旧暦とともに生活をしてみる
東洋医学では旧暦を大切にして養生を考えます。現在の暦と旧暦では1ヵ月のズレがありますので、当然季節感もズレてしまいます。そのため、実際の生活で旧暦を取り入れるのは合理的ではないように思われます。しかし、もともと旧暦は天体の動きだけではなく、自然界の流れを観察しながら、生活の営みの中で生まれたものでもありますので、この旧暦の流れに沿って生活することは養生としてとても有効な面があります。
秋は8月7日頃(年によってずれることがあります)の立秋からはじまります。8月7日というと、まだ夏真っ盛りという感じがありますが、よくよく注意して自然界を見回してみますと、この頃から暑さの感じが変わってくることが分かると思います。これまでの暑いだけの一本やりの時季から、朝晩はやや空気の変化を感じてきます。もちろんまだ“秋めいて”というほどはっきりとはしていませんが、それでも、そろそろ季節の変化を感じ取ってそれ相応の準備をしていくと、この季節だけではなく、よりその後の季節が過ごしやすくなります。
冷房疲れが出る頃
このような暦を考えてもそうなのですが、実際の気温の高まりと私たちの生活を考えてみても、立秋の頃からは少しずつ生活を次の季節にシフトしていくことが良いでしょう。
5月5日頃の立夏からはじまった夏も、早いところですと気温や湿度が上がりはじめる6月後半から冷房が入りはじめます。そして本格的に気温が高くなる7月からは冷房の設定温度もより下げることになり、1ヵ月も経つと冷房疲れが出てきます。熱中症にならないよう冷房はなくてはならないわけですが、同時に冷房で身体が冷えてしまい、だるく疲れが取れにくいという状況になります。
現代医学的には自律神経の不調ということになりますが、自律神経は身体のリズムを作ったり、ホルモンのバランス、内臓の動きなどを全てつかさどっていますから、そこが不調になることは全身の不調につながってしまいます。
また、夏は暑く当然ながら汗をかきますが、冷房に長く当たっていると、身体表面が冷え切ってしまうために、汗腺の働きも弱ってくることがあります。身体は汗とともに熱を放出しますが、汗腺の働きが弱ると汗が充分に出ないために熱がこもってしまい、これもまた疲れの原因になり、ここから自律神経の乱れにつながることもあります。汗腺もまた自律神経の問題になりますので、汗もかきやすい状態にリセットしておくことも冷房疲れ対策には大切です。
そこで、ここで一度冷房疲れを取るためにも、自律神経をリセットしたり、汗腺をリセットするツボをご紹介いたします。
自律神経を整えるツボ
合谷(ごうこく)
場所:手の親指と人差し指の付け根の谷の部分
効果:自律神経を整えたり、胃腸の働きを良くしていきます。呼吸器系にも効果がありますので、冷房で冷えて咳が出ているときなどにも早めに押してみてください。
痛気持ちいいくらいの圧で5〜10秒くらい押してください。
大椎(だいつい)
場所:首の付け根にあるツボで、首を前に倒したときに出てくる骨の下
効果:全身の働きを活性化しますので、自律神経のリセットを促します。また、冷房疲れの原因の一つが、冷房による冷えです。大椎は冷え対策にもつながるツボなので、冷房で冷えた身体を元通りにするのにも役立ちます。
手を後ろに回してマッサージするのも良いですし、蒸しタオルやドライヤーなどで温めてあげるのも良いです。
汗腺のはたらきをよくするツボ
鷹下(おうか)
場所:肘の外側の筋肉の溝
効果:汗腺の開閉を改善するツボ。汗腺の働きを良くすることで、体温の調整がしやすくなりますので、冷房による冷えの改善や汗が出にくくて体調を崩すタイプの方にも効果があります。
痛気持ちいいくらいの圧力で5~10秒くらい押してください
冷房疲れを解消するためにしておきたいこと
その他、この時季の自律神経を整える方法としては以下のようなものがおすすめです。夏にお風呂に入るのは憚れるかもしれませんが、ここ1ヵ月以上の冷房で身体が冷え切っていて、夏なのに冷え症という方も多くいますので、ここでお風呂に浸かってリセットすることも大事です。
また、夏は気分も開放的になったり、夏休みもあったりと、夜更かししたり、朝が不規則になることも多くなりがちです。睡眠不足にならないようにし、また一日のリズムをつくるためにも朝ご飯を食べるのも大切で、朝から体温を安定させてくれます。
冷房疲れをそのままにしていると、次の秋や冬にそのツケが回ってくることになります。負のスパイラルをここで断ち切るためにも、ツボを押したり、養生をしてみてくださいね。このコラムでご紹介したことをひとつでもやると体調は変わりますし、いくつかやってみるとさらに効果的です。ご自身の時間ができる夏休みにでも夏の疲れをリセットしてみてはいかがでしょうか。