日本は安全で治安がよく住みやすい国ですが、年金問題や労働環境、人間関係の問題など不満を感じる方も多いです。将来の不安やしがらみを忘れて将来は物価が安い国で暮らしたいと、海外移住を検討されている方もいるのではないでしょうか。
今回は、海外移住にかかる費用の目安を、細かく解説します。知っておくと実際に移住を計画する際の参考になるでしょう。
海外移住にかかる費用はいくら?
海外移住にかかる費用はビザの取得、渡航費用や物件契約・当面の生活費があり、その総額は移住先によって異なります。まず、ビザが手軽に取得できるかどうかに着目して移住先を選びましょう。
より手軽にビザが取得できる方法としては、退職者や年金受給者を対象としたリタイアメントビザがおすすめです。欧州やアメリカ、カナダは人気ですが、物価が高いということもあり、日本で生活するよりも高額になることがあります。
例えば、ヨーロッパでも人気の高いラトビアの場合、不動産の購入で5万ラッツ(約7万ユーロ、日本円で約950万円ほど)以上を現地の銀行口座に5年間預金しなければなりません。保証金として30万ユーロ(日本円で約4,100万円)も必要となるため、費用負担としては少し高額です。
近年では比較的ビザの取得もしやすいことから、物価が安いフィリピンやマレーシアに海外移住をする人が増えています。以下でフィリピンとマレーシアを例に、ビザの取得費用や生活費の目安などを一覧表にしました。
フィリピン | マレーシア | |
リタイアメント・ビザ取得に必要な預貯金・財産 | 【SRRV CLASSICの場合の預金額】 ・35歳~49歳なら5万USドル ・50歳以上で年金未受給なら2万USドル ・50歳以上で年金受給中なら1万USドル 【SRRV SMILEの場合の預金額】 ・2万USドル 【SRRV HUMAN TOUCHの場合の預金額】 ・1万USドル ・PRA申請料として一律1,400USドル必要 | 【金融資産証明】 1,500,000リンギット(約3,750万円)以上 【定期預金額】 1,000,000リンギット(約2,500万円)。 なお、不動産の購入や、医療、子どもの教育の目的で元本の最大50%まで引き出しが可能 【月収証明】 40,000リンギット(約100万円)以上 ※1リンギット=25円で試算 |
ビザ発給費用等 | 360ドル/年 | 500リンギット/年(約1.3万円) |
生活費 | 10~12万円程度 | 10~12万円程度 |
海外移住前に調べておくべきこと
海外移住前に治安、気候、住みやすさ、物価・住居費は調べておく必要があります。
治安
外務省の海外安全ホームページにある海外安全情報で確認できる。危険度の低い国を中心に候補を選ぶのが良いでしょう。
気候
海外は日本と気候が大きく異なるため、自分が得意な気候に近い国を選ぶこと。災害や感染症などのリスクが高い地域は避けたほうが良いでしょう。
医療体制
住居事情は国によって異なるものの、基本的に日本のような快適さはないということを念頭に入れること。海外では日本のような医療保険制度はなく、医療費が高額になるケースが多くなるため、外務省が発表している世界の医療事情を参考にすると良いでしょう。
物価・住居費
年金だけで生活を考えている場合、物価の安い国で家賃を抑えて生活すると良いでしょう。ただし、物価の安い国であっても日本人向け住居は日本と相場は変わらないため注意が必要。
上記のなかには、移住を希望する方の好みによることが多いです。特に住みやすさに関しては、感じるポイントが異なるため、インターネットや本の情報だけを鵜呑みにせず現地の最新情報をリサーチしましょう。
海外移住前に手続きしておくべきこと
海外移住前にしておくことは主に5つです。手続きの期間が長くなることもあるので、余裕をもって手続きをしましょう。
各種手続き
海外移住をする前に、銀行口座や各種保険の変更手続きが必要になります。国民健康保険、厚生年金保険料は海外に住所がある方に対しても適用されるため、所定の手続きが必要。介護保険は外れる手続き、国民年金は任意加入になります。
健康診断
移住する国によっては健康診断が必要になる。あわせて歯科治療も渡航の3ヵ月前には済ませておくと良いでしょう。
ビザの取得
ビザの種類にかかわらず、取得期間が1ヵ月から数ヵ月かかることがあるため、早めにビザの申請手続きをしましょう。詳しくは外務省のホームページを参考にしましょう。不備があると取得までの期間が伸びるため、条件や書類をしっかりと確認しておくこと。
予防接種
健康診断と同じく、入国のために特定の予防接種が必要な国があります。詳細は厚生労働省検疫所のホームページで確認できます。
国際免許証
移住先で自動車の運転をするためには国際免許証への切り替えが必要になります。日本で住所のある地域を管轄する運転免許センターに届け出ることで変更できます。
海外移住のメリット
海外移住は自分の視野を広げ、海外で生活するという適応力を高めてくれるだけではなく、日本特有のストレスから開放されます。海外移住のメリットはどのようなものでしょうか。主に以下の2つが挙げられます。
- 日本よりも生活費が安く済む場合がある
- 自分の好みに合わせた気候の地域に住める
日本よりも生活費が安く済む場合がある
海外移住をする最大のメリットは、年金支給額にもよりますが、移住する国によっては年金だけで生活できるだけではなく、貯金ができる可能性があることです。
日本で老後に必要な月の生活費は、夫婦で約22万円が必要といわれており、対する移住先で人気の高いアジア周辺は約15万円程度とされています。日本で生活するよりも金銭的、精神的に自由度が高まる方もいるでしょう。
現地で仕事をする場合は、さらに生活費や貯金額に余裕ができるかもしれません。ビザの種類によっては、現地での就労が制限されている場合もありますので事前に確認をしておきましょう。
自分の好みに合わせた気候の地域に住める
日本人に人気の地域は暖かい地域が人気ですが、自分の好みや得意な気候の地域に住めることもメリットです。どの地域が自分に合っているか知るために気象庁の世界の天候を参考に選びましょう。
年間を通して天候が良くない、豪雪地帯、災害のリスクが高い地域は避けたほうが無難です。リタイアをしてから海外移住をする場合は寒暖差など気候の影響を受けやすいため、年間を通して過ごしやすい気候の国に移住すると、健康面や感染症などの不安が解消できるかもしれません。自分が1番得意な気候の地域をいくつか選んで、移住する国を決めましょう。
海外移住のデメリット
海外移住に伴って、一定のデメリットがあることも忘れてはいけません。主なものを3つ解説します。特に3つ目に解説する項目は、永住権取得を考えている方にとって大きな問題になる可能性があります。必ず確認しておきましょう。
- 物価が上昇する可能性がある
- ビザ取得に経済的条件が設けられている
- ビザ取得の要件に見直しが入る場合がある
物価が上昇する可能性がある
物価の安いアジア周辺は経済成長が著しく、数年後には数倍の物価上昇をしている可能性があります。移住したときに物価が安くても、気が付けば日本と同じように物価が上がることも考えられるため、将来的な物価上昇を見越して生活費や貯金の計画をするほうが良いでしょう。
ビザ取得に経済的条件が設けられている
先に触れたように、ビザの取得は預金額や月収の経済的条件があるため、安定した預金額や収入が確保されていないとリタイアメントビザが取得できない可能性があります。経済面の条件がクリアできない場合は就労ビザの取得も視野に入れてみるのも良いですが、国によっては就労ビザの取得が難しい可能性があります。ビザ取得の条件は国によって異なるため、比較的取りやすい地域に絞って移住先を検討してみましょう。
ビザ取得の要件に見直しが入る場合がある
冒頭で触れたマレーシアのビザなどは、取得要件が厳しいほうへ内容が変更された経緯があります。晴れてビザが取得でき海外移住を始めたものの、移住後に数年経って、取得時点のビザの要件が変更になる可能性もあるということです。仮に、経済面での規定をクリアできたとしても、別の条件が付与される可能性もあります。基本的にビザ発給の要件は、各国の大使館や総領事館の情報で確認することができます。
移住費用の捻出方法とは?
移住する国を決めたら移住費用についてです。主な移住費用の捻出方法として、以下の2つ紹介があります。
- 資産運用をする
- リースバックを活用する(資産を活用する)
資産運用をする
リタイアメントビザの申請費や生活費・移住費用はかなりの費用がかかります。投資等の資産運用を取り入れながら数年単位で計画的に貯蓄をしていく必要があるでしょう。
リースバックを活用する
もし、自宅などをお持ちであれば、自宅を売却しその資金で海外移住の費用として充てることを考えることもできます。ただ、通常の不動産売却をしてしまうと、もちろん、そこには住めなくなってしまうので、一時帰国時などの住居を確保したい方はリースバックを活用してみるのも良いでしょう。
セゾンのリースバックとは?
「セゾンのリースバック」は、自宅(マンション可)や所有不動産を売却し一括現金化し、売却後も賃貸として住み続けることができるサービスです。自宅を売却することで買取代金を一括で受け取れるため、まとまった資金を調達することが可能です。
自宅を売却すると固定資産税が不要になるだけではなく、売却した自宅は海外移住したまま賃貸として所有ができ、再購入することもできます。将来的に帰国をしたときにそのまま住めるため、帰国後の住居探しの手間が省け、非常に便利な方法です。
売却手続きは簡単で、自宅の簡単な査定を行い、面談・現地調査を行うだけですぐに売却契約ができます。最短2週間で全ての手続きが完了します。ただし、まとまった資金を得ることができる一方で、賃貸になるため所有者名義が変わる、毎月家賃が発生するというデメリットがあるので、注意が必要です。
おわりに
海外移住には、ある程度の預金や移住後の当面の生活費が必要です。海外移住は物価が安くて自分に合った気候の地域に住めることが魅力的な反面、将来の物価上昇に伴う生活費や医療の面で不安が残ります。日本人に人気の物価の安いアジア地域でも、移住にかかる費用や預金を充分に貯めておく必要があります。
将来的に移住を検討している方は、毎月の貯金や資産運用で少しずつ移住資金を貯めていきましょう。いきなり移住を決めるのではなく、観光等で一度は訪れ、その国の雰囲気・気候・食文化など自分に合うのかじっくりと移住先を検討しましょう。