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相続税が支払えない場合はどうしたら良い?5つの対処方法を解説

相続税が支払えない場合はどうしたら良い?5つの対処方法を解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続税が支払えない場合の対処方法には、延納や物納などがあります。多額の財産を相続すると納税額も高くなることもあるため、支払い方法に困っている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、相続税が払えないときの対処方法を5つ紹介します。それぞれの対処方法の注意点もわかり、面倒な相続手続きをスムーズに終えられるでしょう。

この記事を読んでわかること

  • 相続税とは相続人が一定額以上の財産を引き継いだときに、相続人に課せられる税金である
  • 相続税を払えないときの対処方法には、「延納」、「物納」、「不動産の売却」、「ローンの借入」や「相続放棄」がある
  • 相続税を期限内に申告・納税しないと、延滞税や無申告加算税などが発生したり、財産を差し押さえられたりする可能性もある
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そもそも相続税とは

そもそも相続税とは

相続税とは一定額以上の財産を引き継いだときに課せられる税金です。納税義務者は相続人(財産を引き継いだ方)となります。相続税の税率は10%〜55%の8段階で、取得金額が高いほど税率も高くなる仕組みです。

相続税の納付が必要な方はどれぐらいいる?

国税庁の「令和3年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和3年分の被相続人は143万9,856人で、課税された方は134,275人でした。相続税が課税された方の割合は9.3%で、そこまで多くないことがわかります。

ご家族が亡くなり預貯金や土地、家、株式などの財産を引き継ぐと「相続税が発生する」と思われがちですが、多くの方は相続税を納めずに済みます。

参照元:令和3年分 相続税の申告事績の概要

相続税を支払わなくて良いケース

相続税には基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))があります。相続した財産(課税価格の合計額)が基礎控除額以下であれば、相続税は発生しません。

具体的には課税価格の合計額が3,000万円で、法定相続人が3人(配偶者と子ども2人)の場合、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」で、3,000万円-4,800万円=-1,800万円となるため、相続税は発生しません。

相続税がかかるモデルケース

夫・妻・長男・次男のご家庭で夫が亡くなり、妻・長男・次男が東京都内の戸建(相続税評価額6,000万円)と預貯金1,000万円を法定相続分のとおりに相続したケースで相続税を計算します。

なお、妻には配偶者控除を使います。配偶者控除とは「配偶者の取得金額が1億6,000万円もしくは配偶者の法定相続分のどちらか多い金額までであれば相続税がかからない」という制度です。

また法定相続分とは民法で定められた法定相続人の最低限の取り分のことで、配偶者・子どもであれば、それぞれ2分の1となります。子どもが2人以上いれば2分の1を人数分で均等に分割します。

妻と長男・次男の相続税額は以下のとおりです。

 長男次男
相続税額0550,000円550,000円

課税価格の合計は7,000万円で、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+(600万円×法定相続人の数)となります。課税遺産総額は2,200万円(7,000万円−4,800万円)です。

2,200万円を法定相続分で按分すると、それぞれの取得分は妻が1,100万円、長男が550万円、次男が550万円となります。妻の取得分は1億6,000万円を超えないため、相続税額は0円です。

一方で長男と次男の取得分は「2,200万円×法定相続分(4分の1)=550万円」です。相続税額は「550万円×10%=550,000円」となります。

なぜ相続税が払えないケースがあるのか

なぜ相続税が払えないケースがあるのか

納付は基本的に現金一括です。また相続税の申告・納付期限は「相続の開始が合ったことを知った日の翌日から10ヵ月以内」となります。そのため手元にお金がない場合には、相続税が支払えないといった事態が発生します。

相続財産は預貯金だけではなく、土地や建物、有価証券などすぐに換金ができないものもあるでしょう。また銀行にある預金は被相続人が亡くなると、凍結されてしまい、遺産分割協議が終わるまで引き出せません。

そのため相続税の支払いがある可能性がある方はあらかじめ対処法を知っておくことが重要です。

相続税が払えないとどうなるのか

相続税が払えないとどうなるのか

相続税を期限内に払わないと税務署からペナルティを課せられる可能性があります。余計な出費とならないために、申告・納税期限を守ることが大切です。ここでは相続税を払わないとどうなるのか解説します。

延滞税や加算税が発生する

相続税の申告・納付期限は「相続の開始が合ったことを知った日の翌日から10ヵ月以内」です。期限に遅れると、延滞税や無申告加算税・過少申告加算税・重加算税が発生する場合もあります。

延滞税は期限までに納付しなかったときに利息のような形で課せられる税金で、原則として期限の翌日から納付日までの日数分が発生します。税率は納期限の翌日から2ヵ月を経過する日までであれば、原則年7.3%です。2ヵ月を超えると原則として年14.6%となります。

無申告加算税とは正当な理由がなく、期限までに申告しなかったときに課せられる税金です。税務調査の事前通知前に自主的に申告すれば追加納付額の5%、通知後であれば追加納付額の15%~20%となります。期限後1ヵ月以内に申告すれば、無申告加算税は課せられません。

過少申告加算税は申告金額が不足しているときに課せられる税金で、税務署に指摘されてからであれば税率は追加納付額の10%~15%となります。

そして申告金額を意図的に偽装したり、申告を意図的に行わなかったりした場合には、追加納付額の35%・40%の重加算税が課せられます。

状況によって納税額は異なり、高額な税金を課せられる可能性もあるため、申告・納付期限は守りましょう。

最終的には財産差し押さえの可能性も

税金を滞納したときの一般的な流れとしては、はじめに督促状が届きます。それでも応じないと電話や郵送によって催促され、催促に応じなければ「差押予告通知書」が届き、最終的に給料や銀行口座の残高などが差し押さえられます。

財産を差し押さえられるとより生活が苦しくなるため、差し押さえの前に対策を講じることが大切です。

相続税が払えない時の対処方法

相続税が払えない時の対処方法

相続税を支払うだけのお金が手元にないと、焦ってしまう方もいるのではないでしょうか。次に相続税が払えないときの対処方法を5つ紹介します。それぞれのメリット・デメリットがわかり、ご自身に合った方法を見つけられるでしょう。

延納できないか検討する

延納とは納付金額を分割し、最大20年にわたって支払うことです。以下の全ての要件を満たすことで利用できます。

  • 相続税額が100,000円を超えること
  • 金銭での納付が困難な金額の範囲内であること
  • 延納税額に相当する担保を提供すること
  • 申告期限までに「延納申請書」と「担保提供関係書類」を提出すること

参照元:相続税贈与税の延納の手引

なお延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下であれば、担保は不要です。

延納を利用することで、一度に支払えない相続税額を少額から支払えるため、一時的に経済的な負担が軽減できます。

一方で延納期間分の利子税が発生するため、当初の相続税額よりも多くの税金を納めなければなりません。また担保として認められるためには複数の要件をクリアすることが必要です。

物納できないか検討する

物納とは現金の代わりに、相続した不動産や国債、上場株式、動産といった物で相続税を納めることです。

以下の全ての要件を満たす必要があります。

  • 延納での納付が困難な金額の範囲内であること
  • 物納財産が定められた種類の財産で申請順位によっていること
  • 期限内に「物納申請書」と「物納手続関係書類」を提出すること
  • 物納財産が物納に充てられるものであること

相続した財産が現金よりも不動産などが多い状況であれば、物納を検討する余地はあります。ただし普通に売却するよりも安く評価される可能性があるため、ご自身で売却することも踏まえて考えましょう。

相続した不動産を売却して資金を調達する

相続した土地や建物を売却して相続税の支払い金額を調達する方法もあります。高く売却できれば、納めた金額の他にお金を手に入れられるでしょう。

ただし、売却するには名義変更や不動産会社とのやり取り、買主との交渉など、やるべきことがたくさんあり、時間がかかってしまうこともあります。相続税の申告・納付期限に間に合わない可能性もあるでしょう。売却により利益が生じると譲渡所得税が課せられる可能性もあります。

金融機関のローンを借り入れて支払う

手元にお金がないときには銀行や消費者金融などからローンを借り入れる方法もあります。最短即日で借入ができるため、申告・納付期限が迫っているときにおすすめです。また実家を手放したくない方にも良いでしょう。

ただし、あくまで借金のため利息がかかり、返済が難しくなることも考えられます。家計が苦しくならないように、借入は必要最小限に抑え、事前に返済シミュレーションをしましょう。また審査に通らなければ利用できません。他の手段も考えておくことをおすすめいたします。

相続を放棄する

相続放棄は借金があるときにしか使えないと思われがちです。しかし、相続放棄の理由は自由で、プラスの財産が多いときでも利用できます。そこで相続放棄をすることで、税負担をなくせます。

ただし、相続放棄により相続税が発生するだけの多額の財産を相続できないことになるため、納税額を他で準備できないか十分に検討しましょう。

また相続放棄の期限は「相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内」で、相続税の申告・納付期限よりも短くなっています。すぐに判断しなければならないため、相続税が多くなるとわかった時点で早めに相続放棄をしましょう。

相続税の悩みは専門家に相談しよう

相続税の悩みは専門家に相談しよう

相続税について理解しようとすると専門知識が必要になり、ご自身だけでは対処できないケースもあるでしょう。そこで税理士に相談することで、不安を解消でき、スムーズに手続きを進められます。最後に相続税の悩みを税理士に相談することについて解説します。

税理士へ相談する

相続税が払えないときの対処方法や相続税の金額について不明な点があれば、税理士に相談しましょう。相続税に精通した税理士であれば、やるべきことを順序立てて対応し、納税まで代理してくれます。

相続税が払えないことによる延滞税や無申告加算税などの課税も防げるため、安心できるでしょう。仕事や家事が忙しい方は一度税理士に相談することをおすすめいたします。

「セゾンの相続 相続税申告サポート」への相談もおすすめ

相続税でお困りの方は「セゾンの相続 相続税申告サポート」へのご相談をおすすめします。お客さまのお悩みをお伺いし、必要に応じて相続に強い税理士を紹介することができます。お気軽にお問い合わせください。

セゾンの相続 相続税申告サポートの詳細はこちら

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おわりに

相続税が払えないときには「延納」や「物納」「不動産の売却」「ローンの借入」「相続放棄」があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、不明な点があれば税理士に相談しましょう。相続税が払えないと延滞税や無申告加算税などが発生し、最悪の場合財産を差し押さえられる可能性があります。

相続税の申告・納付期限は「相続の開始が合ったことを知った日の翌日から10ヵ月以内」のため、早めに対策を講じましょう。

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