本記事では、再転相続に関する基本的な知識から相続放棄の方法、手続きの流れまで詳しく解説しています。再転相続が発生した際に、適切な判断や手続きを行うための具体的な情報が得られます。相続放棄を検討している方や、複雑な相続手続きに不安を抱えている方にとって、スムーズな手続きを進めるための役立つ情報が満載です。再転相続の理解を深め、安心して相続を進めるためのポイントを解説していきます。
- 再転相続は、相続が開始されたのちに相続人が無くなったときに発生する相続形態
- 再転相続の流れを、具体例を紹介しながら詳しく解説
- 再転相続は代襲相続、数次相続、同時死亡と相続人の死亡時期や権利の相続の状況が異なる
- 再転相続でも通常の相続と同様に相続の承認と放棄を決める必要があるが、自由に決定できない場合もあるので注意
そもそも再転相続とはどういう意味なの?
再転相続とは、相続が開始された後、相続人がその相続を受ける前に死亡した場合に発生する特別な相続形態です。例えば、祖父が亡くなった際、子がまだ相続手続きを行っていない段階で亡くなった場合、その子の相続人が本来の相続権を引き継ぐことになり、このような相続を再転相続と呼びます。相続権の熟慮期間や手続きに注意しなければならないため、事前に理解しておくことが重要です。
ここでは、再転相続とはなにか、再転相続が発生する具体的なケースについて解説していきます。
そもそも再転相続とは
再転相続とは、一次相続の相続人が、相続を承認するか、あるいは相続放棄を選択するかを決定する「熟慮期間」中に意思表示をしないまま死亡し、その結果、再び相続が発生した状態を指します。
「再転相続」という言葉は相続の法的な根拠となる民法に直接出てくる言葉ではないため、明確な定義はないのですが、一般的には熟慮期間中に法定相続人が無くなり、遺産を承認するか相続放棄を選択するかを決定する前に再び相続が発生することを指します。
熟慮期間は相続が開始したことを知った日から3ヵ月で、この期間中に相続人は単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかを選択しなければなりません。このような再転相続が発生した場合、初めに起きた相続を一次相続、その後に起きた相続を二次相続と呼びます。
再転相続が発生する具体的なケース
ここでは、再転相続について、相続人の人数が異なる具体例をもとに解説していきます。
一次相続における法定相続人がひとりの場合
家族構成が「祖母、父親、父親の子2人(長男・長女)」であり、「祖母が亡くなり、その唯一の子である父親が法定相続人となったものの、熟慮期間中に父親が亡くなったケース」を考えましょう。祖母が亡くなると、まず父親が祖母の財産を相続することになります。
しかし、父親が相続の熟慮期間中に亡くなってしまうと、父親の子供たちである長男と長女が、父親の相続権を引き継ぎ、祖母の遺産に対する再転相続が発生します。つまり、この場合、長男と長女は父親の財産とともに、祖母の財産についても相続する権利を持ちます。
一次相続における法定相続人が複数人いる場合
次に、法定相続人が複数人いる場合の例を見てみましょう。家族構成が「祖父、長男、次男、長男の妻と娘、次男の妻と息子2人」であり、「祖父が亡くなり、長男が祖父の相続の熟慮期間中に亡くなってしまったケース」を考えます。祖父が亡くなると、一次相続の相続人は長男と次男になります。
しかし、祖父の相続の熟慮期間中に長男が亡くなってしまった場合、長男の法定相続人である妻と娘が再転相続の対象となります。つまり、祖父の遺産に関しては、次男、長男の妻、長男の娘が相続権を持ち、祖父の遺産の承認や放棄について選択することが求められます。このように、複数の相続人がいる場合でも、再転相続が発生すると、その権利はさらに次の世代に移行します。
再転相続と混同しやすい代襲相続と数次相続、同時死亡とは
再転相続は、相続が始まった後に相続人が亡くなった場合に起こる特殊なケースですが、よく似た相続制度として代襲相続、数次相続、同時死亡があります。これらは名前や仕組みが似ているため、混同されがちです。
この記事では、これらの相続形態についてわかりやすく説明し、再転相続との違いを解説していきます。
代襲相続との違いは死亡した順番
代襲相続とは、本来相続人となるべき人が相続開始前に死亡していた場合、その人の子が代わって相続人となる制度です。例えば、祖父が亡くなる前に父親がすでに死亡していた場合、父親の子が代襲相続として祖父の遺産を相続します。
再転相続とは異なり、代襲相続は相続人が死亡していることが前提であり、相続が開始される前にその人が亡くなっている場合に適用されます。再転相続は、相続開始後に相続人が死亡するケースであるため、両者の違いに注意が必要です。
数次相続との違いは二次相続が発生する時期
数次相続は、相続が連続して発生する場合を指します。たとえば、祖父が亡くなった後、相続手続きが完了した後にその相続人である父親が死亡し、その父親の遺産が次に相続される場合がこれに該当します。
再転相続は、相続が開始された後、相続手続きを終えないうちに相続人が死亡して発生するものですが、数次相続はそれとは異なり、1回目の相続が完了してから2回目の相続が発生するという点で異なります。数次相続では、各相続が独立して行われるため、再転相続と混同しやすいものの、異なる相続手続きとなります。
同時死亡との違いは代襲相続が発生するかどうか
同時死亡とは、複数の人が同時に死亡した場合に、その死亡の順番が明確でない場合、法律上同時に死亡したものと推定される制度です。たとえば、交通事故で親と子が同時に亡くなった際、どちらが先に死亡したかが分からない場合、相互に相続が発生しないとみなされます。
再転相続とは異なり、同時死亡では相続が発生しないため、親から子への相続やその逆が行われることはありません。この制度は、相続権の混乱を防ぐために設けられており、再転相続とは相続のタイミングや状況が異なる点で混同されがちです。
再転相続の承認と放棄について
相続が発生した際には、財産を受け継ぐか放棄するかを決める必要があります。特に再転相続の場合、次順位の相続人への引き継ぎなど、複雑なケースが多くなります。それぞれのケースに応じて承認や放棄を選択するためには、慎重な判断が必要です。
ここでは、財産や相続手続きにおける選択のポイントをわかりやすく解説します。
相続を承認するか放棄するか選択する
再転相続が発生した場合、再転相続人は、最初の相続と二次相続の二つの相続について、それぞれ承認または放棄の選択をする必要があります。このケースでは、再転相続人は二つの相続に対して承認や放棄の選択をすることが求められます。
相続を承認する場合は、相続税の申告や相続登記など、手続きを進めなければなりません。特に、負債が多い相続では放棄が有効な選択肢となります。なお、相続放棄が認められた場合、次順位の法定相続人に相続権が移り、次の相続人が手続きを引き継ぐことになります。このため、相続手続きは財産や債務の状況を十分に確認し、慎重に判断する必要があります。
相続する順番によっては相続の承認や放棄を選べないことがある
相続の承認や放棄は、すべてのケースで自由に選択できるわけではありません。たとえば、一次相続では財産が多く、二次相続では多額の負債があるケースでは、一次を相続し二次放棄をすることはできません。
例えば,父親とその子の死亡で孫が再転相続人となる例を考えてみましょう。孫は父親の相続に関する権利を引き継いでいるため、子供の相続を放棄すると同時に父親の相続権も失ってしまうことになります。それゆえ、二次相続を放棄した場合、一次相続の承認が認められません。
このように、相続の順番や内容によっては選択肢が限られることがあるため、相続財産や負債の内訳を事前に十分に把握することが重要です。特に、財産が大きい場合や、債務が絡むケースでは、事前の計画と準備が必要です。
再転相続は熟慮期間が過ぎてしまったら相続放棄できない
相続を放棄する場合、「熟慮期間」と呼ばれる期間内に決定しなければなりません。再転相続人が相続を知った時点から3ヵ月以内に、承認か放棄を選ばなければならず、この期間を過ぎると相続を放棄できなくなります。もし、この期間内に行動しない場合、多額の債務を含む相続でも引き継がなければならなくなるリスクがあるため、注意が必要です。
ただし、再転相続人がその立場にあることを知らなかった場合には、相続を知った時点から3ヵ月が熟慮期間となります。この場合、放棄するための手続きを行う猶予がありますが、いずれにしても早めに手続きを進めることが重要です。再転相続では、手続きを誤ると、想定外の債務を背負うことにもつながるため、財産や次順位の相続人の状況をよく確認し、慎重に対応することが求められます。
再転相続を承認後の手続きについて
再転相続の手続きには、一次相続と二次相続を同時に進められるメリットがありますが、特に遺産分割協議書の作成時に複雑な書式が求められるなど、デメリットも存在します。ここでは、再転相続を承認後の手続きについて詳しく解説していきます。
遺産分割協議に参加する人
再転相続の手続きにおいて、遺産分割協議に参加する人は、相続の状況によって異なります。一次相続では、一次相続の法定相続人全員と再転相続人が協議に参加します。再転相続人とは、一次相続の相続人が亡くなり、その人の相続権を引き継ぐ人です。
二次相続については、二次相続の法定相続人全員が協議に参加します。遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要なため、手続きをスムーズに進めるためには、全員が協議に参加することが重要です。この協議によって、遺産の分割方法や不動産の扱いなどが決定されます。
遺産分割協議書の作成方法
遺産分割協議書は、相続人全員が署名・捺印することで正式な書類となります。一次相続と二次相続の法定相続人が同じ場合、協議を1回で行い、遺産分割協議書も1部だけ作成すれば良いというメリットがあります。
しかし、法定相続人が完全に一致していない場合は、二つの相続を分けて協議し、それぞれの遺産分割協議書を作成する必要があります。また、一次相続の法定相続人の一人が亡くなっているため、通常の協議書とは異なり、署名や捺印ができないことがあります。そのため、書類作成時には独特の記載方法が必要であり、通常の相続手続きより複雑になることがデメリットです。
相続登記は一次相続・二次相続とも必要
不動産の相続では、登記が必要となります。再転相続が発生した場合、一次相続と二次相続のそれぞれで相続登記を行う必要があります。特に不動産を引き継ぐ際は、適切な登記を行わないと、将来的なトラブルの原因になることがあります。
基本的には、一次相続と二次相続の相続登記を個別に行う必要がありますが、もし中間の相続人が一人しかいない場合には、中間省略登記を活用することが可能です。これは、1回の申請でまとめて登記を行う方法で、手続きの簡略化が図れるメリットがあります。ただし、状況によってはこの方法が使えないこともあるため、専門家に相談することが重要です。
再転相続が発生したら専門家に相談するのがおすすめ
再転相続は、代襲相続や数次相続と混同されやすく、手続き自体も通常の相続とは異なるため、非常に複雑です。特に、再転相続を承認した場合には、相続手続きが煩雑になることが多く、書類の作成や手続きにおいて注意が必要です。
このような難しいケースでは、専門家に相談することで手続きをスムーズに進めることができるため、おすすめです。セゾンの「相続手続きサポート」では、司法書士と連携し、個々の状況に応じた最適なプランを提案いたします。さらに、無料相談も行っているため、まずは相談だけでも気軽に利用できる点も大きなメリットです。
おわりに
再転相続は、通常の相続よりも複雑で、相続放棄や承認の選択が難しい場面も多くあります。代襲相続や数次相続との違いを理解し、適切な手続きを進めることが重要です。特に、遺産分割協議や相続登記には専門的な知識が求められるため、専門家に依頼することで、手続きがスムーズに進むメリットがあります。再転相続に関して迷いや不安がある方は、早めに専門家に相談して適切に手続きを進めることが大切です。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。