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本当の自分らしさとは?探すものではなく気づくもの?第1回(全3回)

本当の自分らしさとは?探すものではなく気づくもの?第1回(全3回)
深谷 百合子 人を動かすコミュニケーター

執筆者
深谷 百合子 人を動かすコミュニケーター

国内及び海外電機メーカーで技術者として20年以上勤務。工場の「案内人」としてメディア対応、講演、環境教育にも携わる。「専門的な内容を分かりやすく伝える」をモットーに、立場の異なる人同士が理解し、協力し合えるための伝え方を工夫した。2020年に独立。「相手を動かす伝え方」をテーマに講師、コーチとして活動している。また、個人へのインタビューや企業への取材記事執筆を通じて、「知られざるストーリー」の発信を行っている。掲載媒体:WEB天狼院書店、天狼院書店WEB READING LIFEブログ

「子育ても一段落し、これから自分らしく生きていきたい」「定年が間近に迫ってきた今、自分らしいセカンドライフを送るために、今から何を準備したらいいのだろうか」

そう思ったことはありませんか。

私は54歳で会社員を辞めて独立しましたが、うまくいかないことがあるたびに、「本当にこれが私らしい生き方だったのだろうか」と悩みました。私の周りでも、「自分らしさがわからない」「自分が何をやりたいのかわからなくなってしまった」と悩み、「自分らしさ」を見つけるための学びを繰り返す方は少なくありません。

でも実は、「自分らしさ」とは探すものではなく、気づくものなのです。あなたの求めているものは、もうすでにあなたの中にあります。ほんの少し視点を変えてみるだけで、「すでにあるもの」に気づくことができるようになります。そして、「これが私だ」という自信が芽生えてきます。

これから3回にわたって、「あなたらしさ」を生かして、社会と新しい絆をつくっていくための方法について、私自身の経験も踏まえて、紹介してまいります。

1.「自分らしさ」とは何?

「自分らしさ」とは何?

あなたは今、自分らしく生きていますか。

このように聞くと、「そもそも、自分らしさが何かがわからない」とおっしゃる方が少なくありません。「自分らしく生きる」「自分らしさを大切にする」「自分軸で生きる」といった言葉をあちらこちらで聞くようになり、そうした生き方を求める方が増えてきました。「これまで家族のため、会社のために生きてきたけれど、これからは自分らしく生きたい」というように。

でも、いざとなると自分のことなのに自分らしさがわからず、「自分は何者か」を求めて、「自分探しの迷子」になる方が多いのも事実です。「ピンときたこと」「自分の好きなこと」「やりたいと思ったこと」をやっていけば自分らしさが見つかると思って、いろいろとやってみた挙句、あれこれと手を出し過ぎて、「自分は本当は何がしたかったのかわからなくなってしまった」と悩んでいる方もいます。

私自身も、会社を辞めて独立するとき、私らしさを生かした仕事をしようと思っていました。でも、具体的に何をしたら良いのかわかりませんでした。それで、性格診断、適性診断や強みの分析から占いに至るまで、あらゆる自己分析のツールを試してみました。結果を見ると、「たしかに私にはそういう傾向がある」というのはわかります。でも、「その結果、私は何をしたら良いのか」という答えは見つかりませんでした。

当時の私は、自分の強みを生かして、好きなこと、やりたいことを仕事にして生きていくことが、自分らしい生き方だと思っていました。でも、強みは何となくわかっても、好きなことややりたいことに結びつかなかったり、そもそも「やりたいことが見つからない」という状態で、あてもなく野山を歩いているような感じの毎日を過ごしていました。「こんなことなら、会社員でいたときの方がよっぽど充実していたかもしれない」と思うこともありました。

今から思うと、私は「自分探しの罠」にハマっていたなと思います。「自分探しの罠」とは、「何」ばかりを探すことです。「私の強みは何?」「私の好きなことは何?」「得意なことは何?」「私のやりたいことは何?」というように。でも、本当に大事なのは「何」ではなく、「誰に」だったのです。なぜなら、人は人との関わりの中で生きていくものだからです。まして、仕事であれば、必ず相手がいて成り立つものだからです。私が「自分」を探しても探しても満足できなかったのは、誰かのために自分が役に立っているという実感を得られなかったからでした。

2.自分を知るための近道は「他者から見える自分」を知ること

自分を知るための近道は「他者から見える自分」を知ること

「自分の好きなこと、得意なことだけで生きる」というのは、とても理想的です。でも、「仕事」という観点から考えると、これは「自分目線の考え方」ともいえます。いくら自分が好きで得意でも、誰からも必要とされなければ自己満足で終わってしまいます。

私は独立当初、何をしたら良いのかわからなかったとき、「好きだったこと」「得意だったこと」「褒められたこと」「乗り越えたこと」を、幼少期までさかのぼって、これでもかというくらい棚卸ししました。そして、「こんなことができそうだ」と思ったことを仕事にしようとしましたが、うまくいきませんでした。

「好きで得意」だけれど、世の中にはもっとすごい人がいる。その思いが自分にブレーキをかけていましたし、「私ももっとすごい人にならないといけない」と、背伸びをして疲れてしまったのです。そして、自分が好きで得意でも、それを必要とする人がいなかったという事実もありました。

ある日、知人から「こんなことできる?」と頼まれたときのことです。頼まれたのは、ITまわりの簡単なサポートでした。私にとっては、「こんなこと?」と思うようなことでした。私はITの専門家ではありませんが、自分にできることだったので引き受けました。さらに、この先私がいなくても誰でも操作できるよう、簡単に手順をまとめて手渡しました。すると、相手はとても喜んでくれたのです。

「こんなことで?」と思いましたが、「誰にでもわかるような形にする」というのが、私にとっての「人の役に立てる強み」だったのだとわかりました。私はそのとき「自分のことって、出会う人によって気づかせてもらうものなのだ」と気づきました。

それからは、人から頼まれたことは、ワクワクしないことでも引き受けてやってみるようにしました。このようにして、人からよく頼まれること、「ありがとう」と言われたことを紐解いていくと、「背伸びをしたり無理をしたりするわけでなく、苦もなくできることで、なおかつ、こうしたら相手は助かるのではないかというアイディアが自然と浮かんでくること」が見えてきました。自分にとっては当たり前過ぎて見えていなかったことが、他者を通して見えてきたのです。

今まで自分の内側ばかりに向けていた目を外に向けてみたら、「自分らしさ」というものが見えてきました。「自分らしさ」とは、探すものではなく、気づくものだったのです。

3.自分の考えを「見える形」にするから自分が見えてくる

自分の考えを「見える形」にするから自分が見えてくる

ここまで、「仕事」という観点から自分らしさについてお話してきましたが、自分の価値観や考え方の癖といった「自分らしさ」も、「他者」を通じて知ることができます。たとえば、毎日の生活の中で、「フフン」と小躍りしたくなるようなことがあったり、イラっとしたりすることってありますよね。ほとんどの場合、そこには自分以外の誰かが存在していませんか。「あの人のこんな行動が嬉しかった」「たまたまテレビで見た光景にイラっとした」というように、自分の感情が動いたときを整理していくと、「自分らしさ」が見えてきます。

私たちは普段、さまざまなことに対して感情を抱いたり、考えたりしています。でも、多くは頭の中で起きているだけで、時間が経つと忘れてしまいます。だから、頭の中に置いておくのではなく、文字として書き出すことで見える形にするのです。

私がおすすめしたいのは、ジュリア・キャメロン著『ずっとやりたかったことを、やりなさい』の中で紹介されている朝のルーティン「モーニングページ」です。これは、頭に浮かんだことをそのまま言葉にして、手書きでノートに3ページ分書き出すというものです。例えば、「眠いな」と思ったらノートにそのまま「眠い」と書きます。「書くことが思い浮かばない」と思ったら、それをそのままノートに書くといった具合です。とにかく、思いついたままに書くのです。ご参考に実際に書いたノートをお見せします。私は毎朝これを続けています。3ページ書けないときもありますが、続けることが大事だと思っています。頭に浮かんだことをそのまま書くだけなのに、最初はなかなか手が動きませんでした。でも、慣れてくると書けるようになります。「思いを言葉に変換する回路」ができてくるのでしょう。

モーニングページ

書いた内容について、本では「最初の8週間ほどは、それらを読み返さないようにしよう」と書かれています。実際、私も自分の書いたものを8週間後に読み返してみましたが、分量が多くて読むのが大変なので、ざっと見る程度です。でも、日々書いていると、「私はこんなことを考えているんだ」「こんなことを感じていたんだ」というのが見えてきます。

もう少し「記録」として残したい場合は、1日10分の振り返りノートをつくってみてはどうでしょうか。1日の中で、イラっとしたりモヤっとしたこと、嬉しかったことなど、心が動いた出来事と、そのときに感じたことを書き留めていくのです。たとえば、「同僚のあの言葉にモヤっとした」ということがあったとしたら、同僚が言ったセリフをそのまま書き出し、どういうところにモヤッとしたのか、自分の気持ちを一緒に書き留めておくのです。さらに、そうした出来事や感情を振り返って、自分はどうするのかも書き出します。どんな小さな行動でも良いので、「それで自分はどうするのか」「どうしたいのか」を書き出してみると、また新しい発見や気づきにつながっていきます。ご参考までに、私の書いたノートを紹介します。

「それで自分はどうするのか」「どうしたいのか」を書き出してみる

こうした、ふと湧き上がった感情とそのときの出来事をセットにして記録することで、自分は何に反応するのかがわかってきます。それらが蓄積されていくことで、自分の価値観が見えてくるようになります。

ぜひ毎日少しの時間をつくって、頭の中にあるものを書き出してみてください。

おわりに

自分の好きなことだけをして生きていても、やはり「誰かの役に立っている」という実感がないと、私たちは充実感を得られないものではないでしょうか。「自分の中に、探している宝がある」と、ひたすら「内」に目を向けるのではなく、自分の「外」に目を向け、周りの人と話をしたり、新しい体験をする中で、自分の心の動きを観察してみませんか。きっと、これまで気づかなかった「自分らしさ」に気づくことができるでしょう。

次回は、「自分らしい生き方」をどう実現していくのか、具体例を交えて紹介します。

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