2007年に日本は超高齢化社会になりました。老後に伴侶に先立たれて一人暮らしになる方も多くなってきました。また、悪化する日本経済に伴い、年金支給額は年々下がっているにもかかわらず、税率は上がる一方です。
また、老後の一人暮らしにはさまざまな危険があります。孤独死のリスクもあり、生活について考え直す必要があると感じている方もいると思います。さらに、年金給付額が下がっている今日では金銭的な不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。このコラムでは老後の生活やお金に対する心配事と解決方法をまとめてみました。
老後に一人暮らしをしている人はどれくらいいるのか
では、実際に老後に一人暮らしをしている人はどれくらいいるのでしょうか。内閣府によると、65歳以上の一人暮らしをしている人は増加傾向にあります。老後に一人暮らしをする方の男女比などはどのようになっているのでしょうか。
ここからは、令和3年版高齢社会白書(全体版)を基に、老後に一人暮らしをしている方のデータについて説明していきたいと思います。
老後に一人暮らしをしている人の数
まず、老後に一人暮らしをしている方の割合は、国勢調査が行われた2015年は592万8千人でした。推計値では2020年は702万5千人、2040年には896万3千人にも上ると考えられています。1980年は88万1千人であったので2020年には約8倍以上になっているといえます。
老後に一人暮らしをしている男性の数
次に老後に一人暮らしをしている男性の人数です。1980年には19万3千人でしたが、2015年には192万4千人、2020年には243万5千人に上ったと推定されています。さらに一人暮らしの方の65歳以上人口に占める割合は1980年は4.3%であったのに対し、2020年は15.5%へ上昇しています。つまり、2020年は1980年の12.6倍近くも老後に一人暮らしをしている男性が増えたと考えられます。
老後に一人暮らしをしている女性の数
続いて、老後に一人暮らしをしている女性の人数です。1980年には68万8千人でしたが、2015年には400万3千人、2020年には459万人となったと推定されています。さらに、一人暮らしの方の65歳以上人口に占める割合は1980年は11.2%であったのに対し、2020年は22.4%へ上昇しています。つまり、2020年は1980年の6.7倍の女性が老後に一人暮らしをしていると考えられます。
老後の一人暮らしにかかる生活費
2017年に金融庁が報告したことから取り沙汰されたのが、老後2,000万円問題です。老後のためにお金を貯めておかなければならない、老後はお金が必要であるというイメージが大きくなり、社会問題となりました。
それでは、実際に老後に、一人暮らしとなった場合、どのくらいの費用が必要となるのでしょうか。総務省統計局「家計調査報告書(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」のデータを元に説明していきます。
どれくらいの生活費がかかるのか
高齢単身無職世帯の実収入(月平均額)は136,964円となっています。そのうち、約9割が社会保障給付となっています。生活費は144,687円となっており、毎月-7,723円の赤字となってしまいます。
想定される生活費の支出
具体的な支出を見ていきましょう。高齢単身無職世帯の消費支出と非消費支出の合計(月平均額)より、述べていきます。
- 食料:36,581円
- 住居:12,392円
- 高熱・水道:12,957円
- 家具・家事用品:5,328円
- 被服及び履物:3,181円
- 保険医療:8,246円
- 交通・通信:12,002円
- 教養娯楽:12,910円
- その他消費支出(雑費・交際費など):29,549円
- 非消費支出(直接税・社会保険料):11,541円
となり、支出合計は144,687円となります。
ここでは住居が1万円台と低くなっていますが、これは持ち家率が高いことが理由だと考えられます。そのため、賃貸の場合は家賃が発生し、居住に掛かる費用はより高くなるでしょう。その際、住宅セーフティネット制度を利用することで住居費を安くすることができます。
さらに、保険医療はここでは1万円未満となっていますが、年齢とともに高額になっていく可能性もあります。日本の場合、高額療養費制度が設けられていますが、最大14万円程度は自己負担が必要です。
また、交通費も1万円程度ですが、住宅環境によって大きく左右されます。地方在住などであれば、自家用車が必要となり、車両ダイヤ駐車場代、ガソリン代、車検代、保険代などの維持費も必要です。また、加齢による認知力の低下により交通事故が発生するリスクもあります。
新たな住宅セーフティネット制度について
2007年、高齢者や障害者などへの安定的な住宅供給を目的として「住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)」が創設されました。
日本の高齢化に伴い、高齢者などの住宅確保に配慮が必要な方は今後も増加していくと考えられます。しかし、住宅セーフティネットの根幹である公営住宅については財政悪化に伴い大幅な増加は見込めない状況です。
一方、民間の空き家や空き室は増加していることから、これらを活用した新たな住宅セーフティネット制度が2017年10月に開始されました。ここでは新たな住宅セーフティネットの3つの柱となっている制度や支援について説明していきます。
住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
賃貸住宅の賃貸人は、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として、都道府県や政令都市、中核市にその賃貸住宅を登録することができます。
住宅確保要配慮者とは、2017年の改正法において、低額所得者、高齢者、障害者、子育て世帯とされています。そのため、一人暮らしの高齢者も住宅確保要配慮者となります。
住宅の登録基準は、耐震性を有すること、住戸の床面積が25平方メートル以上であることが求められます。共同住居型住宅(シェアハウス)においては、専用居室を9平方メートル以上確保し、住宅面積が15平方メートル×居住人数+10平方メートル以上であることや、台所、食事室、便所、浴室、洗面所等を設けることが求められます。
一定の基準を満たした賃貸住宅しか登録することはできません。さらに、入居を拒まない住宅確保要配慮者の範囲を限定することも可能です。そのため、「高齢者の入居は拒まない」と登録している賃貸住宅では実質的に高齢者のみの住宅となります。
「セーフティネット住宅情報提供システム」の詳細はこちら
登録住宅の改修や入居者への経済的な支援
新たな住宅セーフティネット制度では、登録住居の改修への支援と、入居者の負担を減らすための支援が設けられています。登録住宅の改修への支援としては地方公共団体や国による改修費補助事業などにより改修費に対する補助制度があります。
登録住宅の入居者への経済的支援としては家賃と賃貸債務保証料の低廉化に対する補助があります。これらは入居者を住宅確保要配慮者に限定した登録住宅に低所得者が入居する場合に、地方公共団体と国が協力して補助を行います。
住宅確保要配慮者に対する居住支援
2017年の法改正で、都道府県が、住居支援活動を行うNPO法人等を、賃貸住宅への入居の際の情報提供・相談、見守りなどの生活支援、登録住宅の入居者への賃貸債務保証等の業務を行う居住支援法人に指定することが可能となりました。
老後の一人暮らしを快適に過ごすために重要な部屋選び3選
人は加齢に伴い筋力が低下していきます。さらに、認知力なども低下します。老後の一人暮らしは若いうちの一人暮らしとは状況が異なります。快適に過ごすためには、高齢者に適した部屋選びが重要となってきます。ここでは、老後に一人暮らしをする際に特に注意したいポイントを説明していきます。快適に老後の一人暮らしをするためにぜひご覧ください。
セキュリティーがしっかりしているか
令和元年の高齢者の犯罪情勢(警察庁)によると犯罪被害全体の64%が窃盗被害となっています。さらに2021年、進入窃盗犯の手口認知件数では空き巣が全体の66.1%を占めており、平均25分に1件の空き巣が発生しています。
このように、老後の一人暮らしは犯罪に巻き込まれる危険性が高いです。セキュリティーがしっかりしていることは老後の一人暮らしを快適に過ごすためにとても大切です。
高齢者に優しい部屋の設計になっているか
部屋の間取りも重要になります。加齢による体力の低下や筋力の低下のため、階段や段差のある間取りは、転倒の危険が高いです。高齢者は一度転倒してしまうと寝たきりとなる可能性も高くなります。そのため、転倒事故を防ぐためにもバリアフリーの間取りがおすすめです。転倒は移動の際に生じるため、廊下や浴室、トイレなどに手すりが設置されていることも重要です。
さらに、もしも車椅子生活となってしまった際、車椅子で移動できる程度のスペースがあるかどうかも高齢者に優しい設計となっているか見るべきポイントです。
ここでおすすめなのが株式会社シーラのシニアテックマンションです。シニアテックマンションは一般的な分譲・賃貸マンションに見守りサービスと最新の便利な設備を付加した住宅となっています。そのため門限などもなく、自由な生活を送ることができます。
ご夫婦での入居はもちろん、若い世代の入居も可能であるため親子での入居もできます。さらに、物件によってはペットとともに入居することも可能です。気になった方はぜひ、ご入居を検討ください。
階数の低い部屋を選ぶ
高齢者の一人暮らしでは階数の低い部屋がおすすめです。理由としては、階段を上り下りする階数が少なくなり、転倒の危険性が下がること、エントランスなどが近いため気軽に外出できることなどが挙げられます。
老後の一人暮らしを快適に過ごすために重要な場所選び3選
老後の一人暮らしには部屋だけでなく周りの環境も重要になります。知人が近所にいるかどうかなど周りの環境は老後の生活の質をあげるうえで必要な要因のうちの1つです。
では、その他にどのような部屋を選べば快適な環境で過ごせて、老後の一人暮らしの生活の質を上げることができるのでしょうか。次は、老後の一人暮らしを快適に過ごすために重要になってくる場所選びの際に気を付けたいポイントについてまとめてみました。
家族や友人など、知り合いと近いかどうか
高齢者が一人暮らしをするうえで、孤独死、孤立死が心配が挙げられます。孤独死とは主に一人暮らしのものが誰にも看取られることなく死亡することで、社会問題にもなっています。さらに、行政では孤立死といわれる、「社会から孤立した中で一人で死亡すること」という言葉も用いられています。
孤独死・孤立死を防ぐためには、早期発見が重要となってきます。そのため、家族や友人などの知り合いと近い場所に住むことはとても大切なこととなります。
病院や薬局などが近いかどうか
高齢になるとかかりつけの病院などに通院する機会も増えます。そして、病院で処方された薬を取りにいくために薬局が近いかどうかも大切です。さらに、高齢者の交通事故は後を絶ちません。住んでいる場所から病院・薬局までの道はきちんと整備されているか、段差などはないかという点も注意しておく必要があります。
スーパーやコンビニなどが近いかどうか
一人暮らしでは、食事をご自身で用意する必要があります。体力・筋力が低下した身体で買い出しに行くことは大きな負担です。さらに、体力が落ちることで気力も低下し、買い出しにすらいけず自宅で弱ってしまうということもあります。
そのため、住んでいる場所の近くにスーパーやコンビニなど買い物に行ける場所はあるかどうかも大切なポイントとなります。身体を健康に保つためにも食事を取ることは重要です。
老後の一人暮らしを楽しむためのポイント
老後は貯金も必要で、健康にも気を付ける必要があります。しかし、老後の生活がどのようなもので何が必要かあまりよく分かっていない方も多いと思います。今から老後に向けて準備することで、老後にゆとりのある生活を送ることができます。
それでは、老後の一人暮らしを楽しむために、どのようなことに気を付けて過ごしていけば良いのか考えてみましょう。
計画的に貯金しておく
2019年に取り沙汰された「老後2,000万円問題」では高齢夫婦が老後30年を余裕を持って暮らすためには2,000万円の貯金が必要となることが話題となりました。
そこで、まず第一に働けるうちは働きましょう。人生100年時代といわれ、医療の進歩により今後も寿命は延び続けると考えられます。働けるうちは働くことで、老後の貯金を取り崩さずに生活することができます。
さらに、60歳以降も厚生年金に加入し、保険料を納めることで、年金生活となった際に給付される年金額が増加します。また、働いている間は年金を受け取らず、年金を繰り下げ受給することで、さらに年金額を増やすことも可能です。
近年話題となっているNISAやつみたてNISAなどでお金を増やすこともできます。つみたてNISAは開始から20年間は非課税となるため他の投資などに比べて手軽に始めることができます。普通に貯金しても利子はほとんどないに等しいため、投資にまわしたほうが貯蓄が増える可能性が高くなります。
健康的な生活を心掛ける
老後の一人暮らしを楽しむためには健康的な生活を心掛けることが重要となります。
近年、高血圧や糖尿病といった生活習慣病が増加しています。生活習慣病とは「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」のことです。そして、日本人の死因の上位を生活習慣病が占めています。
健康的な生活を送るにはまず、食事を気に掛けましょう。基本的に1日3回食べる食事は健康に大きくかかわります。1日3回、規則正しく、腹八分目を心掛け、和食を中心に栄養バランスを考えた食事を摂取することが重要です。また高齢者は加齢に伴い筋力も減少していくため、たんぱく質の摂取も充分に行うことが求められます。
次に重要なのが運動習慣です。運動習慣を持っている高齢者は運動習慣のない高齢者に比べて日常生活の自立度が高いともいわれています。
さらに、睡眠不足は生活習慣病と関わりがあるということも知られています。睡眠時間が4時間未満の方は睡眠時間が8時間以上の方に比べて肥満の率が高いことも分かっています。休養や睡眠も健康的な生活には欠かせないものです。
趣味や友人をできる限り多く作っておく
高齢になると体力が低下することで無気力になっていくといわれています。そこで高齢者は生きがいを持つことが人生を楽しむために重要であるというデータもあります。「生きがい」とは生きる張り合いです。生きていて良かったと思えるようなことと定義されています。
高齢者の生きがいについて内閣府が行った意識調査(平成25年)では、男性高齢者の生きがいは「趣味やスポーツに熱中しているとき」が49.0%と一番高く、女性高齢者は家族「孫など家族との団らんの時」55.4%の次に「友人や知人と食事、雑談をしているとき」が50.9%と高い結果となりました。そのため、老後の一人暮らしを楽しむためには趣味や友人をできる限り多く作っておくことも大切になります。
おわりに
老後の一人暮らしを楽しむためにはある程度のお金が必要であるということが分かりました。そこで、現在、住宅を購入してローンを支払われている方は、老後の一人暮らしとなる前に「リースバック」という方法もおすすめです。
リースバックは、まず現在所有している家を売り、リースバック会社から代金を受け取ります。そして、現在住んでいる家や以前所有していた家をリースバック会社から賃貸物件として借り、家賃を払うという方法です。
ローンが残っていても利用可能であるため、売却資金によりローンが返済できるうえに、残りの資金も手にすることができます。さらに、住み慣れた家に住み続けることができます。そのため、老後の資金作りにおすすめです。リースバックを活用して老後の一人暮らしを楽しんでみてはいかがでしょうか。