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雨季の食養生 「薬膳」湿気によるむくみやめまいを解消する食材をご紹介

雨季の食養生 【東洋医学の薬膳】
瀬戸 佳子 国際中医薬膳師・登録販売者

執筆者

国際中医薬膳師・登録販売者

瀬戸 佳子

早稲田大学理工学部卒、同大学院理工学研究科修了。北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)薬膳科卒業。会社員を経て、東京・表参道の「源保堂鍼灸院」併設の薬戸金堂で、漢方相談を行いながら東洋医学に基付いた食養生のアドバイスを行う。雑誌やWEBセミナーの講演などでも幅広く活躍。 『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』(共に文化出版局)が好評発売中。

梅雨が近づいてくると湿気が高くなるとともに、何だか身体の不調が多くなる、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。梅雨から夏にかけての高温多湿は日本の風物詩でもありますが、この湿度の高さが夏を過ごしにくくしている一因でもあります。

東洋医学では、身体に不調をもたらす湿気のことを「湿邪(しつじゃ)」と呼びます。湿気に負けないように薬膳の知恵で体調を整えていきましょう。

「湿邪」による不調とは?

「湿邪」による不調とは?

冬の乾燥した時期に雨が降ることで適度な潤いが得られるのはありがたく感じますが、梅雨のジトジトとした湿気は厄介に感じると思います。同じ水分でも多過ぎると不快に感じます。

東洋医学では、適度な潤いではなく湿気が高すぎたり、私たちが不快で過ごしにくくなったり、体調を壊す原因になったりする余分な湿気のことを「湿邪」と呼びます。では湿気による不調とは何でしょうか。

皆さんが思い浮かびやすいものはむくみだと思いますが、実はそれ以外にも非常に多くの不調が「湿邪」によって起きているのです。

湿邪による不調

•  身体がだる重い

•  頭痛、頭がだる重い

•  関節が痛い、重い

•  身体がむくむ

•  めまい

•  痰が多い咳が出る

•  鼻が詰まる

•  胃がもたれる、食欲がない

•  下痢をする、軟便

•  皮膚が痒い、湿疹ができやすい

•  眠りが浅い、悪夢が多い など

水分の巡りが悪くなって起きている症状でもあるので、「水滞」といったりします。また、水分代謝が悪くなってできた老廃物を痰と呼ぶので、「痰湿」といったりもします。

身体がだるい

身体の中を巡る水分はスムーズに流れているので澱むことがありません。しかし、何かのきっかけで堰き止められてしまうと、水の滞りによりさまざまな不調が発生します。頭の方に水が堰き止められれば頭が重くなったり、顔のむくみになったりしますし、下半身に水が溜まってしまえばむくみになったり、便の不調になったりするのです。 

身体の中にも湿気が溜まる!?

身体の中にも湿気が溜まる!?

ではなぜ水分代謝が悪くなってしまうのでしょうか。梅雨の時期の不調の原因になりやすいのが、「外湿」と「内湿」です。外湿とは、大気中の湿気(湿邪)が、口や鼻、皮膚などと通じて身体に入り、それが代謝されず留まり、身体にさまざまな悪影響を及ぼすことです。

「湿」には、重い、汚い、ネバネバしているといった特徴がありますが、まさにそんな状態で「余分な水」が身体に溜り、重だるさや頭痛、頭重、むくみ、湿疹などを生じさせています。 

一方、内湿は、主に胃腸の機能低下によって生じるといいます。

その主な要因は、

  • 「冷たいもの」(アイス、ジュース、ビールなど)
  • 「生もの」(刺身、生野菜、果物など)
  • 「甘いもの」(お菓子、砂糖たっぷり飲み物など)
  • 「脂っこいもの」(揚げ物、バター、チーズなど)

の摂り過ぎにより胃腸が冷えて機能が低下したり、胃腸に湿気が滞って、食欲不振や下痢、軟便などにつながります。

もちろん、外湿・内湿の両方の影響を受ける方もいらっしゃいます。梅雨時にアイスばかり食べていたり、冷たいものばかり飲んでいたりすると、一気に水分の代謝が悪くなってしまいます。また、内湿は胃腸の症状のみ出るわけではありません。胃腸の機能が落ちてしまうことで、全身の水分の代謝が滞り、めまいや頭痛、関節痛などの原因になることも多いです。

水分代謝を高める薬膳

水分代謝を高める薬膳

外湿の薬膳

外湿が多くなってきた場合には、外から入ってくる余分な湿気を溜めずに素早く処理できていると、身体の不調につながりません。そのためには水分の巡りを良くし、余分な水分の出口までスムーズに動くと良いです。

私たちの水分の出口は大きく分けると2つあります。 

ひとつは便からです。主にお小水から出ることが多いので、余分な水分を尿として出してくれる利尿を促す食材をよく取っておくと良いでしょう。なお、大便が緩くなったり下痢になったりするのは、お小水から出すはずだった水分が溢れてしまった際に起こりやすくなります。 

もうひとつは汗です。少し暑くなってくると汗ばんでくると思うのですが、梅雨時期あたりになると水分の巡りが滞って出にくくなっている方もいらっしゃると思います。湿気が多くなってもこの発汗作用がキープできていると、水分代謝が落ちにくくなります。

特に上半身の症状は発汗で、下半身の症状はお小水から出してあげると効果的です。

そしてもうひとつ大切なのが気の巡りです。

2つの水分の出口まで水分を運んでくれる役割を担います。

水分は勝手に流れるわけではなく、水分を押し流すにも体力が必要です。例えば、疲れていると身体が重だるくなったり、むくみやすくなったりすることはないでしょうか。これが気が不足して身体の巡りが落ちている状態です。

疲労感が強かったり、体力不足があったり、過労気味だったりする人は水分の巡りも悪くなりやすいので、気の巡りを良くするものも一緒に摂ると良いでしょう。

外湿

【外湿】

利尿を促す作用緑豆もやし、ウリ科(きゅうり、冬瓜、すいかなど)、豆類(さやいんげん、そら豆、小豆 など)、海藻類、ハトムギ、あゆ、はも など
発汗を促す食材しょうが、パクチー、シソ、葱などの香味野菜、唐辛子・カレー粉などの香辛料 など
気の巡りを良くする食材玉ねぎ、ピーマン、シソなどの香味野菜、柑橘の皮 など

内湿の薬膳

内湿は身体の内側に溜まった湿気のこと。多くは脾胃、つまり胃腸の湿気がスタートになります。脾胃に湿気が溜まると食欲がなくなったり、下痢や軟便になりやすくなったりします。そして脾胃の湿気から他の部分まで水分の滞りが発生してしまいます。 

まずは原因になっている脾胃の湿気を取り除いてあげましょう。

脾胃は冷えると動きが悪くなってしまいますから、まずは温めてあげることが大切です。香辛料などを使って温めつつ、食べたり飲んだりするものも温かいものにすると良いでしょう。また、溜まってしまった湿気を取り、お小水から余分な水分を促す豆類やとうもろこしなどもよく食べると良いでしょう。 

湿邪というのはガムのようにネバネバとへばりついて頑固なものですから、少し長期戦になりがちです。単純に湿気を動かそうとしてもなかなか動いてくれません。この動いてくれないものを動かすのに必要なのが、湿気を動かす食材です。キノコ類や海藻など根気良く取りつつ、余分な湿気を溜めないように冷たいものや甘いものなどに気をつけると良いでしょう。 

【内湿】

【内湿】

脾胃を温め湿気を動かす食材香辛料(シナモン、黒胡椒、山椒、唐辛子 など)、葱、シソ、よもぎ など
脾胃の湿気を取り利尿作用を高める食材豆類(さやいんげん、そら豆、小豆 など)、トウモロコシ、大麦、ハトムギ など
湿気を動かす食材きのこ類、海草類、玉ねぎ、大根 など

日常生活では、住環境の湿気をできるだけ取り除いておくことも大切ですから、部屋を除湿したり、洗濯物をずっと部屋干しにしていることを避けたりするだけでも変わってきます。

また身体を冷やしすぎないように涼しい時間帯はクーラーを使わずに過ごしたり、身体が冷えたと思ったら入浴して温まったりすることも有効です。 

湿度が高くなり食欲不振になってきたり、水分代謝が悪く浮腫みやすくなってきたりすると、夏バテや熱中症にもなりやすくなります。この時期に体調を整えておくとすっきりとした夏を過ごせますので、ぜひ取り入れてみてください。

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