普段の生活、仕事の中で、「色」をどれくらい意識していますか?人間は「100万色以上の色」を認識できるといいます。一方、動物はあまり色覚が発達しておらず、犬の場合は青と黄色しか認識することができないそうです。
いろんな色の洋服を着たり、インテリアを飾ったり、四季折々の美しい景色に心踊らせたり、カラフルな絵の具を使って絵を描いたりするのは、人間ならではの楽しみ方の一つといえるでしょう。色には特有のイメージや心理的効果があります。色の特徴や効果を知り、日常生活に上手に取り入れられれば、今よりもっと生きやすくなるに違いありません。今回のコラムでは、シニアの日常生活にハリをもたらす色使いを紹介します。
1.年齢と色
色の好み、自身に似合う色などは、齢を重ねるごとに変わっていきます。また、色の見え方や感じ方も、齢を重ねるにつれ、変化していくでしょう。色との付き合い方を考えたり、見つめ直したりすることで、心身に良い影響をもたらしてくれます。
ここからは、年齢と色について、紹介していきましょう。
1-1.加齢による視覚の変化
高齢者になるほど、視力が低下する確率が高まります。また、照度も鈍くなり、外光などのまぶしい光を敏感に感じたり、明るい場所にいても薄暗く感じてしまったりします。一般的には、高齢者には若年者の2倍〜数倍の照度が必要ともいわれているのです。階段や廊下などでは、安心して移動できるように、照明などにも気を使うことが大切です。
高齢者に多い目の病気の一つに、白内障があります。白内障は、レンズの役割をしている水晶体が白く濁る病気です。白内障になると、視界が黄色っぽく感じられ、色を見間違いやすくなります。
参照元:高齢者と推奨照度
1-2.若々しくしてくれる色とは
色にはそれぞれ特徴があり、人の心身に大きな影響を与えています。女性を若々しく保ってくれる色、若返りを応援してくれる色、それがピンクです。ピンクを見ると、女性ホルモンの内分泌が活発になります。それにより、肌に潤いを与えたり、髪や爪に艶を与えたりなど、女性らしい美しい身体を作るサポートをしてくれるのです。また、ピンクは交感神経を刺激し、血流をアップさせるので、身体全体に栄養や酸素が行き渡りやすくなります。ピンクのインテリアを集めたり、ピンクの洋服を着て生活したりすることで、見た目だけでなく、内側からキレイを目指すことができるでしょう。
1-3.色を使った怪我を防止する工夫
高齢になると、前述したように暗いところでものが見えにくくなったり、苦手な色ができたりしてしまいます。見えにくい色があると、転倒事故などにつながってしまう恐れもあるため、色と色を区別する工夫が必要になるでしょう。手軽にできる怪我を防止する工夫の一つに、目立つ色のテープを貼るというものがあります。赤や黄などの暖色は目立つ色であり、危険や警告を表すための警告色として活用されています。滑りやすい場所や、段差のある場所にテープを貼っておくことで、注意力を喚起し、事故の予防につなげることができるでしょう。
アルミ製のカラーテープは、既に色分けされているだけでなく、耐候性があり、粗面にも馴染みやすいのでおすすめです。
2.色を味方につけよう!心理効果を利用した色の使い方
ファッションやインテリアの色は、イメージや好みの色で全て選んでいませんか?色には人を元気にさせたり、落ち着かせたり、癒しを与えてくれたり、さまざまな働きや心理的効果があります。色の持つ効果や作用から、色選びをすることにより、色があなたの生活を応援してくれるようになります。
ここからは、心理効果を利用した色の使い方について紹介しましょう。
2-1.集中力を高めたい時に取り入れたい色
手術室の壁や床、手術用の白衣などには、青や緑を採用している所が多いようです。それは、集中力をアップさせる効果があるのが理由の一つです。青みがあって、明度・彩度が低い色は、沈静色と呼ばれています。沈静色は、心拍数を下げ、心理状態を落ち着かせることができるので、集中力を高めたいときや、リラックス効果を得たいときなどにおすすめです。カーテンや、デスク周りのアイテムに青や緑を取り入れれば、作業に集中しやすくなるはずです。
2-2.効果的にリラックス!疲労軽減をもたらしてくれる色
心を落ち着かせたり、癒したりする代表格の色といえば、やはり緑です。緑は森や木、植物などの自然を連想させるため、リラックスしたい空間に取り入れると、心を落ち着かせてくれます。インテリアに観葉植物を取り入れれば、一気におしゃれな空間に大変身させることができるでしょう。他にも水や空を連想させる青、清潔感や純粋さというイメージがある白、幸せの象徴でもあるピンクなども癒し効果の高い色です。リラックスムードを高めたいときは、これらをインテリアのベースの色として、活用してみましょう。
2-3.料理を美味しくする色使い
画像追加(・赤・白・黄・緑・黒の5色)
料理の美味しさを感じる時に重要なのは、味覚だけではありません。触覚、聴覚、嗅覚、そして、視覚を意識することで、料理がより美味しく感じられるようになります。食卓に並べられた料理の色が全て同じ色だったら、料理の楽しさ、美味しさは半減してしまうでしょう。
色と栄養には、密接な関係があります。
赤・白・黄・緑・黒の5色を毎日そろえると、栄養をバランス良く摂取できるだけでなく、彩りが豊かで目でも料理を楽しむことができます。また、食器、カトラリー(スプーンやフォーク)、グラスやカップ、テーブルリネンなど、食材の色だけでなく、アイテムの色によっても気分は変わってくるものです。「家族団らんの食事をしたいときはオレンジや黄」「高級感を演出したいときは白いテーブルリネンを使う」など、テーマを定め、それに合わせて配色を決めると、いつもとは違った食事の楽しみ方ができます。
2-4.快眠をサポートする色使いの工夫
寝室は、その名の通り寝ることを目的にした部屋です。寝具の色や柄を意識することで、リラックスしやすい環境を作ることができます。自律神経には「交感神経」と「副交感神経」がありますが、眠る時には身体と心をリラックスモードにするため、副交感神経が優位になっていることが大切です。青や緑などの鎮静色は副交感神経を優位にし、神経の興奮を鎮静化します。自然界に多くある色を、ベッドシーツや布団カバー、枕カバー、周りに置く小物、パジャマなどに取り入れることで、日々の快眠をサポートしてくれるはずです。
眠りを良くするためには、光の色も重要です。光が強いと覚醒効果が高まってしまうので、昼白色や昼光色は、寝室にはあまり向いていません。暖かみのある日の出や夕焼けを思い起こさせる、オレンジっぽい電球色などがおすすめです。
3.毎日心身に良い影響!インテリアの色使いのポイントは
服装や装飾などのファッションは、気分に合わせて比較的自由に変えることができますが、インテリアではなかなかそうはいきません。短いスパンでの変更が利かず、毎日その色を目にして過ごすことになるので、配色や色選びはより慎重に行うことが大切です。
ここからは、インテリアの色使いのポイントやコツについて紹介します。
3-1.暖色と寒色を活かして住みやすさを演出
見ているだけで暖かさを感じさせる色を「暖色」、寒さや冷たさを感じさせる色を「寒色」といいます。代表的な暖色には赤色、黄色、オレンジ色、寒色には青、青緑、青紫などがあります。視覚効果を使い、部屋を暖色で統一すると、体感温度が上がるといわれています。冬には寒さをやわらげる暖色、夏には暑さをやわらげる寒色を取り入れることで、快適に過ごしやすくなるでしょう。住みやすさを演出したいときは、暖色と寒色を上手に使い分けるのが効果的です。
3-2.自身の好きな色を部屋に取り入れよう!色の配分とバランスについて
居心地の良さを演出する時は、使う色だけでなく、色の配分も大切です。日常的に目にすることになる、部屋全体の配色の理想的な配分率は、ベースカラーが70%、メインカラーが25%、アクセントカラーが5%です。
ベースカラーは、床や壁、天井など、最も面積の広い背景などに使う色です。ベースカラーはなかなか簡単に変更することができないため、飽きがこない色を選択することが大切です。主張が少ないニュートラルカラーや、好きな色の薄いトーンなどを選択すると、大きな失敗が少ないでしょう。
メインカラーは、ラグやカーテン、家具に使用する色で、比較的面積が広く、部屋の印象を決めるメインとなるカラーです。メインカラーで住む人の好みや、空間のコンセプトが反映されるので、自身の好きな色や、ベースカラーよりも濃い色などを選択していきましょう。
アクセントカラーは、クッションや小物類などに使用する色のことで、文字通りアクセントや遊びをプラスする時に活用できます。比較的簡単に変えることができるので、気分や季節に合わせてアレンジしたり、コントラストによってメインカラーを引き立てたりするような色を選ぶのがおすすめです。
「自身の好きな色に囲まれたい」「ゆったりと落ち着いて過ごせる空間にしたい」「大人っぽい雰囲気を演出したい」など、「こんな部屋にしたい」というイメージを決めながら、配色を考えていきましょう。
参照元:Blind Mart
3-3.季節感を演出したい時のカラーコーディネート
日本では四季の区別がはっきりとしており、その季節ごとにさまざまな美しい景色を見ることができます。季節感のある要素を取り入れるだけで、センスをアップさせることができます。春と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが、桜ではないでしょうか。春は眠っていた木々が目覚め、植物たちが一番元気になる季節です。植物や花を連想させる緑や黄色、桜をイメージさせるピンクなどを取り入れることで、春らしさを演出することができます。
夏は太陽の光が強く、すべてのものが鮮やかに見える季節です。太陽の日差しをイメージさせるオレンジ、鮮やかな空や海を思い起こす明るめの青、夏が似合う南国のハイビスカスの赤などをメインカラーやアクセントカラーに取り入れれば、夏の季節にマッチするでしょう。秋は、さまざまな木々の葉が黄や赤に色づく紅葉のシーズンです。秋を演出したいときは、紅葉の赤や黄、どんぐりやキノコを連想させる茶などを取り入れましょう。
冬といえば、雪を連想する人が多いでしょう。雪景色を連想させる白や淡いブルーやグレー、クリスマスカラーである赤・緑・金・銀などを取り入れると、冬らしさが出ます。
おわりに
生活の周りでは、人工の色で溢れかえっています。家の中にずっといれば、家の中にある色から、より多くの心理的・生理的に影響を受けることになります。色が人の心理と行動に与える影響は、千差万別です。色の効果を知り、無秩序に並べられたインテリアを美しくコーディネートすることで、快適で住みやすい家を演出することができます。美しく心地良い空間づくりに、色の持つパワーを活用し、人生をカラフルに彩ってみてはいかがでしょうか。