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相続税の無申告はNG!払わないと税務署にバレて罰則が科せられる恐れも

相続税の無申告はNG!払わないと税務署にバレて罰則が科せられる恐れも
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続税は、被相続人が亡くなってから10カ月以内に申告・納付しなければなりません。期限内に申告・納付を行わないと無申告となってしまい、延滞税や重加算税など重いペナルティを科されてしまう可能性があるので注意が必要です。「無申告でもバレない」と思うかもしれませんが、税務署の目を逃れることは実際には難しいでしょう。

この記事では、相続税無申告の場合に科せられるペナルティやバレる理由、相続税申告の基本、相続税額の計算方法など、相続の際に知っておきたいことを詳しく解説します。

(本記事は令和6年1月31日の情報です)

この記事を読んでわかること
  • 相続税を申告しない場合に科せられるペナルティは延滞税、無申告加算税、重加算税、悪質な場合は刑事罰に発展
  • 相続税の申告は相続が発生してから10カ月以内に行わなければならない
  • 無申告がばれるのは、死亡届の情報が税務署に通知される、全国の国税局・税務署がつながっている、不動産の名義変更や死亡保険金の受け取りが発覚するから
  • 小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減を受けるためには申告が必要
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相続税を申告しない場合に科せられる罰則

相続税を申告しない場合に科せられる罰則

相続が発生し、遺産を相続した場合、相続人には相続税が課税されます。遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)以下であれば申告の義務はありませんが、超える場合は必ず申告しなければなりません。)

相続税の申告と納付の期限は、相続開始を知った日(通常の場合、被相続人が亡くなった日)の翌日から10ヵ月以内です。

では、相続税を申告しない場合にはどのような罰則が科せられるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

【相続税を申告しない場合に課せられる罰則】

  • 延滞税
  • 無申告加算税
  • 重加算税
  • 刑事罰

延滞税

延滞税とは、相続税の申告・納付が期限に間に合わずに遅延したことに対して課される税金です。原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。

延滞税がかかるケースは以下の通りです。

  • 期限内に申告しなかった
  • 期限内に申告したが税金の納付が期限後になった
  • 期限後に(修正)申告した
  • 税務調査によって更正・決定処分を受けた

延滞税の税率

延滞税は原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。

延滞税の税率には原則と例外があります。例外は昨今の超低金利の状況を踏まえ、平成12年以降は別途基準が設けられました。令和4年1月1日~令和6年12月31日の間の税率は以下の通りです。

 特例原則
納期限の翌日から2か月以内年2.4%年7.3%
納期限の翌日から2か月超年8.7%年14.6%

例えば、法定納期限が令和5年3月31日で同年6月20日に納付した場合、延滞期間は「30+31+20=81日」です。最初の3か月間である61日に対しては年2.4%の税率、その後の20日に対しては年8.7%の税率で延滞税が課されます。

例えば、相続税額が500万円の場合、延滞税の額は「500万円×0.024×61/365+500万円×0.087×20/365=約4万3,800円(100円未満切り捨て)」です。

延滞税の特例

延滞税を計算するにあたり、偽りその他不正の行為により国税を免れた場合等を除き、以下の場合には一定の期間を延滞税の計算期間に含めないという特例があります。

  • 期限内に申告書が提出されており、法定申告期限後1年を経過してから修正申告または更正があったとき
  • 期限後に申告書が提出され、その申告書提出後1年を経過してから修正申告または更正があったとき
  • 確定申告書を提出した後に減額更正がなされ、その後さらに修正申告または更正があったとき

無申告加算税

無申告加算税は、正当な理由なく、相続税の申告を期限までに行わなかった場合に貸される税金です。本来納めるべき税額のうち50万円以下の部分と50万円超の部分に分けて計算します。

無申告加算税が課せられるケースは、以下の通りです。

  • 正当な理由がなく期限内に申告しなかった
  • 期限後の申告に修正・更正があった

無申告加算税の税率

無申告加算税の税率は、納税額や自主的に申告したか否かなど状況に応じて税率が異なります。

  • 10か月の期限後に自主的に申告した場合
  • 10カ月の期限後に税務調査の事前通知を受けて申告した場合
  • 10カ月の期限後に税務調査で指摘されてから申告した場合

本来納めるべき相続税の額が50万円を超えると超過部分の税率が高くなる仕組みです。また、相続税の申告期限が令和6年1月1日以降の場合、本来納めるべき相続税の額が300万円を超えるときの超過部分の税率はさらに高くなります。

申告期限が令和6年1月1日以降の場合、無申告加算税の税率は以下の通りです。

 税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに申告した場合税務調査を受けてから申告した場合
50万円以下の部分5%10%15%
50万円を超える部分5%15%20%
300万円を超える部分5%25%30%

無申告加算税が不適用となる要件

申告・納税が遅れていても無申告加算税が課せられないケースもあります、

  • 法定申告期限より1カ月以内に自主的に申告した場合 かつ
  • 期限内申告の意思があったと認められる「一定の場合」に該当する場合

なお、「一定の場合」とは、以下の要件を満たす場合です。

  • 期限後申告にかかる納付税額の全額を法廷納期限までに納付していること。 かつ、期限後申告書を提出した前日から5年前までの間に、無申告加算税もしくは重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと。

重加算税

意図的に相続財産や相続の事実を仮想・隠ぺいした場合など、悪質と認められる場合に課せられる税金です。意図的であったか、悪質であったかは税務調査や根拠となる資料を基に様々な角度から調査され、判断されます。

また、重加算税の対象となった財産については、配偶者の税額軽減を受けることができません。そのため、さらに大きなペナルティが科せられることになるでしょう。

重加算税の税率

意図的・悪質と認められた場合、申告の有無に応じて、無申告加算税及び過少申告加算税に代わり、以下の税率で重加算税が課せられます。

  • 無申告の場合:40%
  • 過少申告の場合:35%

また、過去5年以内に相続税で無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は、上記の税率にさらに10%加算されます。

例えば、本来納めるべき税額が500万円の場合(過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されていない場合)、重加算税が課される場合の最大税率は40%なので最大200万円の加算税が課されるうえ、延滞税も加算されます。

【番外編】刑事罰

特に悪質な脱税行為については、刑事罰を科せられるケースもあります。

相続税法第68条第1項により、偽りその他不正行為により相続税を免れた者は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処せられること、懲役と罰金が併科される可能性もあると定められています。

悪質な脱税行為とみなされた場合、延滞税や無申告加算税、重加算税に加えて上記のような刑事罰が科される可能性があるため、絶対にやってはいけません。

そもそも相続税の申告はいくらから必要?

そもそも相続税の申告はいくらから必要?

では、そもそも相続税の申告はいくらから必要なのでしょうか。ここでは、相続税が必須なケースと具体的な相続税の計算方法、申告期限について解説します。

基礎控除額を超えたら申告が必須

相続税は、基礎控除額以上の遺産を受け取る場合に発生します。すべての相続人が相続税の課税対象になる訳ではありません。

相続税の基礎控除額は条件によって変動しますが、基本的には3,600万円が最低金額となっています。そのため、相続する遺産の総額が3,600万円以下の場合、相続税は発生しません。

ただし、3,600万円以上の遺産を相続しても相続税の申告が不要となるケースもあります。

ひとつ目は、3,600万円以上の遺産を相続しても、基礎控除額を超えない場合です。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で求められます。3,600万円という金額は法定相続人が1人の場合の基礎控除額なので、法定相続人の数が増えれば基礎控除額は増えていくわけです。相続した遺産の額が基礎控除額を超えなければ、相続税の申告は必要ありません。

2つ目に、基礎控除額を超えていても、特例や控除の活用により相続税が発生しない場合もあります。例えば、以下のような特例や控除を活用することが可能です。

  • 配偶者に対する相続税額の軽減:法定相続分または1億6,000万円以下の財産の取得であれば相続税がかからない
  • 未成年者控除:相続税から「10万円×(20歳-相続開始時の年齢)」が控除される
  • 障害者控除:「10万円(特別障害者は20万円)×(85歳-相続開始時の年齢)」が控除される
  • 相次相続控除
  • 外国の財産に対する相続税額の控除
  • 小規模宅地等の特例:評価額の最大80%減額される

相続税の計算方法

相続税の基礎となる課税遺産総額は、「課税価格の合計額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」で求められます。

その上で、各相続人が納める相続税額を、「相続税の総額×各相続人の課税価格÷課税価格の合計額」で算出します。

例えば、遺産総額5,000万円、相続人は配偶者と2人の子の場合を想定してシミュレーションしてみましょう。この場合の課税遺産総額は、「5,000万円-(3,000万円+600万円×3)」=200万円です。

次に、相続税の総額は配偶者が「200万円×1/2×10%=10万円」、2人の子はそれぞれ「200万円×1/4×10%=5万円」なので「10万円+5万円×2=20万円」です。

各相続人が納める相続税額は、配偶者が「20万円×2,500万円÷5,000万円=10万円」、2人の子がそれぞれ「20万円×1,250万円÷5,000万円=5万円」です。

配偶者は相続税額の軽減により相続税額は0円になるので、2人の子がそれぞれ5万円の相続税を納めることになります。

申告期限は10ヵ月以内

相続税の申告期限は、相続開始を知った翌日から10カ月以内です(相続税法第27条・第33条)。この期限内に原則として現金で納付しなければなりません。申告しないまま期限を超えてしまうと、延滞税などのペナルティが科されます。

ただし、災害その他やむを得ない特別な事情がある場合は、申告期限の延長を申請できるとされています。延長が認められれば最大2カ月間申告期限を延ばすことが可能です。ただし、延長の申請は申告期限内に行う必要がある点に注意してください。

相続税の無申告がなぜ税務署にバレる?3つの理由

相続税の無申告がなぜ税務署にバレる?3つの理由

相続税の申告漏れはかなりの確率で税務署にバレてしまいます。税務署は法務局や金融機関と連携を取り、亡くなった方やその家族の資産状況を把握していることに加え、銀行や証券会社などに対しても強力な調査権限を有しているからです。

税務署が相続税の無申告に気づく理由は、主に以下の3つです。

  • 死亡届の情報が税務署に通知されるから
  • 全国の国税局・税務署がつながっているから
  • 不動産の名義変更や死亡保険金の受け取りが確認できるから

それぞれについて見ていきましょう。

死亡届の情報が税務署に通知されるから

被相続人が亡くなった場合、遺族は死亡の事実を知ってから7日以内に市区町村の役所へ死亡届を提出しなければなりません。そして、死亡届の情報は税務署にも通知されます。これは、相続税法第58条で市区町村には死亡届を受理した場合に受理した月の翌月末日までに税務署へ通知する義務が定められているからです。

相続は被相続人が亡くなったタイミングで発生するので、税務署が相続税の無申告に気づくわけです。

全国の国税局・税務署がつながっているから

全国の国税局・税務署は、KSK(国税総合管理システム)によってつながっています。このシステムにより、以下のようにあらゆる情報を調べることが可能です。

  • 給料、役員報酬、退職金
  • 不動産所得
  • 株式や不動産などの譲渡
  • 過去に納めた所得税や固定資産税などの申告データ

税務署は死亡情報の通知を受け取るとKSKシステムの情報を利用して過去のデータを調べ、相続税の申告が必要になりそうな対象者に目星をつけています。また、過去のデータと実際に提出された相続税申告書を見比べ、申告書に記載されている財産額が極端に少ない場合のようにバランスが悪い方がいないか、税務調査の対象先を探しているため、バレることになるのです。

不動産の名儀変更や死亡保険金の受け取りが確認できるから

相続発生に伴い、被相続人が保有していた不動産の名義変更や、死亡保険金請求の手続きが発生します。こうした相続発生後の財産管理に関する情報も、法務局や生命保険会社と税務署が連携しているため、バレます。

例えば、不動産の名義変更のための相続登記は法務局で行いますが、登記が行われた理由と誰から誰に不動産が移転したかといった所有権に関する情報は税務署に通知されます。

また、死亡保険金や契約者を変更した保険契約の情報については、保険会社から税務署に支払調書が発行されるので、税務署はあらかじめ情報を握っているわけです。

相続税の申告・納付に関する疑問を解決

相続税の申告・納付に関する疑問を解決

最後に、相続税の申告・納付に関する疑問と回答をご紹介します。

  • 相続税の申告に時効はある?
  • 計算を間違えて本来の納税額より少なく申告してしまった!
  • 特例が適用になるから無申告で良い?

相続税の申告に時効はある?

相続税の申告は、一定期間が経過すると時効(正確には「除斥期間」)が成立し、国は相続税を徴収する権利を失います。相続税申告の時効は、5年または7年です。

相続の発生を知らなかった場合や、相続税の対象となる財産の存在を認識していなかった場合などは、申告期限の翌日から起算して5年で時効が成立します。

一方、相続の発生や相続財産の存在を知っていたのに意図的に申告しなかった場合などは、時効は申告期限の翌日から起算して7年です。

ただし、相続税の申告をしないまま時効が成立するケースは実際にはほとんどありません。税務署は金融機関のお金の動きや不動産情報を把握しているので、申告が必要なのに無申告の場合はまずバレるからです。

計算を間違えて本来の納税額より少なく申告してしまった!

相続税の計算を間違えて、本来の納税額より少なく申告してしまった場合は、過少申告加算税が課せられます。過少申告加算税は、本来申告すべき財産額より少ない金額のみを申告・納税した場合に、本来納めるべきであった税額との差額に対して課される加算です。

過少申告加算税の税率は、追加で納める税額のうち50万円以下の部分と50万円超の部分で変わります。また、申告するタイミングによっても変わってくるので注意してください。

 税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合税務調査の通知を受けてから税務調査を受ける前に修正申告した場合税務調査を受けてから申告した場合
50万円以下の部分なし5%10%
50万円超の部分なし10%15%

なお、本来納めるべき相続税を納付期限までに納めていない場合は、過少申告と共に延滞税も課されます。

特例が適用になるから無申告で良い?

相続税には、基礎控除以外にも様々な特例や控除の制度があります。本来であれば相続税が発生する場合でも、特例や控除の適用を受けて相続税が0円になるケースも少なくありません。

ただし、特例や控除の適用により相続税が0円になる場合でも、相続の申告義務が必ずなくなるわけではありません。特例や控除の種類によって、申告義務の有無が分かれている点に注意してください。

例えば、「小規模宅地の特例」や「配偶者の税額軽減」は申告義務がありますが、「みなし相続財産の非課税枠」「障害者控除」「未成年者控除」「相次相続控除」は申告義務はありません。

申告義務がある特例や控除を受けるためには申告書を提出しなければなりません。

相続税申告の心配事は「セゾンの相続」までご相談を!

相続税申告の心配事は「セゾンの相続」までご相談を!

相続税には申告期限が定められており、その期間内に相続財産の調査、各財産の評価、遺産分割協議、申告書の提出及び納税を完了させる必要があるため、ご遺族の負担が非常に大きいのが実情です。

セゾンの相続 相続税申告サポートなら、相続税申告に強い税理士と提携しているため、信頼できる専門家との無料相談や最適なプランのご提案が可能です。今すぐには依頼を考えておらず、相談だけという方もぜひお問い合わせください。

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おわりに

相続税は、被相続人が亡くなってから10カ月の期限内に申告・納税しないと無申告になってしまい、ペナルティを科せられることになります。また、特例や控除は、適用を受けるために申告しなければならないものもあるため、注意が必要です。大切な方が亡くなってすぐに様々な手続きを行うのは負担がかかりますが、大きなペナルティが科されないよう事前にポイントを把握しておきましょう。相続税申告に困ったら、セゾンの相続 相続税申告サポートのような専門家に相談することをおすすめします。

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