インターネットを話題にするときに「クラウド(Cloud)」というワードがよく出てきます。クラウドについてはとにかく「便利だ、便利だ」といわれていますし、実際、現在の多くのソフトウェアやアプリケーションがクラウドサービスとして提供されています。ひと昔前であれば、「セキュリティがね……」「安全性がね……」という意見もあり、クラウドの活用に疑心暗鬼な方もいましたが、今では、クラウドも市民権を得て活躍の場を拡大しています。
しかし、「クラウド」という言葉をこれほど耳にしながらも、「では、クラウドって何ですか?」と聞かれると、明確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。クラウドのセキュリティを心配する方も、「なぜクラウドに不安要素があるのか」「どういった特徴があるゆえにクラウドが心配なのか」は分からなかったりします。これほど話題になりながら“雲”をつかむような感覚で語られがちなのがクラウドといえるでしょう。このコラムでは「クラウド」について解説します。
1.あなたも知らない間にクラウドの恩恵を受けている
おそらく多くの方(ユーザー)が、日常的にインターネットを使っているでしょう。今まさにこのコラムを読んでいる方も、まず間違いなくネットユーザーであるはずです。インターネットには、パソコンなどのデバイスや、サーバー、ストレージ(=パソコンのデータを長期間保管しておくための補助記憶装置)、ネットワークといったものが必要で、それらがそろって初めて私たちはネットを使うことができます。
そんなインターネットですが、みなさんはどのように活用していますでしょうか。サイトを閲覧する方もいるでしょう。Amazonや楽天といった購買にも使えるプラットフォームで買い物を楽しむ方もいるでしょう。あるいはSNSで発信をしたり、ソフトウェアを使って何かをつくっている方もいるかもしれません。そんなネット利用の過程で、おそらくあなたは、知らず知らずの間に「クラウド(Cloud)」の恩恵を受けているはずです。
さて今回は、ソフトウェアの利用を例にとりながら「クラウド」について話をしましょう。私たちが日々使っているソフトウェアですが、一体「どこ」に保管されているか、ご存じでしょうか。「保管」というと不思議な感覚を抱く方もいるかもしれませんが、イメージを湧きやすくするために、あえて「保管」という単語を使います。当然ながらソフトウェアは、電子情報として「どこか」に保管されています。そうでなければ、私たちが日常から使うことはできないでしょう。
2.ソフトウェアはどこに保管されているのか
かつてであれば、多くのソフトウェアは、そのサービスを提供している会社のサーバーなどに保管されていて、私たちがソフトを利用するときには、ネットワークを介してそのサーバーにアクセスし、自身のパソコン等にソフトをインストールしていました。つまり、各自で各社が持っているパソコンやサーバーにソフトウェアの電子情報を引っ張ってきて(導入して)、自らのものとして手元に保管してから、ソフトウェアを活用していたのです。
この仕組みは、ユーザーからすれば、ある意味安全です。なぜなら、手元のパソコンや自社サーバーにソフトウェアの電子情報やデータを保管しておけるため、情報の流出が起きにくいと考えられるからです。社「外」のサーバーなどでデータなどを扱うことを想像したら、「ちょっと怖いな」と思う人もいるでしょう。データを“外”に持ち出して管理しようというのですから。
実は、クラウドはこの発想に近い仕組みになっています。詳しくは後述しますが、そのためにクラウドは、ひと昔前であれば -冒頭に書いたように -安全性が疑問視され、「セキュリティがね……」と言われて利用が避けられたりしたのです。実際、過去にはクラウド情報が流出してしまうという事故もありました。今は時代が変わり、そのような可能性は小さくなっています。
3.そもそもクラウドとは何か
さて、では改めて問います。「クラウドとは何でしょうか。」端的にいえば、それは「ユーザーがインターネットに必要なインフラを持たなくても、またはソフトウェアを手元のサーバーなどにインストールして持っていなくても、ネットサービスを必要なときに必要な分だけ活用できるという仕組み」ということになります。
上記のように書くと、もしかすると大半の読者の方が「なんだか難しいな」と感じるかもしれません。
たとえば、GoogleのGmailやMSNのHotmailを思い出してみてください。みなさんのなかには、メールソフトを自身のパソコンにインストールして、ライセンスを購入して使っている方がいるでしょう。OutlookやBecky!などのソフトを、かつては自宅や自社のハードウェアに導入してから使っていたと思います。この場合、あなたが使っているメールは、あなたのパソコンのなかに取り入れられたものになっていて、あなたはその取り入れられたメールソフトを使っている、ということになります。
ですが、クラウドの場合は状況が違います。クラウドは、パソコンのなかにソフトウェアをインストールしません。パソコンにソフトが入っていなくても、ネットワークさえつながっていれば、使いたい時に使いたい分だけ、ソフトを利用することができます。クラウドでない提供形態のソフトウェアの場合は、サーバーに保管されていたソフトウェアを「こちら側(自宅のパソコンや自前のサーバー)」に引っ張ってきて活用します。ソフトを購入して、自身の所有物にして利用するのです。一方のクラウドの利用形態は、ソフトウェアを引っ張ってこずに「あちら側(ネットワーク上)」に置かれたままにして活用します。つまり、ソフトウェアを自分では所有せずに、必要なときに必要な分だけ利用するのです。
メールソフトでいうと、ハードウェアを購入したりソフトをインストールしなくても、クラウドであれば「あちら側」に置かれたままのGmailやHotmailをブラウザ(=インターネットを見るときに開く画面)上で使うことができます。重ねていいますが、あなたがクラウドでGmailやHotmailを使っているとき、それらソフトはあなたのパソコンには搭載はされていません。ネットワーク上で仮想的に利用環境が提供され、そこであなたはGmailやHotmailを使うことができるのです。
4.クラウドのメリット・デメリット
さて、そんなクラウドですが、クラウドで利用できるサービスにはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
・クラウドサービスのメリット
クラウド以外の提供形態で使えるサービスは現在もたくさんありますが、基本的にはクラウドサービスの方が初期費用が安くて済みます。初期費用なしで「月額○○円」といった形で提供されます。サービスによっては無料で利用できるものもあります。また、インストールやそれにともなう設定などの煩雑な作業もほとんどなく、すぐに利用可能になるのも強みです。導入がラク、ということです。さらに、クラウドサービスを使って、自身でソフトウェアやサービスを開発する際には、サーバーの拡張が簡単に行えるなどの利点もあります。
・クラウドサービスのデメリット
一方で、デメリットもあります。先にも述べたように、クラウドで使うソフトウェアは基本的に「あちら側(ネットワーク上のどこか)」に置かれています。そのため、カスタマイズを完全に自由に行うことができません。自社サーバーやストレージなどの自前のハードウェア、データセンターといった「こちら側」にソフトウェア引っ張ってきて、自ら所有して使う場合のカスタマイズの自由度に比べると、クラウドはどうしても見劣りしてしまいます。また、クラウドサービスはネットワークがつながっていないと利用できません(「あちら側」にアクセスできないため)し、サービスが突然停止になるというリスクもあります。
おわりに
概要は以上になります。クラウドは日進月歩で進化しており、多様なニーズに合わせた多様なクラウド形態も誕生しています。ぜひ、あなた、あるいは自社に最適なクラウドサービスを探し、活用してみてはいかがでしょうか。