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ばね指とは?手の指が痛くて動かしにくい原因とその症状、検査、治療方法を紹介します

ばね指とは?手の指が痛くて動かしにくい原因とその症状、検査、治療方法を紹介します
甲斐沼 孟 医師

執筆者
甲斐沼 孟 医師

私は医師として15年以上キャリアを積んできました。これまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。全国学会での学術発表や論文執筆などの多角的な視点で医療活動を積極的に実践しています。さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門的知識を活かして誠心誠意対応します。

最近指の付け根を押したときに痛みを感じる、指を曲げ伸ばしするときに引っ掛かる、起床時に指がスムーズに動かずに指が曲がったまま伸ばしにくいなと感じたら、その症状はばね指かもしれません。

一度悪化してしまうと非常に厄介なばね指ですが、正しい知識を持って適切に対処することで症状の悪化を防ぐこともできます。

ばね指は初期のうちは症状が勝手に緩和されるため、軽く見てしまいがちです。しかし放置しておくと悪化することが多く、早いうちに適切な処置を行うことが非常に大切です。

症状が進んでしまった場合には治療も時間がかかりますし、手術をしないと完治しないこともあります。今回は、ばね指になる原因や代表的な症状、治療法や受診のタイミングなどについてお話しします。

ばね指の特徴

ばね指の特徴

ばね指とはひと言で簡単に説明すると、指の腱鞘炎(けんしょうえん)のことを意味しています。

手の指の手の平側には指を曲げるための「屈筋腱(くっきんけん)」と呼ばれる組織があり、指に沿って先端の方まで伸びており、この屈筋腱は浮き上がることがないように靭帯性腱鞘(じんたいせいけんしょう)というトンネルの中を通っています。

通常、指の曲げ伸ばし運動は屈筋腱が靭帯性腱鞘の中をスムーズに移動することによって実行されますが、何らかの原因により屈筋腱に炎症が引き起こされて腫れてしまうと、腱鞘の中をスムーズに移動することができなくなります。

曲げた指を伸ばそうとした時に腫れた部位が腱鞘に引っ掛かって伸ばしにくくなり、さらに無理やり伸ばそうとするとカクンとバネを弾いたような動きをすることから、「ばね指」と呼ばれています。

症状が軽いうちは患部を休めて安静にすることで、痛みや違和感を取り除くことができますが、明らかに指をスムーズに動かせない場合には、まずばね指を疑った方が良いでしょう。

ばね指に関連する知識

ばね指に関連する知識

Q ばね指とはどんな病気ですか?

主にばね指の症状は、夜間寝ている間は指をほとんど動かすことがないため屈筋腱(くっきんけん)がむくみやすくなる、という理由で朝起きて痛みや症状を感じることが多いです。

また、腱鞘内には滑液と呼ばれる潤滑剤が流れていて、指を動かさないとその流れが悪くなることも起床時にばね指の症状が出現しやすい理由のひとつです。

ばね指の初期症状としては、起床時の指の動かしにくさが最も一般的でありますが、手指を無理に動かそうとすると指の関節の手のひら側に痛みを感じることもあり、症状は特に親指、中指、薬指に現れやすいといわれています。

指の動かしにくさは日常動作をして指の曲げ伸ばしを繰り返すことで徐々に軽減され、スムーズに動くようになることが多いため、「わざわざ病院に行くこともないかな」と症状を重く考えずに適切な処置が遅れてしまうケースも多いです。

Q ばね指はどんな人やどんな時期に多いですか?

また、ばね指は更年期や妊娠、出産後の女性に多くみられます。その背景には、この時期の女性は加齢によって筋力低下や骨粗鬆症、閉経などによってホルモンバランスが変化し、腱や腱鞘が弱くなることで障害を受けやすくなることによって、ばね指を発症しやすいと考えられています。

Q ばね指の原因はなんですか?

ばね指の原因はなんですか?

ばね指の原因は、パソコンやピアノの鍵盤を叩く、ゴルフやテニスなどの運動、包丁で野菜を大量に切るなどをきっかけにして指を使い過ぎてしまうことです。

これらの動作を繰り返して行うことで腱鞘に負荷が掛かり、炎症が引き起こされるとともに、繰り返して炎症が起これば、腱鞘は肥厚し腱は肥大することでスムーズに動かすことができません。動かそうと腱鞘や腱に負荷が掛かり、より一層ばね指が悪化してしまうのです。

ばね指は男女ともに発症するリスクがあり、特にピアノの演奏者や料理人、美容師など普段から手先を酷使する職業に就いている人々にとっては職業病として広く認識されています。また、パソコンのキーボードを叩く動作やスマートフォンの触り過ぎなどによっても、ばね指を発症するリスク因子となります。

ばね指はホルモンバランスが崩れやすい更年期や出産前後の女性に特に多く認められることが知られており、その背景にはこの時期の女性は骨粗鬆症や閉経などによって腱や腱鞘が弱くなって痛みやすくなることが存在します。

さらに、関節リウマチや糖尿病といった持病がある場合には、末梢の血流が悪くなってばね指を発症するリスクが通常よりも高くなります。

Q ばね指は治療が必要ですか?

現代人にとってスマートフォンやパソコンはなくてはならないものですが、使い過ぎによりばね指に悩まされる方も増えています。ばね指は自然治癒することもありますが、症状が酷く慢性的に症状がある場合は最悪手術をしなければならない可能性もあります。

初期のうちであれば手指を安静にしていることで完治することも可能ですが、痛みを我慢して無理をすると、症状が強くなり痛みも悪化します。

手指を安静に保ち、ストレッチやマッサージをすることで自然治癒を目指すことはできますが、万が一重症化した場合には薬物治療や手術によって完治を目指します。 

万が一、日常生活において指の動かしにくさや痛みを自覚したら、「これぐらいなら大丈夫」と思わずに早期的に整形外科(特に手の外科専門医)を受診するように心掛けましょう。

Q ばね指はどのような治療をしますか?

ばね指の治療法は症状を改善させる保存療法、あるいは手術によって完治を目指す手術療法があり、基本的にばね指の治療は保存療法から開始することが多いです。

主な保存療法としては、指をできるだけ動かさないよう安静にする、サポーターやテーピングで関節を固定する、痛み止めを飲む、超音波や電気刺激による治療などがあります。

痛みが強く、日常生活に支障を呈する方においては、炎症が生じている腱鞘へ直接ステロイド剤と麻酔薬を注射する腱鞘内ステロイド注射も実施されるケースがあります。

ただし、ステロイドは頻繁に注射すると感染症を起こしやすくなり、腱鞘断絶のリスクも高まるため、慎重に行うことが求められています。

Q ばね指と診断されたら手術が必要ですか?

ばね指と診断されたら手術が必要ですか?

ばね指かな?と感じたら受診するのは整形外科(手の外科)の専門医です。診察場面では、医師による触診や視診を行って、画像検査として指のレントゲン撮影を行い、骨に異常がないことを確認します。

また超音波検査を実施して手指が引っ掛かっている部位を確認する、あるいは疼痛誘発検査(とうつうゆうはつけんさ)を行ったりして適切に診断することになります。

ばね指は靱帯性腱鞘とそこを通過する屈筋腱との間に炎症がおこる病気であり、疼痛誘発検査ではちょうど指の根元に位置している関節部位の手掌(手のひら)側を圧迫することで痛みが誘発される場合にばね指と診断することになります。

ばね指と診断されてから、症状が悪化する場合には、手術治療が必要になる場合も考えられます。

手術療法の場合は、痛みの原因である腱鞘を切開する手術内容であり、切開する傷は1cm程度と小さめであり、日帰りで手術を行うことも可能ですが、最初から手術の適応となることはほとんど見受けられません。

中等症以上で指が曲がったまま放置してしまうと、そのまま関節が固まってしまう、あるいはステロイド注射を実践しても症状が改善しない場合には、積極的に手術治療を検討します。

Q ばね指の手術にはどのくらい費用がかかりますか?

ばね指の手術にはどのくらい費用がかかりますか?

ばね指に対する日帰り手術では、局所麻酔で手術治療を実施して、手術時間はおよそ15分程度です。

手術費用は、健康保険の適応となっており、3割負担の方で約6,000円、1割負担の方で約2,000円程度ですが、それ以外にも診察費、薬代、検査費用などが別途かかります。

Q ばね指が完治するまでどのくらいかかりますか?

私達の日常生活の中で、手をまったく使わないという日はまずありませんが、いったん手指部に炎症が起こり、痛みなどの症状が出るようになるとさまざまな基本動作を実施できなくなって、仕事や家事に大きな支障がでるようになります。

手指の安静を保つのはなかなか難しいですが、ばね指を発症した際には手の使い過ぎを避けるとともに、こまめにストレッチなどのセルフケアを行うことで、数週間から1ヵ月程度かけてばね指を完治させることを目標にすることが治療の第一歩となります。

Q ばね指は再発するのでしょうか?

肥厚している部分に直接ステロイド剤を注射することによって、腫れた組織が鎮静化し、そのまま1~2ヵ月程度は症状が改善することが多いですが、痛みが再燃する場合も少なくありません。

一度で完治する場合もありますが、予想していたような効果が出ない場合、あるいは症状が再発した場合には、再度、注射治療などを行う必要があり、具体的な治療回数や頻度については、かかりつけ医にご相談ください。

Q ばね指に対して自宅でできる改善方法はありますか?

ばね指に対して自宅でできる改善方法はありますか?

手指を普段からよく使用する場合には、適宜指のストレッチやマッサージをすることが重要であり、適度に休憩を挟んで手指に負荷がかかり過ぎないように注意しましょう。

ただし、自己判断によるストレッチやマッサージは症状を悪化させる懸念もあるため、医師や理学療法士の指示に応じて、手指部に痛みや腫れを自覚した場合には、早めにアイシングをして患部を冷やすように実践しましょう。

しかしすぐに病院へ行けない場合、手指部が炎症を起こして腫れや熱を持っている際にはセルフケアとして患部をアイシングして症状を緩和する方法もあります。患部を速やかに冷やしてあげると炎症の進行を抑えることができますが、血流が悪くなって指がこわばる場合には、手指を保温するように努めてゆっくりと指の曲げ伸ばし運動をして血流が良好になるように意識しましょう。

今回の記事の情報が参考になれば幸いです。

引用文献

1) 堀田 裕輔, 河野 正明, 千葉 恭平, 芝 成二郎, 津田 貴史, 沖 貞明:ばね指に対するPIP (IP) 関節固定装具による保存療法の試み. 中国・四国整形外科学会雑誌. 2020 年 32 巻 2 号 p. 253-256

DOI https://doi.org/10.11360/jcsoa.32.253

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