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遺言書の効力が認められる内容とは?相続でもめないための遺言書作成のポイント

遺言書の効力が認められる内容とは?相続でもめないための遺言書作成のポイント
セゾンのくらし大研究 編集部

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遺言とは、「自分の財産を誰にどのように残したいか」という意思を伝える方法で、それを書面に残したものが遺言書です。しかし、せっかくの遺言書も正しく作成しないと無効になることがあります。この記事では、遺言書の効力を発揮する内容と効力のない内容、そして遺言書を無効にしないためのポイントを紹介します。相続でもめないために効力のある遺言書を作成したい方は、ぜひ参考にしてください。

この記事を読んでわかること
  • 遺言書に記すことで法的効力が発揮されるのは、①遺言執行者の指名、②遺産の相続方法・分割割合、③未成年後見人の指名と非嫡出子の認知
  • トラブルを回避したいなら、遺言書の内容は遺留分に配慮すること
  • 遺言書が無効にならないよう、自筆証書遺言は自分で手書きし、ルールに従って作成することが必要
  • 遺言書が原因でトラブルにならないよう、専門家へ相談することもおすすめ
遺言サポート
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遺言書に残すと効力が認められる内容

遺言書に残すと効力が認められる内容

相続は、被相続人の死亡によって開始され、被相続人の財産は法定相続人に承継されます。この遺産相続には、相続人や相続財産の確定から遺産分割協議、相続税の申告・納税など多くの手続きが発生し、相続人に大きな負担がかかります。

遺言書があれば、基本的に遺産相続は遺言書の内容に沿って進められます。遺言書がなければ遺産分割の協議をしなければなりませんので、遺言書を作成しておくことは相続人の負担軽減につながります。

また、遺言書は、特定の相続人に法定相続分を超える財産を相続させる内容にすることも可能で、被相続人の希望を実現させる手段として有効です。この遺言書の効力が及ぶ範囲は大きく次の3つに分けることができます。

遺言執行者の指名

遺言執行者とは、遺言の内容に従って相続手続きを実行する方のことで、遺言書で指定された場合にのみ効力が発揮されます。遺言書に遺言執行者が指名されていれば、相続人であっても遺言執行者を無視して勝手に財産を処分することはできなくなります。また、遺言書に遺言執行者を指定する方の指定をすることもできます。

遺言執行者が行う具体的な手続きの例は次のとおりです。

  • 財産目録の作成
  • 預貯金の解約手続き
  • 不動産の名義変更
  • 遺言による認知
  • 推定相続人の排除

遺言執行者は遺言の実現のために必要な一切の行為をする権利義務があります。そのため、遺言書に遺言執行者を指定しておくことで、遺言者そのものの代理人として確実に遺言を執行してもらうことができます。

遺産・相続に関する取り決め

遺産・相続に関する取り決め

遺産の相続方法や遺産分割の禁止なども、遺言書に指定することで法的効力が生じます。

遺産の取り分の指定

遺言書では、誰に何をいくら相続させるかを自由に指定することができます。

民法には相続人の範囲と法定相続分が定められています。簡単に説明すると、配偶者は常に相続人となり、配偶者以外は①子ども、②父母や祖父母などの直系尊属、③兄弟姉妹の順で配偶者と一緒に相続人となります。法定相続分の割合は、配偶者と子どもで2分の1ずつ、配偶者と直系尊属では配偶者3分の2と直系尊属3分の1、配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者4分の3と兄弟姉妹4分の1です。

しかし、遺言書はこの法定割合に関係なく遺産の取り分を指定することが可能です。例えば自宅は配偶者、預貯金2分の1は長男、残りの預貯金を長女と次男で半分ずつ、とすることもできます。

ただし、対象や金額があいまいでは効力が発揮されないため、遺言書には相続財産の金額や対象を具体的に指定することが必要です。

遺贈の実行

遺言によって、相続人以外に財産を渡すこともできます。法定相続では、孫やお世話になった人に財産を残したいと思っても、相続人でない方に財産を渡すことができません。そのため、相続人以外に財産を渡したい場合は、遺言で指定しておくことが必要です。

この遺言によって財産を相続人以外の方に贈ることを、遺贈と言います。遺贈は法人や団体にも取得させることができます。

生命保険金を受取る方の変更

遺言書で生命保険金の受取人を変更することも可能です。通常、生命保険金受取人の変更には契約変更手続きが必要です。しかし、遺言書に残しておくことで、契約変更の手続きをしていなくても効力を発揮します。

注意したいのは、受取人変更の遺言内容は、速やかに保険会社へ通知する必要があることです。通知が遅れて元の受取人に保険金が支払われてしまっても、保険者へ再度請求はできませんので気をつけましょう。

特定の相続人の排除

相続してほしくない特定の相続人がいる場合、その旨を遺言で残しておくことで権利をはく奪することができます。相続人の権利をはく奪することを相続人の排除と言います。

ただし、相続人の排除は、遺言者が生前にその相続人や虐待や重大な侮辱を受けるなどの、絶対に遺産を渡したくないと思わざるを得ない事情があった場合に限ります。また、遺言書で排除を実現させるためには、遺言執行者の選任も必要となります。

遺産分割の禁止(最大5年)

遺言書では、相続を開始した時から最大で5年間、遺産分割協議を禁止することもできます。これは相続開始時のトラブルを予防するため冷却期間を設けたい場合や、未成年の相続人が成人するのを待ちたいときに有効な手段となります。

人間関係・家族に関する指示

さらに、人間関係や家族に関する事柄も、遺言書に指定することで法的効力を生じるものがあります。

未成年後見人の指名

遺言書で未成年後見人を指定することができます。未成年後見人とは、親権者に代わって未成年者の監護や教育、財産の管理や契約等の法律行為を行う方のことです。遺言者に未成年の子どもがいて、遺言者が亡くなると親権者がいなくなる場合に有効です。未成年後見人を指名しておくことで、子どもが成人するまでの財産管理や教育などを依頼することができます。

また、未成年後見人を監督する未成年後見監督人も一緒に指定することも可能です。

非嫡出子の認知

婚姻関係にない方との間にできた子どもを非嫡出子と言いますが、遺言書で自分の子供として認知することができます。認知されていない非嫡出子は法定相続人ではないため、遺産を相続する権利はありません。しかし、遺言書で認知することにより、生前に認知されていなかったとしても相続権利を発生させることができます。

遺言書の効力が発揮されないケース・内容

遺言書の効力が発揮されないケース・内容

このように遺言書に指定することで法的効力が発揮され、被相続人の希望を実現することができます。しかし、遺言書が優先されるとはいえ、記載されている内容が絶対ではない場合もあります。例えば、遺言書の内容が遺留分を侵害していれば、相続人の意思で内容を覆すことができます。

また、遺言の残し方によっては有効要件を満たさず、無効となるケースもあります。どのようなケースで無効になるのか、詳しく解説します。

遺留分が侵害される内容

遺言書の内容が遺留分を侵害していた場合、遺留分侵害請求によって遺言どおりに執行されないことがあります。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に確保されている最低限の遺産の取り分のことで、原則として法定相続分の2分の1が遺留分として権利保障されています。この遺留分の権利は、生活保障の観点から遺言の効力を上回ります。そのため、遺言書に指定されていても、遺留分を侵害された相続人は多く財産を受け取った相手方に、遺留分の侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。

遺留分の請求をするかしないかは相続人の自由です。遺留分を侵害しているからといって必ずしも遺言書が無効となるわけではありませんが、トラブルを回避するためにも遺言書の内容は遺留分に配慮しましょう。

養子縁組や離婚などの内容

遺言に「死後に配偶者と離婚する」「◯◯を養子にする」といった内容を残しても、効力は発生しません。離婚や養子縁組などは、遺言書に記載しても法的に認められないのです。遺言で可能な身分行為は、民法に定めがある未成年後見人の指定、子どもの認知に限られます。

ルール違反の遺言書

遺言書は法に則った形式で残すことで、法的効力を持つことができます。形式を満たしていなければ、無効になる場合がありますので注意が必要です。特に遺言書で無効になりやすい例は下記のとおりです。

  • 自筆でない(パソコンで作成している、代筆している)
  • 日付が入っていない
  • 署名・押印がない
  • 誰かと共同で作成している
  • レコーダーを利用して録音したものである
  • 相続財産の額や対象が明確でない

遺言書作成のルールに関しては次の章で解説します。

遺言書を無効にしないためのポイント

遺言書を無効にしないためのポイント

遺言書は、民法で定められたルールに則って作成することで初めて法的効力が発生します。一般的な遺言書には、自分で全文を手書きする「自筆証書遺言」と、公証人が遺言者から聞いた内容を公正証書にする「公正証書遺言」があります。ここでは、せっかく作成した遺言書が無効にならないよう、実践してほしい事項を解説します。

自筆証書遺言はルールに則って作成する

自筆証書遺言は自分で執筆し、押印や作成日の記入などを忘れないことが必要です。パソコンや代筆、レコーダーの録音では認められず、必ず遺言者本人が本文を全て自書しなければなりません。また、7月吉日などあいまいな年月日や連名での署名、押印忘れは無効となりますので注意しましょう。押印は認印でも問題ありませんが、偽造防止の観点から実印が望ましいです。

書き間違えた場合の訂正方法にもルールがあります。書き間違えなどで変更する場合は、従前の記載に二重線を引き、訂正のため押印します。その上で、余白に変更場所と内容、署名が必要です。例えば、削除・加筆した場合は吹き出しで文書を挿入し、余白に「2文字削除4文字追加」と書き署名します。訂正方法を間違えると無効になってしまうため、心配な場合は遺言書を全部書き直すことをおすすめします。

他にも用紙はA4サイズで、余白は上5mm、下10mm、左20mm、右5mmを確保するなど、様式が細かく決められています。

なお、遺言書の本文は必ず自筆しなければなりませんが、民法改正により2019年1月から財産目録に限り、自書でなくても認められるようになりました。つまり、財産目録は本文とは別に、パソコンで作成した目録や預金通帳・登記事項証明書等のコピーなどを添付することが可能です。ただし、添付するすべてのページに署名と押印が必要です。

また、2020年7月からは、自筆証書遺言を法務局に預けることも可能になりました。法務局で保管してもらうことで紛失や改ざんの心配がなくなり、遺言書開封前に必要な家庭裁判所での検認手続きも不要です。

公正証書遺言で残す

公正証書遺言は、公証役場で証人2人以上の立会いのもと作成してもらう遺言方法です。公証人が、遺言者から聞いた内容を文章にまとめ、原本は公証役場で保管されるため、法律上の不備により無効となる恐れや偽造・紛失の恐れがありません。また、相続人が亡くなった後の家庭裁判所の検認手続きも不要ですので、相続人への負担も減ります。

公正証書遺言は、2人以上の証人が必要であることや費用などの手間はかかりますが、法的に信頼でき有効性が高いため、相続トラブルを回避する目的で選択する方が増えています。

遺留分を侵害しないように注意する

しかし、自筆証書遺言はもちろんのこと、法的効力の高い公正証書遺言であっても、遺留分を侵害する内容の場合はトラブルに発展する可能性が高くなります。先述したように、遺留分は残された家族の生活保障の観点から確保されている最低限の取り分です。そのため遺留分の権利は遺言の効力を上回るのです。

遺言書を作成する際は、繰り返しになりますが、あらかじめ遺留分を侵害しないように配慮しましょう。

専門家の力を借りる

自力での遺言書作成は、どんなに気をつけていても不備が発生しやすいものです。そのため、司法書士や弁護士などの専門家に相談するのもおすすめです。公正証書遺言であっても、専門家の力を借りることでトラブルの予防につながる内容とすることができます。

公正証書遺言は公証役場で公証人に作成してもらえるとはいえ、遺言書の内容についてのアドバイスや相談までは公証人の職務外だからです。相続でもめないためにも、専門家の力を借りて有効な遺言書を作成しましょう。 

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このように、有効な遺言書を作成するためには注意すべきポイントがあります。せっかく作成した遺言書が無効になったり、親族間でトラブルに発展したりといった事態を招かないよう、専門家のサポートがあると安心です。

セゾンの相続 遺言サポート」は、遺言に強い司法書士と連携し、丁寧なヒアリングで個別の事情に配慮した有効な遺言書の作成をお手伝いしています。無料相談もできるので、遺言書の作成に少しでも疑問や不安がある方は、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。

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おわりに

原則として遺言者の人生最後の意思を伝える遺言書は、法定相続より尊重されます。しかし、スムーズに相続手続きを進められるように残した遺言書が、遺留分の侵害や書類上の不備で無効になり、トラブルに発展しては本末転倒です。そうならないためにも、法的効力の及ぶ範囲を理解し、正しい形式で作成した有効な遺言書を残しましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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