9月9日は重陽の節句といって、一番大きい奇数(陽)=9が重なる日、という意味です。この日は菊の節句ともいいますが、桃の節句、端午の節句と比べて広くは浸透していない節句かと思います。
実際に菊が咲くのは旧暦の9月9日ごろ(2023年は10月23日)です。少し季節はずれですが、残暑も菊の効用に預かり、元気で過ごす薬膳を取り入れてみましょう。
菊の節句とは
西暦の9月9日はまだ残暑の盛りで、秋らしさを感じるには早い時期でしょう。旧暦の9月9日というと年によって少し変化しますが、大体西暦より1ヵ月遅れの時期で、今年2023年は10月23日です。
重陽の節句は、菊の節句といわれます。これは重陽の節句に無病息災を願って菊を飾ったり、菊酒を飲んだりしたことから、菊の節句といわれるようになったようです。菊は秋の花の代表でもあり、各地で菊まつりが行われるのも10月後半から11月にかけてです。
菊には邪気を払う力があり、菊酒を飲むことで仙人になれる、と信じられていたことから用いられたといいます。実際に菊にはさまざまな効能があり、薬膳でももちろん用いますし、漢方薬の生薬としても使われています。
菊の効用
菊には次のような効能があります。
菊の効能
・熱のカゼをちらす
・イライラなど肝臓の高ぶりを取る
・目を良くする
・解毒する
例えば、秋口に喉の痛みが出たり、口内炎になったり、目が赤くなったり、頭痛になったりすることがあります。これは夏の暑さが身体の中にこもってしまって、炎症になったり、瘀血といって血流が悪くなったりするときにおきがちです。
そのようなときにおすすめなのが菊の花です。菊の花には、炎症を取ったり、解毒したり、目の赤みや頭痛を取ったりする作用があります。また、血圧が高くなりがちな人、イライラしがちな人の頭痛、目の疲労を解消する作用もあります。特に目がかすんでモヤがかかるような感じがする場合に良いとされています。
漢方でよく使う「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」には、菊の花やくこの実が入っているのですが、このような症状によく使い、特に目の症状に効果的です。
菊の花はお刺身のツマとして添えられていたりしますが、これも彩りだけでなく解毒効果があるので、ぜひ食べるようにしてください。生の菊が手に入れば、おひたしや酢漬け、吸い物などにすると良いでしょう。酢漬けはちらし寿司やいなり寿司の具として使っても彩りが綺麗です。生のものがない場合は、乾燥した菊(のし菊)が売られていることがあります。特に東北ではよく食べられているようです。
薬膳でよく使うのは菊花茶です。中国茶や中華食材を売っているお店などで買うことができます。単独で飲んでも良いですし、他のお茶とブレンドしても良いでしょう。菊花茶は菊の香りを存分に楽しめるので、香りでホッとしたい人におすすめです。また、花のままになっているものは透明な茶器に入れて花が開く様子を楽しむのも良いでしょう。
初秋はカゼまでいかなくても、朝起きたら喉が痛くなった、空咳が出る、というような喉の症状が多くなります。放っておくと熱が出たり、他のカゼ症状も出てきたり、免疫力の低下につながってしまうので、早めのケアが大切です。この時期の喉ケアに良いもの、免疫力アップに良いものをいくつかご紹介いたしましょう。
初秋の喉ケア・免疫力アップに良い食べ物
秋の初めは、残暑の暑さと夏の疲れと気温差との影響を受けて免疫力が低下しがちです。特に喉からカゼをひきやすくなるので、まずは喉の調子を整えておくと良いでしょう。
ハチミツ
ハチミツは最古の薬膳の書籍「神農(しんのう)本草(ほんぞう)経(きょう)」にも記載があるほど古くから食べられてきた甘味です。
ハチミツの効能
・呼吸器を潤し咳を止める
・腸を潤し便通を良くする
・肌を潤す
・胃腸の調子を整える
・痛みを緩和する
・解毒する
ハチミツには、肺や胃腸を元気にし疲労回復する効果もあります。また、皮膚の乾燥やできものなど肌の調子を整えたり、食欲不振を改善するといった効果もあります。身体を潤わせてくれる作用の強いハチミツは、湿気が少なくなり乾燥がメインになるこれからの季節の体調管理にぜひ活用してもらいたいものです。喉飴にもよく使われるハチミツですが、呼吸器だけでなく、腸を潤して乾燥性の便秘を解消したり、皮膚の潤いを増してくれたりする食材でもあります。
ミント
ミントは薄荷(ハッカ)ともいいますが、漢方でも使われるハーブです。
ミントの効能
・熱のカゼをちらす
・頭や目をスッキリさせる
・ノドの痛みを取る
・イライラなど肝臓の高ぶりを抑えストレス発散させる
清涼感があり、のど飴にもよく使われていますが、薬膳や漢方でも熱を取り去る効果や喉の痛みを取るのに使います。熱を取るので、冷やす作用が強いです。スースーする成分に効果があるため、ハーブティなどで使う場合には加熱し過ぎないようにすると効果的です。ミントティーも蜂蜜を加えると呼吸器を潤わせる効果が加わっておすすめ。菊花茶にミントを組み合わせれば相乗効果で、喉の痛みや炎症をしっかりと取り除いてくれますし、目の痒みや頭痛にも良いです。
山芋
山うなぎともいわれるやまいもは精をつける食材であると同時に呼吸器を元気にしてくれる食材でもあります。漢方では山薬(さんやく)と呼ばれます。最近は年中手に入れることができますが旬はこれからの時期です。秋から冬の体調を整えるのにとても良い食材です。特に夏バテが続いている人は、早めに体力を回復しておくことが大切です。
山芋の効能
・肺を元気にし咳を止める
・胃腸を元気にして下痢を止める
・体力をつけ疲労を回復する
・身体を潤し口の渇きを抑える
・皮膚を潤す
呼吸器、胃腸を元気にし、気力・体力をつけてくれる食材です。東洋医学では免疫力に該当する「正気(せいき)」や「衛気(えき)」と呼ばれるものがありますが、この源になるのが胃腸の元気や体力・気力です。そのどちらも補ってくれるやまいもは元気に過ごすには欠かせないものです。煮たり蒸したりするのがおすすめで、味噌汁や煮物も良いですし、蒸したものをそのまま食べるのもおすすめです。とろろで食べると消化を助けてくれるので、食欲がない時の体力回復にも良いです。アンチエイジング効果もあります。
今年の夏は暑かったので、疲れが溜まっている方も多いと思います。疲れが溜まっていると免疫力も低下して風邪をひきやすくなりますので、できるだけ早めに解消しておくと良いです。休息をしっかり取るとともに、喉の調子を整えたり、免疫力を高めたりして体調を整えておきましょう。
書籍紹介
季節ごとに起こりやすい冷え、花粉症、熱中症、イライラ……などの心身の不調に対して、東洋医学の観点から「食べ方」や「暮らし方」を解説しています。「薬膳養生カレンダー」を参考にぜひ養生を始めましょう!