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薬膳師が教える免疫力アップの薬膳。身体の内から元気に

薬膳師が教える免疫力アップの薬膳。で身体の内から元気に
瀬戸 佳子 国際中医薬膳師・登録販売者

執筆者
瀬戸 佳子 国際中医薬膳師・登録販売者

早稲田大学理工学部卒、同大学院理工学研究科修了。北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)薬膳科卒業。会社員を経て、東京・表参道の「源保堂鍼灸院」併設の薬戸金堂で、漢方相談を行いながら東洋医学に基付いた食養生のアドバイスを行う。雑誌やWEBセミナーの講演などでも幅広く活躍。 『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』(共に文化出版局)が好評発売中。

年末年始の忘年会や帰省など慌ただしい日々で風邪を引いてしまった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

寒くなる季節は寒さから風邪を引きやすくなるだけでなく、インフルエンザなどの感染症も流行りやすい時期です。風邪もインフルエンザも防ぐことができないと思っている方もいるかもしれませんが、日頃の習慣をちょっと変えるだけで予防することができるのです。

風邪にかかりやすい人、かかりにくい人

風邪にかかりやすい人、かかりにくい人

職場や家族の中で、同じ条件のはずなのに、風邪を引く人と引かない人がいるのを経験したことがないでしょうか。

例えば、インフルエンザの人が家族にいても、全員がかかるわけではありません。

もちろん、寝食を共にする時間が長ければ長いほどかかりやすいのはいうまでもありませんが、それを差し引いても感染る人と感染らない人といった違いが出るのはなぜでしょうか。

東洋医学では、風邪にかかるのは「正気」と「邪気」が争った結果、「邪気」が強い場合だと考えています。

東洋医学の「邪気」というのは、まがまがしいものや怪しいものではなく、風邪やインフルエンザのウイルスなどを指します。インフルエンザのようにウイルスが強かったり、家族の看病をして咳などの飛沫をたくさん浴びてしまうと風邪を引きやすくなります。

しかし、ウイルス自体は大した量でも強さでもないのに、風邪にかかってしまう人は、「正気」が弱い、ということになります。

「正気」とはいわゆる免疫力や体力と考えてください。元気で健康な人は、免疫力や体力がしっかりとしてますから簡単には風邪を引きません。

逆に、大病をした人や年配の方などは、免疫力や体力が落ちていることが多く、「正気」が弱くなってしまって簡単に風邪を引くことがあります。

ここまではご存知の方も多いと思いますが、実は自ら「正気」を弱めている人が現代はかなり多くいらっしゃるのです。自ら正気を弱めていると、若いのに、体力があるのに、持病もないのに、風邪にかかりやすくなる、ということがあるのです。

「正気」=免疫力を弱めてしまう生活習慣とは

「正気」=免疫力を弱めてしまう生活習慣とは

ではどんなことが「正気」=免疫力を弱めてしまうのでしょうか。免疫力を弱めてしまう生活習慣で当てはまるものがないかチェックしてみましょう。

  • 甘いものを食べることが多い
  • 冷たいものをよく飲む・食べる
  • お酒をよく飲む
  • 暴飲暴食してしまいがち
  • 食事に刺身やサラダなど生ものが多い
  • 寝不足、寝るのが遅い
  • 身体が冷えている
  • なんとなく疲れが取れない
  • 毎日忙しい

上記項目にひとつでも日常的になっていたり、頻度が多かったり、程度が重かったりすると免疫力が下がっていることがあります。3つ以上当てはまる方は、正気を自ら弱めている可能性が高いので注意が必要です。

東洋医学では、胃腸の働きが弱まると免疫力が落ちると考えます。特に胃腸は冷えや湿気が苦手で、甘いものや冷たいもの、生ものが多いと弱ってしまいます。また、暴飲暴食やお酒などで胃腸が弱まるときも免疫力が下がりがちです。

12月から1月に忘年会や新年会、年末年始で暴飲暴食が重なりがちで、胃腸の疲れから風邪を引く方が実際に多く見られます。

胃腸の働きだけでなく、「腎」の働きも関係すると東洋医学では考えています。

「腎」とは生命エネルギーのもとのようなもので、これを原動力に私たちは生命活動をしていると考えます。

例えば、「精をつける」「精魂尽きた」と言う言葉がありますが、この時の「精」というのが腎に蓄えられているエネルギーです。体力の根底になるもの、身体の底力といったイメージでしょうか。

この「腎」が疲れてしまうと免疫力が落ちてしまいます。ですから「精魂尽きた」ような疲れ果てた状態だと免疫力は非常に落ちていて、いとも簡単に風邪を引いてしまいます。

他に腎を弱めるのが冷やすことです。身体が冷えているだけで免疫力が下がるというのはよく知られたことですが、東洋医学でも昔から体の冷えが免疫力と関係していると分かっていたのです。

もうひとつ大切なのが、入ってきたウイルスを解毒することです。解毒と関係するのが東洋医学で言うところの「肝」の働きです。

大まかには肝臓の働きと考えれば良いのですが、「肝」が疲れてしまうことが飲酒、寝不足、疲労です。疲れて帰ってきて、お酒を飲んでから寝ようと思ったらついつい遅くまで起きてしまった、というような状態は、風邪を自ら引き込んでいるようなものです。疲れている時はできるだけ早寝するのがおすすめです。

風邪を予防するためには

風邪を予防するためには、正気を弱める生活習慣や食習慣をできるだけ避けることが肝心です。

忙しいとついつい疲れを溜めたり、寝不足になったりしがちですが、風邪を引いて休んでしまっては元も子もありません。少なくとも寝不足にならないようにしたり、食生活が乱れないように気を付けたり、免疫力を下げないように気を付けましょう。

合わせて風邪予防になる食事を摂ることもおすすめです。胃腸が疲れないよう、温かいものをよく食べたり、消化の良いさっぱりとしたものを心がけたりするだけでも違ってきます。他にも、寒い時期の風邪予防に特におすすめの食材を紹介します。

長ネギ

長ネギ

寒くなるとお鍋に欠かせない長ネギですが、長ネギの白い部分は「葱白(そうはく)」と呼ばれる生薬でもあり、冷えからくる風邪に良いものです。

長ネギの効能は、「散寒解表(さんかんげひょう)」「通陽散寒(つうようさんかん)」といって、身体の冷えをとって風邪を追い出すことです。まさに冬の風邪にうってつけの食材なのです。

生だと胃に負担になったり、量があまり食べられないので、加熱して食べるのがおすすめです。お鍋に入れたり、お味噌汁に入れたり、と寒い時期、風邪が流行っている時期は毎日食べても良いでしょう。

寒さで風邪を引きそう、というときには、一気にたくさん食べて身体を温め、早めに寝てしまうと風邪を引かずに済むこともあります。

山芋

山芋

山芋、長芋、つくね芋、自然薯などいろいろなものがあります。山芋は、正気の元である腎を強めてくれるものです。山のうなぎともいわれるくらい精のつく食べ物です。また、胃腸を元気にしたり、肺を潤したり、という作用もあり、風邪を引きにくい身体にしてくれる優れものです。お蕎麦やご飯にとろろをかけるだけでなく、加熱して食べるのもおすすめです。お味噌汁や煮物などでホクホクした食感を楽しむのも良いでしょう。

シナモン

シナモン

シナモンも漢方薬によく使われる生薬のひとつで、桂枝(けいし)と呼ばれます。漢方の風邪薬に桂枝湯(けいしとう)というものがあり、シナモンは主な生薬のひとつです。シナモンは、身体を温める作用に優れており、冷えからくる風邪にとても使いやすいものです。スパイスコーナーにも置いてあることが多く、飲み物にさっと加えるだけで身体を温めることができます。

身体が冷えやすい人は、紅茶やホットミルクに添えるもの良いでしょう。少量でも十分効果がありますし、あくまでスパイスですから、くれぐれも摂り過ぎには注意しましょう。

風邪は予防が第一

すでに風邪を引いてしまっても、風邪を引いたかな、引きそうだな、と思った時の始めの対処が非常に大切です。背中がゾクっとしたら風邪の引き始めのサインです。すぐに身体を温めて、早めに寝ると翌朝には治っていることもあります。無理をして本格的な風邪をひいてしまったり、こじらせたりしないよう気を付けましょう。

書籍紹介

野菜や魚たっぷりで食べ応えがあります。胃腸のお悩みだけでなく、なんとなく疲れが取れない、体力がない、という方におすすめです!家族みんなで胃腸を元気にして過ごしましょう。

気血スープ1週間で胃腸が必ずよみがえる

季節ごとに起こりやすい冷え、花粉症、熱中症、イライラ……などの心身の不調に対して、東洋医学の観点から「食べ方」や「暮らし方」を解説しています。「薬膳養生カレンダー」を参考にぜひ養生を始めましょう!

おうち薬膳養生12か月 瀬戸佳子

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