12月に入ると途端に慌ただしくなるのは毎年のことですね。やり残したことをあれもこれもとやろうと焦ってみたり、クリスマスや大掃除といった年中行事も目白押しだったり。そしてそのままの勢いでお正月に突入という方も多いのではないでしょうか。
年末年始の時期は、忘年会、クリスマス、お正月など、食べたり飲んだりという機会が重なります。そして長期の休みに入ることもあって、睡眠などのリズムにも影響が出てきます。
さらに私たちの生活面の問題だけではなく、自然界からも負荷が掛かります。その負荷とは、寒さが増してくるということで、インフルエンザをはじめとするウイルスや風邪が流行してくることにあります。 以上のような環境のなかにおいて健康に過ごすためには、私たち個々の日頃の養生が大切です。
この季節特有の身体の乱れとその養生は、以下3つに集約されるのではないでしょうか。
養生のポイント
① 寒さからの体調の乱れを整える
② 飲食からの胃腸の乱れを整える
③ 生活リズムからの乱れを整える
寒さからの体調の乱れを整える
年末年始は寒さが増してくる時期でもあります。
寒さに対抗するためには、身体を温めておきたいものです。そのためには、カイロを貼ることをおすすめします。
風邪の引き始めに現れる症状のひとつとして、東洋医学では「頭項強痛(ずこうきょうつう」というものがあります。これは、身体に寒さが入ってくるときの症状で、首の後ろが強張ってくることをいいます。逆にいえば、この首の後ろが冷えないようにしてあげることが、風邪の予防ということにもなります。
そこで、カイロを使って首の後ろを温めると良いのですが、その温める場所が、大椎(だいつい)というツボになります。ここは陽の経絡が重なるところで、身体の温もりの要所でもあります。
大椎(だいつい)
背筋がゾクッとしたときは、風邪が首筋から入ろうしているサインです。そんな瞬間があったときは直ぐに貼りましょう。また、クリスマスや初詣など、寒い気温のなか、出掛けることも多いと思います。そういったときには大椎にカイロを貼って出掛けてください。
また、胃腸が冷えると寒さが一気に身体の中に入ってくることが多いので、なるべく暖かいものを摂るように気を付けて下さいね。
【注意点】
- カイロは直接貼らないようにしてください。
- 低温火傷には気を付けてください。
- 汗をかいたりすると逆効果にもなりますので、温度調整は適宜行いましょう。
飲食からの胃腸の乱れを整える
この時期になると、忘年会や新年会、そしてクリスマスなど、いつも以上に過剰に食べたり飲んだりという機会が増えると思います。しかも連続になりますので、胃腸も休む暇無しといったところですね。こうなりますと胃腸は大忙しで処理が間に合わなくなります。東洋医学では胃腸は元気の要として捉えていますので、胃腸の不調は体全体への不調につながります。特にこの時期は風邪に直結してしまいます。そこで、胃腸を強くするツボを使って補うことをおすすめいたします。
足三里(あしさんり)
足三里は胃とつながる経絡上にあり、松尾芭蕉が『奥の細道』の旅に出発する前にお灸をしたツボです。胃酸を出しやすくして、消化を助ける働きがあります。会食や飲み会の前に押すのも効果的ですし、食べた後に胃もたれがするような場合も使うことができます。胃は「多気多血(たきたけつ)」といいまして、とても力があるところです。少し強めに押しても大丈夫なところなので、痛気持ちいいくらいに押してみましょう。
合谷(ごうこく)
合谷は大腸につながるツボになります。大腸は、食べ物が消化されて最終的に糞便を作るところです。水分を再吸収して糞便の形を作るのですが、飲み会ともなると水分が多くなって胃腸が冷え、お腹を壊す原因となってしまいます。下痢が続くと栄養をうまく吸収することもできませんので、水分の調整をするためにも合谷を使って調整して欲しいと思います。また、合谷は大腸につながるツボではあるのですが、胃腸全体の調整にはよく使われるところなので、胃腸の万能ツボのひとつとして覚えておくといいと思います。押しやすい場所にありますので、日頃からも押しやすいツボです。
生活リズムの乱れを整える
会食、飲み会が多くなると、どうしても帰りが遅くなってしまい、睡眠時間が削られる傾向にあります。また、アルコールが入っていると眠りの質も落ちることになります。さらには、冬休みなどが入ってくるとついつい夜更かしをしてしまったりと、睡眠のリズムが崩れることが多いと思います。もちろんストレスを解消したり、たまった睡眠負債を返すためにいつもより朝の起きる時間を遅めにすることは悪いことではないかもしれません。しかし、身体のリズムを狂わせてしまうと、いざ普段の生活に戻るときはとてもたいへんになります。そういった生活のリズムを整えるためには、自律神経のオンとオフ、つまり、自律神経の切り替えをしやすくするツボを使うことをおすすめいたします。
璇璣(せんき)
璇璣は自律神経の切り替えをしやすくしてくれるツボです。特に寝る前に押すと効果的ですので、やさしくトントンすると良いツボです。
睛明(せいめい)
東洋医学では、目が醒めると全身の気(エネルギー)が身体に巡り始めると考えていますが、その最初のスタートがこの睛明というツボです。よく目が疲れたり、眠いときにこの睛明のツボに自然と手がいくかと思いますが、東洋医学の視点で見てみると、この動作は、疲れて滞った気の巡りを再び活性化しようとするために、身体が自然に行う行為と考えられます。
エネルギーの最初ですから、この睛明というツボは、朝起きたときに使うことをお薦めします。夜更かし気味で朝の起床がどんどん遅くなっていると、いざという時に起きることができなくなり、そのまま生活のリズムを崩していき、それが結果としてうつ症状に移行していくこともあります。夜更かしをして朝が目覚めにくくなっている方は、目が醒めたら先ずはじめにこの睛明穴をやや強めに押してみましょう。きっと頭がすっきりしてきて目が醒めてくると思います。
以上の対策は、すべて一緒に使ってもかまいません。自分の不調に合わせて使い分けるだけではなく、健康管理や予防のためにもやってみることをおすすめいたします。