リウマチ膠原病内科は「膠原病」「リウマチ性疾患」といわれる病気を専門にしている内科のことです。あまり聞いたことのない名前だと思いますが、どのようなときにこのような病気を疑うのか、そしてどのような「リウマチ膠原病内科」を受診するのが良いのか、これからお話ししていきます。
そもそも「膠原病」「リウマチ性疾患」とはどんな病気か
「膠原病」「リウマチ性疾患」とは、「免疫」の異常で全身にさまざまな症状を起こす病気の総称です。
「免疫」とは、本来であればウイルスや細菌といった外敵から身体を守る働きです。この働きが異常を起こして、自分自身を攻撃してしまう免疫細胞やタンパク質(自己抗体)が身体に現れます。これらの細胞・タンパク質が悪さをして、全身のさまざまな臓器にダメージを起こすのが、「膠原病」「リウマチ性疾患」という病気です。
以下のような症状が出ることが多いです。
- 熱が出る
- 湿疹が出る
- 全身の関節・筋肉に痛みが出る
- 息切れがする
そのほか、ダメージを受ける臓器によってさまざまな症状が起こります。
具体的な病気としては、以下のようなものがあります。
- 関節リウマチ
- 悪性関節リウマチ/リウマトイド血管炎
- リウマチ性多発筋痛症
- RS3PE症候群
- 脊椎関節炎
- 強直性脊椎炎
- 反応性関節炎
- 乾癬性関節炎
- 炎症性腸疾患関連脊椎関節炎
- 未分類型脊椎関節炎
- 掌蹠膿疱症性骨関節炎(SAPHO症候群)
- 結晶性関節炎
- 痛風
- 偽痛風
- 変形性関節症
- 全身性エリテマトーデス
- シェーグレン症候群
- 混合性結合組織病
- 強皮症
- 抗リン脂質抗体症候群
- 多発性筋炎
- 皮膚筋炎
- 高安動脈炎
- 巨細胞性動脈炎
- 結節性多発動脈炎
- ANCA関連血管炎
- 顕微鏡的多発血管炎
- 多発血管炎性肉芽腫症
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
- IgA血管炎
- IgG4関連疾患
- ベーチェット病
- 成人スティル病
- 再発性多発軟骨炎
- VEXAS症候群
- キャッスルマン病
- TAFRO症候群
これらの病気のなかには、国によって「難病」の指定がされているものもあります。病気が重症であれば、医療費助成の対象となることもあります。
リウマチ膠原病内科の選び方
医師の専門性
膠原病・リウマチ性疾患は
- 珍しい病気が多いため、その病気の知識・経験が少ないと診断が遅れることがある
- 早期に発見・治療しないと、身体にダメージが残ったり、最悪死に至ることもある
といった診療における難しさがあります。
そのため、膠原病・リウマチ性疾患を疑う状況であれば、可能な限り早く専門医を受診することが良いと考えます。
基本的には「日本リウマチ学会 リウマチ専門医」を持つ医師が在籍する医療機関を受診するのが安心です。
リウマチ専門医は、日本リウマチ学会の認定する教育施設において、リウマチ性疾患の患者さんの診療経験、講習会参加、学会参加、学会発表や論文発表などの専門医研修カリキュラムを修了している必要があります。
そのうえで筆記試験を受講し、合格した医師がリウマチ専門医に認定されます。
また、より長い教育施設の勤務経験と、研究業績発表がある医師を「日本リウマチ学会 リウマチ指導医」と認定しています。この資格がある医師であれば、さらに安心して良いでしょう。
リウマチ学会のホームページで、これらの資格を持つ医師について検索することができます
診療内容が自分のニーズに合っているか
リウマチ膠原病内科といっても、医師・医療機関によってその診療スタイルは違いがあります。
- 膠原病・リウマチ性疾患の診療しか行わない
- 一般的な内科診療(例:高血圧症・糖尿病・脂質代謝異常症などの生活習慣病、風邪など)も行う
- 整形外科的なこともある程度行う(例:関節注射、炎症以外の痛みへの対応、リハビリテーションの指導など)
大学病院などの大きな病院では専門性が高いため、基本的に一番上のパターンです。専門以外の病気については同じ病院の他の診療科、もしくは別の病院・クリニックに依頼する医師が多いです。
クリニックであれば、一般的な内科診療も行っていることが多いです。「膠原病・リウマチ性疾患だけでなく、ほかの病気のかかりつけ医もやってもらいたい」という場合には、こちらのような医療機関がベターでしょう。「日本内科学会 総合内科専門医」「日本プライマリケア学会 プライマリ・ケア認定医」を取得している医師であれば、ある程度幅広い内科やプライマリケアに関する知識・経験を有しているはずです。
また整形外科で行うことが多い検査・治療ですが、「関節注射」「超音波検査(関節を中心とした筋骨格・軟部組織)」を行っているリウマチ膠原病内科もあります。
「超音波検査」は膠原病・リウマチ性疾患の診療に有用な検査です。レントゲン検査などと違い被爆もなく、診察室で行うことができる検査です。関節、筋肉や腱、骨などの異常をその場で確認することができます。たとえば痛くて腫れている関節にいままさに「炎症」が起きているのを、パワードップラー(体内血行動態に色を付け画像上に重ね合わせながらリアルタイムで表示する方法)というもので確認することなどは、他の検査ではできません。
ただ他の検査と違い、検査を行う医師・検査技師などの技量によって検査の質に差が出てしまうという欠点はあります。「日本リウマチ学会 登録ソノグラファー」はリウマチ性疾患診療に有益な関節超音波検査に関する十分な学識と経験を有する医師及びメディカルスタッフ(臨床検査技師、診療放射線技師、看護師、准看護師)を学会が認定しています。この資格を有するスタッフが在籍する医療機関であれば安心して検査を受けて良いでしょう。
診療時間・曜日・混雑具合
膠原病・リウマチ性疾患では、その症状が多岐にわたります。
そのため、
- 医師にいろいろなことを聞きたい
- 症状や病気のことについて細かく説明してほしい
という方には、予約制の医院・クリニックが合っているでしょう。リウマチ膠原病内科の専門外来をおこなっているクリニックでは、予約制をとっているところも多いです。
また多忙で平日の日中に受診が難しいかたは、診療時間が「夕〜夜」「土日祝日」の医院・クリニックも選択肢になるでしょう。
大学病院・総合病院は基本的に平日に日中しか診療していません。それ以外の時間帯は救急受診しかできず、担当医師でない専門外の医師が診療することがほとんどです。
また予約外来も、通院患者さんが非常に多いため待ち時間は大変長いことが多いです。医師は外来患者だけでなく入院患者の診療も行っていることがほとんどで、そのため時間的・精神的な余裕はないことが多いです。そのためゆっくり話を聞いてもらうことは難しいと考えてください。
個人的には、超重症であったりほかの病気で大学病院・総合病院に通院しているのでなければ、クリニック・医院のほうが「きめ細やかな」医療が受けられると考えています。
自宅・職場からのアクセスの良さ
膠原病・リウマチ性疾患はその治療が長期間、場合によっては一生におよぶことも多いです。そのため通院しやすい場所にある医療機関を「かかりつけ」としたほうが、無理なく病院に通うことができると思います。
医師・医療スタッフとの相性
上記でもお話したように、膠原病・リウマチ性疾患に関する通院は長期間となることが多いです。そのため通院する医療機関の医師・看護師などの医療スタッフとの相性は重要です。
「自分に合っているな」と思う医療機関を選ぶようにしましょう。
おわりに
膠原病・リウマチ性疾患は全身にさまざまな症状を起こす病気の総称です。身体に治らないダメージを残さないよう、できるだけ早期の診断・治療が望ましいため、すみやかな専門医受診が望ましいです。
どのような医療機関を受診するべきかは、
- 医師の専門性
- 診療内容が自分のニーズに合っているか
- 自宅・職場からのアクセスの良さ
- 医師・医療スタッフとの相性
を考えて選ぶのが良いでしょう。