入院していた方が亡くなった際には遺族に死亡保険金と入院給付金が同時に振り込まれることがあります。ですが、受け取る人間によって課税される税の種類や額が異なります。対応を誤ると意図せず脱税になる場合もあります。この記事では、自分がどんな属性で、どのような手続きを踏むべきで、どんな点に注意すれば良いのかをまとめています。
(本記事は2024年4月15日時点の情報です)
- 入院していた方が亡くなった場合には、遺族に死亡保険金と入院給付金が同時に振り込まれることがあるが税務上異なる扱いを受けるため区別が必要である
- 死亡保険料は受け取る人間によってかかる税の種類が変わり、相続人が受け取る場合、相続税の控除を一定金額まで受けることができる
- 入院給付金は受取人によってかかる税金が変わり、被相続人が受取人の場合、相続税相続遺産として申告が必要である
- 入院給付金は医療費控除の書類に盛り込む必要があり、忘れた場合には追徴課税を受ける可能性がある
入院給付金は死亡保険金と取り扱いが異なる!
入院期間が長かった方が亡くなった時に、医療保険から支払われるお金として死亡保険金と入院給付金を同時に受け取ることがあります。同時に受け取るため混同しやすいですが、税の法律上これらは違った扱いを受けます。これらを扱う上でどういった部分に注意を払うべきなのかを確認していきましょう。
死亡保険金とは
死亡保険金とは、被保険者が亡くなった際に保険会社から支払われるお金です。このお金はそもそも被保険者が受取人となることはありません。被保険者が亡くなった際に契約時に設定した方が受取人になっています。
一般的な、保険金の支払いが被保険者で受取人が相続人になっている場合について考えてみましょう。この場合、みなし相続財産として、「500万円×法定相続人の数」の額が非課税になります。
入院給付金は入院時に支払われるお金
入院給付金は医療保険の基本的な保証の一つです。何かしらの理由で入院になった際、その入院した日数に応じて支払われるのが一般的です。
前述の通り、入院給付金は、死亡保険金とは異なり、被保険者自身が受け取ることが可能です。そのため、受取人の属性によってその税のかかり方が変化します。
入院給付金は受取人によって課税や遺産分割が決まる
入院給付金は被保険人の入院に対して支払われるため、死亡保険金と性質が異なります。入院給付金にかかる税金は受取人が被相続人かどうかで税金のかかり方や遺産分割における扱いが変化します。場合によっては非課税になる場合もあるので、確認してみましょう。
受取人が被相続人だった場合
受取人が被相続人だった場合、入院給付金は相続税の課税対象となります。また、遺産分割協議が成立するまで入院給付金自体は相続人全員の共有財産になります。
そのため、個人で勝手に使用することはできなくなります。
受取人が被相続人以外だった場合
受取人が被相続人以外の場合には、このお金は受取人本人の財産となり、相続税の課税対象外となります。また受取人が配偶者や子供の場合には所得税や贈与税からも対象外となります。
相続発生後に入院給付金を受け取る場合の注意点
入院給付金は、上記にも示したとおり
- 受取人が被相続人かどうか
- 死亡保険金と同時に振り込まれることがある
- 死亡保険金とは税金のかかり方が違う
など注意を払うべきポイントがいくつかあります。
ここではそれらをまとめて一挙に確認してみましょう。
死亡保険金と合算されたときは内訳を確認する
入院給付金と死亡保険金の受取人がいずれも相続人となっていることがよくあります。この際、死亡保険金と入院給付金が合算されて支給されていても、税の法律上の扱いは異なります。しっかり内訳を確認してから相続税の申告を行いましょう。
前述の非課税枠に入院給付金を含めてしまうと、相続税の過少申告となってしまいます。この場合、過少申告加算税や延滞税を課されてしまう可能性があるため注意が必要です。
入院給付金の受取人をしっかりと確認する
これまででお伝えしている通り、入院給付金にかかる相続税はその受取人が「保険契約上の受取人」であるかが重要な要素です。
しかし、 相続発生後に相続人が入院給付金の受取手続きを行うと、「保険契約上の受取人」が被相続人であるのにも関わらず、明細書上での「受取人」の表記は、実際の手続きをした相続人の名前が記載される保険会社が多くあります。
これは書類手続きをおこなった人を受取人と表現しているわけですが、同じ受取人と表記されていても法律上重要なのは「保険契約上の受取人」です。よって「保険契約上の受取人」については、支払明細書の表記で判断するのではなく、保険証券の記載を調べる、あるいは念のため保険会社に問い合わせをするなどして確認するようにしましょう。
入院給付金の受取りで相続放棄できなくなる可能性も
受取人が相続人になっている入院給付金を、保険加入者が亡くなった後相続人が受け取ると、「相続人の財産の一部を取得した」とみなされます。入院給付金の受取人が相続人の場合、相続人が代理で入院給付金を受け取ったとしても、単純承認とみなされ相続放棄できなくなる可能性があります。
単純承認とは「プラスの資産もマイナスの資産もすべて相続すること」です。マイナスの遺産が多く残っていた場合大きく損をすることになってしまうため、マイナスの遺産がないかよく確認してから入院給付金受け取りの手続きをすることをおすすめします。
振込口座凍結のタイミングに気をつける
多くの保険会社では、入院給付金の振込先に被保険者名義の口座を推奨、または限定して手続きを行っています。
しかし、金融機関に被保険者/口座名義人の死亡が連絡されてしまった場合、口座が凍結されてしまうため、入院給付金の振込みもできなくなってしまいます。
被保険者のキャッシュカードを預り、暗証番号も知らされている場合、入院給付金を先に引き出した後で金融機関に本人死亡を通知することもできます。
しかし、死亡した方の口座からの現金引き出しが認められるのは、葬儀費用の支払いなど限定的なものに限られます。手元資金に余裕がないときには有効な手段ですが、他の相続人から私的な使い込みを疑われないよう、領収書は必ず残しましょう。
亡くなった後に受け取った入院給付金に必要な申告は?
前述のように、入院給付金の受取人が被相続人だった場合には相続税が課税されます。つまり、入院給付金は保険加入者の財産に含まれているということです。
ここでは、保険加入者が亡くなった後入院給付金を受け取った際に、必要な申告(相続税申告書・準確定申告)および情報を確認しましょう。
被相続人が入院給付金の受取人なら相続税の申告が必要
まず、相続税が入院給付金に課税されるため、「相続税がかかる財産の証明書(第11表)」に記入をする必要があります。この申請書に何が必要なのか確認しましょう。
相続税申告書の書き方
必要な情報としては、「財産の種類・細目・利用区分銘柄等・所在場所・価額・取得した人・取得財産の額面」があります。それぞれ何を記入するべきかを以下にまとめます。
- 財産の種類:その他の財産
- 細目:その他
- 利用区分銘柄等:入院給付金
- 所在場所:(保険会社の社名を記入)
- 価額:(受け取る金額を記入)
- 取得した人:(被相続人の名前を記入)
- 取得財産の額面:(受け取る金額を記入)
医療費控除で所得控除するときは準確定申告が必要
入院給付金に所得税は課税されません。これは入院給付金が損害に対する補填として支払われており、今の税の法律上損害に対しては課税しない方針がとられているからです。
一方で、確定申告あるいは準確定申告において医療控除を受ける場合には注意が必要です。控除の計算においては「負担した医療費の金額」から「受け取った入院給付金」の金額を引く必要があります。これは、前述の通り入院給付金が損失の埋め合わせとして支給されているお金だからです。
故人がその年の1月1日から何かしらの収入を持っている場合、準確定申告を故人に代わって行う必要があります。
医療費控除明細書の書き方
書類は国税庁のホームページからダウンロードすることができます。準確定申告書に添付する「医療費控除の明細書」は、「医療を受けた人の氏名・病院や薬局などの支払先の名称・医療費の区分・支払った医療費・通院などにかかった交通費・保険会社などから補填された金額」を、記入します。
医療費としてかかる金額は医療費通知に書かれたもののみです。医療費通知は年をまたがって支払った医療費の明細が届きます。医療費控除の対象になるのは準確定申告の対象となる期間に支払った医療費のみが対象になりますので医療費通知の対象期間に注意が必要になります。
相続手続きが心配ならプロへの相談がおすすめ
今回の保険に関わるお金の判断は複雑で難しいと思う方も多いでしょう。誰がどのような属性を持っていて、それぞれのお金が手続きの中でどのような処理を受けるか、不安になってくることもあると思います。 複数の書類への記入が必要で、親族を亡くした直後に多くの事務作業を必要とするのは大変です。
複雑な相続税の計算など、自分だけで行うことが心配であればプロへ相談するのも一つの手段です。 セゾンの相続では相続税申告に強い税理士と提携し、お客様のご相談を承ります。税理士事務所に直接相談するのはハードルが高いと感じる方は、ぜひ、ご相談ください。
おわりに
今回は、死亡保険金と入院給付金が同時に振り込まれてしまうことに対してどのように対応したらよいのか、扱う上での注意点などについて紹介しました。保険金の受取りについて理解を深め、トラブルを未然に回避しましょう。