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遺言書の付言事項はこう書く!文例やポイントを紹介|法的効力はなくてもメリットあり

遺言書の付言事項はこう書く!文例やポイントを紹介|法的効力はなくてもメリットあり
セゾンのくらし大研究 編集部

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遺言書は、家族に相続についての意思を伝える大切なメッセージです。そこに付言事項という遺言者が自由に文言を書くことができる部分があることをご存じでしょうか。この記事では、これから遺言書を作成する方、作成しようと考えている方に向けて、付言事項とは何か、何を書くべきか、付言事項を有効に活用することで、遺言書をより確実性のあるものにするためのポイントをお伝えします。
(本記事は2024年4月16日時点の情報です)

この記事を読んでわかること
  • 付言事項は、法的拘束力は持たないものの、遺言の趣旨や家族への感謝を伝えることができる重要なもの
  • 付言事項の内容は、感謝の言葉から遺産配分の意図、葬儀についての希望など本人の伝えたいことを自由に設定できるほか、文の形にも指定はない。ただし、長くなりすぎる場合は手紙など別の形で残した方がよい
  • 法定遺言事項と矛盾する内容を付言事項に書くと、遺言書が無効になるケースがあるため注意が必要。
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遺言書の付言事項とは?

遺言書の付言事項とは?

遺言書には、法律で定められた事項(法定遺言事項)と、任意で記載できる事項(付言事項)があります。

ここでは、遺言書の付言事項について説明します。

遺言書の「付言事項」とは何か

初めに、そもそも「遺言書の付言事項」とは何かということについて説明します。付言事項とは、遺言者の思いを伝えるために遺言書に付け加える文章です。遺言書の内容は、大きく分けると「法定遺言事項」と「付言事項」に分けられます。ここでは、両者の区別から、付言事項とはどのようなものかを確認しておきましょう。

法的な効力がある「法定遺言事項」

法定遺言事項とは、相続の実際的な部分に関する内容であり、主に身分や相続、財産についての記述のことを指します。例えば、それぞれの相続人にどのようにして遺産を配分するか、遺産分割の方法についての指定、子の認知といったことが法定遺言事項に該当します。このようなことについての本人の意思を伝える法定遺言事項は、法的な効力を持っています。

思いを伝える「付言事項」

上記のような法定遺言事項に対して、付言事項は法的効力はありません。記述する内容は本人の自由であるため、法定遺言事項には書くことのできない本人の正直な思いを遺言書に記載することができます。

付言事項を作成するメリット

法的な効力のない付言事項は一見無意味なものにも見えますが、場合によっては、相続人の気持ちを慰めることができるのみならず、相続の際の争いや不満が発生するリスクを減らすこともできます。

また、法定遺言事項に記載する内容ではないものの、葬儀の希望など重要な事項を指定しておくことで、家族の負担を減らすことができることも、付言事項を作成するメリットであるといえるでしょう。

付言事項の内容とは?

付言事項の内容とは?

次に、付言事項にはどのような内容を記載するかについて説明します。付言事項の内容は遺言者が自由に設定できるため、その内容は様々ですが、代表的なものとしては以下のようなものが挙げられます。

感謝の言葉

付言事項の内容としてもっとも代表的なものは、家族への感謝の言葉でしょう。配偶者や兄弟、子や孫に自分自身の言葉で気持ちを伝えることで、遺言書はただの手続き上の書類にとどまらない、家族にとって大切なものとなります。

財産分配の割合の理由

法定遺言事項に記載した財産分割についての説明も、代表的な付言事項として挙げられます。法定遺言事項に書かれた財産の分配に偏りがある場合、受け継ぐ財産が少なくなった相続人が不満を持つかもしれません。

付言事項になぜこのような配分を望むのかを遺言者本人の言葉で書いておくことで、例え配分に偏りがあったとしても、納得してもらえるのではないでしょうか。

遺留分侵害について

分配の割合について説明することの発展版として、遺留分侵害額請求について記述することも挙げられるでしょう。何らかの理由によって遺言書で定めた遺産の分配が大きく偏った場合、「遺留分の侵害」が発生する場合があります。

遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に対して保証されている最低限の遺産の取り分を指し、この遺留分を侵害された方は、多く遺産を受け取った相続人から遺留分にあたる金額を現金で請求する「遺留分侵害額請求」の権利を持ちます。しかし、その権利を行使しなければ遺言書で記載されたとおりに配分されます。

やむを得ない事情によって特定の相続人の遺留分が侵害されることになる場合、丁寧に理由を説明することで相続人同士の争いを回避できるかもしれません。

一方で、遺留分侵害請求について、敢えて付言事項では触れない方がよい場合もあるので、注意が必要です。

葬儀など自分の死後について

葬儀や納骨、遺品の整理など自分の死後についての希望を述べておくことも、付言事項の効果的な使い方であるといえるでしょう。葬儀の規模、誰を呼んでほしいか、お墓はどうするかなどを遺言書に書いておくことで、家族の負担を減らすことができるでしょう。

遺言執行者として専門家を選任した理由

遺言の内容が本当に実現されるかどうか、遺言を書いた本人は知ることができません。また、推定相続人の排除など、遺言書の内容によっては、遺言執行者しか執行できないものがあります。

遺言執行者は、遺言の内容をそれぞれの相続人に伝える、遺言に基づいて相続される財産の目録を作成して相続人に送るなど、スムーズに遺言通りの相続が行われることを助ける役割を持っています。

この遺言執行者は必ず必要という訳ではありませんが、遺言執行者として弁護士や司法書士といった専門家を選ぶ場合、その理由について説明しておくことが必要です。そうすることで、相続人の遺言執行者に対する抵抗感を軽減することができるでしょう。

シチュエーション別付言事項の文例

シチュエーション別付言事項の文例

ここでは、それぞれの内容について付言事項でどのようなことを伝えるべきかについて、例を挙げて説明します。「この通りに書くべき」という型があるわけではありませんが、参考としてください。

家族に感謝の気持ちを伝える

私は思いやりのある夫とすばらしい子どもたちに恵まれて幸せでした。5年前に行った京都旅行は、久しぶりに家族そろって過ごすことができたかけがえのない思い出です。

私が病院に入った後も、遠くからよくお見舞いに来てくれたこと、とてもうれしかったです。この後も、家族で助け合いながら仲良く人生を歩んでいってくれることを心から願っています。

遺産を法定相続と異なる配分にする

長男のAは、私が倒れてからずっと一生懸命世話をしてくれました。介護のため地元に戻ってきてまで傍にいてくれたこと、非常にうれしく思っています。

しかし、そのために都会での仕事をやめてしまい、あまり財産を築けていないことが心残りです。だからAが安定した人生をこれから送ることができるように、遺産の配分を多くしました。B、Cには負担をかけますが、どうか分かってくれればと思います。

法定相続人ではない相手に財産を残す

次男の妻であるDさんには、とてもお世話になりました。Dさんは義理の父である私の介護を一手に引き受けてくれ、大変なことも文句も言わずいつも笑顔でいてくれました。そこで、遺産の一部をDさんに、そのお礼として渡したいと思い、このような配分としました。

他の相続人は不満もあるかもしれませんが、私の思いを汲んで遺言を守ってほしいと思います。特に長男のEは、遺産がとても少なくなってしまって申し訳ないと思いますが、決して遺留分の請求などしないよう頼みます。

自分の葬儀について依頼する

私を介護してくれた妻と遠方にいる二人の子どもには、私の死後、負担をかけたくないと思っています。葬儀はあまり豪勢なものは望まないので、ささやかなものにしてください。

しかし、やはりこれまでとてもお世話になった皆さんにはお礼の気持ちを伝えたいと思っています。会社でお世話になったFさんとGさん、そして大好きな草野球チームの皆さんには、ぜひ葬儀に立ち会ってもらいたいです。連絡など、手間をとらせることになり申し訳ないですが、なにとぞ、お願いします。

遺言執行者を選任する

私はよい子どもたちに恵まれ、幸せな人生を送ることができました。それぞれ離れて暮らし、仕事で忙しい日々を送っている子供たちに遺産のあれこれを行わせるのは負担になるだろうと思い、遺言執行者として弁護士のH氏を選任することにしました。

彼には何度も相談し、私の意思をしっかり伝えてあります。彼を信頼し、協力して欲しいと思っています。

付言事項を書く際の注意点

付言事項を書く際の注意点

付言事項の内容は基本的に遺言者の自由ですが、いくつか注意するべきポイントがあります。ここでは、付言事項を書く際の注意点についていくつか述べていきます。

法定遺言事項に反した内容は書かない

遺言書の遺産の配分などについて指定する部分である法定遺言事項と付言事項に書かれていることが矛盾する場合、遺言書が無効となってしまう可能性があるので注意が必要です。

例えば、付言事項では「世話になった息子の妻に財産の一部をゆずる」と書いておきながら法定遺言事項には、その記載が全く無いような場合、遺言者の判断能力が疑われ、遺言書が無効になってしまうかもしれません。付言事項の内容は、法定遺言事項に沿って書くようにしましょう。

内容を盛り込み過ぎない

付言事項に内容を盛り込みすぎてあまりにも長大なものになると、遺言書の趣旨があいまいになってしまいます。付言事項は法定遺言事項の後に付け足す程度の長さであることが適当です。

そのため、家族に伝えたいメッセージがとても多くなるような場合には、手紙やノートなど、別の手段をとることをおすすめします。動画や音声メッセージで思いを記録しておくということも、よいかもしれません。

否定的なことを書かない

特定の相続人に対して否定的なことを書いた場合、後で家族内の不和や争いにつながるかもしれません。付言事項には愚痴などの否定的な内容を入れることを避け、肯定的な文言を書くようにしましょう。

例えば、
「長男のAは海外にいるからといって全く顔も出さず、連絡すらほとんどよこさなかった。とても残念に思う」
という文章よりは、同じ内容であっても表現を変えた方がよいでしょう。

「長男のA が一生懸命勉強し、今では海外で働いていることをとても誇りに思う。忙しい日々でなかなか連絡もできなかったと思うが、私はいつもAが努力していることを分かっている。今後の幸せを願っている。」

遺言書や付言事項を作成するならセゾンの相続「遺言サポート」へ

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遺言書を書くときには、正しい知識と判断が必要です。自分だけの力で遺言書を書くことに不安を感じるかもしれません。

セゾンの相続「遺言サポート」では、遺言書の作成に詳しい司法書士との連携のもとで最適な提案を行い、相続をスムーズにする遺言書の作成をお手伝いしています。無料での相談もできるので、これから遺言書を作成しようという方は、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。

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おわりに 

遺言書の付言事項は、法的拘束力はないものの、遺言の実現を助ける重要な役割を持っています。また、法定遺言事項には書くことのできない遺言者自身の思いを相続人に伝えることができる大切な機会でもあります。何を伝えたいかしっかりと考え、適切な形で付言事項を作成することが重要です。また、専門家の力を借りて、何を内容として選ぶべきか相談することも効果的でしょう。

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