼の内容によって異なりますが、相続人の調査のみであれば、50,000円程度が相場の目安です。

相続人調査の大まかな手順

相続人調査は、どのような流れで進めれば良いのでしょうか。大まかな流れを理解しておきたいものです。基本的に、戸籍謄本の収集は、被相続人の死亡時の戸籍から遡っていくのが効率的です。

被相続人の本籍地を確認する

まずは、被相続人の本籍地を記載した住民票の除票を取得し、死亡時の本籍地を確認しましょう。

死亡届が受理されると自動的に住民票の除票が作成され、様式は住民票と同じですが書面の右上に「除票」の印字とともに死亡日が記載されています。被相続人の最後の住所地を管轄する役所に請求しましょう。

被相続人の戸籍謄本を請求する

被相続人の本籍地に、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本を請求します。

ひとつ前の本籍地の戸籍謄本を取得する

被相続人の死亡時の本籍地からひとつ前の本籍地を確認し、その本籍地に戸籍謄本を請求します。これを被相続人の出生時点に至るまで繰り返します。被相続人の出生から死亡までの戸籍が切れ目なく繋がったことを確認しましょう。

相続人を確認する

被相続人の戸籍から相続人の範囲と順位を確認します。ここからは、相続人の現在までの戸籍収集となります。

被相続人の戸籍の記録から第1順位の子がいれば、すべての子が相続人となり得ますので、それぞれの戸籍を追い、もし子がすでに他界している場合には、代襲相続人となるその子(孫)の戸籍の収集が必要です。

子がいない場合には、親や祖父母(直系尊属)、さらに兄弟姉妹の確認となり、上位順位のいないことを証明しつつ、それぞれの相続人たる証明のための収集作業となります。

相続人の現住所を確認する

戸籍謄本の収集とともに、戸籍の附票を請求することで、相続人の現在の本籍地を知ることが可能です。確認のうえ、連絡をとります。

相続人調査をご自身で行うデメリット

おおまかな流れからもわかるとおり、相続人調査は、ご自身でも行うことができますが、複雑で手間のかかる作業です。具体的に、ご自身で行った場合のデメリットについて紹介します。

取得する戸籍謄本の数が多くて大変

相続人調査では、被相続人の戸籍謄本だけでなく、相続人全員の戸籍謄本を取り寄せる必要があります。上位順位の法定相続人がすでに他界している場合には、他界している証明も必要です。

相続人を確定させるために戸籍を遡ることは重要な作業なのですが、そもそもの戸籍が度々の法改正により、あり方や記載内容、様式が変わっていることもさらに複雑化させています。

戸籍の読み取りが難解

最近では、コンピュータ化が進んでいますが、かつては毛筆の手書き、旧字体で記載されていました。記載の形式や内容、書体に慣れていない方には、戸籍の読み取りにかなりの時間を要します。

戸籍謄本の請求作業が煩雑になりやすい

被相続人の人生において、出生から死亡まで同じ場所で過ごしていれば比較的容易なのですが、結婚や仕事の都合で生活拠点を移動する人生だった方の場合、そして、その相続人の生活拠点もバラバラであることも珍しくありません。

いくつもの役所に請求しなければならず、窓口に出向く手間や郵送の準備には時間も労力もかかります。

相続人を見落とす可能性が高い

流れに従って、一つひとつ戸籍を追っていけば良いのですが、慣れない作業に見落としが発生する可能性もあり得ます。もし、相続人調査に見落としがあった場合には、遺産分割協議は無効となり、やり直すことになります。

また、金融機関などによっては、「3ヵ月以内に取得した戸籍謄本」のように有効期限が指定されている場合もあります。せっかく収集した戸籍謄本の取り直しという事態は極力避けたいものです。

相続人調査を専門家に依頼するメリット

相続人の調査に当たって、被相続人の人生を辿ることも、遺された家族にとって意味のあることかもしれません。ただ、手間や労力を考えると、専門家に依頼することも選択肢です。専門家に依頼するメリットは以下のとおりです。

戸籍謄本を取得してもらえる

国家資格のある専門家に依頼すれば、「職務上請求」により委任状がなくても必要な戸籍謄本の収集が可能です。本来、本人に代わって必要な書類を取得する際には、委任状を用意して役所で請求を行います。

「職務上請求」は、弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、税理士、弁理士、土地家屋調査士、海事代理士の国家資格8士業に認められているのです。

相続人調査をスムーズに終わらせられる

相続手続きには、相続放棄や限定承認、相続税の申告など期限が定められている手続きがあります。

相続人の確定に支障あるような場合には、「相続の承認または放棄の期間の伸長」の申し立てへの対応を依頼することも可能です。

相続人調査の漏れや見落としを防げる

知識と経験のある専門家に任せれば、相続人調査をスムーズに進めることができます。

一般的に、普段の生活の中で戸籍を確認する機会はあまりないため、請求方法も見方もわからず、戸惑うでしょう。特に古い戸籍は判読に苦労します。経験値の高い専門家であれば、迅速に確実に調査を進めることができるでしょう。相続人漏れや戸籍謄本の収集漏れは、その後の手続きを進めるためにも避けたいところです。

相続手続きも依頼できる

依頼の範囲や専門家の裁量にもよりますが、相続手続きを任せられることができれば、なんといっても時間や手間を大きく省けます。

被相続人の死亡に伴う手続きを進めつつも、遺された家族が一日も早く自分自身の生活を取り戻し、前向きに生きることのできるよう体制を整えることが何よりも大切です。

そういった意味で、相続人調査を含む一連の相続手続きにかける時間は、専門家に任せることをおすすめします。

おわりに

相続手続きにおいて、「相続人の調査」は相続人を確定するために最初に行うべき作業です。一般的な家庭であれば、相続発生時点で誰が相続人となるのか判断できるものですが、相続人であることを証明するためには、戸籍謄本等を取り寄せて調査をしたうえで確定させる必要があります。

一見、無駄な作業のような印象もありますが、被相続人さえも知らない兄弟姉妹の存在が発覚することも。収集した一連の戸籍謄本等は、預金や不動産の名義変更の際に添付する必要もあります。

戸籍にもさまざまな種類があり、被相続人分、相続人分と合わせるとすべてを揃えるには手間や労力がかかるもの。戸籍についての知識や相続人調査の意義について理解したうえで、専門家に任せることもひとつの方法です。

相続人調査に関する相談は、「セゾンの相続 相続手続きサポート」まで

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