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不当利得返還請求がこれでわかる!要件・時効・やり方を知って損失を取り戻そう

不当利得返還請求がこれでわかる!要件・時効・やり方を知って損失を取り戻そう
セゾンのくらし大研究 編集部

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不当利得返還請求とは、理由なくお金などの利益を得ている方に対し、返すように請求する手続のことです。相続財産の使い込みをした相続人に遺産を返してもらいたいとき、貸金業者に過払い金を返してもらいたいときなどに、不当利得返還請求を行います。

本記事では、不当利得返還請求について、要件や手続きの流れ、注意点などをわかりやすく説明します。不当利得返還請求をしたいけれどやり方がわからない方は、ぜひ参考にしてください。

この記事を読んでわかること

  • 法律上の理由がないのに財産などを得ている方に対しては、損失を被った人から不当利得返還請求ができる。
  • 遺産分割前に相続人のひとりが遺産を使い込んだ場合にも、他の相続人から不当利得返還請求をして、遺産を返すよう請求ができる。
  • 不当利得返還請求をするには、法律で定められた要件をみたしていなければならない。まずは内容証明を送って、話し合いを試みる必要もある。
  • 不当利得返還請求権には時効もあり、時効が過ぎると請求できなくなってしまう。手続きのやり方がわからずに困ったときには、専門家に相談するのがおすすめ。
相続手続きサポート
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そもそも「不当利得」とは?

そもそも「不当利得」とは?

「不当利得」とは、法律上正当な理由がないにもかかわらず、他人の財産や労務によって得られた利益のことです。

不当利得は、利益を得る権利がある方が別に存在する場合に問題になります。本来の権利者以外の方が利益を得ることで、本来の権利者に損失が発生してしまうからです。不当利得を得た方は、本来の権利者に利益を返還する義務があります。

不当利得については、民法に定められています。まずは、不当利得とは何か、どのようなケースが不当利得に該当するのかを理解しておきましょう。

不当利得の具体例

法律上正当な理由がないのに得られた利益と言われても、イメージがわきにくいかもしれません。以下、不当利得に当たる具体的な事例を説明します。

買い物のお釣りが多いことに気づいていながら返さなかった

店舗で商品を購入したとき、本来のお釣りより多い額を渡されたとしましょう。気づいていながらそのまま受け取ってしまった場合、店舗に損失を与えます。つまり、余分にもらったお金は不当利得となります。

遺産相続前に個人の遺産を勝手に使い込んだ

故人が遺言を残していない場合、遺産分割が終わるまでは、遺産は相続人全員の共有財産です。相続人のひとりが勝手に故人の口座のお金を使い込んだ場合、他の相続人に損失を与えます。法定相続分を超える使い込みは、不当利得となります。

消費者金融が不当に高金利でお金を貸して利益を得た

いわゆる「過払い金」も不当利得の代表的な例のひとつです。過払い金とは、借金を返すときに法律の上限を超えて払い過ぎた利息のことを言います。

借金の利息については、利息制限法で金利の上限規制があります。しかし、消費者金融などの貸金業者は、利息制限法の上限金利を超える利息を徴収していた時代がありました。以前は、利息制限法の上限金利を超えても出資法の上限金利(29.2%)までは罰則がなかったからです。

2006年、最高裁は利息制限法を超える金利が無効であると判断しました。過払い金が不当利得であることが明確になったのです。

損失分の利益を返してもらう「不当利得返還請求」

不当に利益を得た方がいる場合、それによって損失を被った方は、不当利得の分を返してほしいと請求することができます。これを「不当利得返還請求」といいます。

例えば、お釣りを多く渡してしまった店舗は、お釣りをもらい過ぎた方に対して返金を請求できます。遺産の使い込みがあった場合には、使い込んだ相続人に対して、他の相続人から返還請求ができます。消費者金融に過払い金がある方は、過払い金返還請求ができます。

不当利得返還請求の4つの要件

不当利得返還請求の4つの要件

不当利得返還請求を行うには、要件をみたさなければなりません。ここでは、相続財産の使い込みを例に、不当利得返還請求の4つの要件を説明します。

被請求者が利益を得た

不当利得返還請求を行うには、請求する相手(被請求者)が利益を得ていることが前提です。ただし、被請求者が不当利得であることを知っている必要はありません。

相続人のひとりが故人の財産を使い込んだケースでは、使い込みをした相続人は自らの預金を減らさずに済んでいます。つまり、被請求者が利益を得たという条件をみたしています。

被請求者に法律上の原因がない

不当利得返還請求を行うには、被請求者が利益を得ることについて、法律上の原因がないことが要件となります。つまり、被請求者には利益を得る権利がないということです。

相続財産の使い込みのケースでは、法定相続分を超える部分について、相続人が使う権利はありません。他の相続人は不当利得として返還を請求できることになります。

請求者に損失が生じた

不当利得返還請求をするためには、請求者に損失が生じている必要があります。被請求者が利益を得ていても、請求者に損失が発生していなければ、被請求者が返還する責任はありません。

相続財産の使い込みのケースでは、故人の預金額が減ってしまったことで、他の相続人が相続できる預金額も減っていることになります。他の相続人に損失が生じているため、他の相続人は使い込みをした相続人に対し、不当利得返還請求ができます。

受益と損失に因果関係がある

不当利得返還請求をするには、被請求者の得た利益と請求者が被った損失との間に、因果関係があることも必要です。

相続財産の使い込みのケースでは、相続人のひとりの使い込みによって故人の預金額が減り、これによって他の相続人が相続できる財産が少なくなってしまったという因果関係があります。

相続で不当利得となりうる行為

相続で不当利得となりうる行為

相続では、複数の相続人が存在するケースが多くあります。遺産分割が終わっていない間は、遺産は相続人全員の共有であることを認識しておかなければなりません。他の相続人に無断で行った行為が不当利得になってしまうケースがあるので注意しましょう。

以下、相続の場面で不当利得となり得る行為について説明します。

相続財産を使い込む

遺産分割が終わる前に、他の相続人に無断で故人の財産を使い込む行為は不当利得となります。故人が自宅で保管していた現金を勝手に使ったり、故人の預金を勝手に引き出したりする行為は他の相続人の権利を侵害してしまいます。

なお、相続人のひとりが相続財産を使い込むと、必ず不当利得になるわけではありません。故人と約束していた場合など、どうしても相続財産を使わなければならない事情もあるでしょう。いずれにしろ、遺産分割前に相続財産を使うときには、他の相続人の承諾を得ることが大切です。

賃料を無断で受け取る

故人がアパートや駐車場などの収益用不動産を所有していた場合、亡くなった後も継続して賃料収入が入ってきます。相続開始後の賃料は相続財産には含まれず、遺産分割の対象にはなりません。相続財産とは別個の財産として扱われ、法定相続分に応じて各相続人が取得することになります。

他の相続人の了承を得ずに賃料を受け取って自分のものにしてしまうと、他の相続人の権利を侵害してしまいます。不当利得となってしまうので注意が必要です。

不当利得返還請求の手順【5ステップ】

不当利得返還請求の手順【5ステップ】

遺産を使い込まれた場合などには、不当利得返還請求により返してもらうことができます。不当利得返還請求は自分で行うこともできますが、弁護士・司法書士等の専門家に依頼することも可能です。

ここからは、不当利得返還請求の手続き方法について、一般的な手順を説明します。

ステップ1|不当利得の証拠を集めて金額を計算する

まず、被請求者が不当利得を得た証拠資料を集めます。相続人が故人の預金を使い込んだ場合には、故人の預金口座の取引履歴を取得する必要があります。特定の相続人が使い込んだことを示すメールや音声などがあれば残しておきます。証拠資料から使い込まれた額を計算します。

不当利得返還請求で取り戻せるのは、現在残っている利益(現存利益)が原則です。請求するまでに被請求者が利益分をギャンブルなどで浪費してしまって残っていない場合、使ってしまった分は取り戻せません。生活費に使ったような場合は、それにより自分の財産の減少を免れているので、現存利益があります。

ただし、被請求者が不当利得であることを知っていた場合(悪意の場合)には、不当利益の全額に利息を付けた金額を請求可能です。さらに、請求者が被った損害の賠償も請求できます。被請求者の悪意を立証できるものがあれば用意しておきましょう。

ステップ2|不当利得返還請求の通知を相手に送る

不当利得返還請求には、決まった方式はありません。いきなり訴訟を起こす必要はないので、まずは相手に請求書を送って話し合いによる解決を提案します。

普通郵便で請求書を送っても請求した証拠が残らないため、内容証明郵便で送るようにしましょう。内容証明郵便なら、自分の手元と郵便局の両方に、送付した内容の控えが残ります。被請求者が話し合いに応じない場合には、内容証明郵便を証拠にして訴訟を起こすことになります。

ステップ3|相手と協議を行う

内容証明郵便が被請求者に届いたら、相手と不当利得返還の交渉をします。いつまでにどのようにして返還するのか、話し合って決めましょう。

ステップ4|合意できたら合意書を作成して支払いを受ける

不当利得の返還方法や返還時期について被請求者との間で合意ができたら、その内容を合意書として書面にします。その後は、合意書どおりに支払ってもらいます。

なお、合意書を公正証書にしておけば、約束どおりの支払いがなかった場合に、財産の差押えが可能になります。

ステップ5|合意に至らなかったら不当利得返還請求訴訟を起こす

被請求者が不当利得返還の話し合いに応じないケースもあるでしょう。また、話し合いをしても、合意に至らないケースもあります。

話し合いによる合意が不可能な場合には、裁判所に不当利得返還請求訴訟を起こすことを検討しましょう。

不当利得返還請求で気をつけたい3つの注意点

不当利得返還請求で気をつけたい3つの注意点

不当利得返還請求を行うときには、注意しておかなければならない点があります。ここでは、不当利得返還請求で特に気をつけたい注意点を3つ説明します。

時効がある

不当利得返還請求権には時効があります。2020年の民法改正により、不当利得返還請求権の時効は、請求できると知った時点から5年、または請求できる時点から10年となりました(民法166条第1項)。

返してもらえる不当利得があっても、時効になってしまうと不当利得返還請求はできません。手続きを迷っている間に時効期間が経過してしまわないよう、早めに手続きしましょう。

損失分のすべてを返還してもらえない可能性がある

不当利得返還請求をした場合、返してもらえるのは現存する利益に限られます。例えば、相手が不当利得した現金のほとんどをギャンブルなどで浪費してしまったケースもあるでしょう。損失を被った分をすべて返してもらえるとは限らないのです。

また、相続財産の使い込みの場合、各相続人が請求できるのは法定相続分のみになります。法定相続分を超える金額は請求できないことにも注意が必要です。

なお、相手が不当利得と知っていて利益を得た場合には、全額の返還請求ができます。この場合、返還してもらう利益に利息を付けて請求できる他、損害賠償を請求できる可能性もあります。

相手が資料の開示や合意を拒否することがある

不当利得返還請求をする前提として、証拠を集めなければなりません。しかし、証拠集めが困難なケースもあります。

例えば、相続財産の使い込みの場合、相続財産を管理している方と使い込みをしている方は同じであるケースが多くなっています。このような場合には、遺産に関する資料を開示してもらえず、なかなか証拠を集められないかもしれません。

不当利得返還請求で困ったらプロに相談するのが得策

不当利得返還請求で困ったらプロに相談するのが得策

不当利得返還請求をしたいけれど、手続き方法がわからなかったり、スムーズに進まなかったりすることも多いのではないでしょうか?不当利得返還請求は、弁護士や司法書士に相談ができます。

ここからは、専門家に不当利得返還請求を依頼するメリットについて説明します。

プロに協力を仰ぐメリット

不当利得返還請求は、弁護士に依頼して行うこともできます。また、140万円以下の不当利得返還請求は、認定司法書士に依頼することも可能です。認定司法書士とは、法務大臣の認定を受けており、簡易裁判所での訴訟代理権を与えられている司法書士になります。

以下、弁護士と司法書士それぞれに不当利得返還請求を依頼するメリットを説明します。

【弁護士】

  • 金額に関係なく不当利得返還請求を依頼できる
    弁護士は簡易裁判所に限らず、地方裁判所などすべての裁判所で代理人として訴訟ができます。不当利得返還請求についても、弁護士なら請求金額に関係なく依頼可能です。
  • 23条照会により証拠・資料の収集が可能
    弁護士の場合、弁護士法にもとづく照会制度(23条照会)を利用できます。これにより、金融機関や団体等に情報の開示を請求できるため、証拠集めがしやすくなっています。
  • 幅広いトラブルに対応できる
    弁護士は紛争解決の専門家です。争いごとが起こっている場合、不当利得を返してもらうだけでは問題が解決しないケースもあるでしょう。弁護士は幅広いトラブルに対応できるため、複雑な案件は弁護士に相談するのがおすすめです。

【司法書士】

  • 身近な専門家で相談しやすい
    弁護士に相談するのはハードルが高いという方も多いでしょう。司法書士は身近な法律家なので、気軽に相談できるのがメリットです。休日や時間外の相談に応じてくれる事務所も多く、忙しい方でも相談しやすくなっています。
  • 報酬が比較的リーズナブル
    司法書士費用は、弁護士費用よりは低めに設定されています。司法書士に依頼すれば、不当利得返還請求にかかる費用を抑えられます。
  • 過払い金請求に特化している事務所が多い
    弁護士事務所では幅広い訴訟案件を扱っている事務所が多いですが、司法書士事務所の中には特定分野を専門にしている事務所が多くなっています。特に、過払い金請求に特化している事務所は多いため、過払い金請求を考えているなら司法書士事務所に依頼するのがおすすめです。
  • 相続手続きに精通している
    司法書士は相続手続きに強い専門家です。相続財産には不動産が含まれることが多いですが、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士に依頼する必要があるからです。相続関連の不当利得返還請求を司法書士に依頼すれば、相続手続き全般に関して、きめ細かなアドバイスが受けられます。

相続の悩みは「セゾンの相続」へご相談を!

相続財産の使い込みなど、相続に関連した悩みやお困りごとを抱えている方もいらっしゃるでしょう。相続問題を相談したいなら、「セゾンの相続」をご利用ください。

セゾンの相続 相続手続きサポート」は、相続手続きをトータルにサポートするサービスです。相続分野に詳しい司法書士と提携しているため、不動産の名義変更や預貯金の解約など、幅広い手続きを任せられます。初回のご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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おわりに

不当利得とは、法律上正当な理由がないのに利益を得ることです。不当利得を得た方に対しては、損失を被った方から不当利得返還請求ができます。

不当利得返還請求をするには、内容証明を送って交渉したり、場合によっては訴訟を提起したりする必要があります。相続財産の使い込みなどで不当利得返還請求をしたい場合には、専門家に相談するのがおすすめです。

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